問1
の値を求めなさい。
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目次 / 指数関数・対数関数 / 数学II
—— 「同じ数を何回掛けたか」を、0 回・マイナス回・半端な回数へ広げる ——
指数関数・対数関数の分野の最初の章です。中学までの $2^3$ は「2 を 3 回掛ける」という意味でした。この意味のままでは、$2^0$ や $2^{-1}$、$2^{\frac{1}{2}}$ は「0 回掛ける」「マイナス 1 回掛ける」「半分だけ掛ける」となって、何のことか分かりません。この章では、指数法則(掛け算が指数の足し算になる規則)が壊れないように、という 1 つの方針だけを頼りに、指数を 0、負の整数、分数(有理数)へと順に広げていきます。途中で「$n$ 乗すると $a$ になる数」=累乗根 $\sqrt[n]{a}$ を導入し、その性質と大小の比べ方も扱います。最後に $2^{\sqrt{2}}$ のような無理数の指数にも触れ、第2章の指数関数 $y = a^x$ のグラフへの準備を整えます。
を 個掛けたものを と書き、「 の 乗」と読みます。 を底(てい)、右上の小さな を指数といいます。 をまとめて の累乗と呼びます。中学からおなじみの記号ですが、この章ではこの「指数」を 0、マイナス、分数へと広げていくので、まず出発点をはっきりさせておきます。
は「 を 3 個」と「 を 4 個」を並べて掛けたものなので、 は全部で 個。 は「 を 3 個」のかたまりを 4 つ掛けるので 個。掛け算の問題が、個数(指数)の足し算・掛け算に変わる——これが指数法則です。
, を正の整数とするとき
また で のとき、。
電卓の「」ボタンを思い浮かべてください。 から始めて「」を 3 回押すと 、続けて 4 回押すと です。押した回数を足せば結果が分かる、というのが 1 つ目の式。「3 回押す」を 1 セットにして 4 セット繰り返すと 12 回、というのが 2 つ目の式です。この章では、指数を「 ボタンを押した回数」と読むことにします。
指数法則とは、同じ底の累乗どうしの掛け算・累乗を、指数(掛けた回数)の足し算・掛け算に置きかえる規則だということです。
(1)
(2)
(3)
上の各式を計算した結果を求めなさい。
【解答】
(1) 指数を足して
(2) 指数を掛けて
(3) 3 つ目の法則で、かっこの中の 1 つ 1 つを 3 乗します。
(3) で としてしまうのはよくある間違いです。係数の も 3 乗されることを忘れないようにしましょう。
「 を 0 個掛ける」「 を 個掛ける」は、そのままでは意味がありません。そこで方針を 1 つだけ決めます。指数法則 が、指数が 0 や負の数でも成り立つように決める。
まず 。 でなければならないので、 は「掛けても変わらない数」、つまり です。次に 。 でなければならないので、 は「 に掛けると になる数」、つまり です。 で並べると、指数が 1 減るたびに値が半分になっていく様子が見えます。
表を右へ進むたびに で割っています。, は、この「割り算の階段」をそのまま下りた先の値で、無理に決めた値ではありません。
, を正の整数とするとき
こう決めると、公式1の指数法則は , が任意の整数のときにそのまま成り立つ。割り算も と、大小の区別なく 1 本で書ける。
電卓の例えでいえば、 は「 ボタンを 1 回も押さない」ので、最初の のまま。 は「 を 回押す」、すなわち取り消しの「」を 3 回押すことです。押す回数がマイナスなら、逆のボタンを押せばよいわけです。 の条件は、 では割れないことから来ています( や は考えません)。
, は、指数法則が 0 や負の指数でも成り立つように決めた値で、「指数が 1 減るごとに で割る」階段を下りた先の値だということです。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
【解答】
(1)
(2)
(3)
(4) 指数法則が整数全体で使えるので、指数だけを先に計算します。
(4) を と分数で計算しても になります。指数のまま計算したほうが、分数の割り算を避けられて楽です。
次は分数の指数ですが、その前に道具を 1 つ用意します。 乗して になる数が の平方根でした。これを 乗に広げます。
を 2 以上の整数とするとき、 乗すると になる数、つまり を満たす を の 乗根といいます。2 乗根(平方根)、3 乗根(立方根)、4 乗根、……をまとめて累乗根と呼びます。この分野では、数はすべて実数の範囲で考えます。
乗根がいくつあるかは、 のグラフと横線 の交点の数で分かります。
が偶数のとき、 のグラフは と同じく 軸について対称な谷形です。正の には正と負の 2 つの 乗根があり、負の には 乗根がありません。 が奇数のとき、グラフは と同じく左下から右上へ上がり続けるので、 が正でも負でも 乗根はただ 1 つです。
を 2 以上の整数とする。
体積が の立方体の一辺は です。「一辺を 3 乗して体積を出す」計算を逆向きにたどって、体積から一辺を取り戻す——それが 3 乗根 です。 乗根は、 乗という操作の巻き戻しボタンだといえます。
偶数乗根で注意したいのは、 が「正のほう」だけを指すことです。 の 4 乗根は と の 2 つですが、 と書けば だけを表します。そのため、 となり、 には戻りません。偶数乗根で巻き戻すと符号の情報は消えて、 が出てきます。
は「 乗すると になる数」で、 が偶数なら正の に対して正のほうを、 が奇数なら正負どちらの にもただ 1 つあるものを表すということです。
(1) の値を求めなさい。
(2) の値を求めなさい。
(3) の値を求めなさい。
(4) の 4 乗根をすべて求めなさい。
【解答】
(1) なので
(2) で、 は正のほうなので
(3) なので (3 は奇数なので負の数の 3 乗根もあります)
(4) を満たす実数は と の 2 つなので
(2) と (4) の違いが大事です。「 の 4 乗根」は 2 つ、「」は 1 つ。平方根で「 の平方根は 、」と区別したのと同じです。
のような平方根の計算規則は、累乗根でもそのまま成り立ちます。どれも「両辺を 乗して比べる」と確かめられます。たとえば を 3 乗すると なので、 は「3 乗して 8 になる正の数」、つまり です。
,,,, を正の整数とするとき(根号の添え字 ,, は 2 以上)
根号の中を素因数分解して「 個そろった組」を外に出す、というのが実際の使い方です。 は、 が 3 人 1 組のチームを作れたので外へ出られ、組になれなかった は根号の中に残った、と読めます。平方根では 2 人 1 組、3 乗根では 3 人 1 組、というだけの違いです。最後の式 は、分数の約分と同じ形をしています()。
累乗根の性質は、両辺を 乗すれば確かめられる平方根の規則の延長で、根号の中の 個そろった因数を外へ出したり、添え字と指数を約分したりできるということです。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
【解答】
(1)
(2)
(3) 。 と見て、
(4)
(4) は内側から , と計算しても同じです。
いよいよ分数の指数です。方針は同じで、指数法則 が分数の指数でも成り立つように決めます。
を 3 乗すると、指数法則が成り立つなら 。つまり は「3 乗すると になる数」でなければなりません。それはちょうど前の節の です。同じように と決まります。
1 時間ごとに数が 2 倍に増える細菌を考えます。1 時間後は 倍、2 時間後は 倍、1 時間前は 倍。では 30 分後は何倍でしょう。30 分で 倍になるなら、30 分を 2 回で 1 時間なので 、つまり 倍です。「1 時間 = 指数 1」とすると、30 分後は指数 で、。電卓の「」ボタンを半分だけ押すとは、2 回押すと「」1 回分になるボタン「」を 1 回押すことだったのです。
, を整数, を正の整数とするとき
こう決めると、,,, が任意の有理数のとき
が成り立つ。
底を に限るのは、負の底では困ったことが起こるからです。 と決めたくなりますが、 なので とも計算できてしまい、同じはずの値が食い違います(厳密定義の補足)。そこで分数の指数は、底が正のときだけ考えます。
小数の指数は分数に直せば同じです。。計算では、 より の順に「先に根号、あとで累乗」とすると数が小さく済みます。
は、指数法則が分数の指数でも成り立つように決めた値で、底が正なら有理数の指数でも指数法則がそのまま使えるということです。
(1) の値を求めなさい。
(2) の値を求めなさい。
(3) の値を求めなさい。
(4) とします。 を簡単にした式を求めなさい。
【解答】
(1)
(2)
(3) です。負の指数で分数がひっくり返るので
(4) 累乗根をすべて指数に直して、指数の足し引きにします。
(4) のように、添え字の違う累乗根が混じった計算は、指数に直すと分数の足し算になるだけで済みます。これが有理数の指数を使う最大の利点です。
,, はどれがいちばん大きいでしょう。電卓なしでは、どれも小数で書き出しにくい数です。ここで使うのは「正の数どうしなら、大きいほうを 乗しても大きいまま」という性質です。
,, を正の整数とするとき
添え字の違う累乗根は、添え字の最小公倍数の回数だけ累乗して、根号を外してから比べる。
これは分数の大小を比べるときの通分と同じ発想です。 と を比べるときは、分母を にそろえて と にしました。累乗根では添え字が分母の役をしていて、添え字の最小公倍数だけ累乗すると全員が整数になり、比べられるようになります。
累乗根の大小は、添え字の最小公倍数の回数だけ累乗して根号を外し、整数どうしで比べればよいということです。
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
【解答】
添え字 ,, の最小公倍数は なので、それぞれを 6 乗します。
で、どれも正の数なので、6 乗する前も同じ順です。
指数で書くと 。底も指数もばらばらなので、そろえる操作が欠かせません。
有理数の指数まで広げると、残るは のような無理数の指数です。 を小数で近づけていくと
はどれも有理数の指数なので値が決まり、,,, と、ある 1 つの値に近づいていきます。その行き先を と決めます。定規の目盛りを 1 mm、0.1 mm、0.01 mm と細かくしていくと、目盛りのあいだにある点の位置もどんどん正確に言えるようになる——それと同じで、有理数という細かい目盛りで無理数の指数を挟み込むのです。
のとき、任意の実数 に対して の値がただ 1 つ定まり、,,, が実数のとき
が成り立つ。とくに で、。
これで にどんな実数を入れても が決まることになり、第2章では を「 の関数」として、グラフを描いて調べます。この章の範囲では、指数に文字 が入っていても、指数法則でまとめて計算できれば十分です。
よく出る計算に、 の形があります。 なので、 と は「掛けると 1 になるペア」。 の計算と同じく、2 乗すると真ん中の項が定数になります。
底が正なら指数は実数全体に広がり、指数法則もそのまま使えるので、 のような式は「掛けると 1 のペア」として 2 乗・3 乗して計算できるということです。
(1) の値を求めなさい。
(2) の値を求めなさい。
(3) , のとき、 の値を求めなさい。
【解答】
(1) 指数を足すと なので
(2) 指数を掛けると なので
(3) 両辺を 2 乗します。 なので
したがって
(3) で そのものを求めると とおいて 、 から 、 となります。 のとき なので、たしかに和は 。 を求めずに、ペアの性質だけで答えまで行けるのがこの計算のよいところです。
| 段階 | 指数 | 決め方 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 出発点 | 正の整数 | を 個掛ける | なし |
| 第 1 段 | ,負の整数 | , | |
| 第 2 段 | 有理数 | ||
| 第 3 段 | 実数 | 有理数の指数で近づけた行き先 |
どの段階でも、決め方の理由は「指数法則が成り立ち続けるように」の 1 つだけでした。「掛けた回数」という最初の意味は途中で通用しなくなりましたが、指数法則という計算の規則のほうを守ることで、指数は実数全体へと広がりました。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
の値を求めなさい。
()
問2
の値を求めなさい。
(。3 は奇数なので負の数の 3 乗根もある)
問3
の値を求めなさい。
(。 は正のほう)
問4
の値を求めなさい。
()
問5
とします。 を の形で表しなさい。
(指数を足して )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
公式2の , を使います。
(1) 底が何であっても( 以外なら)0 乗は です。
(2)
(3) 。負の指数は「逆数」にするだけで、値の符号を変えるわけではありません。 は正です。
(4) 。分数の負の指数は「ひっくり返して正の指数」と覚えると速く、 です。
問2 ★
, とします。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式を、負の指数を使わない形で表しなさい。
(1) (2) (3) (4)
指数法則は整数全体で成り立つので、指数だけを計算してから、最後に負の指数を分数に直します。
(1)
(2)
(3) 。負の指数で割ることは、正の指数を掛けることと同じです。
(4) かっこの中の 1 つ 1 つを 乗します。
問3 ★
(1)
(2)
(3)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3)
底がそろっているので、指数だけを先に計算します。
(1)
(2)
(3) なので
問4 ★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
「何を 乗するとその数になるか」を探します。偶数乗根は正のほうだけを答えます。
(1) 。5 は奇数なので負の数の 5 乗根もあり、
(2) なので ()
(3) なので
(4) なので ( も 6 乗すると ですが、 は正のほうです)
問5 ★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
公式4で 1 つの根号にまとめてから値を出します。
(1)
(2)
(3) 。 と見ても、 から を と約分して としても同じです。
(4) 。(,)なので
問6 ★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
で、先に根号、あとで累乗の順に計算します。
(1)
(2)
(3) なので、負の指数でひっくり返して
(4) ひっくり返して
問7 ★
とします。
(1) を の形で表しなさい。
(2) を の形で表しなさい。
(3) を根号を使った形で表しなさい。
(4) を根号を使った形で表しなさい。
(1) (2) (3) (4)
(根号の添え字が分母、中の指数が分子)です。
(1)
(2) で、逆数なので指数にマイナスを付けて
(3) 分母 が添え字、分子 が中の指数で ( でも正解)
(4)
問8 ★
(1)
(2)
(3)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3)
底をそろえてから指数を足し引きします。
(1)
(2) なので 。
(3) なので 。
問9 ★★
(1)
(2)
上の各式を簡単にした結果を求めなさい。
(1) (2)
(1) 添え字がばらばらなので、指数に直してまとめます。 です。
指数 を「整数部分 + 残り 」に分けると、根号の外に出る部分と中に残る部分が分かります。
(2) 足し算・引き算は指数法則ではまとめられません。それぞれ根号の中の 3 乗の因数を外に出し、 の同類項にします。
問10 ★★
, とします。
(1)
(2)
(3)
上の各式を、(1)・(2) は の形で、(3) は負の指数を使わない形で表しなさい。
(1) (2) (3)
(1) すべて指数に直して足し引きします。
(2) 内側から指数に直します。 なので
(3) かっこの中の 1 つ 1 つを 6 乗します。
問11 ★★
の値を求めなさい。
底が違う累乗根の積は、根号の中を素因数分解して、底 と底 ごとに指数を集めます。
底 の指数は 、底 の指数は 。
問12 ★★
(1)
(2)
(3)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3)
小数の指数は分数に直してから計算します。
(1) なので
(2) なので
(3) , です。負の指数でひっくり返して
問13 ★★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
添え字 ,, の最小公倍数は なので、それぞれを 12 乗します。
で、どれも正の数なので、12 乗する前も同じ順です。
根号の中の数が大きい順()とはちょうど逆になりました。添え字が大きいほど「巻き戻し」が強く効くためです。
問14 ★★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
指数の分母 ,, の最小公倍数 乗して比べます。
なので
30 乗が大きすぎると感じたら、2 つずつ比べてもかまいません。 と は 6 乗して 、 と は 10 乗して 。この 2 つの比較から同じ順が出ます。
問15 ★★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各方程式の実数解を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
の実数解は「 の 乗根」です。 が偶数なら正の に対して の 2 つ、奇数ならただ 1 つ(fig01 の横線と交点の数)。
(1) 4 は偶数、 なので
(2) 3 は奇数、 なので のみ
(3) 6 は偶数、 なので
(4) 5 は奇数なので のみ
(3) を だけにしてしまうのが典型的な間違いです。記号 は正のほうだけを表すので、方程式の解では を忘れずに添えます。
問16 ★★
(1)
(2)
(3)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3)
が偶数のとき 、奇数のとき です。偶数乗根は正のほうしか表さないので、巻き戻すと符号が消えます。
(1) なので ()
(2) なので
(3) 4 は偶数なので 。 より なので
と答えると負の数になり、「 は正」と矛盾します。
問17 ★★★
, のとき、,, の値を求めなさい。
,,
, とおくと ,。「掛けると 1 のペア」の対称式として計算します。
まず 2 乗して
これをもう一度 2 乗します。 なので
3 乗は を使います。
別解として でも同じです。
問18 ★★★
, のとき、 の値を求めなさい。
, とおくと 。分子は 3 乗の和なので因数分解できます。
で約分でき
より 。
別解:分母・分子に を掛けると 。
問19 ★★★
ピアノの平均律では、7 半音離れた 2 音の振動数の比は です。これと、昔から美しいとされてきた比 の大小を、電卓を使わずに調べた結果を求めなさい。
どちらも正の数なので、12 乗して比べます。
なので、分子を比べて 。
比べ方を工夫すると計算が軽くなります。両方に を掛けた と を比べればよく、、。差は約 で、12 乗してやっと見える小さな差です(小話2)。
問20 ★★★
の値を求めなさい。
, とおきます。 ですが、3 乗根は負の数にもただ 1 つあるので は実数です()。
に を入れると
を代入すると なので で割り切れて
なので、実数 は のときだけ。よって
実は となっていて、, と直接求めることもできます(和はたしかに )。途中の で、奇数乗根が負の数でも使えることが効いています。
厚さ のコピー用紙を半分に折ると厚さは 、もう一度折ると 。折るたびに 2 倍になるので、 回折った厚さは です。10 回折ると 倍で約 。ここまでは想像どおりでしょう。
ところが 20 回で約 、30 回で約 と、急に宇宙の話になります。42 回では
となり、地球から月までの距離(約 )を超えます。41 回ではまだ約 なので、「42 回目の 1 回」で残りの半分以上を一気に進むわけです。指数が 1 増えるたびに値が 2 倍になる、という公式1の性質の迫力がよく分かる例です。
もっとも、実際の紙はそんなに折れません。折るたびに紙の幅は半分になり、厚さは倍になるので、7〜8 回で手に負えなくなります。2002 年、アメリカの高校生ブリトニー・ギャリバンは、長さ 1 km を超える細長い紙を用意して 12 回折ることに成功しました。何 m の紙があれば 回折れるか、という式まで自分で導いたそうです。
豆知識
長さの単位の「ミリ」「マイクロ」「ナノ」は、 の負の指数に付けられた名前です。、(マイクロメートル)、(ナノメートル)。指数が 3 下がるごとに になる、公式2の「割り算の階段」を 3 段ずつ下りています。反対向きには「キロ()」「メガ()」「ギガ()」と上っていき、スマホの容量の「ギガ」もこの仲間です。
ピアノの「ラ」の音は 1 秒間に 回振動し、1 オクターブ上の「ラ」はちょうど 2 倍の 回です。そのあいだに白鍵と黒鍵が合わせて 12 個あり、隣どうしの音の間隔を半音といいます。
現在のピアノは、12 個の半音がすべて同じ比率になるように調律されています(平均律)。半音 1 つで振動数が 倍になるとすると、12 回で 2 倍なので 、つまり
です。半音 1 つ上がるごとに振動数は約 ずつ増え、ラ()の半音上は 回、7 半音上のミは 回になります。この章の有理数の指数が、そのまま鍵盤に並んでいるわけです。
を最初に精密に計算して平均律を理論として示したのは、16 世紀の中国・明の朱載堉(しゅさいいく)だとされ、ほぼ同じころヨーロッパでもオランダのステヴィンらが同じ考えに達しました(※どちらが先か、どこまで独立だったかは諸説あり)。
豆知識
昔からいちばん美しく響くとされてきたのが、振動数がちょうど 倍の 2 音(ドとソなど、7 半音離れた音)です。ところが平均律の 7 半音は 倍で、 よりほんの少し小さい。この差は、実践問題 j19 で累乗根の大小として確かめられます。平均律は、どの調で弾いても同じ響きになるかわりに、ドとソの響きをわずかに犠牲にしている、ともいえます。
右上に小さく指数を書く の書き方を広めたのは、フランスのデカルトです。1637 年の『幾何学』で , のように書きました。ただし 2 乗だけは と書くことが多く、 と は同じくらいの手間だと考えたのかもしれません。この時点の指数は、まだ「掛ける個数」を表す正の整数だけでした。
指数を負の数や分数に広げる考えは、イギリスのウォリスが 1656 年の『無限算術』で示し、ニュートンが 1676 年の手紙の中で「 の代わりに 、 の代わりに と書く」と、今とほぼ同じ記法で使ったといわれます。ニュートンはこの記法を使って、 のような分数の指数の展開にまで進みました(※14 世紀フランスのオレームが分数の指数に近い考えを持っていたともいわれ、起源には諸説あり)。
「掛けた回数」という意味を捨ててでも記号を広げたのは、この章で見たとおり、指数法則という計算の規則を守れば、記号が意味を連れてきてくれるからでした。数学では、このように「規則が成り立ち続けるように定義を広げる」考え方がくり返し現れます。
豆知識
では はいくつでしょう。 から考えれば 、 から考えれば で、2 つの規則がぶつかります。高校数学では は定義しません(公式2 で としたのはそのためです)。一方、数え上げや二項定理の分野では「」と約束すると式が簡単になるので、そう決めることが多く、プログラミング言語の多く(Python の 0 ** 0 など)も を返します。「決めない」も「決める」も、目的に合わせた約束だということです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「指数法則が成り立つように ,, を決める」で十分ですが、「正の 乗根は本当にいつもあるのか?」「 と は同じ値になるのか?」「なぜ底を正に限るのか?」が気になる人のために、根拠を紹介します。
を 2 以上の整数、 を実数とする。 を満たす実数 を の 乗根という。 のとき、 の正の 乗根を と表す。 が奇数のときは、任意の実数 に対してただ 1 つの 乗根を と表す。
という記号を使うには、「正の 乗根がちょうど 1 つある」ことを確かめておく必要があります。
, を 2 以上の整数とする。 を満たす正の実数 はただ 1 つ存在する。
証明 (一意性)まず ならば であることを示す。 の両辺に正の数を掛けても大小は変わらないので、、同様にくり返して を得る。したがって正の数 では であり、 を満たす正の は 2 つ以上ない。
(存在) は で連続(グラフがつながっている)で、、また とおくと より 。中間値の定理(連続な関数が をまたぐなら、途中で値 をとる)により、 の範囲に となる がある。(証明終)
中間値の定理は数III で学ぶ定理で、ここでは認めて使っています。その土台には「実数には隙間がない」という実数の性質があります。有理数だけの世界では を満たす数がないことを思い出すと、存在の証明に何か深いものが要ることが納得できます。
一意性の証明で使った「」は、本文の公式6(累乗根の大小)の根拠でもあります。逆向き()は、 なら となって矛盾することから分かります。
,, を 2 以上の整数とすると、 である。
証明 左辺 は正の数の積なので正であり、。よって は の正の 乗根であり、定理1の一意性から 。(証明終)
公式4 の残りの性質も、同じく「正であること」と「 乗(または 乗)した値」を確かめ、一意性に持ち込めば証明できます。累乗根の等式は、正の数どうしなら、何乗かして等しければ等しい、の 1 本で片付くのです。
とする。有理数 を ( は整数、 は正の整数)と表したとき
と定める( のときは とみなす)。
ここで気になるのは、同じ有理数にはいくつもの表し方がある()ことです。表し方によって値が変わっては困ります。
とする。(, は整数、, は正の整数)ならば である。
証明 , とおくと、どちらも正の数である(正の数の整数乗)。整数の指数法則により
より なので 。, はともに の正の 乗根であり、定理1の一意性から 。(証明終)
,, を有理数とすると、 である。
証明 , を通分して ,(, は整数、 は正の整数)と表す(定理3より、どの表し方で計算してもよい)。 とおくと、定義2より ,。整数の指数法則により
(証明終)
, も、同様に整数の指数法則と定理1・3に帰着して証明できます。定理3がなければ、「通分する」という一歩が許されない点に注意してください。
でも、 が奇数なら はあります。そこで と決めたとしましょう。定理3と同じ考えで「表し方によらない」ことを求めると、 より
とも計算できて、 と食い違います。 の順に計算しようとしても、 の 6 乗根は実数の範囲にありません。定理3の証明で「, はともに正」を使ったところが、負の底では崩れるのです。このため、分数の指数は底が正のときに限って考えます。
, を無理数とします。 に下から近づく有理数の列 (たとえば の小数を 1 桁ずつ伸ばした有限小数)をとると、 のとき有理数の指数では「」が成り立つので、 は増加し続けます。一方、 より大きい有理数 を 1 つとれば、どの項も より小さい。増加し続けて、ある値を超えない数の列は、1 つの値に収束する(実数の連続性)ので、その極限を と定めます。近づけ方によらず同じ値になること、指数法則が保たれることも確かめられます。 のときは 、 のときは と定めます。
有理数の指数の単調性(「」)は、第2章で指数関数 のグラフを調べるときの中心的な性質になります。
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