第6章の最後に、「$2^{50}$ は何桁の数か」を見積もると予告しました。$2^{50}$ を最後まで掛け算するのは大変ですが、底が $10$ の対数(**常用対数**)を使えば、$\log_{10} 2 = 0.3010$ という 1 つの値から、桁数も、いちばん上の位の数字も分かります。この章では、常用対数の整数部分から**桁数**と**小数首位**(小数で初めて 0 でない数字が現れる位)を、小数部分から**最高位の数字**を読み取る方法を学び、「何年後に 10 倍を超えるか」のような不等式にも使います。指数関数・対数関数の分野の最終章です。
常用対数——10 を底にした対数
第6章の最後に予告した問いから始めます。
250 は何桁の数か
2 を 50 回掛ければ答えは出ますが、途中で 10 桁、15 桁と膨らんでいく数を手で掛け続けるのは現実的ではありません。210=1024 が 1000=103 に近いことから、250=(210)5 は 1015 くらい、と見当をつけることはできます。けれども「くらい」では、15 桁なのか 16 桁なのかが決まりません。
ここで役に立つのが、底を 10 にした対数です。私たちがふだん使う数の書き方(10 進法)は、位が 1 つ上がるごとに 10 倍になるしくみなので、「10 の何乗か」を表す log10 と相性がよいのです。
底が 10 の対数 log10N を、常用対数といいます。log1010=1,log10100=2,log101=0,log100.01=−2 のように、10 の累乗の常用対数は整数になります。
10 の累乗でない数の常用対数は、多くの場合、無理数です。昔から、1.00 から 9.99 までの数の常用対数を小数第 4 位まで並べた常用対数表が作られてきました。この章では、そこから次の値を借りてきます。
log102=0.3010,log103=0.4771
どちらも小数第 5 位を四捨五入した近似値です(本当は log102=0.30102999⋯)。この 2 つがあれば、第4章の積・商・累乗の公式で、ほかの数の常用対数も作れます。
5 は log105=log1010−log102=1−0.3010 と、10 を 2 で割って作るのがこつです。7 だけは 2 と 3 から作れないので、必要なときは log107=0.8451 を問題文で与えます。
さて、どんな正の数 N も、N=1.1×1015 や N=9.5×10−7 のように、「1 以上 10 未満の数 a」と「10 の累乗」の積で書けます。両辺の常用対数をとると
log10N=log10(a×10n)=n+log10a
1≦a<10 なので 0≦log10a<1 です。つまり、log10N の整数部分(n≦log10N<n+1 を満たす整数 n)が「10 の何乗か」を、小数部分(log10N−n)が「a がいくつか」を受けもっています。
log10N が負のときは、整数部分に注意します。−6.02 の整数部分は −6 ではなく −7 で、−6.02=−7+0.98 と、小数部分が 0 以上になるように分けます(第4章 j14 の −2.3→−3 と同じです)。
ヨーロッパのエレベーターには、地上の階を「0」と表示するものがあります。常用対数の整数部分は、この表示に似ています。1 以上 10 未満の数は 0 階、10 以上 100 未満は 1 階、1015 以上 1016 未満は 15 階。1 より小さい数は地下で、10−7 以上 10−6 未満は −7 階、つまり地下 7 階です。小数部分は、その階の床から天井までのどのあたりにいるかを表します。
常用対数は底が 10 の対数で、正の数を a×10n(1≦a<10)と書いたとき、整数部分が 10 の何乗かを、小数部分が a の大きさを表すということです。
例題1:常用対数の値
log102=0.3010,log103=0.4771 とします。
(1) log1012
(2) log105
(3) log100.006
上の各値を求めなさい。
【解答】
(1) 12=22×3 なので
log1012=2log102+log103=0.6020+0.4771=1.0791(2) 5=210 なので log105=1−log102=0.6990
(3) 0.006=6×10−3 なので
log100.006=log102+log103−3=0.7781−3=−2.2219(3) は整数部分が −3,小数部分が 0.7781 です。6×10−3 の「6」が小数部分に、「10−3」が整数部分に対応しています。
桁数——整数部分を見る
N が 3 桁の整数なら、100≦N<1000、つまり 102≦N<103 です。一般に、N が n 桁の正の整数であることは
10n−1≦N<10n
と同じです。常用対数は右上がりの関数(第5章 公式3)なので、各辺の常用対数をとっても不等号の向きは変わらず、n−1≦log10N<n となります。桁数は、常用対数の整数部分に 1 を足した数です。
いよいよ 250 です。
log10250=50log102=50×0.3010=15.05
15≦15.05<16 なので 1015≦250<1016 となり、250 は 16 桁の数です。実際、250=1125899906842624 で、数えると 16 桁あります。
整数部分が 15 なのに答えが 16 桁になるのは、100=1 が 1 桁、101=10 が 2 桁……と、1015 の時点ですでに 16 桁あるからです。
買い物で「1 万円台のイヤホン」と言えば、10000 円以上 20000 円未満のことです。桁数だけに注目するなら、もっと粗く「104 円以上 105 円未満=5 桁の値段」と区切ることもできます。常用対数の整数部分は、この「何桁台か」の区切りを一発で教えてくれる値札のようなものです。
正の整数の桁数は、常用対数の整数部分に 1 を足せば求まるということです。
例題2:桁数
log102=0.3010,log103=0.4771 とします。
(1) 340
(2) 1210
上の各数は何桁の数かを求めなさい。
【解答】
(1) log10340=40×0.4771=19.084
19≦19.084<20 より 1019≦340<1020 なので 20 桁
(2) log101210=10log1012=10×1.0791=10.791(log1012 は例題1(1))
10≦10.791<11 より 1010≦1210<1011 なので 11 桁
小数首位——負の整数部分を見る
今度は 1 より小さい数です。(21)20 を小数で書くと、小数点のあとに 0 がいくつも続きます。小数第何位に、初めて 0 でない数字が現れるでしょうか。この位を小数首位と呼ぶことがあります。
0.003 のように小数第 3 位に初めて 0 でない数字が現れる数は、0.001≦N<0.01、つまり 10−3≦N<10−2 を満たします。一般に、小数第 n 位に初めて 0 でない数字が現れることは
10−n≦N<10−(n−1)
と同じです。(21)20 の常用対数は
log10(21)20=−20log102=−20×0.3010=−6.02
−7≦−6.02<−6 なので 10−7≦(21)20<10−6。小数第 7 位に初めて 0 でない数字が現れます。実際、(21)20=0.00000095367⋯ です。
よくある間違いは、−6.02 を見て「小数第 6 位」と答えることです。−6.02 は −6 より小さいので、−6 と −5 の間ではなく、−7 と −6 の間にあります。
公式1のエレベーターで言えば、(21)20 は −7 階、つまり地下 7 階にいます。地下 1 階が小数第 1 位(0.1 以上 1 未満)、地下 2 階が小数第 2 位……と対応させると、地下 7 階は小数第 7 位です。表示が −6.02 でも、床の位置(整数部分)は −7 だということを忘れなければ間違えません。
1 より小さい正の数では、常用対数の整数部分が −n のとき、小数第 n 位に初めて 0 でない数字が現れるということです。
例題3:小数首位
log102=0.3010,log103=0.4771 とします。
(1) 0.310
(2) 0.065
上の各数を小数で表したとき、小数第何位に初めて 0 でない数字が現れるかを求めなさい。
【解答】
(1) log100.3=log103−1=−0.5229 なので
log100.310=10×(−0.5229)=−5.229−6≦−5.229<−5 より 10−6≦0.310<10−5 なので 小数第 6 位
(2) log100.06=log106−2=0.7781−2=−1.2219 なので
log100.065=5×(−1.2219)=−6.1095−7≦−6.1095<−6 より 小数第 7 位
最高位の数字——小数部分を見る
桁数が分かったら、次は「いちばん上の位の数字は何か」です。これには小数部分を使います。
N=a×10n(1≦a<10)と書いたとき、N の最高位の数字は a の整数部分です。たとえば a=1.12⋯ なら 1,a=3.65⋯ なら 3。最高位の数字が k であることは k≦a<k+1 と同じで、各辺の常用対数をとると
log10k≦log10a<log10(k+1)
となります。log10a は log10N の小数部分でした。つまり、小数部分が log101,log102,……,log1010 の目盛りのどの区間に入るかで、最高位の数字が決まります。
250 なら、log10250=15.05 の小数部分は 0.05 です。
log101=0≦0.05<0.3010=log102
なので 1≦a<2、最高位の数字は 1 です。250=1125899906842624 の先頭は、たしかに 1 になっています。
目盛り log101, log102, …, log1010 は等間隔ではありません。図のように、1 の区間(幅 0.3010)がいちばん広く、9 の区間(幅 1−0.9542=0.0458)がいちばん狭くなっています。
本棚に、幅がばらばらの仕切りが 9 つあるところを想像してください。左端の「1」の仕切りは広く、右へ行くほど細くなっています。常用対数の小数部分は「棚の左端から何 cm のところに本を置くか」で、置いた位置がどの仕切りの中に入ったかを読めば、最高位の数字が分かります。仕切りの位置(log10k の値)さえ覚えておけば、中身を開かなくても分類できるわけです。
最高位の数字は、常用対数の小数部分が log10k≦α<log10(k+1) のどの区間に入るかで決まるということです。
例題4:最高位の数字
log102=0.3010,log103=0.4771 とします。
(1) 620 は何桁の数か、また、その最高位の数字を求めなさい。
(2) (21)20 を小数で表したとき、初めて現れる 0 でない数字を求めなさい。
【解答】
(1) log10620=20×0.7781=15.562
整数部分が 15 なので 16 桁。小数部分 0.562 は
log103=0.4771≦0.562<0.6020=log104なので、最高位の数字は 3 です(実際 620=3656158440062976)。
(2) log10(21)20=−6.02=−7+0.98
小数部分は 0.98 で、log109=0.9542≦0.98<1 なので、初めて現れる 0 でない数字は 9 です(0.00000095367⋯)。
(2) で −6.02 の「0.02」を小数部分と読むと、1 の区間に入って間違えます。負の数は、必ず 0 以上の小数部分が残るように分けます。
常用対数を使う不等式——「初めて超える」と桁数の条件
「毎年 1.2 倍に増えるものが、初めて 10 倍を超えるのは何年後か」という問いは、1.2n>10 を満たす最小の自然数 n を求める問題です。両辺の常用対数をとると(両辺は正で、底 10>1 なので向きはそのまま)
nlog101.2>1
log101.2=log101012=1.0791−1=0.0791 は正なので、両辺を割って n>0.07911=12.6⋯。最小の自然数は n=13 です。
割る数 log100.9=−0.0458 のように負の数で割るときは、不等号の向きが逆になります。第6章 例題2 と同じく、式の見た目ではなく値の正負を確かめてから割りましょう。
桁数から逆に n の範囲を決める問題もあります。「3n が 10 桁の数になる」なら、公式2から
9≦nlog103<10
で、これを満たす自然数 n を探します。
マラソンのコースには 1 km ごとに距離の標識が立っています。「スタートから 12.6 km の地点を初めて越えるのは、何本目の標識か」と聞かれたら、12.6 本目という標識は無いので、13 本目です。n>12.6⋯ から最小の自然数 13 を選ぶのは、この数え方と同じです。
an についての不等式は、両辺の常用対数をとって log10a の正負に注意しながら割り、自然数 n の範囲を読み取ればよいということです。
例題5:常用対数を使う不等式
log102=0.3010,log103=0.4771 とします。
(1) ある量が 1 年ごとに 1.2 倍に増えるとき、初めてもとの量の 10 倍を超えるのは何年後かを求めなさい。
(2) 3n が 10 桁の数となるような自然数 n をすべて求めなさい。
【解答】
(1) n 年後の量はもとの 1.2n 倍なので、1.2n>10 を満たす最小の自然数 n を求めます。両辺の常用対数をとって
nlog101.2>1,log101.2=2log102+log103−1=0.07910.0791>0 なので n>0.07911=12.64⋯。最小の自然数は 13 なので 13 年後
(確かめ:1.212=8.91⋯,1.213=10.69⋯)
(2) 109≦3n<1010 なので、常用対数をとって
9≦0.4771n<10,18.86⋯≦n<20.96⋯n=19, 20(確かめ:319=1162261467,320=3486784401 はどちらも 10 桁)
この章のまとめ——整数部分は「位」、小数部分は「数字」
これで指数関数・対数関数の分野は終わりです。第1章で「電卓の ×a ボタンを押す回数」として指数を広げ、第4章でその回数を逆に問う対数を作り、第5章・第6章でグラフと方程式・不等式を扱い、最後に底を 10 にして大きな数の姿を読み取りました。数学IIIの微分では、底を 10 ではなく e=2.718⋯ という特別な数にした対数(自然対数)が主役になり、ここで学んだ対数の性質がそのまま道具として使われます。
ブリッグズの常用対数表と、計算尺の目盛り
第4章の小話で、ネイピアが 1614 年に対数を発表した話をしました。この発表に強く心を動かされたのが、ロンドンの数学教授ヘンリー・ブリッグズです。ブリッグズは 1615 年、はるばるスコットランドのネイピアを訪ね、「1 の対数を 0、10 の対数を 1 にしたほうが使いやすい」と話し合ったと伝えられています(※会話の中身には諸説あり)。10 進法で書いた数と相性のよい、底 10 の対数、つまり常用対数の出発点です。
ネイピアは 1617 年に亡くなり、仕事はブリッグズが引き継ぎました。1617 年に 1 から 1000 までの常用対数表を、1624 年の『対数算術』では 1 から 20000 までと 90000 から 100000 までを、なんと小数第 14 位まで計算して出版しています。あいだの抜けていた部分は、1628 年にオランダのフラックが埋めました。電卓の無い時代に、この表が天文学者や航海士の掛け算を支えたのです。
対数表と並んで活躍したのが計算尺です。この章の図のように、ものさしに log101, log102, … の位置で 1, 2, … の目盛りを打ちます。すると目盛り 2 までの長さは log102、目盛り 3 までの長さは log103 です。こういうものさしを 2 本用意し、片方の 1 をもう片方の 2 に合わせてすべらせると、長さが足し算されて log102+log103=log106、つまりもう片方のものさしの目盛り 6 の位置に答えが現れます。掛け算を「長さの足し算」に変える道具で、1620 年ごろにガンターが対数目盛りのものさしを、その少しあとにオートレッドが 2 本をすべらせる形を考えたとされます(※諸説あり)。
豆知識
昔の教科書では、常用対数の整数部分を指標、小数部分を仮数と呼んでいました。常用対数表に載っているのは仮数だけです。指標は桁数を見れば分かるので、1.00 から 9.99 までの表が 1 冊あれば、2340 でも 0.0234 でも同じ行(2.34 の行)を引けばよかったのです。
先頭に「1」が多いのはなぜ?——ベンフォードの法則
1881 年、天文学者のサイモン・ニューカムは、図書館の対数表の最初のほうのページ、つまり 1 で始まる数のページばかりが手あかで汚れていることに気づきました。世の中で計算に使われる数は、1 で始まるものが多いのではないか。1938 年には物理学者のフランク・ベンフォードが、川の流域面積や町の人口、物理定数など 2 万件あまりのデータを調べ、同じ傾向を確かめました。
ベンフォードの法則によると、最高位の数字が d である割合は
log10(1+d1)=log10(d+1)−log10dです。d=1 なら log102=0.301 で約 30%、d=9 なら 1−log109=0.046 で約 5%。「どの数字も 91 ずつ」ではないのです。
この式、どこかで見覚えがありませんか。この章の図で、0 から 1 までを log10k の目盛りで仕切ったときの、各区間の幅そのものです。常用対数の小数部分が 0 から 1 までにまんべんなく散らばるようなデータなら、最高位の数字は区間の幅の割合で現れます。いちばん広い 1 の区間に入る数が最も多くなるわけです。
2n の最高位を n=1 から順に並べると、2, 4, 8, 1, 3, 6, 1, 2, 5, 1, … となります。n=1 から 100 までの 100 個で数えると、1 で始まるものは 30 個、9 で始まるものは 5 個で、法則の予想(約 30 個と約 5 個)とよく合います。
豆知識
作り話の数字は、人が「ばらけるように」考えるので、ベンフォードの法則からずれやすいといわれます。この性質を利用して、会計データの不自然さを見つける手がかりにする方法が研究されています。ただし、電話番号や身長のように範囲が決まっている数には当てはまりません。
デシベル——10 倍を「10 足す」に変える単位
第5章の小話で、人の感覚は刺激の「差」ではなく「比」に反応する、というウェーバー・フェヒナーの法則を紹介し、デシベルの話を予告しました。
音の強さ(1 平方メートルあたりのエネルギー)は、人がやっと聞き取れる音から、そばで聞くジェット機の音まで、1 兆倍以上も開きがあります。これをそのまま数字で書くと桁が多すぎて扱いにくいので、基準の強さ I0 に対して
L=10log10I0I[dB]と常用対数で表します。これがデシベルです。音の強さが 10 倍になると L は 10 増え、100 倍なら 20 増えます。掛け算の世界を、足し算の目盛りに変えているわけです。
では、同じ音を出すスピーカーを 2 台にすると、何デシベル増えるでしょう。強さは 2 倍なので、増える量は 10log102=10×0.3010≒3 デシベルです。2 台で「2 倍の 120 dB」にはならず、60 dB が 63 dB になる程度なのです。ふつうの会話が約 60 dB、電車の車内が約 80 dB と言われるので(※場所や測り方で幅があります)、80 dB は会話の 100 倍の強さの音です。
名前の「ベル」は電話の発明で知られるグラハム・ベルにちなんだ単位で、その 101 を表す「デシ」を付けたのがデシベルです。
豆知識
水溶液の酸性・アルカリ性を表す pH も常用対数です。水素イオンの濃度を [H+] とすると pH=−log10[H+]。中性の水が pH 7 で、pH が 1 小さくなると水素イオンの濃さは 10 倍になります。レモン汁(pH 2 くらい ※目安)は、中性の水より水素イオンが約 105 倍、つまり 10 万倍濃いことになります。
※ここは発展ページです。本文では「整数部分に 1 を足すと桁数」「小数部分で最高位の数字」を公式として使いました。ここでは、整数部分と小数部分を正確に定義し、正の数が a×10n の形にただ 1 通りに書けることから、これらの公式を証明します。最後に、log102=0.3010 という近似値で桁数を決めてよいのはどんなときかを考えます。
定義1:整数部分と小数部分
実数 x に対して、n≦x<n+1 を満たす整数 n はただ 1 つ存在する。この n を x の整数部分といい、[x] で表す(ガウス記号)。また、x−[x] を x の小数部分という。小数部分はつねに 0≦x−[x]<1 を満たす。
たとえば [15.05]=15,[−6.02]=−7 です。「n がただ 1 つ存在する」ことは、整数が 1 刻みで数直線を区切っていること(実数の性質)として認めます。本文の「−6.02=−7+0.98 と分ける」は、この定義にしたがった分け方です。
定理1:
a×10n の形の存在と一意性
正の数 N は
N=a×10n(1≦a<10, n は整数)の形にただ 1 通りに表せる。このとき n=[log10N],log10a=log10N−n(log10N の小数部分)である。
証明 (存在)n=[log10N],α=log10N−n とおくと、定義1より 0≦α<1。a=10α とおくと、指数関数 10x は単調に増加するので 100≦10α<101、すなわち 1≦a<10。さらに
a×10n=10α+n=10log10N=N(一意性)N=a×10n=b×10m(1≦a<10,1≦b<10,n,m は整数)とする。常用対数をとると log10N=n+log10a=m+log10b で、0≦log10a<1,0≦log10b<1 なので、n も m も「log10N 以下で差が 1 未満の整数」、つまり log10N の整数部分である。定義1の一意性から n=m。すると a=10nN=b である。(証明終)
理科で使う 6.02×1023 のような書き方(指数表記)が、どんな正の数にも 1 通りに決まるのは、この定理のおかげです。
正の整数 N が「d 桁である」とは、10 進法で書いたときの 0 でない最も上の位が 10d−1 の位であること、すなわち 10d−1≦N<10d であることをいいます。
定理2:桁数・小数首位・最高位の数字
- 正の整数 N の桁数は [log10N]+1 である。
- 0<N<1 で [log10N]=−m のとき、N を小数で表すと、小数第 m 位に初めて 0 でない数字が現れる。
- 正の数 N の最高位の数字(0<N<1 なら初めて現れる 0 でない数字)を k とすると、log10N の小数部分 α について log10k≦α<log10(k+1) である。
証明 定理1で N=a×10n(1≦a<10,n=[log10N])と表す。
- N が d 桁 ⟺10d−1≦N<10d⟺d−1≦log10N<d(常用対数の単調性)⟺[log10N]=d−1。よって d=[log10N]+1。
- 10−m≦N<10−m+1 なので、N は 0.m−1 個0⋯01 以上、0.m−2 個0⋯01 未満である。前者より小数第 m 位までに 0 でない数字が現れ、後者より小数第 m−1 位までは 0 である。
- N=a×10n の 0 でない最も上の位の数字は、a の整数部分 k である(10n を掛けても数字の並びは変わらない)。k≦a<k+1 の各辺の常用対数をとって log10k≦log10a<log10(k+1)。定理1より log10a=α である。(証明終)
本文の公式2〜4は、この定理を表の値で使ったものです。
補足:近似値で桁数を決めてよいのはいつか
本文では log102=0.3010 として計算しましたが、これは小数第 5 位を四捨五入した値なので、本当の値について分かっているのは
0.30095≦log102<0.30105
だけです。250 なら、50log102 は 15.0475 以上 15.0525 未満。どちらの端でも整数部分は 15 なので、「16 桁」は近似値でも確実に正しい答えです。
ところが 2196 ではどうでしょう。
196×0.3010=58.996
これを信じると整数部分は 58 で「59 桁」になります。しかし誤差まで考えると、196log102 は 58.986⋯ 以上 59.005⋯ 未満のどこかで、59 をまたいでしまいます。本当の値は 196×0.30102999⋯=59.0018⋯ で、2196=1.0043⋯×1059 は 60 桁です。近似値 0.3010 は、この問題には粗すぎたのです。
一般に、nlog102 を近似値で計算した結果が整数に近すぎるとき(誤差 n×0.00005 の幅の中に整数が入るとき)は、その近似値では桁数を決められません。入試や教科書の問題は、そういう数を避けて作られています。実践 j20 で 134 という粗い上からの評価でも 2100 の桁数が決まったのも、30.76⋯ が 31 に届かないという「整数をまたがない」ことを確かめたからでした。近似値で答えを出すとき、数学が本当に保証しているのは「幅のある範囲」だということを覚えておくと、計算の結果を正しく疑えるようになります。