問1
値 の確率分布が次の表で与えられています。
| 計 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 確率 |
の期待値を求めなさい。
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()
目次 / 場合の数と確率 / 数学A
—— 1回ごとの結果は読めなくても、「平均するとどれくらいか」は確率で重みをつけて足せば分かる ——
第8章では、場合ごとの確率に「その場合になる確率」で重みをつけて足し、全体の確率を求めました。この章では、重みをつける相手を賞金や得点などの「値」に変えます。値とその確率をかけて足した量を期待値と呼び、くじやゲームを何回もくり返したときの1回あたりの平均の見込みとして使います。確率分布の表を作って期待値を求める手順、期待値で有利・不利を判断する方法、値を一斉に変えたときの期待値、反復試行で起こる回数の期待値を順に学び、この分野のまとめとします。
第8章の公式4 では、場合ごとの確率 , に、その場合になる確率 , で重みをつけて足しました。この章では、重みをつける相手を「確率」から「賞金」や「得点」などの値に変えます。
本のくじのうち、 円の当たりが 本、 円の当たりが 本、残りの 本ははずれ( 円)だとします。このくじを1本引いてもらえる金額は、引くまで分かりません。けれども、 本全部を引けば合計 円なので、1本あたりにならすと 円です。これを確率を使って書くと
となります。値に「その値になる確率」をかけて足したこの量を、期待値といいます。
ある試行の結果によって値が決まる量 が、値 ,,…, のどれか1つをとり、それぞれの値をとる確率が ,,…, であるとする()。このとき
を の期待値という。
期待値は、試行を何回もくり返したときの「1回あたりの平均」の見込みです。1回ごとの結果は 円だったり 円だったりしますが、たくさん引けば、1本あたりの金額はおよそ 円に落ち着くと考えられます。実際に 円がもらえるわけではないことにも注意しましょう。
シーソーのつり合いで考えると、期待値のイメージがつかめます。数直線を板とみて、 の位置に重さ 、 の位置に重さ 、 の位置に重さ のおもりを置きます。支点をどこに置けば板が水平につり合うかを求めると、ちょうど の位置になります。 は遠くにあるので、おもりが1つでも支点を右へ引っぱります。期待値は、値の大きさと確率の両方で決まる「重さの中心」です。
期待値は「値 × その値になる確率」をすべて足したもので、くり返したときの1回あたりの平均の見込みだということです。
(1) 本のくじのうち、1等 円が 本、2等 円が 本、3等 円が 本で、残りははずれです。このくじを1本引くときにもらえる金額の期待値を求めなさい。
(2) 1個のさいころを投げるときに出る目の期待値を求めなさい。
【解答】
(1) はずれは 本で、もらえる金額は 円です。
(2) 目は から のどれも確率 です。
の目は出ません。期待値は「実際に出る値」ではなく「平均の見込み」なので、とりうる値でなくてもかまいません。
期待値を求めるには、「 がどんな値をとるか」と「それぞれの値をとる確率」をもれなくそろえる必要があります。これを表にしたものを、 の確率分布といいます。
次の手順で求める。
| 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
確率の分母をそろえておくと、手順3 の確認も手順4 の計算も楽になります。分母が にそろっていれば、期待値は「値 × 分子」の合計を で割るだけです。
レシートの検算を思い出してください。買った品物の値段を1行ずつ足していき、最後に合計欄と照らし合わせれば、打ち忘れや二重打ちに気づけます。確率分布の表で「確率の合計が になるか」を確かめるのも同じ役目で、とりうる値の見落としや、同じ場合の数えすぎを見つけてくれます。
期待値は、とりうる値と確率を表に並べ、確率の合計が になるのを確かめてから「値 × 確率」を足せば、もれなく求められるということです。
,,,, の数が1つずつ書かれた 枚のカードから、同時に 枚を取り出します。取り出した2枚のカードに書かれた数の和を とするとき、 の期待値を求めなさい。
【解答】
枚の取り出し方は 通りで、これらは同様に確からしいです。和ごとに組を数えると
| 計 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
分子の合計は で、確率の合計は です。値と確率の分子の積の合計は
なので、期待値は
表が を中心に左右対称になっているので、シーソーは でつり合う、と見ることもできます。
参加料を払うゲームや、どちらかを選ぶ場面では、期待値を比べて判断することができます。
参加料 円を払ってもらえる金額 円が決まるゲームでは
と判断する。2つの選択肢を比べるときは、期待値の大きいほうを有利とする。
この判断は「何回もくり返したとき」の見込みにもとづいています。1回だけなら、不利なゲームで大きく得をすることも、有利なゲームで損をすることもあります。
スーパーの2つのキャンペーンを比べてみましょう。A 店は「会計がいつも 引き」、B 店は「会計のたびにくじを引き、 の確率で 引き、それ以外は割引なし」です。B 店の割引率の期待値は で、A 店と同じです。毎週通うなら、どちらの店でも長い目で見た割引はほぼ同じになります。ただ、B 店では「たまに大きく得をする」ぶれがあります。期待値は平均の見込みを表しますが、ぶれの大きさまでは表しません。
参加料と金額の期待値を比べ、期待値のほうが大きければ有利、小さければ不利と判断すればよいということです。
硬貨を 枚同時に投げ、 枚とも同じ面が出たら 円、それ以外なら 円がもらえるゲームがあります。参加料は 円です。
(1) もらえる金額の期待値を求め、このゲームが参加者にとって有利か不利かを判断しなさい。
(2) 枚とも同じ面が出たときの金額だけを変えて、有利とも不利ともいえないゲームにします。その金額を求めなさい。
【解答】
枚の表裏の出方は 通りで、同様に確からしいです。 枚とも同じ面になるのは「3枚とも表」「3枚とも裏」の 通りなので、その確率は 、それ以外の確率は です。
(1)
期待値 円は参加料 円より小さいので、 です。
(2) 金額を 円にすると、期待値は 円です。これが参加料と等しくなればよいので
確かめ: です。
得点のつけ方を「出た目の 倍に 点を足す」のように変えることがあります。このとき、確率分布の表を作り直さなくても、元の期待値から新しい期待値が求められます。
の期待値を とする。 のすべての値を 倍して を足した量 の期待値は
である(, は定数)。
理由は次のとおりです。 の値は ,…, で、確率はそれぞれ ,…, のままです。
最後に を使いました。
税込み価格と送料で考えると自然です。通販で買う品物の値段の平均の見込みが 円なら、それを 倍して送料 円を足した支払額の見込みは、 円です。品物ごとに税込みにして送料を足してから平均しても、平均してから税込みにして送料を足しても、同じ結果になります。
すべての値を 倍して を足せば、期待値も 倍して を足したものになるということです。
から までの番号が書かれた札が 枚ずつあり、この中から1枚を引きます。引いた札の番号を とし、 円を受け取ります(値が負のときは、その金額を支払います)。受け取る金額の期待値を求めなさい。
【解答】
の期待値は
です。公式4 より、受け取る金額の期待値は
確かめ:受け取る金額は 円の 通りで、どれも確率 です。合計は なので、期待値は 円となり、一致します。
第7章の反復試行で、ある事象が起こる回数の期待値を考えます。
さいころを 回投げて の目が出る回数を とすると、反復試行の確率より です。分母を にそろえると
| 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
となり、期待値は です。これは と同じ値です。
1回の試行で事象 が起こる確率を とする。この試行を 回くり返す反復試行で、 が起こる回数の期待値は
である。
一般の での証明は、厳密定義のページで扱います(1回ごとに「起こったら 、起こらなければ 」という量を考え、その期待値 を 回分足します)。
打率 3 割の打者が、1試合に 回打席に立つとします。毎回の打席でヒットになる確率を とみなすと、1試合のヒットの本数の期待値は 本です。 本のヒットは打てませんが、 試合なら合計 本くらいになる見込みだ、という意味になります。
確率 で起こることを 回くり返すと、起こる回数の期待値は で、表を作らなくてもかけ算1つで求められるということです。
(1) 上の表を使わずに、さいころを 回投げて の目が出る回数の期待値を、公式5 で求めなさい。
(2) さいころを 回投げるとき、 の目が出る回数の期待値を求めなさい。また、 回投げて の目がちょうど 回出る確率を とするとき、 を と累乗を使った式で表しなさい。
【解答】
(1) , なので
表から求めた値と一致します。
(2) , なので、期待値は
ちょうど 回出る確率は、反復試行の確率より
です。この値は約 で、期待値どおり「ちょうど 回」になる確率はそれほど大きくありません。期待値は「いちばん起こりやすい回数の近く」にはなりますが、その回数がぴったり起こることを約束するものではありません。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
値 の確率分布が次の表で与えられています。
| 計 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 確率 |
の期待値を求めなさい。
()
問2
から までの番号が書かれた札が 枚ずつあり、この中から1枚を引きます。引いた札の番号の期待値を求めなさい。
()
問3
本のくじのうち、 円の当たりが 本、 円の当たりが 本で、残りははずれです。このくじを1本引くときにもらえる金額の期待値を求めなさい。
()
問4
硬貨を 枚同時に投げるとき、表が出る枚数の期待値を求めなさい。
(。公式5 なら )
問5
1個のさいころを投げ、 の目が出たら 円、それ以外なら 円がもらえるゲームがあります。参加料が 円のとき、もらえる金額の期待値を求め、このゲームが参加者にとって有利か不利かを確かめなさい。
期待値 円(約 円)で、 円より小さいので
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
本のくじがあり、1等 円が 本、2等 円が 本、3等 円が 本で、残りははずれです。
(1) このくじを1本引くときにもらえる金額の期待値を求めなさい。
(2) このくじを1本 円で買うとき、買う人にとって有利か不利かを確かめなさい。
(1) 円 (2) 有利
(1) はずれは 本です。確率分布は次のとおりです。
| 金額(円) | 計 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
金額と確率の分子の積の合計は
なので、期待値は
(2) 期待値 円は値段 円より大きいので、 です。 本全部を買うと 円払って 円もらえる、と考えても同じ結論になります。
問2 ★
1個のさいころを投げます。
(1) 出た目が奇数ならその目の数を、偶数なら を得点とします。得点の期待値を求めなさい。
(2) 出た目の数を 乗した値を得点とします。得点の期待値を求めなさい。
(1) (2)
6 通りの目はどれも確率 です。
(1) 得点は目が のときそれぞれ 、目が偶数のとき です。
(2) 得点は で、どれも確率 です。
目の期待値は で、その2乗は です。 とは違うので、「2乗の期待値」と「期待値の2乗」は別物です(公式4 は、値を 倍して を足す場合にしか使えません)。
問3 ★
袋の中に黒玉 個と白玉 個が入っています。この袋から同時に 個の玉を取り出すとき、取り出した黒玉の個数を とします。 の確率分布を表にまとめ、 の期待値を求めなさい。
個の取り出し方は 通りで、同様に確からしいです(玉はすべて区別して数えます)。
| 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
分子の合計は です。
値と確率の分子の積の合計は
なので、期待値は
これは「取り出す個数 」×「黒玉の割合 」と同じ値です。玉を戻さない場合でもこうなる理由は、厳密定義のページで説明しています。
問4 ★
硬貨を 枚同時に投げます。
(1) 表が出る枚数の期待値を求めなさい。
(2) 表が 枚なら 円、ちょうど 枚なら 円、それ以外なら 円がもらえるとき、もらえる金額の期待値を求めなさい。
(1) 枚 (2) 円
表裏の出方は 通りで、同様に確からしいです。表が 枚になるのは 通りです。
| 表の枚数 | 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
(1) 枚数と確率の分子の積の合計は
なので、期待値は
公式5 を使えば と、すぐに求まります。
(2)
問5 ★
大小2個のさいころを投げ、出た目の大きいほうから小さいほうを引いた数を とします(同じ目のときは )。 の期待値を求めなさい。
目の出方は 通りで、同様に確からしいです。差が ()になるのは、(大, 小) と の形で、それぞれ 通りずつあるので 通りです。差が は 通りです。
| 計 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
分子の合計は です。
問6 ★
次の2つのゲームのうち、どちらか一方に参加できます。
ゲームA:さいころを1個投げ、出た目の数の 倍の金額がもらえる。
ゲームB:硬貨を 枚投げ、2枚とも表なら 円、1枚だけ表なら 円、2枚とも裏なら 円がもらえる。
それぞれのもらえる金額の期待値を求め、どちらに参加するほうが有利かを確かめなさい。
A は 円、B は 円で、B のほうが有利
ゲームA:もらえる金額は 円で、どれも確率 です。金額の合計は
なので、期待値は
(公式4 を使えば、目の期待値 の 倍で 円です。)
ゲームB:2枚とも表の確率は 、1枚だけ表は 、2枚とも裏は です。
期待値は A が 、B が で、 です。B は 円になることが ありますが、くり返し参加するなら平均では B のほうが多くもらえる見込みです。
問7 ★
本のくじのうち、 円の当たりが 本あり、残りのくじはすべて 円の参加賞です。このくじを1本引くときにもらえる金額の期待値が 円となるような を求めなさい。
参加賞は 本です。期待値は
これが になるので
確かめ: です。
問8 ★
1個のさいころを投げ、出た目の数を とします。
(1) を得点とするとき、得点の期待値を求めなさい。
(2) を得点とするとき、得点の期待値が になるような定数 を求めなさい。
(1) (2)
の期待値は です(例題1)。
(1) 公式4 より
確かめ:得点は で、合計 を で割ると です。
(2) 公式4 より、得点の期待値は です。
問9 ★★
1個のさいころを 回投げ、 または の目が出る回数を とします。
(1) の確率分布を表にまとめ、 の期待値を求めなさい。
(2) (1) の結果を、公式5 を使って確かめなさい。
(1) (2) で一致する
1回の試行で または の目が出る確率は です。
(1) 反復試行の確率より です。分母を にそろえると、分子は です。
| 計 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
分子の合計は です。
(2) , なので、公式5 より期待値は
となり、 ことが確かめられます。
問10 ★★
当たりくじ 本を含む 本のくじから、1本ずつ引いていきます。引いたくじは元に戻さず、当たりくじを引いた時点でやめます。くじを引く回数の期待値を求めなさい。
回
はずれは 本なので、引く回数は 回から 回のどれかです。 回目に初めて当たる確率を、乗法定理で求めます。
分子の合計は で、もれはありません。回数と確率の分子の積の合計は
なので、期待値は
別の見方: 本を全部引いたと考えると、当たり 本の位置の選び方 通りは同様に確からしく、最初の当たりが 本目になるのは、残り 本の当たりが 本目より後ろの 本から選ばれる 通りです。これが上の分子 になっています。
問11 ★★
大小2個のさいころを投げます。
(1) 出た目の和の期待値を求めなさい。
(2) 出た目の積の期待値を求めなさい。
(1) (2)
目の出方は 通りで、同様に確からしいです。期待値は「 通りすべての値の合計 」で求められます。
(1) 大の目 を固定すると、小の目 が から まで動くので、和の合計は です。これを から まで足すと
大の目の期待値 と小の目の期待値 の和になっています。
(2) 大の目 を固定すると、積の合計は です。これを から まで足すと
これは と同じ値です。大小のさいころは互いに影響しないので、積の期待値は期待値の積になります(厳密定義のページ 定理5)。一方、問2 (2) のように同じ目どうしをかけた場合は、期待値の積とは一致しません。
問12 ★★
袋 には赤玉 個と白玉 個、袋 には赤玉 個と白玉 個が入っています。硬貨を1枚投げ、表なら袋 、裏なら袋 から同時に 個の玉を取り出します。取り出した赤玉の個数の期待値を求めなさい。
袋ごとに、取り出した赤玉の個数の確率を求めます。
袋 :取り出し方は 通り。赤玉 個は 通り、 個は 通りです。
袋 :取り出し方は 通り。赤玉 個は 通り、 個は 通り、 個は 通りです。
赤玉の個数を とすると、公式4(第8章)より
合計は です。
別解:袋 を選んだときの赤玉の個数の期待値は 、袋 では です。これを袋を選ぶ確率で重みをつけて足すと、 となります(厳密定義のページ 定理4)。
問13 ★★
大小2個のさいころを投げ、同じ目が出たら 円、目の和が なら 円、それ以外なら 円がもらえるゲームがあります。
(1) もらえる金額の期待値を求めなさい。
(2) 参加料を 円( は正の整数)とします。このゲームが参加者にとって不利にならないような の最大値を求めなさい。
(1) 円 (2)
目の出方は 通りで、同様に確からしいです。同じ目は 通り、和が は ,,…, の 通りで、この2つが同時に起こることはありません(同じ目なら和は偶数)。
(1)
(2) 不利にならないのは、期待値が参加料以上のときです。
これを満たす最大の整数は です。参加料 円では、期待値のほうが小さくなり不利です。
問14 ★★
実力が同じ2チーム , が試合をくり返し、先に 勝したチームを優勝とします。各試合で が勝つ確率は で、引き分けはなく、各試合の結果は互いに影響しないものとします。優勝が決まるまでに行う試合数の期待値を求めなさい。
試合
試合数は のどれかです。 が優勝する場合を求め、 の場合は同じ確率なので 倍します。
の分も合わせると、試合数の確率分布は
| 試合数 | 計 | |||
|---|---|---|---|---|
| 確率 |
で、平均すると4試合と少しで決着する見込みです。
問15 ★★
黒玉 個と白玉 個を、でたらめに横一列に並べます。となり合う2個の玉の色が違う箇所の数を とします。例えば「白黒黒白白白」なら です。 の期待値を求めなさい。
左から 番目から 番目の位置のうち、黒玉が入る か所の選び方は 通りで、同様に確からしいです。黒玉の位置を ()として分類します。
| 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
別解:となり合う2か所の組は 組あり、どの組でも色が違う確率は、その2か所が「黒と白」になる確率 です。「色が違えば 、同じなら 」を 組分足したものが なので、期待値は です(厳密定義のページ 定理3 の考え方)。
問16 ★★
から までの数が1つずつ書かれた 枚のカードから、同時に 枚を取り出します。
(1) 取り出したカードの数の最大値の期待値を求めなさい。
(2) 取り出したカードの数の最小値の期待値を求めなさい。
(1) (2)
枚の取り出し方は 通りで、同様に確からしいです。
(1) 最大値が になるのは、 を取り出し、残りの 枚を から までの中から選ぶ 通りです。
| 最大値 | 計 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
(2) 最小値が になるのは、残りの 枚を から までの中から選ぶ 通りです。
| 最小値 | 計 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
別の見方:各カードの数 を に書きかえると、最大値と最小値が入れかわります。したがって「最小値」は「 最大値」と同じ確率分布をもち、公式4 より と求めることもできます。
問17 ★★★
さいころを1個投げ、出た目の数を得点とするゲームがあります。ただし、1回目の目を見たあとで、1回だけ投げ直すことができます。投げ直した場合は、2回目の目の数が得点になります。
(1) 「1回目の目が 以下なら投げ直し、 以上ならそのままにする」とき、得点の期待値を求めなさい。
(2) 「1回目の目が 以下なら投げ直し、 以上ならそのままにする」とき( は 以上 以下の整数)、得点の期待値を最大にする と、そのときの期待値を求めなさい。
(1) (2) ,期待値
投げ直したときの得点の期待値は、1回目の結果によらず です。
(1) 1回目が のときは、その目がそのまま得点です(確率はそれぞれ )。1回目が 以下(確率 )のときは、得点の期待値が になります。場合に分けて重みをつけて足すと
(確率分布で確かめると、得点 はそれぞれ 、得点 はそれぞれ で、 です。)
(2) (1) と同じように考えて、期待値を とすると
を 増やすと、「 の目ならそのまま得点 」が「投げ直して期待値 」に変わるので
これは すなわち のとき正、 のとき負です。よって , となり、 は で最大です。実際に値を並べると
答えは です。「1回目の目が、投げ直したときの期待値 より小さければ投げ直す」のが最もよい方法です。
問18 ★★★
さいころを1個投げ、 の目が出たらそこでやめます。ただし、投げるのは最大で 回までとします。
(1) さいころを投げる回数の期待値を求めなさい。
(2) の目が出たら 円がもらえ、3回投げても出なければ何ももらえません。また、さいころを1回投げるごとに 円を払います。受け取る金額から払う金額を引いた差額の期待値を求めなさい。
(1) 回 (2) 円
各回に の目が出る確率は で、各回の結果は互いに影響しません。
(1) 投げる回数を とします。
合計は です。
(2) の目が出る確率は、余事象を使って です。受け取る金額の期待値は
払う金額は 円なので、公式4 より、その期待値は 円です。差額は「受け取る金額 − 」なので、その期待値は
(約 円)です。
確かめ:差額は で が出たときそれぞれ 円、3回とも出なければ 円です。確率はそれぞれ なので、差額と確率の分子の積の合計は
で、期待値は となり、一致します。
問19 ★★★
の目が等しい確率で出る正四面体のさいころがあります。このさいころを 回投げ、出た目の最大値を とします。
(1) となる確率を、 について求めなさい。
(2) の期待値を求めなさい。
(1) () (2)
目の出方は 通りで、同様に確からしいです。
(1) となるのは、3回とも 以下の目が出るときで、 通りです。
で です。
(2) 「」は「」から「」を除いたものなので、 です。
| 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 |
で、1回だけ投げたときの目の期待値 より大きくなっています。
問20 ★★★
あるパン屋では、限定のパンを朝に何個か仕入れます。仕入れ値は1個 円、売り値は1個 円で、売れ残ったパンは捨てます。このパンを買いに来る客の数(1人1個)は 人から 人のどれかで、それぞれの確率は次の表のとおりです。仕入れた数より客が多いときは、仕入れた数だけ売れます。
| 客の数 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 確率 |
仕入れる数を 個から 個のどれかに決めるとき、利益(売り上げ − 仕入れ値の合計)の期待値を最大にする仕入れ数と、そのときの利益の期待値を求めなさい。
個仕入れるとき、 円
仕入れ数を 個、客の数を 人とすると、売れる数は と の小さいほうで、利益は「 売れる数 」円です。公式4 より、利益の期待値は「(売れる数の期待値)」です。
売れる数の期待値は
利益の期待値は
| 仕入れ数 | 利益の期待値(円) |
|---|---|
よって、利益の期待値は 仕入れるとき最大で、 です。
考え方:仕入れを 個から 個に増やすと、仕入れ値は 円増え、増やした1個が売れる(客が 人以上来る)ときだけ売り上げが 円増えます。増やす得は 円です。
「最後の1個が売れる確率 × 売り値」が仕入れ値を上回るあいだは増やす、というのが判断の基準になります。
第6章の小話で、1654 年にパスカルとフェルマーが手紙をやりとりしたことに触れました。その手紙で大きなテーマになったのが、分配問題です。
2人の , が 枚ずつ金貨を出し合い、合計 枚を賭けて、先に 勝したほうが全部もらう勝負をしています。2人の実力は同じで、引き分けはありません。 が 勝、 が 勝したところで、勝負を続けられなくなりました。 枚をどう分けるのが公平でしょうか(※パスカルの手紙にある例として、よく紹介される設定です)。
この問題はパスカルより前から知られていて、1494 年のルカ・パチョーリの本では「それまでに勝った回数の比で分ける」という考え方が示されていたといわれます(※本の中の数値の設定は、ここでの例とは違います)。この考え方なら で、 は約 枚です。けれども、この分け方は「あと何勝で優勝か」を見ていません。
パスカルは、このあと勝負を続けたらどうなるかで考えました。
つまり は、どちらになっても少なくとも 枚はもらえます。残りの 枚は、次の試合の勝敗しだいで、 と が勝つ確率は同じなので半分の 枚ずつ。 の取り分は 枚です。
この章の言葉で書き直すと、 が最終的に受け取る枚数の期待値
です。優勝の確率で見ても、 が優勝できないのは が2連勝するときだけなので、 の優勝確率は 、取り分は 枚と一致します。「まだ起きていない未来を、確率で重みをつけて今の価値にする」という期待値の考え方が、ここではっきりと使われました。
豆知識
パスカルとフェルマーの手紙のことを聞いたオランダのホイヘンスは、1657 年に確率についての小さな本をまとめました(※出版はラテン語の訳で、ホイヘンスの師にあたるファン・スホーテンの本の一部として出ました)。その中で、ゲームの「値打ち」を計算する方法が示されています。このときラテン語で使われた「期待(expectatio)」という言葉が、今の「期待値」の呼び名につながったといわれます(※言葉の由来には諸説あります)。
宝くじの期待値を計算してみましょう。ここでは、次のような架空の宝くじを考えます。1枚 円で、 万枚を売ります。
| 等級 | 当せん金 | 本数 |
|---|---|---|
| 1等 | 億円 | 本 |
| 2等 | 万円 | 本 |
| 3等 | 万円 | 本 |
| 4等 | 円 | 万本 |
| 5等 | 円 | 万本 |
当せん金の合計は 億 万円なので、1枚あたりの期待値は
です。 円で買うと、平均すると 円しか戻ってこない見込みで、この章の言葉では「不利」なゲームです。
しかも、 円のうち 円は1等の分です( 億円 円)。1等が当たる確率は 万分の なので、ほとんどの人は期待値よりずっと少ない額しか受け取りません。期待値は、ごくまれな大当たりに大きく引っぱられることがあります。シーソーでいえば、はるか遠くに小さなおもりが1つ置かれている状態です。
日本の宝くじは、法律(当せん金付証票法)で、当せん金の合計を売り上げのおよそ半分以下にすると決められています(※細かい決まりには例外もあります)。実際の宝くじでも、当せん金の割合は売り上げの 割弱になっていることが多いといわれます。残りは、売るための費用や、都道府県などの公共の事業に使われます。
豆知識
競馬などの公営競技では、買われた金額のうち、当たった人に払い戻される割合(払戻率)が、券の種類によっておよそ 割から 割に決められています(※競技や券の種類によって違います)。宝くじより払い戻しの割合は大きいのですが、それでも期待値は買った金額より小さくなります。
次のようなゲームを考えます。硬貨を投げ続け、初めて表が出たら終わります。 回目に初めて表が出たら、 円がもらえます。1回目で表なら 円、2回目なら 円、3回目なら 円、…と倍になっていきます。
回目に初めて表が出る確率は なので、もらえる金額の期待値は
となり、どこまでも大きくなります。期待値だけで判断するなら、参加料がいくら高くても「有利」なはずです。ところが、このゲームに 万円払って参加したいと思う人は、ほとんどいないでしょう。半分の確率で 円、 分の の確率で 円以下しかもらえないからです。
この問題は、1713 年にニコラウス・ベルヌーイが手紙の中で示し、のちにいとこのダニエル・ベルヌーイが 1738 年にロシアのサンクトペテルブルクの科学アカデミーの雑誌で論じたことから、サンクトペテルブルクのパラドックスと呼ばれます(※論文が書かれた年は、発表の数年前とされます)。
ダニエル・ベルヌーイは、「お金が 倍になったときのうれしさは、 倍にはならない」と考えました。 円持っている人がもらう 円と、 億円持っている人がもらう 円では、ありがたさが違います。金額そのものではなく「うれしさ(効用)」の期待値で判断すれば、このゲームの値打ちは有限になる、というのが彼の答えでした。
別の答え方もあります。実際には、払う側のお金には限りがあります。払う側が 円(約 万円)しか持っておらず、それを超える金額になったら 円だけ払うとしましょう。 の分は ずつで合計 、 回目以降になる確率 の分が なので、期待値はたった 円です。払う側が約 億円( 円)持っていても、期待値は 円にしかなりません。
豆知識
火災保険や自動車保険は、入る人から見ると、払う保険料よりも受け取る保険金の期待値のほうが小さくなるように作られています(そうでなければ、保険会社が続けられません)。それでも多くの人が保険に入るのは、「めったに起こらないが、起こると生活が立ちゆかなくなる損」を避けたいからです。ダニエル・ベルヌーイの「うれしさ(効用)」の考え方は、このような判断を説明するのにも使われています。
※ここは発展ページです。本文では「値 × その値になる確率」を足したものを期待値としました。ここでは、試行の結果に値を割り当てる写像として確率変数を定め、期待値を根元事象ごとの和として定義し直します。そのうえで、本文の公式4 と公式5 を証明し、「個数の期待値は確率の和」という強力な道具を導きます。第8章 定理6 のくじ引きの公平性を、ここでもう一度使います。
以下、有限集合 上の確率分布 に対して、事象 の確率を とします(第6章〜第8章の厳密定義と同じ約束です)。
から実数全体への写像 を、 上の確率変数という。実数 に対して、事象 を と書き、その確率を で表す。 のとる値全体 を (互いに異なる)とするとき、各 に を対応させたものを の確率分布という。
は有限集合なので、 のとる値も有限個です。事象 ,…, はどの2つも交わらず、合わせると になるので、第6章 定理1 より です。本文の公式2 で「確率の合計が になるか」を確かめたのは、この事実を使っています。
確率変数 の期待値を
と定める。 を の平均ともいう。
確率変数 のとる値を ,…,(互いに異なる)とすると
が成り立つ。また、 の最小値を 、最大値を とすると、 である。
証明 を、 の値によって ()に分ける。これらはどの2つも交わらず、合わせると になるので、定義2 の和を ごとにまとめてよい。 の上では だから
後半は、すべての で なので、 をかけて足すと
となり、 より である。(証明終)
右辺の形が本文の公式1 です。定義2 の形は「結果を1つずつ見て足す」、公式1 の形は「同じ値の結果をまとめてから足す」書き方で、定理1 はその2つが同じだと言っています。同様に確からしいとき()は、定義2 は「すべての結果についての値の合計 」となり、実践 問11 の解き方はこの形を使っています。
, を 上の確率変数、, を定数とすると
(1)
(2)
が成り立つ。ここで , は、 に , を対応させる確率変数である。
証明 (1)
(2)
(証明終)
(1) が本文の公式4 です。(2) で大事なのは、 と が互いに影響し合っていてもよいことです。証明では と の関係を何も使っていません。ただし、 と は同じ の上の確率変数でなければなりません。2つの試行にまたがる量を考えるときは、第7章 定義1 のように2つの試行を合わせた1つの試行(直積 )の上で考えます。
(2) をくり返せば、 となります。実践 問11 (1) の「大小の目の和の期待値 」は、 として求められます。
事象 に対して
で定まる確率変数 を、 の指示関数という。
は「 が起こったら 、起こらなければ 」という値です。
(1) である。
(2) 事象 ,,…, のうち起こるものの個数を とすると、 であり
が成り立つ。,…, が互いに独立である必要も、排反である必要もない。
証明 (1) 。
(2) 各 について、 は を含む の個数、すなわち が起こったときに起こる事象の個数に等しい。よって であり、定理2 (2) と (1) から結論が従う。(証明終)
この定理から、本文や実践問題の結果がいくつも導かれます。
(a) 反復試行(本文の公式5 の証明) 確率 の事象を 回の反復試行で考え、 を「 回目に起こる」とします。第7章 定理1 より なので、起こる回数 の期待値は
です。第7章 定理4 の確率 を使って を直接計算しても同じ値になりますが、定理3 を使えば計算がいりません。
(b) 戻さない取り出し(第8章 定理6 の利用) 当たり 本を含む 本のくじから、戻さずに 本を引きます。 を「 番目に引いたくじが当たり」とすると、第8章 定理6(くじ引きの公平性)より です。,…, は独立ではありませんが、定理3 はそれを必要としないので、当たりの本数の期待値は
です。実践 問3 の は、この形になっています。同時に取り出す場合も、1個ずつ取り出して色を見ないでおく場合と、取り出した玉の集まりの確率は同じです(第5章の公式4 で、分母と分子の数え方をそろえれば、順番を考えても考えなくても確率は同じでした)。
(c) となり合う2か所の色 実践 問15 の別解は、 組のとなり合う位置について「色が違う」を ,…, とし、定理3 を使ったものです。 と は明らかに影響し合いますが、それでも期待値は です。
(d) 番号が一致する個数 から までの番号のカードを、でたらめに並べます( 通りが同様に確からしい)。 を「 番目の位置に番号 のカードがある」とすると、 なので、番号が一致する枚数の期待値は
で、 によりません。 のとき、一致する枚数が 枚となる並べ方は 通りで、 と確かめられます。確率分布を求めるには第6章の包除原理が必要でしたが、期待値だけなら1行で求まります。
第8章 定理1 で、 のとき ()、()が確率分布になることを示しました。この分布で求めた の期待値を と書き、 が起こったときの の条件付き期待値と呼ぶことにします。
の分割 ,…,(どの2つも交わらず、合わせると 。第8章 定義2)で、どの も正であるとき
が成り立つ。
証明 右辺の第 項は
である。これを について足すと、各 はちょうど1つの に属するので、 となる。(証明終)
とおくと なので、定理4 は第8章 定理3(全確率の公式)を含んでいます。本文の冒頭で「第8章の公式4 の重みつき平均の、重みをつける相手を値に変える」と述べたのは、この関係のことです。実践 問12 の別解と問17 は、この定理を使っています。
2つの試行 , が独立であるとし(第7章 定義1。,)、 は の結果だけで、 は の結果だけで決まる確率変数とする。すなわち、 上の関数 と 上の関数 によって , と書けるとする。このとき
が成り立つ。
証明
右辺の第1因子は、 についての和 をかけて と書き直せる。第2因子も同様に である。(証明終)
実践 問11 (2) の は、この定理の例です。
独立でなければ、積の期待値は期待値の積になるとは限りません。硬貨を1枚投げ、表なら 、裏なら とする確率変数を とし、 とすると、 なので ですが、 です。和については定理2 (2) が独立でなくても成り立つのに対し、積には独立が必要です。第6章・第7章で見た「和事象は排反なら足す、積事象は独立ならかける」と似た対比になっています。
確率変数 がつねに を満たすとき、任意の正の数 について
が成り立つ。
証明 とする。 では 、 では だから
両辺を で割ればよい。(証明終)
例えば、0 以上の値をとる得点の期待値が 点なら、 点以上になる確率は 以下です。期待値だけから、大きな値が出る確率の上限が分かります。
また、定理1 の後半から、「 ならば、 となる が少なくとも1つある」ことも分かります(すべての で なら、最大値も 未満で、 となるからです)。この見方は、期待値を計算するだけで「条件を満たすものが存在する」ことを示す方法として、組合せの研究で使われています。
この分野では、集合の要素の個数から始めて、場合の数・確率・独立・条件付き確率・期待値へと進みました。期待値は「平均するとどれくらいか」を表しますが、本文の公式3 のキャンペーンの例で見たように、「どれくらいばらつくか」は表しません。データの分析と統計の分野(第6章 確率変数と確率分布)では、この章の確率変数を出発点に、期待値からのずれの大きさを表す分散を定め、定理6 と同じ考え方で「期待値から大きく外れる確率」をおさえる方法へ進みます。
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