問1
放物線 の頂点と軸を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
頂点 ,軸
目次 / 二次関数 / 数学I
—— 平方完成で、どんな放物線も「y = ax² を動かしたもの」として読む ——
第1章の最後に、y = 2(x − 3)² + 1 のグラフは y = 2x² を形を変えずに動かしたもので、頂点が (3, 1) に来ると予告しました。この章ではまず、y = a(x − p)² + q の形から頂点と軸を読みとる方法を学びます。次に、展開された y = ax² + bx + c をその形に戻す「平方完成」を身につけます。平方完成は、第3章以降のすべての章で使う道具です。後半では、一般のグラフの平行移動と対称移動を「x を x − p に、y を y − q に置きかえる」という 1 つの規則で整理し、最後にグラフの形から係数 a、b、c の符号を読みとります。
第1章の最後で、 のグラフは のグラフを形を変えずに動かしたもので、頂点が に来ると予告しました。まずはこの「形を変えずに動かす」ことをきちんと言葉にします。図形を、向きも形も変えずに一定の方向へ一定の距離だけずらすことを平行移動といいます。
のグラフは、 のグラフを
だけ平行移動した放物線である。
なぜ右へ 動くのかを確かめます。 で とおくと です。これは で のときと同じ高さなので、 の点 が、そっくり右へ ずれた点 に移っていることになります。いちばん低い点も から へ動きます。そのあと で全体の高さが 上がり、頂点は に来ます。
クッキーの型抜きを思い浮かべてください。同じ型を生地のどこに押し当てても、抜けるクッキーの形は同じです。変わるのは「どこで抜いたか」だけ。放物線も同じで、 が型(向きと細さ)を決め、, が型を置く場所(頂点)を決めます。 と は同じ型で、原点で抜いたか、点 で抜いたかの違いです。
は、 と同じ形の放物線を頂点 に置いたもので、式からそのまま頂点と軸が読みとれるということです。
次の放物線の頂点と軸を求めなさい。また、それぞれ のグラフを 軸方向・ 軸方向にどれだけ平行移動したものかを求めなさい。
【解答】
(1) , なので、頂点 ,軸 です。 を 平行移動したものです。
(2) と見ると , です。頂点 ,軸 で、 を 平行移動したものです。 なので上に凸になります。
(2) で頂点を としてしまう間違いがよくあります。かっこの中が になる が頂点の 座標、と覚えておけば迷いません。 から です。
を展開すると です。この形からは頂点が見えません。逆に、展開された式を の形に戻す変形を平方完成といいます。「平方(2 乗)の形を完成させる」という意味です。数と式の第10章(不等式の証明)や第11章(解の公式)でも使いましたが、ここで手順をしっかり固めます。
の係数が のとき、次の変形ができる。
これを使うと、 のとき
となる。放物線 の軸は直線 、頂点は である。
手順は次のとおり。
最初の式が成り立つのは、右辺を展開すると に戻るからです。 なら、 の半分の を使って になります。一般の形の頂点の公式は覚えなくてかまいません。毎回、手順どおりに平方完成するほうが間違いにくいからです。分子の は、第6章で「判別式」として主役になります。
暗算で を計算するとき、 を と見て とする人は多いでしょう。キリのいい をつくるために、足りない をいったん足して、あとで引いています。平方完成もまったく同じ発想です。 だけでは 2 乗の形になりませんが、 を足せば というキリのいい形がつくれます。足した はすぐに引いて、帳尻を合わせます。
平方完成とは、「 の係数の半分の 2 乗」を足して引くことで の形をつくり、展開された式から頂点を読みとれるようにする変形だということです。
次の放物線の頂点と軸を求めなさい。
【解答】
(1) の係数 の半分は で、その 2 乗は です。
頂点 ,軸 です。
(2) まず と の項を でくくります。かっこの中の の係数は で、半分の 2 乗は です。
頂点 ,軸 です。中かっこを外すとき、 にも を掛けて にするのを忘れないようにします。
(3) の係数が なので、 でくくります。くくると の項の符号が変わる点に注意します。
頂点 ,軸 です。
どの問題も、最後に展開して元の式に戻るかを確かめると安心です。第1章の予告どおり、 も同じ手順で となり、頂点 が見えるようになります。
公式1は という特別なグラフの話でした。ここでは、どんな関数のグラフでも使える平行移動の規則を整理します。
関数 のグラフを、 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフの方程式は
である。 を に、 を に置きかえると覚える。
理由は、点の動きを逆にたどると見えてきます。移動したあとのグラフ上の点を とします。この点は、移動する前は にありました。移動前の点はもとのグラフ の上にあったので、 が成り立ちます。これが移動後のグラフの方程式です。右へ動かすのに式ではマイナスが出てくるのは、「今の場所から、もといた場所を逆算している」からです。
第1章の が「 の V 字を右へ ずらした形」だったのも、 の を に置きかえたからだと説明がつきます。
長いベンチに人が並んで座っていて、全員が右へ 席ずつずれたとします。今 番の席に座っているのは誰でしょう。もともと 番の席にいた人です。席 にいる人を知りたければ、もとの席 を見ればよい。グラフも同じで、右へ 動かしたグラフの「 での高さ」は、もとのグラフの「 での高さ」です。だから になります。
グラフを 軸方向に , 軸方向に 平行移動するには、方程式の を に、 を に置きかえればよく、放物線なら頂点の移動で確かめられるということです。
(1) 放物線 を、 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した放物線の方程式を求めなさい。
(2) 放物線 をどのように平行移動すると、放物線 に重なるかを求めなさい。
【解答】
(1) 方法1(置きかえ): を に、 を に置きかえます。
方法2(頂点の移動): なので頂点は です。これが に移り、 の係数は のままなので
どちらでも です。
(2) 両方を平方完成して、頂点を比べます。
頂点を から へ動かせばよいので、, より
だけ平行移動すれば重なります。 の係数がどちらも で同じだから重ねられるのであって、係数が違えば形(型)が違うので、平行移動では重なりません。
第1章で、点 と 軸・ 軸・原点に関して対称な点を学びました。グラフの対称移動とは、グラフ上のすべての点をまとめて対称な点に移すことです。
関数 のグラフを対称移動したグラフの方程式は、次のとおりである。
| 軸に関して対称 | 軸に関して対称 | 原点に関して対称 | |
|---|---|---|---|
| 置きかえ | を に | を に | を , を に |
| 方程式 |
放物線では、頂点も同じ規則で移る。 軸・原点に関する対称移動では の係数の符号が変わり(凸の向きが逆になる)、 軸に関する対称移動では の係数は変わらない。
考え方は平行移動と同じです。 軸に関して対称移動したグラフ上の点 は、もとは にありました。それがもとのグラフの上にあるので 。これが「 を に置きかえる」の理由です。
鏡を思い浮かべると区別しやすくなります。壁にかけた鏡の前で右手を上げると、鏡の中の人は左手を上げます。左右が入れかわるこの映り方が 軸に関する対称です。床に置いた鏡をのぞきこむと、今度は上下がひっくり返ります。これが 軸に関する対称です。原点に関する対称は、トランプの絵札を思い出してください。キングやクイーンの札は、上下を逆さにしても同じ絵柄に見えるようにデザインされています。紙を 回すことが、原点に関する対称移動にあたります。
対称移動は、 軸なら を、 軸なら を、原点なら両方を、それぞれ符号を変えて置きかえればよいということです。
放物線 を、(1) 軸,(2) 軸,(3) 原点 に関してそれぞれ対称移動した放物線の方程式を求めなさい。
【解答】
(1) を に置きかえます。
(2) を に置きかえます。
(3) を に、 を に置きかえます。
頂点で確かめます。もとの放物線は で頂点 です。(1) の答えは で頂点 ,(2) は で頂点 ,(3) は で頂点 となり、上の図のとおりです。 なので、 軸対称では の項は変わらず、 の 1 次の項だけ符号が変わります。
ここまでは「式からグラフ」を読んできました。最後に逆向き、「グラフの形から の係数の符号」を読みとる方法をまとめます。
放物線 について
だけは 1 つの特徴から直接は読めず、 と組み合わせて考えます。軸 が正、つまり なら、 と の符号は反対です。
探偵が犯人を絞り込む場面を想像してください。靴あとから身長を、時刻表からアリバイを、というように、手がかりは 1 つずつ別のことを教えてくれます。グラフも同じで、「凸の向き」は を、「 軸との交点」は を教えてくれます。 は単独では決め手がなく、「軸の位置」という手がかりを、すでに分かった と組み合わせて初めて特定できる——少し手ごわい相手です。
は凸の向き、 は 軸との交点、 は軸の位置と の符号の組み合わせから読み、 は での高さとして読むということです。
放物線 のグラフが上の図のようになっているとき、,,,, の符号をそれぞれ求めなさい。
【解答】
上に凸なので です。
軸と 座標が正の点 で交わっているので です。
軸は直線 で、 軸より右にあります。 より と は異符号で、 なので です。
のときの の値は で、グラフではこの点(頂点)は 軸より上にあるので です。
のときの の値は で、グラフではこの点は 軸より下にあるので です。
実はこのグラフは (,,)で、, と確かに合っています。
平方完成で頂点が分かると、放物線がどこでいちばん低く(または高く)なるかが分かります。第1章の実践問題 j20 では、三角形の面積が と表されました。この章の手順で平方完成すると
となり、グラフは頂点 の上に凸の放物線です。頂点の は範囲 に入っているでしょうか。入っていれば、そこが最大です。第3章では、この「頂点が定義域に入るかどうか」を軸に、最大・最小を本格的に調べます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
放物線 の頂点と軸を求めなさい。
頂点 ,軸
問2
がすべての で成り立つように、定数 , の値を求めなさい。
(平方完成して )
問3
放物線 を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した放物線の方程式を求めなさい。
(頂点 )
問4
放物線 の頂点を求めなさい。
()
問5
放物線 を 軸に関して対称移動した放物線の方程式を求めなさい。
( を に置きかえる)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1) (2) (3)
上の (1)〜(3) の放物線の頂点と軸、上に凸か下に凸かを、それぞれ求めなさい。
(1) 頂点 ,軸 ,上に凸 (2) 頂点 ,軸 ,下に凸 (3) 頂点 ,軸 ( 軸),下に凸
の形なので、頂点は ,軸は直線 です。凸の向きは の符号で決まります。
(1) と見て ,。 なので
(2) の場合です。 と見て
(3) の場合です。 と見て
(2) は を右へ ,(3) は を下へ 動かしただけの放物線です。片方の方向にしか動かさないこともあります。
問2 ★
(1) (2)
上の (1),(2) の放物線を平方完成して、それぞれの頂点を求めなさい。
(1) ,頂点 (2) ,頂点
の係数の半分の 2 乗を足して引きます。
(1) の半分は ,2 乗して です。
頂点は です。
(2) の半分は ,2 乗して です。
頂点は です。
の係数が奇数でも、半分を分数のまま使えば手順は同じです。 と分母をそろえてから と計算します。
問3 ★
(1) (2)
上の (1),(2) の放物線を平方完成して、それぞれの頂点を求めなさい。
(1) ,頂点 (2) ,頂点
の項と の項を、 の係数でくくってから平方完成します。
(1)
頂点は です。
(2) でくくると、 は なので、かっこの中は になります。
頂点は です。
(2) で中かっこを外すとき、 になります。ここで符号を間違えると頂点の 座標が になってしまうので、展開して元の式に戻るか確かめましょう。
問4 ★
(1) (2)
上の (1),(2) の放物線の頂点と軸を、それぞれ求めなさい。
(1) 頂点 ,軸 (2) 頂点 ,軸
(1) でくくり、かっこの中の の係数 の半分 を使います。
(2) でくくります。 なので、かっこの中は です。
係数が分数のときも「 の係数でくくる」が第一歩です。 でくくると、中の係数は 倍になります。
問5 ★
放物線 を、 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した放物線の方程式を求めなさい。
置きかえ: を に、 を に置きかえます。
頂点で確かめ: なので頂点は 。平行移動で に移ります。
と一致します。
軸方向に のとき、 を「」、つまり に置きかえます。符号の取り違えを防ぐには、頂点の移動で答えを確かめるのがいちばんです。
問6 ★
放物線 をどのように平行移動すると、放物線 に重なるかを求めなさい。
軸方向に , 軸方向に
両方を平方完成して頂点を比べます。
頂点は から へ移ればよいので
「移動量=移動後の座標 − 移動前の座標」です。引く順番を逆にすると、逆向きの移動になってしまいます。
問7 ★
放物線 を、(1) 軸,(2) 軸,(3) 原点 に関してそれぞれ対称移動した放物線の方程式を求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) を に置きかえます。
(2) を に置きかえます。
(3) を に、 を に置きかえます。
頂点で確かめ:もとの放物線は で頂点 です。(1) は で頂点 ,(2) は で頂点 ,(3) は で頂点 です。頂点がそれぞれ 軸・ 軸・原点に関して対称な点に移っています。
問8 ★
放物線 の頂点と、 軸との交点、 軸との交点の座標を求めなさい。
頂点 , 軸との交点 , 軸との交点 ,
平方完成して頂点を求めます。
軸との交点は を代入して ,つまり です(公式5の )。
軸との交点は とおいて、因数分解で解きます。
よって です。
軸との 2 つの交点 と のちょうど真ん中 が、軸 になっています。放物線は軸に関して左右対称なので、同じ高さの 2 点は必ず軸をはさんで等距離にあるのです。 軸との交点がいつ・いくつあるかは、第6章で詳しく調べます。
問9 ★★
を定数とします。放物線 の頂点の座標を で表しなさい。また、頂点が直線 上にあるとき、 の値を求めなさい。
頂点 ,
の係数 の半分は ,2 乗して です。式の中にちょうど があるので
頂点は です。
この点が直線 上にあるので、, を代入して
このとき頂点は で、確かに です。係数に文字が入っていても、「 の係数の半分の 2 乗」を足して引く手順は変わりません。
問10 ★★
放物線 を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動すると、放物線 になりました。定数 , の値を求めなさい。
移動後の放物線を逆向きに動かせば、もとの放物線に戻ります。つまり を 軸方向に , 軸方向に 平行移動したものが です。
を に、 を に置きかえて
係数を比べて です。
頂点で確かめ: の頂点 から逆にたどると、もとの頂点は 。 となり一致します。
問11 ★★
放物線 を平行移動して、頂点が点 になるようにしました。どのように平行移動したかを求めなさい。また、移動後の放物線の方程式を の形で求めなさい。
軸方向に , 軸方向に ;
平方完成して、もとの頂点を求めます。
頂点は です。これを に移すので
平行移動では の係数 は変わらないので、移動後の放物線は
「頂点」と「 の係数」の 2 つが分かれば、放物線はただ 1 つに決まります。平行移動の問題は、この 2 つを追いかければ解けます。
問12 ★★
放物線 : があります。
(1) を原点に関して対称移動し、さらに 軸方向に だけ平行移動した放物線の方程式を求めなさい。
(2) を 軸方向に だけ平行移動し、さらに原点に関して対称移動した放物線の方程式を求めなさい。
(1) (2)
頂点の動きで考えます。 は で、頂点 , の係数 です。原点に関する対称移動では頂点が に移り、 の係数の符号が変わります。
(1) 原点対称で頂点は ,係数は 。次に右へ で頂点は 。
(2) 右へ で頂点は ,係数は 。次に原点対称で頂点は ,係数は 。
置きかえで (1) を確かめると、原点対称で から ,さらに を に置きかえて となり一致します。
(1) と (2) で答えが違うことに注目してください。対称移動と平行移動は、行う順番を入れかえると結果が変わることがあります。問題文の順番どおりに移動させることが大切です。
問13 ★★
放物線 は上に凸で、頂点は第1象限にあり、 軸とは 座標が負の点で交わります。,, と の符号を、それぞれ求めなさい。
,,,
公式5の手がかりを 1 つずつ使います。
は「負 × 正 × 負」なので です。
条件を満たす例として (頂点 , 軸との交点 )があり、,, で確かに符号が合います。
問14 ★★
を定数とします。放物線 の頂点の 座標が となるように、 の値を定めなさい。
の係数 の半分は ,2 乗して です。
頂点は です。 座標が なので
確かめ: のとき で頂点 。 のとき で頂点 。どちらも頂点の 座標は です。
問15 ★★
放物線 が 2 点 , を通るとき、この放物線の軸を求めなさい。また、定数 , の値と頂点を求めなさい。
軸 ,,頂点
2 点の 座標がどちらも で等しいことに注目します。放物線は軸に関して左右対称なので、同じ高さの 2 点の真ん中に軸があります。
軸は なので、 より 。点 を通るので
なので、頂点は です。
別解:2 点の座標を代入すると ,。辺々引くと より となり、同じ結果です。対称性を使うと、連立方程式を解く前に軸が見えます。
問16 ★★
実数 , が を満たすとき、, の値を求めなさい。
を含む項と を含む項に分けて、それぞれ平方完成します。
よって与えられた式は
実数の 2 乗は 以上なので、2 つの 2 乗の和が になるのは、両方が のときだけです(数と式 第10章)。
方程式が 1 つなのに 2 つの文字の値が決まるのは、「実数」という条件と平方完成の組み合わせのおかげです。
問17 ★★★
放物線 を、点 に関して対称移動した放物線の方程式を求めなさい。
点 と点 が点 に関して対称であるとは、 が 2 点を結ぶ線分の中点になることです。
移動後の点 のもとの点 が、もとの放物線上にあるので
。文字を , に戻して
頂点で確かめ:もとの放物線は で頂点 。 に関して対称な点は です。点に関する対称移動は の回転なので凸の向きが逆になり、 の係数は 。 で一致します。原点に関する対称移動は、この が原点の場合にあたります。
問18 ★★★
を実数の定数とし、放物線 を考えます。
(1) 頂点の座標を で表しなさい。
(2) がすべての実数値をとって変化するとき、頂点が描く図形の方程式を求めなさい。
(3) 頂点の 座標が最小となる の値と、そのときの頂点の座標を求めなさい。
(1) (2) 放物線 (3) ,頂点
(1) の係数 の半分の 2 乗は です。
頂点は です。
(2) 頂点を とおくと ,。 を代入して を消すと
がすべての実数をとるので もすべての実数をとり、頂点は放物線全体を描きます。
(3) 頂点の 座標を、今度は について平方完成します。
なので、 のとき最小値 をとります。
(2) の放物線の頂点が であることとも合っています。「頂点がいちばん低くなるのは、頂点の描く放物線の頂点」というわけです。平方完成を と の 2 回、別々の文字で使うのがこの問題の山場です。
問19 ★★★
放物線 は下に凸で、頂点は第4象限にあり、 軸とは 座標が正の点で交わります。このとき、放物線 の頂点がある象限を求めなさい。
第4象限
まず、与えられた放物線から符号を読みとります。
次に を調べます。 なので、これも放物線です。公式2で と を入れかえると、頂点は
座標:, なので 。
座標:分子 ,分母 なので負。
よって頂点は にあります。
例で確かめ:(頂点 , 軸との交点 )は条件を満たします。 の頂点は で、確かに第4象限です。鍵は、2 つの放物線の頂点の 座標に同じ が現れることでした。
問20 ★★★
放物線 : を、 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した放物線を とします。 は点 を通ります。
(1) を で表しなさい。
(2) の頂点の 座標が最大となるときの , の値と、そのときの の方程式を求めなさい。
(1) (2) ,:
(1) は で頂点 です。 の頂点は なので
点 を通るので
(2) の頂点の 座標は
なので、 のとき最大値 をとります。このとき です。
頂点は なので
答えの頂点は、通るべき点 そのものです。これは計算しなくても予想できます。 は下に凸なので、頂点はグラフのいちばん低い点で、グラフ上の点 より高くなることはありません。頂点の高さが最大の になるのは、頂点がちょうど に来たときです。
平方完成という名前は、比喩ではありません。昔の人は、文字どおり正方形の欠けた角を補って2次方程式を解いていました。
9 世紀のバグダードに、アル=フワーリズミーという学者がいました。彼が 820 年ごろに書いた計算の本(※成立年には諸説あり)には、次のような問題が出てきます。「ある平方と、その根の 10 倍を合わせると 39 になる」。今の式で書けば です。
彼の解き方は図形でした。1 辺 の正方形(面積 )を描き、 を ずつに分けて、縦 ・横 の長方形を正方形の 2 辺にくっつけます。すると L 字形の図形ができ、その面積が です。L 字の欠けた角に 1 辺 の小さな正方形(面積 )を補うと、大きな正方形が完成します。
大きな正方形の 1 辺は なので、 です。これは公式2の「 の係数の半分()の 2 乗を足す」とまったく同じ操作です。欠けた角の が、平方完成で足して引く「半分の 2 乗」の正体でした。ただし、長さを使った図なので、彼は負の解 を答えにしていません。当時はまだ負の数を方程式の解として認めていなかったのです。
豆知識
アル=フワーリズミーの本の題名にある「アル=ジャブル」は、「欠けたものを補う」「元に戻す」という意味のアラビア語で、方程式の両辺に同じものを足して負の項を消す操作を指しました。これがラテン語に訳されて、「代数学」を意味する英語 algebra になりました。また、彼の名前がラテン語で「アルゴリトミ」と書かれたことから、「計算の手順」を意味する algorithm(アルゴリズム)という言葉が生まれています。1 人の学者の本の題名と名前が、数学とコンピューターの基本用語を 2 つも残したわけです。
この章の図の放物線は、コンピューターで描いています。画面に曲線を描くとき、点を 1 つずつ計算して並べるのは手間がかかります。そこでよく使われるのがベジェ曲線です。イラスト作成ソフトのペンツールや、Web ページの図(SVG 形式)で使われています。
いちばん簡単な「2 次ベジェ曲線」は、始点 ,制御点 ,終点 の 3 点だけで決まります。時刻 ()での曲線上の点は
で計算します(座標ごとに計算します)。曲線は から出発して で終わり、途中で制御点 のほうへ引き寄せられます。
試しに ,, として計算してみます。
なので 。放物線 の一部がぴったり描けました。実は 2 次ベジェ曲線は、いつでも放物線の一部になります(3 点が一直線上にある場合を除く)。制御点 は、放物線 の と での接線(その点で放物線に接する直線)がちょうど交わる点です。この章の図も、各放物線の両端の接線の交点を計算して、制御点に指定しています。
豆知識
ベジェ曲線の名前は、フランスの自動車メーカー、ルノーの技術者ピエール・ベジェにちなみます。1960 年代に車体の曲面をコンピューターで設計するために広めました。ところが同じ時期、ライバル会社シトロエンのポール・ド・カステリョも、同じ曲線を独自に考え出していたといわれます(※どちらが先かについては、社内秘だったため諸説あり)。今では、パソコンのフォントの輪郭にも使われています。TrueType という形式のフォントは、文字の曲線部分を 2 次ベジェ曲線、つまり放物線の切れ端をつなぎ合わせて表しています。画面の「あ」の丸みも、たくさんの小さな放物線でできているのです。
「右へ 動かすのに、なぜ とマイナスなのか」。公式3では「今の場所から、もといた場所を逆算するから」と説明しました。ここでは、まったく別の見方を紹介します。グラフを動かすのではなく、座標軸のほうを動かすという見方です。
のグラフを紙に描いて、グラフはそのまま、座標軸(と目盛り)だけを左へ ずらしてみます。新しい原点は、古い座標で の位置です。新しい座標を とすると、同じ点を新しい目盛りで読むと , となります。グラフの式 を新しい座標で書くと
新しい座標軸から見ると、グラフは頂点 の放物線、つまり「右へ 動いた」グラフに見えます。グラフを右へ 動かすことと、座標軸を左へ 動かすことは、見た目の結果が同じです。マイナスの符号は「座標軸のほうは逆向きに動いている」ことを表している、とも読めます。
電車の窓から外を見ると、自分は前へ進んでいるのに、景色は後ろへ流れていきます。どちらが動いていると考えても、窓から見える眺めは同じです。グラフと座標軸の関係も、これとよく似ています。
豆知識
この見方を使うと、平方完成の意味がもう一段はっきりします。 で , とおくと です。これは「頂点 に新しい原点を置いて眺めれば、どんな放物線も に見える」ということ。平方完成は、放物線にとっていちばん見やすい場所へ座標軸を引っ越しさせる作業だったのです。第1章の小話では「放物線はすべて相似」という話をしました。座標軸の引っ越しと拡大・縮小を組み合わせれば、世の中のすべての放物線は 1 つにまとめられることになります。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、公式1〜5の手順が使えれば十分です。「グラフを動かす」とは正確には何をすることなのか、「 を に置きかえる」規則はなぜ正しいのか、平方完成で求めた頂点は式の変形のしかたによらず 1 つに決まるのか——が気になる人のために、第1章の定義(関数・グラフ=点の集合)を使って根拠を示します。
座標平面上の点 を点 に移すことを、 軸方向に , 軸方向に の平行移動という。
図形 の平行移動とは、 のすべての点をこの規則で移した点の集合
のことである。
第1章の定義2で、グラフは「点の集合」として定義しました。だから「グラフを平行移動する」とは、その集合のすべての点を一斉に移すことだ、とはっきり言えます。
定義域が の関数 のグラフ を、 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した図形 は、関数
のグラフである。
証明 点 について、次の同値が成り立つ。
1 行目は定義1による。 が に属するのは、 のある点 で , となるときで、その点は に限られるからである。2 行目は がグラフであること(第1章の定義2)、3 行目は , の決め方による。よって ,すなわち は のグラフである。(証明終)
証明の 1 行目が、本文の「今の場所 から、もといた場所 を逆算する」にあたります。定理には、本文では触れなかった点が 1 つ含まれています。定義域も一緒に動くことです。たとえば を 軸方向に 平行移動すると、 で、定義域は が 以上 以下、つまり になります。第1章で「定義域も関数の一部」と述べたとおりです。
点 を ,, に移すことを、それぞれ 軸・ 軸・原点に関する対称移動という。関数 のグラフをこれらで移した図形は、それぞれ
のグラフである(定義域は、 軸・原点に関する場合 となる)。
証明 軸に関する場合を示す。移した図形の点 は、もとの点 から来たものに限られる。よって が移した図形に属することと、 が のグラフに属すること、すなわち かつ であることは同値である。これは と同じである。 軸・原点に関する場合も、もとの点がそれぞれ , になるだけで、同様に示せる。(証明終)
定理1・定理2は、どちらも「移動後の点から、もとの点を逆算する」という 1 つの考え方から出てきます。実践問題 j17 の点 に関する対称移動も、もとの点を と逆算して、同じように解きました。
とする。すべての実数 で
が成り立つような実数 , は、ただ 1 組
だけ存在する。
証明 右辺を展開すると である。これがすべての で左辺と等しいので、恒等式の係数比較(数と式 第9章)により
なので、1 つめの式から がただ 1 つに決まる。これを 2 つめの式に代入すると もただ 1 つに決まる。逆に、この , で右辺を展開すると左辺に一致することは、計算で確かめられる。(証明終)
この定理の意味は「頂点は式によって 1 つに決まる」ことです。平方完成の途中で、くくり方や足して引く順番を変えても、たどり着く は同じになります。だから「放物線 の頂点」という言い方に意味があるのです。
()とする。
(i) すべての実数 について が成り立つ。すなわち、放物線 は直線 に関して対称である。
(ii) で ならば、 である。
証明 (i) , なので等しい。
(ii) より 。 で割って なので、 または 。前者なら となり仮定に反する。よって後者で、 である。(証明終)
(ii) は「同じ高さの 2 点の真ん中に軸がある」ことの証明です。実践問題 j08 で 軸との交点の真ん中が軸になったことや、j15 で 2 点 , から軸 を読みとったことの裏づけになっています。(ii) の仮定 は外せません。 なら は当たり前で、軸について何も教えてくれないからです。
この章の学習が終わったら
学習完了テストを受ける