問1
さいころを1個投げる試行で、「偶数の目が出る」事象を 、「 以下の目が出る」事象を とします。積事象 と和事象 を集合で表しなさい。
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,(,)
目次 / 場合の数と確率 / 数学A
—— 「または」は足して重なりを引き、「少なくとも」は裏側から数える ——
第5章では、条件に合う結果を1つずつ数えて確率を求めました。この章では、事象どうしを「かつ」「または」「でない」で組み合わせ、すでに分かっている確率から新しい確率を計算する方法を学びます。まず積事象・和事象・排反という言葉を決め、同時に起こらない事象の確率は足せばよいという加法定理を示します。重なりがあるときは第1章の包除原理と同じように重なりを引き、「少なくとも1つ」のように直接数えにくい事象は、起こらない側(余事象)から求めます。
第5章で、事象は全事象 の部分集合として表せることを見ました。集合どうしに共通部分や和集合があるように、事象どうしも組み合わせて新しい事象を作れます。
2つの事象 , について
「 または 」は、 と の少なくとも一方が起こること(両方起こる場合も含む)を表す。
さいころを1個投げる試行で、「偶数の目が出る」事象を 、「 以上の目が出る」事象を とします。
です。積事象は集合の共通部分、和事象は和集合そのものなので、第1章で描いたベン図がそのまま使えます。日常の「または」は「どちらか一方だけ」の意味で使うこともありますが、数学の「または」は両方の場合も含むことに注意しましょう。
遊園地の割引の条件を思い浮かべてください。「平日かつ午後3時以降の入場なら半額」は、2つの条件が両方そろったときだけ使える割引で、積事象にあたります。「誕生月または小学生以下なら無料」は、どちらか一方に当てはまれば使えて、両方に当てはまる人ももちろん無料です。こちらが和事象です。
「 と がともに起こる」が積事象 、「少なくとも一方が起こる」が和事象 で、どちらも集合の共通部分・和集合と同じものだということです。
から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードから1枚を引く試行で、「偶数の番号を引く」事象を 、「 の倍数の番号を引く」事象を とします。
(1) 積事象 と和事象 を集合で表しなさい。
(2) を求めなさい。
【解答】
(1) , です。両方に入っている番号を取り出して
少なくとも一方に入っている番号を小さい順に並べて
(2) カードの引き方は 通りで、これらは同様に確からしいです。 なので
とすると、 と を2回数えてしまいます。この重なりの扱いは、公式3 であらためて整理します。
さいころを1個投げるとき、「 の目が出る」と「偶数の目が出る」は同時には起こりません。このような2つの事象には名前がついています。
2つの事象 , が同時には起こらないとき、すなわち のとき、 と は互いに排反である(排反事象である)という。
と が互いに排反であるとき
が成り立つ。これを確率の加法定理という。3つ以上の事象でも、どの2つも互いに排反ならば、それぞれの確率を足せばよい。
なら、第1章の公式2 より です。両辺を で割ると、加法定理が得られます。第2章の和の法則(同時に起こらない場合の数は足す)を、確率の言葉で言いかえたものともいえます。
信号機の赤と青は、同時にはつきません。ある瞬間に赤である確率と青である確率が分かっていれば、「赤か青のどちらかがついている」確率は、2つを足すだけで求まります。重なる時間がないので、二重に数える心配がないからです。
確率の加法定理がとくに役に立つのは、「赤玉が 個または 個」のように、求めたい事象を互いに排反な場合に分けて、それぞれの確率を足すときです。
同時に起こらない(排反な)事象なら、「または」の確率はそれぞれの確率の和になるということです。
男子 人と女子 人の中から、くじで 人を選びます。男子が 人以上選ばれる確率を求めなさい。
【解答】
人から 人を選ぶ方法は 通りで、これらは同様に確からしいです。
「男子が 人以上」は、「男子 人」という事象 と「男子 人・女子 人」という事象 に分けられ、 と は互いに排反です。
加法定理より、求める確率は
途中の確率は約分せずに、分母をそろえたまま足すと計算が楽です。
と が同時に起こりうるときは、確率をそのまま足すと重なり を2回数えてしまいます。第1章の公式2 と同じように、重なりを1回分引きます。
任意の2つの事象 , について
3つの事象 ,, については
のときは となり、公式2 に一致する。
どちらの式も、第1章の と包除原理の両辺を で割ったものです。例題1 なら で、数え上げた結果と一致します。
スマートフォンのアラームで考えてみましょう。「平日の朝に鳴るアラーム」と「月曜の朝だけ鳴るアラーム」を両方設定すると、月曜の朝は2回鳴ります。1週間のうちアラームが鳴る日数を数えるとき、 日としてはいけません。月曜は両方に入っているので、1日分を引いて 日です。
重なりのある事象の「または」は、確率を足してから、2回数えた重なりの確率を1回分引けばよいということです。
から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードから1枚を引きます。番号が の倍数または の倍数である確率を求めなさい。
【解答】
カードの引き方は 通りで、これらは同様に確からしいです。「 の倍数」の事象を 、「 の倍数」の事象を とします。
余り より 、 より です。 は と の最小公倍数 の倍数なので、 余り より です。
の倍数でも の倍数でもない確率は、次の公式4 を使えば と求まります。
「 が起こらない」ことも1つの事象です。第1章の補集合と同じ考え方で、全体から を除いた部分として表せます。
事象 に対して、「 が起こらない」という事象を の余事象といい、 で表す。
と は互いに排反で、 だから
が成り立つ。
と は同時には起こらず、どちらか一方は必ず起こります。加法定理より となり、公式が得られます。第1章の公式3(全体から引く)を確率の言葉で書いたものです。
工場の検品を例にしましょう。ある製品の良品の割合が だと分かっていれば、不良品の割合は数えなくても です。「良品である」と「不良品である」は同時には起こらず、どちらか一方は必ず起こるからです。
「 が起こらない」確率は、 から「 が起こる」確率を引けば求まるということです。
赤玉 個と白玉 個が入った袋から、 個の玉を同時に取り出します。少なくとも1個が赤玉である確率を求めなさい。
【解答】
個の玉を区別すると、取り出し方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
「少なくとも1個が赤玉」という事象を とすると、余事象 は「 個とも白玉」です。白玉 個から 個を選ぶ方法は 通りなので
よって、求める確率は
を直接求めると、「赤 個」「赤 個」「赤 個」の3つに分けて足すことになります。 で同じ答えですが、余事象なら1つ数えるだけで済みます。
「少なくとも1つ」「 以上」「どちらでもない」のような事象は、直接数えると場合分けが多くなりがちです。こういうときは、余事象と、数と式の分野で学んだド・モルガンの法則を組み合わせます。
「少なくとも1つ起こる」の余事象は「1つも起こらない」である。
「 も も起こらない」の余事象は「 または が起こる」、「 と の少なくとも一方が起こらない」の余事象は「 と がともに起こる」である。
2つめの式は、ド・モルガンの法則 , に公式4 を使ったものです。「積が偶数」は「少なくとも1つが偶数」、「積が奇数」は「全部が奇数」と言いかえられるので、積の問題でもこの形がよく使われます。
目覚まし時計を3つかける場面を想像してください。どれか1つでも鳴れば起きられるので、「起きられる」を直接調べると、1つだけ鳴る場合、2つ鳴る場合、3つとも鳴る場合……と場合が多くなります。裏返して考えると、起きられないのは「3つとも鳴らない」ときだけです。こちらを調べて全体から除くほうがずっと簡単です。
「少なくとも1つ」は「1つもない」の裏側、「どちらでもない」は「または」の裏側として、余事象から求めると速いということです。
大中小3個のさいころを同時に投げます。
(1) 出る目の積が偶数である確率を求めなさい。
(2) 出る目の積が の倍数である確率を求めなさい。
【解答】
目の出方は全部で 通りあり、これらは同様に確からしいです。
(1) 積が偶数になるのは、少なくとも1個が偶数の目のときです。余事象は「3個とも奇数の目」で、その出方は 通りなので
(2) 積が の倍数になるのは、偶数の目と の目がどちらも少なくとも1個ずつ出るときです。「偶数の目が1個も出ない」事象を 、「 の目が1個も出ない」事象を とすると、求める事象は で、その余事象は です。
公式3 より
よって、求める確率は
「偶数も も出る」をそのまま数えようとすると、偶数が何個か・ が何個かで細かい場合分けが必要になります。余事象に移すと、「 または 」という公式3 の形に持ち込めます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
さいころを1個投げる試行で、「偶数の目が出る」事象を 、「 以下の目が出る」事象を とします。積事象 と和事象 を集合で表しなさい。
,(,)
問2
赤玉 個、白玉 個、青玉 個が入った袋から玉を1個取り出すとき、赤玉または白玉である確率を求めなさい。
(「赤玉」と「白玉」は互いに排反なので )
問3
4枚の硬貨を同時に投げるとき、少なくとも1枚は表が出る確率を求めなさい。
(余事象「4枚とも裏」は 通りのうち 通りなので )
問4
2つの事象 , について、,, のとき、 を求めなさい。
()
問5
から までの整数から1つを選ぶとき、 の倍数でない確率を求めなさい。
( の倍数は 余り より 個なので )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードから1枚を引きます。
(1) 番号が の倍数または の倍数である確率を求めなさい。
(2) 番号が の倍数でも の倍数でもない確率を求めなさい。
(1) (2)
カードの引き方は 通りで、これらは同様に確からしいです。「 の倍数」の事象を 、「 の倍数」の事象を とします。
(1) より 、 より です。 は と の最小公倍数 の倍数なので、 より です。
を の倍数としないように注意します。 は の倍数でも の倍数でもあります。
(2) 求める事象は で、その余事象は です。
問2 ★
赤玉 個、白玉 個、青玉 個が入った袋から、 個の玉を同時に取り出します。
(1) 個が同じ色である確率を求めなさい。
(2) 個が異なる色である確率を求めなさい。
(1) (2)
個の玉をすべて区別すると、取り出し方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 「 個とも赤」「 個とも白」「 個とも青」の3つの事象は、どの2つも同時には起こらないので互いに排反です。それぞれの取り出し方は
なので、加法定理より
(2) 「異なる色」は「同じ色」の余事象なので
直接数えると、赤白 、白青 、赤青 で 通りとなり、一致します。
問3 ★
大小2個のさいころを同時に投げます。
(1) 少なくとも一方のさいころで の目が出る確率を求めなさい。
(2) 出る目の和が 以上である確率を求めなさい。
(1) (2)
目の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「どちらのさいころも 以外の目」で、その出方は 通りです。
「大が 」の 通りと「小が 」の 通りを足して 通りとすると、 を2回数えてしまいます。公式3 で としても同じ答えです。
(2) 余事象は「和が 以下」です。和が になるのは 、和が になるのは , で、合わせて 通りです。
問4 ★
さいころを1個投げる試行で、「偶数の目が出る」事象を 、「 の倍数の目が出る」事象を 、「 でも でも割り切れない目が出る」事象を とします。
(1) 積事象 と和事象 を集合で表しなさい。
(2) ,, のうち、互いに排反である2つの事象の組をすべて求めなさい。
(3) を求めなさい。
(1) , (2) と , と (3)
事象を集合で表すと
です。
(1) 両方に入っている目は だけなので 、少なくとも一方に入っている目を並べて です。
(2) 共通部分を調べます。
共通部分が空集合になる組が互いに排反なので、 です。 と は の目が出たときに同時に起こるので、排反ではありません。
(3) 目の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。 なので
は の余事象 になっていて、 と確かめられます。
問5 ★
から までの数字が1つずつ書かれた 枚のカードから、 枚を同時に引きます。
(1) 少なくとも1枚が偶数である確率を求めなさい。
(2) 少なくとも1枚が 以上である確率を求めなさい。
(1) (2)
枚から 枚を引く方法は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「 枚とも奇数」です。奇数のカードは ,,,, の 枚なので、その引き方は 通りです。
(2) 余事象は「 枚とも 以下」です。 以下のカードは 枚なので、その引き方は 通りです。
問6 ★
2つの事象 , について、,, とします。
(1) を求めなさい。
(2) を求めなさい。
(3) を求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) を について解くと
(2) ド・モルガンの法則より なので
(3) は、互いに排反な ( と がともに起こる)と ( だけが起こる)に分けられます。加法定理より なので
確かめ:ベン図の4つの部分 ,,, の確率は ,,, で、合計は です。
問7 ★
男子 人と女子 人の中から、くじで 人を選びます。
(1) 男子と女子がどちらも少なくとも1人ずつ選ばれる確率を求めなさい。
(2) 男子のうちの特定の1人 と、女子のうちの特定の1人 について、 または が選ばれる確率を求めなさい。
(1) (2)
人から 人を選ぶ方法は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「 人とも男子」または「 人とも女子」で、この2つは互いに排反です。
よって求める確率は です。
(2) 「 が選ばれる」事象を 、「 が選ばれる」事象を とします。 は 以外の 人から残り 人を選ぶので 通り、 も同じく 通りです。 は , 以外の 人から残り 人を選ぶので 通りです。
余事象「 も も選ばれない」は 通りなので、 としても求められます。
問8 ★
5枚の硬貨を同時に投げます。
(1) 表が2枚以上出る確率を求めなさい。
(2) 表も裏も少なくとも1枚ずつ出る確率を求めなさい。
(1) (2)
5枚の硬貨を区別すると、表裏の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「表が 枚または 枚」です。表が 枚は 通り、表が 枚はどの硬貨が表かで 通りで、この2つは互いに排反なので
(2) 余事象は「5枚とも表」または「5枚とも裏」で、それぞれ 通りです。
問9 ★★
から までの整数から1つを選びます。
(1) 選んだ数が ,, の少なくとも1つで割り切れる確率を求めなさい。
(2) 選んだ数が ,, のどれでも割り切れない確率を求めなさい。
(1) (2)
選び方は 通りで、これらは同様に確からしいです。,, で割り切れる事象をそれぞれ ,, とします。
( 余り )。2つずつの積事象は、それぞれ ,, の倍数なので
( 余り , 余り )。3つの積事象は の倍数なので、 余り より です。
(1) 公式3 の3つの事象の場合を使います。分子の個数は
なので
(2) 求める事象は の余事象なので
このような数は 個のうち 個あります。
問10 ★★
大中小3個のさいころを同時に投げます。
(1) 出る目の最小値が である確率を求めなさい。
(2) 出る目の最小値が で、最大値が である確率を求めなさい。
(1) (2)
目の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 「最小値が 以上」は、3個とも 以上の目なので 通りです。「最小値が 以上」は 通りです。最小値が であるのは、「最小値が 以上」のうち「最小値が 以上」でないときなので
(2) 3個とも 以上 以下の目である出方( 通り)の中で、 の目も の目も少なくとも1個ずつ出るものを数えます。この 通りの中で、「 の目が出ない」事象を 、「 の目が出ない」事象を とすると
なので、求める出方は 通りです。
確かめ:目の組が , なら並べ方は 通りずつ、, なら 通りずつで、 通りです。
問11 ★★
本のうち当たりが 本入ったくじから、 本を同時に引きます。
(1) 少なくとも1本が当たりである確率を求めなさい。
(2) 当たりが2本以上である確率を求めなさい。
(1) (2)
本のくじをすべて区別すると、引き方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「 本ともはずれ」で、はずれ 本から 本を選ぶ 通りです。
(2) 余事象は「当たりが 本」または「当たりが 本」で、この2つは互いに排反です。当たりが 本の引き方は、当たり 本から 本、はずれ 本から 本を選んで
です。よって求める確率は
直接数えると、当たり 本は 通り、当たり 本は 通りで、 と一致します。
問12 ★★
,,,,, の 人が、くじで順番を決めて1列に並びます。
(1) が先頭であるか、または が最後尾である確率を求めなさい。
(2) が先頭でなく、 も最後尾でない確率を求めなさい。
(1) (2)
人の並び方は 通りで、これらは同様に確からしいです。「 が先頭」の事象を 、「 が最後尾」の事象を とします。
(1) は残り 人の並び方なので 通り、 も 通りです。 は先頭と最後尾が決まり、残り 人の並び方なので 通りです。
(2) 求める事象は で、その余事象は です。
(2) を直接数えると、先頭に 以外、最後尾に 以外を置く方法は、先頭が かどうかで分けて 通り、残り 人の並び方が 通りずつで 通りです。 と一致します。
問13 ★★
,, の3人が、 から までの整数の中から、それぞれ1つずつでたらめに選びます(ほかの人と同じ数を選んでもかまいません)。
(1) 少なくとも1人が を選ぶ確率を求めなさい。
(2) 少なくとも2人が同じ数を選ぶ確率を求めなさい。
(1) (2)
3人の選び方は重複順列で 通りあり、これらは同様に確からしいです。
(1) 余事象は「3人とも 以外を選ぶ」で、その選び方は 通りです。
(2) 余事象は「3人とも異なる数を選ぶ」で、その選び方は 通りです。
「少なくとも2人が同じ」を直接数えると、「ちょうど2人が同じ」と「3人とも同じ」に分けることになります。ちょうど2人が同じなのは、同じになる2人の選び方 通り × その数 通り × 残る1人の数 通りで 通り、3人とも同じは 通りで、合わせて 通りです。
問14 ★★
から までの数字が1つずつ書かれた 枚のカードから、 枚を同時に引きます。引いた2枚の数の和が偶数であるか、または積が の倍数である確率を求めなさい。
枚の引き方は 通りで、これらは同様に確からしいです。「和が偶数」の事象を 、「積が の倍数」の事象を とします。
求める事象 の余事象は、ド・モルガンの法則より 、つまり「和が奇数で、積が の倍数でない」です。
の倍数でないカードは ,,,,, で、このうち奇数は ,, の 枚、偶数は ,, の 枚です。よって の引き方は 通りです。
別解(公式3) は奇数2枚か偶数2枚なので 通りです。 の余事象は 通りなので は 通りです。 は、 の 通りから「和が偶数で の倍数を含まない」 通りを除いて 通りです。
問15 ★★
さいころを 回投げ、出た目をすべてかけ合わせます。
(1) 積が の倍数である確率を求めなさい。
(2) 積が の倍数である確率を求めなさい。
(1) (2)
1回目から4回目までの目の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。
(1) 積が の倍数になるのは、 または の目が少なくとも1回出るときです。余事象は「4回とも ,,, のどれか」で、 通りです。
(2) 積が の倍数になるのは、偶数の目と の倍数の目がどちらも少なくとも1回ずつ出るときです。「偶数の目が1回も出ない」事象を 、「 の倍数の目が1回も出ない」事象を とすると、求める事象の余事象は です。
なので、求める出方は 通りです。
の目が1回出れば偶数と の倍数を同時に満たすので、「 の目が少なくとも1回」だけを数えると足りません( と の目の組み合わせなども の倍数になります)。
問16 ★★
,,,,,,, の 人を、くじで 人ずつの 組に分けます。組に区別はないものとします。
(1) と が同じ組にならない確率を求めなさい。
(2) と が同じ組にならず、 と も同じ組にならない確率を求めなさい。
(1) (2)
人を 人ずつの区別のない 組に分ける方法は
で、これらは同様に確からしいです。「 と が同じ組」の事象を 、「 と が同じ組」の事象を とします。
(1) は、残りの 人を 人ずつの区別のない 組に分ける方法なので
です。求める確率は余事象を使って
の相手は 以外の 人のだれかで、どの人も同じように起こりうるので、 が相手になる確率は と考えることもできます。
(2) も 通りです。 は、残りの ,,, を 人ずつの区別のない 組に分ける方法なので 通りです。
求める事象は で、その余事象は なので
問17 ★★★
人の友人に宛てた 通の手紙と、宛名を書いた 枚の封筒があります。 通の手紙をでたらめに1通ずつ封筒に入れます。
(1) 少なくとも1通の手紙が正しい宛名の封筒に入る確率を求めなさい。
(2) ちょうど 通の手紙が正しい宛名の封筒に入る確率を求めなさい。
(1) (2)
手紙の入れ方は 通りで、これらは同様に確からしいです。 番目の手紙が正しい封筒に入る事象を ()とします。
(1) 求める確率は です。公式3 を5つの事象に広げた包除原理を使います。
足す・引くを交互にくり返して
よって求める確率は
余事象の「どの手紙も正しい封筒に入らない」入れ方は 通りです。
(2) 正しく入る 通の選び方が 通りです。残りの 通は、どれも正しくない封筒に入らなければなりません。 通の手紙 ,, をどれも自分の封筒に入れない入れ方は、,, と ,, の 通りです。
確かめ:ちょうど 通が正しい入れ方を の順に並べると、,,,,, で、合計は です。ちょうど 通は「正しい1通の選び方 通り × 残り 通がどれも正しくない 通り」、ちょうど 通は「残り 通が入れかわる」ので 通りです。 通が正しければ残りの1通も正しくなるので、ちょうど 通だけ正しいことはありません。
問18 ★★★
さいころを 回投げます。
(1) の目と の目がどちらも少なくとも1回ずつ出る確率を求めなさい。
(2) の目、 の目、 の目がどれも少なくとも1回ずつ出る確率を求めなさい。
(1) (2)
目の出方は 通りで、これらは同様に確からしいです。,, の目が1回も出ない事象をそれぞれ ,, とします。
は5回とも 以外の目なので 、 は5回とも 〜 の目なので 、 は5回とも 〜 の目なので です。, や他の2つの積事象も同じ個数です。
(1) 求める事象は で、その余事象は です。
なので、求める出方は 通りです。
(2) 求める事象は で、その余事象は です。3つの事象の包除原理より
なので、求める出方は 通りです。
約分は、,, を使いました。
問19 ★★★
から までの番号が1つずつ書かれた 枚の札から、 枚を同時に取り出します。
(1) 取り出した番号の最小値が 以下であるか、または最大値が 以上である確率を求めなさい。
(2) 取り出した番号の最小値が 以下で、かつ最大値が 以上である確率を求めなさい。
(1) (2)
枚の取り出し方は 通りで、これらは同様に確からしいです。「最小値が 以下」の事象を 、「最大値が 以上」の事象を とします。
余事象で考えます。 は「最小値が 以上」、つまり 枚とも 〜 の番号なので です。 は「最大値が 以下」、つまり 枚とも 〜 の番号なので です。 は 枚とも 〜 の番号なので です。
(1) の余事象は なので
(2) の余事象は です。
よって
確かめ: 〜 を「小」、 〜 を「中」、 〜 を「大」とすると、 は小と大を少なくとも1枚ずつ含む取り出し方です。小1・中1・大1が 通り、小2・大1が 通り、小1・大2が 通りで、合わせて 通りです。
問20 ★★★
ある試行における2つの事象 , について考えます。
(1) が成り立つことを示しなさい。
(2) 試行を「 から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードから1枚を引く」こととし、, をその結果についての事象とします。, のとき、 のとりうる値の範囲を、最大・最小となる例とあわせて求めなさい。
(1) 解説を参照 (2) (とりうる値は ,,,)
(1) 公式3 より
です。 も事象なので であり
移項して
が成り立ちます。(証明終)
(2) 引き方は 通りで、これらは同様に確からしいので、, です。
最小値 (1) より
たとえば , とすると で、 となります。
最大値 なので 、すなわち です。たとえば , とすると で、 となります。
は 以上 以下の整数で、どの値も のずらし方で実現できます。よって
です。カードは 枚なので、実際にとりうる値は ,,, の4つです。第1章の公式6(2つの分け方の表で、ますが 以上になる条件)と同じ考え方を、確率で表したものです。
17 世紀のフランスに、シュヴァリエ・ド・メレと名乗る文筆家がいました。社交界の人気者で、賭け事にも熱心だったといわれます。彼には、どうしても腑に落ちないことが1つありました(※どこまでが本人の経験で、どこからが後世の脚色かには諸説あります)。
賭け①は、続けていると少しずつもうかる。ところが賭け②は、少しずつ損をする。ド・メレの考えでは、2つは同じ条件のはずでした。 の目は 通りに 回、 のぞろ目は 通りに 回。 と は同じ比なので、有利さも同じになるはずだ――というのです。
1654 年、この相談を受けたパスカルは、フェルマーとの手紙のやりとりの中でこうした問題を論じました。この往復書簡は、確率論の出発点としてよく紹介されます。
この章の余事象を使えば、2つの賭けの違いははっきりします。賭け①の余事象は「 回とも 以外」で、 通りのうち 通りです。
賭け②の余事象は「 回ともぞろ目の 以外」で、同じように数えると
となります。賭け①は をわずかに上回り、賭け②はわずかに下回っていたのです。「少なくとも1回」の確率は回数に比例して増えるわけではないので、比が同じでも結果は同じになりません。回数を 回に増やせば、賭け②も ほどになって有利に変わります。
豆知識
パスカルとフェルマーの手紙で中心になったのは、実は「賭けを途中でやめたとき、賭け金をどう分けるか」という分配問題のほうでした。勝負の続きを最後まで行ったと考えて場合を数える発想は、第5章の小話で紹介したダランベールの話ともつながっています。
クラスに 人いるとき、同じ誕生日の人が少なくとも1組いる確率は、どのくらいだと思いますか。1年は 日もあるので、ほとんどそろわないように感じます。ところが、実際に計算すると約 で、半分を超えます。これは誕生日のパラドックスと呼ばれる有名な話です。パラドックスといっても矛盾があるわけではなく、直感と答えが大きくずれることからそう呼ばれています。
うるう年の 月 日は考えず、どの日に生まれることも同様に確からしいとします。ここでも余事象が活躍します。「少なくとも1組が同じ」の余事象は「 人全員の誕生日が異なる」で、その起こり方は 日から 日を選んで並べる順列です。
人数を増やすと、確率は次のように上がっていきます。
| 人数 | 30 人 | 40 人 | 50 人 | 70 人 |
|---|---|---|---|---|
| 同じ誕生日の組がある確率 | 約 71% | 約 89% | 約 97% | 約 99.9% |
直感とずれる理由は、「組」の数にあります。 人から 人を選ぶ組は 組もあり、そのどれか1組がそろえばよいのです。私たちはつい「自分と同じ誕生日の人がいるか」を考えてしまいますが、それは 組しか調べていないことになります。
豆知識
「自分と同じ誕生日の人が少なくとも1人いる」確率が半分を超えるには、自分以外に 人が必要です(余事象は「 人全員が自分と違う日」で、 が を超える最小の が )。偶然にも、23 人の中の組の数と同じ です。
天気予報で「午前の降水確率 、午後の降水確率 」と言われたら、その日のどこかで雨が降る確率はいくつでしょうか。
と足したくなりますが、それが正しいのは「午前に降る」と「午後に降る」が排反のとき、つまり午前に降ったら午後は決して降らないときだけです。実際には、午前から午後まで降り続く日もあります。公式3 のとおり
なので、重なり が分からなければ、1日の確率は決まりません。分かるのは範囲だけです。
つまり、1日のどこかで降る確率は 以上 以下のどこかです。重なりの確率は 以上で、午前・午後それぞれの を超えられないので、この範囲になります(実践 問20 の不等式は、 が負になるので、ここでは「 以上」以上のことを教えてくれません)。
気象庁の降水確率は、「予報の区域内で、予報の時間帯に ミリ以上の雨(または雪)が降る確率」を きざみで表したものです。「」は、同じような予報が 回出されたとき、およそ 回は ミリ以上降る、という意味です。雨の強さや、降る時間の長さを表しているわけではありません。
豆知識
降水確率の は「 未満」という意味で、絶対に降らないという意味ではありません( 以上 未満が になるように、四捨五入で表しています)。日本では、1980 年に東京地方で降水確率の予報が始まったとされます(※開始時期や地域の広がり方については資料によって書き方が違います)。
※ここは発展ページです。本文では、確率の加法定理や余事象の公式を、場合の数の公式(第1章)を で割ることで導きました。ここでは第5章の定義3(有限の確率分布)の上で、同じ公式を証明し直します。根元事象の起こりやすさがそろわない場合にも、この章の公式がすべて使えることが分かります。最後に、和事象の確率を上下から見積もる不等式を紹介します。
以下、 は空でない有限集合、 は 上の確率分布で、事象 の確率を
とします。すべての で のときが、本文の「同様に確からしい」場合です。
事象 , に対して、集合 ,, を、それぞれ と の積事象、和事象、 の余事象という。
のとき、 と は互いに排反であるという。事象 ,,…, は、 であるどの , についても のとき、互いに排反であるという。
3つ以上の事象が「互いに排反」というときは、どの2つをとっても同時に起こらないことを要求します。「3つが同時には起こらない」()だけでは足りません。たとえばさいころで ,, とすると、3つの共通部分は空ですが、どの2つも重なっています。
事象 ,,…, が互いに排反ならば
証明 とする。 の各要素 は、少なくとも1つの に属する。互いに排反だから、2つ以上の に属することはない。よって はちょうど1つの に属する。
右辺 の中で、各 の は、 の属するただ1つの のところで1回だけ足される。 に属さない は一度も足されない。したがって右辺は に等しい。(証明終)
同様に確からしい場合には、両辺に をかけると第1章 定理1(交わらない集合の個数は足せる)そのものになります。第5章 定理1 (3) の証明のあとで予告した「交わらない集合に分けて足す考え方」が、この定理です。
確率を「根元事象ごとの重み の和」と見ると、加法定理は「重なりのない部分に分けて足しても、全体の重みは変わらない」と言っているにすぎません。ロシアの数学者コルモゴロフは 1933 年、無限個の結果を持つ試行も含めて、この加法性(を無限個に広げたもの)を確率の出発点となる約束(公理)の1つに置きました。
任意の事象 , について、次が成り立つ。
(1)
(2)
(3) ならば 、とくに
証明 (1) と は互いに排反で、 である。定理1 より で、。
(2) で、右辺の2つは互いに排反である( と が交わらないから)。定理1 より 。
(3) のとき だから、(2) の と を入れかえた式 から得られる。確率は 以上なので である。(証明終)
(3) の後半は第5章 定理1 (3) と同じ主張ですが、ここでは がそろっていなくても成り立つことを示しました。実践 問10 (1) で使った「最小値が 」=「最小値が 以上」−「最小値が 以上」は、(3) で を「 以上」、 を「 以上」とした形です。
任意の事象 , について
証明 は、互いに排反な3つの事象 ,, に分けられる。定理1 と定理2 (2) より
(証明終)
個の事象についても、第1章 厳密定義の包除原理と同じ形が成り立ちます。
事象 ,…, に対し、 について
( 個ずつの積事象の確率を、選び方 通りすべてについて足したもの)とおくと
証明 各 について、右辺で が何回足されるか(引かれる分は負の回数として)を数える。
がちょうど 個の に属するとする。 が 個ずつの積事象に属するのは、その 個を の属する 個の中から選ぶときで、 回ある( なら 回)。よって右辺での の係数は
である。( がどの にも属さない)なら係数は 。 なら、二項定理 より、係数は である。
したがって右辺は、 に属する の をちょうど1回ずつ足したものであり、左辺に等しい。(証明終)
が本文の公式3 の後半で、実践 問17 は の場合です。同じ証明が第1章の個数の包除原理にも使われていたことを思い出してください。重みが「 個」から「」に変わっただけです。
積事象の確率が分からないときでも、和事象の確率を上下からはさむことはできます。
任意の事象 ,…, について
が成り立つ(右側の不等式をブールの不等式という)。また、任意の事象 , について
証明 左側:各 は和事象に含まれるので、定理2 (3) より 。
右側:右辺 では、和事象に属する各 の が、 の属する の個数( 以上)だけ足される。 だから、右辺は各 をちょうど1回ずつ足した 以上である。等号は、2つ以上の に属する の がすべて のとき(とくに互いに排反のとき)に成り立つ。
最後の式:定理3 と より、。(証明終)
小話で見た「午前 ・午後 なら1日では 以上 以下」は、 のこの定理です。ブールの不等式は、確率が小さい事象がたくさんあっても、「どれか1つでも起こる」確率はそれらの和で抑えられる、と言っています。統計の分野(データの分析と統計 第5章の厳密定義)で紹介した、検定をくり返すときに有意水準を検定の数で割る方法は、この不等式を根拠にしています。
最後の不等式は、実践 問20 (1) そのものです。 個に広げると となり、「失敗の確率がそれぞれ小さければ、全部うまくいく確率は に近い」ことを保証します(,…, にブールの不等式を使い、ド・モルガンの法則と定理2 (1) で書きかえれば得られます)。
この章の「排反」は、2つの事象が同時に起こらないという性質でした。第7章では、一方が起こったかどうかが他方の起こりやすさに影響しない、という独立の考え方を学びます。名前が似た場面で出てくるので混同しやすいのですが、, の事象 , が互いに排反なら、 が起こったと分かった瞬間に は起こりえなくなるので、むしろ強く影響し合っています。和事象の確率は排反なら「足す」、積事象の確率は独立なら「かける」――この対比を、第7章で確かめます。
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