問1
のとき、 の値を求めなさい。
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()
目次 / 二次関数 / 数学I
—— 「入れると 1 つ出てくる」しくみを座標平面で眺める ——
中学では y = 2x + 1 や y = x² を「1次関数」「2乗に比例する関数」として学びました。この分野では、それらを「関数」という 1 つの考え方でとらえ直し、二次関数のグラフ・最大と最小・方程式・不等式へと進みます。第1章はその土台づくりです。関数の記号 f(x)、座標平面と象限、定義域・値域と最大・最小を一次関数で確かめたあと、絶対値を含む関数の折れ線グラフを描きます。最後に放物線 y = ax² の形を整理して、第2章の平方完成と平行移動につなげます。
中学では、 や のように「 の値を決めると の値が決まる」関係を関数と呼びました。高校でも考え方は変わりません。ただし「ただ 1 つ決まる」ことをはっきり意識し、関数を表す専用の記号を使います。
2 つの変数 , があり、 の値を決めるとそれに対応して の値がただ 1 つ決まるとき、 は の関数であるという。
変数とは、いろいろな値をとる文字のことです。1 つの に対して の値が 2 つ以上決まってしまう対応は、関数とはいいません。たとえば「正の数 に対し、2 乗すると になる数 」は、 のとき と の 2 つが決まるので、 は の関数ではありません。
自動販売機を思い浮かべてください。ボタン(入力)を押すと、そのボタンに割り当てられた 1 本(出力)が出てきます。同じボタンなのに日によって違う飲み物が出てきたら困りますね。これが「ただ 1 つ」の意味です。一方、人気のお茶を 2 つのボタンに割り当てて「どちらを押しても同じお茶」にするのは、何の問題もありません。関数でも、違う から同じ が出てくるのはかまいません。 で となるのが、その例です。
関数とは「 を 1 つ入れると がただ 1 つ出てくる対応」のことで、 は の式の に を代入した値だということです。
のとき、次の値を求めなさい。
【解答】
(1) に を代入します。
(2) 負の数を代入するときは、かっこをつけてから代入します。
(3) を に置きかえ、展開して整理します。
(3) を と取り違えないようにします。 は「 に を入れた値」、 は「 に を入れた値に を足したもの」で、まったく別物です。
関数の様子を目で見るには、グラフをかきます。その舞台が座標平面です。中学で学んだ内容に「象限」と「対称な点」を加えて整理しておきます。
原点 で垂直に交わる 軸と 軸をとった平面を座標平面という。平面上の点は、実数の組 ( が 座標、 が 座標)でただ 1 通りに表される。
座標軸で分けられた 4 つの部分を象限といい、右上から反時計回りに第1象限〜第4象限と呼ぶ。
| 第1象限 | 第2象限 | 第3象限 | 第4象限 | |
|---|---|---|---|---|
| 座標の符号 | ||||
| 座標の符号 |
| 軸に関して対称 | 軸に関して対称 | 原点に関して対称 | |
|---|---|---|---|
| 座標 |
映画館の座席券には「H 列 12 番」のように 2 つの番号が書いてあり、2 つそろって初めて席が 1 つに決まります。座標も同じで、 座標と 座標の 2 つで点が決まります。「12 列 H 番」と入れ替えたら別の席になるように、 と も別の点です。だから座標は必ず「 座標が先」と約束されています。映画館と違うのは、 や負の番号もあること。その符号の組み合わせで、点が 4 つの区画(象限)のどこにあるかが決まります。
座標平面の点は( 座標, 座標)の組で表され、2 つの座標の符号の組み合わせで象限が決まり、対称な点は座標の符号を変えるだけで求められるということです。
(1) 点 がある象限を答えなさい。また、 と 軸・ 軸・原点に関して対称な点の座標を求めなさい。
(2) , のとき、点 と点 がある象限をそれぞれ求めなさい。
【解答】
(1) 座標が負、 座標が正なので です。対称な点は、公式2の表のとおり符号を変えて
(2) 点 は、 座標 , 座標 なので です。
点 は、 座標 が「負 × 正」で負、 座標 が「負の数に をつけたもの」で正なので です。
文字のままでは符号が見えにくいときは、, のような具体的な数を入れて確かめると安心です。
関数を考えるとき、 に入れてよい値の範囲を決めておくことがあります。たとえば「長さ cm の針金」なら、 は正の数に限られます。入力の範囲を決めると、それに応じて出力の範囲も決まります。
関数 において、 のとる値の範囲を定義域、それに対応して がとる値の範囲を値域という。値域の中でいちばん大きい値を最大値、いちばん小さい値を最小値という。
定義域を決めた関数のグラフは、直線全体ではなく線分(両端のある直線の一部)になります。端を含むときは ●、含まないときは ○ でかきます。数と式の第4章で、不等式の解を数直線に表したときと同じ約束です。
駅のまっすぐなエスカレーターを思い浮かべてください。いちばん高い地点は上の降り口、いちばん低い地点は下の乗り口で、途中にそれより高い場所も低い場所もありません。一次関数のグラフも傾きが一定の直線なので、最大・最小は必ず定義域の両端で決まります。では、上の降り口にロープが張ってあって、そこには立てないとしたらどうでしょう。降り口の直前まではいくらでも近づけますが、「立てる中でいちばん高い場所」は決められません。降り口の 1 cm 手前に立っても、その 0.5 cm 先のほうが高いからです。これが「端を含まないと最大値がない」の正体です。
定義域は の入力範囲、値域は の出力範囲で、一次関数ではグラフが直線なので両端の値を調べれば値域・最大・最小が決まり、端を含まなければその側の最大値や最小値はないということです。
次の関数の値域を求めなさい。また、最大値・最小値があれば求めなさい。
【解答】
(1) 傾きが なので右下がりの直線です。両端の値を求めると
よって値域は で
(2) 傾きが なので右上がりです(上の図)。
ただし は定義域に含まれないので、 はとりません。よって値域は で
(2) の は にいくらでも近づきますが、 にはなりません。「 なら?」「 なら?」と候補を挙げても、必ずそれより大きい値がとれるので、最大値は決まらないのです。
ここまでは「関数が分かっていて、値域を求める」向きでした。逆に「値域が分かっていて、関数の式を決める」こともできます。式の中の , のように、決まった値を表す文字を定数といいます。
一次関数 の値域が ()であるとき
の連立方程式を解く。 の符号が分からなければ両方の場合を調べ、それぞれの答えが の符号の条件を満たすか確かめる。
だと で値域は 1 つの値だけになるので、 なら です。なお、, のように「どの でどの値をとるか」が直接分かっているなら、場合分けは要らず、ただの連立方程式になります。
公園の滑り台で考えてみます。「両端の高さは m と m」とだけ知らされても、どちらが階段側なのかは分かりません。左が高い置き方と右が高い置き方の 2 通りがありえます。値域から分かるのは「両端の高さの組」だけで、どちらの端がどちらの高さかは傾きの向きしだい。だから の符号で場合分けが必要になります。
値域は「両端の の値の組」しか教えてくれないので、傾きの正負で端との対応を 2 通りに分け、それぞれ連立方程式を解くということです。
一次関数 の値域が となるように、定数 , の値を定めなさい。
【解答】
値域が 1 つの値ではないので です。
(i) のとき、右上がりなので で , で です。
なので条件を満たします。
(ii) のとき、右下がりなので で , で です。
なので条件を満たします。
2 つの答えは、グラフで見ると と を結ぶ線分と、 と を結ぶ線分です。滑り台の向きがちょうど逆になっています。
数と式の第3章で学んだように、絶対値は中身の符号ではずし方が変わります。 なら , なら でした。関数の式に絶対値が入っていたら、この規則で場合分けしてからグラフをかきます。
絶対値の中身が になる を境目にして場合分けし、絶対値をはずしてからグラフをかく。
まっすぐな線路沿いの道を歩いて、駅の前を通り過ぎるところを想像してください。駅までの距離は、近づくあいだは減り、駅の前で になり、通り過ぎると再び増えます。 は「位置 から駅(位置 )までの距離」そのもので、グラフが V 字になるのはこのためです。駅が 2 つあって、両方までの距離の合計を考えると面白いことが起こります。2 つの駅の間を歩いているあいだは、片方に近づいたぶんだけもう片方から遠ざかるので、合計は駅と駅の間の距離のまま変わりません。下の図の平らな部分がそれです。
絶対値を含む関数は、中身が になる点を境目に場合分けして絶対値をはずせば、直線をつないだ折れ線のグラフになるということです。
(1) 関数 の最小値を求めなさい。
(2) 関数 を、絶対値記号を使わずに場合分けして表しなさい。また、最小値と、そのときの の値の範囲を求めなさい。
【解答】
(1) 公式5の場合分けのとおり、グラフは点 で折れ曲がる V 字形です。絶対値は 以上で、 のとき になるので
(2) 境目は と より です。3 つの範囲に分けます。
のとき、, なので
のとき、, なので
のとき、, なので
グラフは上の図のようになり、左側は右下がり、右側は右上がりで、真ん中が平らです。境目で値がつながっている( で , で )ことも確かめておきます。
最小値をとる が 1 つではなく、範囲全体になるのがこの関数の特徴です。
中学で学んだ「 が の 2 乗に比例する関数」 のグラフを、この分野の言葉で整理し直します。第2章以降に登場するすべての二次関数のグラフは、この形を平行移動したものです。
のとき、 のグラフは原点を通り、 軸に関して対称な曲線である。この曲線を放物線という。
軸に関して対称なのは、 だからです。点 がグラフ上にあれば、左右を入れかえた点 もグラフ上にあります。
「放物線」という名前は、文字どおり「物を放り投げたときに描く線」から来ています。ボールを斜め上に投げると、上に凸の放物線を描いて落ちてきます。同じ強さで投げても、真上に近い角度で投げれば細い放物線、水平に近い角度で投げれば大きく開いた放物線になります。上に凸か下に凸かは の符号、細いか開いているかは の大きさ——放物線の形を決めるのは、この 2 つだけです。
のグラフは頂点が原点・軸が 軸の放物線で、 の符号が向き(下に凸か上に凸か)を、 の大きさが開き方を決めるということです。
(1) 放物線 が点 を通るとき、 の値を求めなさい。また、このグラフが下に凸か上に凸かを答えなさい。
(2) 関数 の値域を求めなさい。
【解答】
(1) , を代入すると なので
なので です。
(2) 両端の値は のとき , のとき です。しかし、ここで「値域は 」とするのは誤りです。定義域 の中に頂点の が含まれていて、そこで をとるからです。
グラフは から まで下がって に達し、そこから まで上がって になります。よって
一次関数では「両端を調べれば十分」でしたが、放物線では途中で向きが変わるので、頂点が定義域に入っているかどうかを必ず確かめます。これが第3章「最大・最小」の中心テーマになります。
この章の放物線は、どれも頂点が原点にありました。では のグラフはどうなるでしょう。 のとき で が最小になるので、頂点は です。実はこのグラフは、 のグラフを形を変えずにそのまま動かして、頂点を に移したもの(平行移動)になっています。公式5の が「 の V 字を右に ずらした形」だったのと同じしくみです。
ところが を展開すると となり、この形からは頂点が見えません。第2章では、展開された式を の形に戻す技術=平方完成を学び、どんな二次関数のグラフも「 の平行移動」としてかけるようにします。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
のとき、 の値を求めなさい。
()
問2
点 がある象限を求めなさい。
( 座標が負、 座標が正)
問3
点 と原点に関して対称な点の座標を求めなさい。
(両方の座標の符号を変える)
問4
関数 の値域を求めなさい。
(右上がりなので で , で )
問5
放物線 の頂点の座標と、グラフが上に凸か下に凸かを求めなさい。
頂点 ,()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
のとき、,, の値を求めなさい。
それぞれ に代入します。負の数はかっこをつけて代入します。
はいつも「定数項」になります。 は、グラフが点 を通る、つまり 軸と で交わることを表しています(第6章で詳しく扱います)。
問2 ★
のとき、 と を求めなさい。
をかっこごと置きかえます。
なので、2 乗の項の符号は変わりません。変わるのは 1 次の項だけです。
を としてしまうのがよくある間違いです。かっこの前の は、中の両方の項の符号を変えます。
問3 ★
, とします。
(1) 点 (2) 点 (3) 点
上の (1)〜(3) の点がある象限を、それぞれ求めなさい。
(1) 第4象限 (2) 第3象限 (3) 第2象限
各点の 座標・ 座標の符号を調べ、公式2の表に当てはめます。
(1) 座標 , 座標 なので 。
(2) 座標 , 座標 なので 。
(3) 座標 は「正 × 負」で負です。 座標 は、 と の和なので正です。よって 。
確かめとして , を入れると、(1) ,(2) ,(3) となり、それぞれ第4・第3・第2象限にあります。
問4 ★
(1) 点 と 軸・ 軸・原点に関して対称な点の座標を、それぞれ求めなさい。
(2) 点 と点 が 軸に関して対称であるとき、, の値を求めなさい。
(1) 軸:, 軸:,原点: (2)
(1) 公式2の表より、 軸対称は 座標だけ、 軸対称は 座標だけ、原点対称は両方の符号を変えます。
(2) 軸に関して対称な 2 点は、 座標の符号が反対で、 座標が等しくなります。
よって です。このとき 1 つめの点は となり、確かに と 軸に関して対称です。
問5 ★
関数 の値域を求めなさい。また、最大値と最小値を求めなさい。
値域 , のとき最大値 , のとき最小値
傾きが なので右下がりの直線です。両端の値は
右下がりなので、左端で最大、右端で最小になります。
値域を書くときは、小さいほうの値を左に書きます。右下がりの関数では「 の左端の値」が値域の右端に来る点に注意します。
問6 ★
関数 の値域を求めなさい。また、最大値・最小値があれば求めなさい。
値域 , のとき最大値 ,最小値はない
傾きが なので右上がりです。両端の値は
は定義域に含まれないので、 はとりません。 は含まれるので、 はとります。
は にいくらでも近い値をとりますが、 そのものはとりません。どんな候補を挙げても、それより小さい値がとれるので、最小値は存在しません。
問7 ★
関数 を、絶対値記号を使わずに場合分けして表しなさい。また、 の最小値を求めなさい。
, のとき最小値
絶対値の中身 が になるのは です。ここを境目にします。
のとき、 なので 。
のとき、 なので 。
グラフは点 で折れ曲がる V 字形です。絶対値は 以上で、 のとき になるので
V 字の両側の傾きが でなく になっているのは、中身の の係数が だからです。
問8 ★
放物線 が点 を通るとき、 の値を求めなさい。また、このグラフが上に凸か下に凸かと、 のときの の値を求めなさい。
,上に凸,
, を代入すると
なので です。 に を代入して
を と計算しないように注意します。2 乗するのは の値だけで、係数 はそのあとで掛けます。
問9 ★★
一次関数 が , を満たすとき、 を求めなさい。また、 の値を求めなさい。
,
とおきます。条件より
下の式から上の式を引くと なので , です。
「 で , で 」のように、どの でどの値をとるかが決まっているので、公式4のような場合分けは要りません。グラフで言えば、2 点 , を通る直線を求めたことになります。
問10 ★★
が , を満たすとき、定数 , の値を求めなさい。また、 の値を求めなさい。
,
条件をそれぞれ式にします。
上の式から下の式を引くと なので , です。
このとき なので
と書けることにも気づけると、 の意味がよく見えます。こうした「2 乗の形」への変形は、第2章の平方完成で本格的に扱います。
問11 ★★
とします。一次関数 の値域が となるように、定数 , の値を定めなさい。
なので右上がりです。左端 で最小値 ,右端 で最大値 をとります。
下の式から上の式を引くと なので , です。 なので条件を満たします。
確かめ: で のとき , のとき です。
問12 ★★
一次関数 の値域が となるように、定数 , の値を定めなさい。
または
値域が 1 つの値ではないので です。 の符号で場合分けします。
(i) のとき、 で , で です。
なので適します。
(ii) のとき、 で , で です。
なので適します。
(i) のグラフは から への上り坂、(ii) は から への下り坂です。どちらも値域は同じです。
問13 ★★
関数 を、絶対値記号を使わずに場合分けして表しなさい。また、最小値と、そのときの の値の範囲を求めなさい。
のとき , のとき , のとき 。最小値 ( のとき)
境目は と より です。小さいほうから 3 つの範囲に分けます。
のとき、, なので
のとき、, なので
のとき、, なので
左側は右下がり、右側は右上がりで、真ん中は平らです。境目の値は で , で とつながっています。
「点 と点 までの距離の和」と読めば、2 点の間にいるときは和が 2 点間の距離 で一定、外に出ると増える、と計算なしで見通せます。
問14 ★★
関数 の最大値と最小値を求めなさい。
のとき最大値 , のとき最小値
境目は で、定義域の中にあります。
のとき (右下がり)
のとき (右上がり)
グラフは で折れ曲がる V 字形なので、最小値は折れ曲がる点、最大値は両端のどちらかです。
最大値は、両端のうち「折れ目 から遠いほう」でとります。 は から 、 は から の距離なので、 のほうが高くなります。この「軸から遠い端で最大」という見方は、第3章の放物線でもそのまま使えます。
問15 ★★
(1)
(2)
上の (1),(2) の関数の値域を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
(1) 下に凸の放物線で、頂点の が定義域 に含まれます。頂点で最小値 をとります。両端は で , で なので、最大値は です。
両端だけを見て としないように注意します。
(2) 上に凸の放物線で、頂点の は定義域 に含まれません。 の範囲では、 が大きいほど は大きく、 は小さくなります(右下がり)。
頂点が定義域に入っていなければ、放物線でも一次関数と同じく「両端を調べれば十分」になります。
問16 ★★
関数 の値域が であるとき、定数 , の値を求めなさい。
傾きが なので右下がりです。左端 で最大値 ,右端 で最小値 をとります。
も満たしています。
公式4では「値域から係数を決める」問題でしたが、ここでは係数が分かっていて定義域の端を決めています。どちらも「どちらの端でどちらの値をとるか」を傾きの向きで決めるのが出発点です。
問17 ★★★
を定数とします。方程式 の実数解の個数を、 の値によって場合分けして求めなさい。
のとき 個, のとき無数( のすべての実数), のとき 個
公式5の最後の項目のとおり、解の個数は のグラフと直線 の共有点の個数に等しくなります。まずグラフをかきます。境目は です。
左側は右下がり、 で高さ の平らな部分、右側は右上がりの折れ線です。 の最小値は です。
直線 ( 軸に平行な直線)を上下に動かして、共有点を数えます。
実際、 のとき から , から となり、どちらもそれぞれの範囲に入ります。
方程式を式だけで解こうとすると 3 つの範囲ごとに で場合分けが必要になりますが、グラフと横線の交わりに翻訳すると一目で分類できます。この「グラフに翻訳する」方針は、第8章の解の配置で中心的な道具になります。
問18 ★★★
を定数とします。関数 の最小値を、 の値によって場合分けして求めなさい。
のとき (), のとき (), のとき ()
のグラフは原点で折れ曲がる V 字形で、 では (右下がり)、 では (右上がり)です。幅 の定義域 が、折れ目 に対してどこにあるかで場合分けします。
(i) 定義域がすべて折れ目の左側(,つまり )のとき:右下がりの部分だけなので、右端 で最小になります。
(ii) 定義域が折れ目をはさむ(,つまり )のとき:折れ目 で最小値 をとります。
(iii) 定義域がすべて折れ目の右側()のとき:右上がりの部分だけなので、左端 で最小値 をとります。
まとめると、次のようになります。
境目の では (i) の式が 、 では (iii) の式が となり、(ii) の値 となめらかにつながります。場合分けの境目で答えが食い違わないかを確かめると、計算ミスの発見に役立ちます。第3章では、この「動く定義域と折れ目(軸)の位置関係」の場合分けを、放物線で行います。
問19 ★★★
一次関数 が、すべての実数 について を満たすとき、 を求めなさい。
または
()とおきます。 は「 の式の に、 そのものを代入したもの」です。
これがすべての で に等しいので、恒等式の係数比較(数と式 第9章)より
のとき、 より 。
のとき、 より 。
確かめ: なら です。「2 回続けて使うと傾き になる」ので、1 回分の傾きは か ——右下がりの直線でも、2 回使うと向きが 2 回反転して右上がりに戻るわけです。
問20 ★★★
放物線 上に 2 点 , があります。原点を とします。
(1) 直線 の式を求めなさい。
(2) 三角形 の面積を求めなさい。
(3) 放物線上の点 を となるようにとります。三角形 の面積 を の式で表しなさい。
(1) (2) (3)
(1) 傾きは です。 が を通るので ,。
(2) 直線 と 軸の交点を とします。 軸(線分 )で三角形を左右に分けると、どちらも を底辺とする三角形で、高さは , の 座標の大きさ , です。
(3) (2) と同じ考え方を、 軸のかわりに直線 で行います。直線 と直線 の交点を とします。 のとき
なので は の真上にあります。線分 で三角形 を左右に分けると、左の三角形の高さは ,右の三角形の高さは です。
とすると は原点になり、 で (2) と一致します。 は の二次関数なので、そのグラフは上に凸の放物線です。「 が最大になるのは がいくつのときか」は、第2章の平方完成と第3章の最大・最小を学ぶと答えられます。
「関数」という言葉は、もともと「函数」と書かれていました。作ったのは、19 世紀の中国(清)の数学者・李善蘭(り ぜんらん)です。1859 年、李善蘭はイギリス人宣教師ワイリーと協力して、アメリカの数学者ルーミスの微分積分の教科書を中国語に訳しました。『代微積拾級』というこの本の中で、英語の function に「函数」という訳語をあてたのです。「微分」「積分」という訳語が生まれたのも、この本だとされています。
李善蘭は、函数を次のように説明しています。
「凡此變數中函彼變數者,則此為彼之函數」
おおよそ「ある変数の中に、別の変数が含まれているならば、前者は後者の函数である」という意味です。「函」はここでは「含む・包み込む」の意味で、 の が を「含んでいる」ことを表しています。function の「ファン」に近い音の字を選んだという説もあります(※訳語の選び方については諸説あり)。
日本でも明治時代にこの「函数」が取り入れられ、長く使われました。ところが戦後、1946 年に定められた当用漢字表に「函」の字が入らなかったため、同じ「かん」と読む「関」に書きかえられ、1950 年代に「関数」が定着しました(※公式に「関数」が採られた時期は資料により異なる)。
豆知識
中国では今も「函数」と書きます。韓国語の「함수(ハムス)」も、漢字で書くと「函數」です。「函」は函館(はこだて)や投函(とうかん)の「函」で、「はこ」とも読みます。そこから「数を入れると別の数が出てくる箱」というイメージで函数を説明することもありますが、これは後から付けられた覚え方で、李善蘭の定義文にある「含む」がもともとの意味です。日本語の「関数」も、書きかえのあとで「 と の関係を表す数」と読みかえられ、今ではすっかりなじんでいます。
アメリカの天気予報を見ると、「今日の最高気温は 度」のような数字が出てきます。これは華氏(°F)で、摂氏(°C)に直すと 度です。2 つの目盛りの関係は、一次関数
で表されます。 を代入すると です。
この式は、公式4の考え方で 2 点から決められます。水が凍る温度は摂氏 度・華氏 度、水が沸騰する温度は摂氏 度・華氏 度(どちらも 1 気圧のとき)。つまり一次関数 のグラフは 2 点 , を通るので、傾きは 、切片は です。
なぜ華氏は や のような半端な数なのでしょう。華氏の目盛りを作ったのは、ドイツ生まれでオランダで活躍した器具職人ファーレンハイトで、1724 年ごろのことです。彼は、氷と水と塩(塩化アンモニウム)を混ぜて作れるいちばん冷たい温度を 度、人の体温をおよそ 度として目盛りを刻んだといわれています(※基準点の選び方には諸説あり)。その結果、水の凍る温度がたまたま 度になりました。一方、スウェーデンの天文学者セルシウスが 1742 年に作った目盛りは、はじめ「沸騰が 度、凍るのが 度」という今と逆向きのものでした。まもなく上下が入れかえられて、今の摂氏になっています(※誰が入れかえたかは諸説あり)。
豆知識
「摂氏」「華氏」の「氏」は人名を表します。セルシウスを中国語で「摂爾修斯」、ファーレンハイトを「華倫海特」と書いたことから、それぞれの頭文字をとって摂氏・華氏と呼ぶようになりました。
ところで、2 つの目盛りがちょうど同じ数になる温度はあるでしょうか。 とおくと から 。マイナス 度だけは、摂氏で言っても華氏で言っても同じ寒さです。また、温度の「差」には切片の が関係しません。気温が摂氏で 度上がれば、華氏では 度上がります。差をとると が打ち消し合い、傾き だけが残るからです。
公式6で「 が大きいほど放物線は細い」と学びました。 は より細く、 は太い。放物線にはいろいろな形があるように見えます。ところが、下に凸の放物線 は、どれも拡大・縮小するとぴったり重なる——つまり、すべて相似なのです。
確かめてみます。 上の点 を、原点を中心に 倍に拡大した点を とすると、, です。
拡大した点はすべて の上に乗ります。 のグラフを 倍に引きのばすと、 のグラフになるわけです。同じ計算で、()を 倍に拡大すると になることが分かります。
逆に言えば、「細い放物線」は を縮小したもの、つまり遠くから眺めた です。写真を撮るとき、カメラを放物線から遠ざけるほど、画面の中の放物線は細く写ります。形が違うのではなく、見ている縮尺が違うだけ。 と も、同じ形を別の距離から見たものにすぎません。
豆知識
「どれも相似」になる図形の仲間には、円・正方形・正三角形などがあります。どれも「大きさ」以外に形を決める要素がありません。一方、長方形は縦と横の比によって、楕円はつぶれ具合によって形が変わるので、すべてが相似にはなりません。放物線は、見た目に反して円と同じ「形は 1 種類だけ」の仲間です(楕円のつぶれ具合については、二次曲線の分野で扱います)。
ただし、この話には前提があります。グラフの縦と横の目盛りの間隔が同じであること。グラフ用紙やグラフ作成ソフトで縦の目盛りだけを縮めれば、 はいくらでも細くも太くも見せられます。放物線の「細さ」を比べるときは、目盛りがそろっているかを確かめるのが先です。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、本文の「 を決めると がただ 1 つ決まる」という理解と、公式1〜6が使えれば十分です。「関数は式で書けないといけないの?」「曲線がグラフかどうかはどう見分けるの?」「最大値がないことはどう示すの?」が気になる人のために、集合の言葉(数と式 第5章)を使って根拠を紹介します。
を実数の集合とする。 のどの要素 に対しても、実数 をただ 1 つ対応させる規則 を、 を定義域とする関数という。また、集合
を の値域という。
この定義で大切なのは、「規則」が式である必要はないことです。対応のしかたがはっきり決まっていれば、それは関数です。有名な例に、次の関数があります。
どんな実数も有理数か無理数のどちらか一方なので(数と式 第3章)、 の値はただ 1 つに決まります。定義域は実数全体、値域は です。19 世紀の数学者ディリクレにちなんでディリクレ関数と呼ばれます。どんなに短い区間にも有理数と無理数の両方が含まれるため(ここでは証明しません)、この関数のグラフは紙にかくことができません。それでも、定義1の意味では立派な関数です。
定義1から、2 つの関数が等しいとは「定義域が等しく、定義域のすべての で値が等しい」ことだと分かります。たとえば と は、 ではいつも同じ値ですが、 は で定義されない(分母が になる)ので、別の関数です。本文で と定義域をかっこで書き添えたのも、定義域が関数の一部だからです。 と は、式は同じでも別の関数です。
定義域が の関数 のグラフとは、座標平面上の点の集合
のことである。
グラフは「線」ではなく「点の集まり」として定義されます。点が隙間なく並べば線に見え、ディリクレ関数のように飛び飛びなら線にはなりません。では逆に、座標平面上の図形が与えられたとき、それが何かの関数のグラフかどうかは、どう判定すればよいでしょうか。
座標平面上の点の集合 が、ある関数のグラフであるための必要十分条件は、 軸に平行などの直線 も、 と高々 1 点(1 点以下)でしか共有点をもたないことである。
証明 (必要性) が関数 (定義域 )のグラフであるとする。 のとき、 の点で 座標が のものは だけである。 のとき、そのような点はない。よって直線 と の共有点は高々 1 点である。
(十分性)どの直線 も と高々 1 点で交わるとする。 の点の 座標全体の集合を とし、 に対して、直線 と のただ 1 つの共有点の 座標を と定める。共有点は 1 つなので はただ 1 つに決まり、 は を定義域とする関数である。作り方から であり、 は のグラフである。(証明終)
たとえば円 は、直線 と , の 2 点で交わるので、関数のグラフではありません。「 を入れたら が 2 つ出てくる」わけで、本文の自動販売機でいえば、同じボタンから 2 本出てくる状態です。一方、円の上半分 は、どの縦線とも高々 1 点で交わるので関数のグラフです。放物線 や、公式5の折れ線も、この判定に合格します。
定義域が の関数 について、ある があって、 のすべての要素 で が成り立つとき、 を の最大値という。不等号の向きを逆にした がすべての で成り立つとき、 を最小値という。
ポイントは「」、つまり最大値は実際にとる値でなければならないことです。値域の「上の端」が見えていても、その値を実際にとる が定義域になければ、最大値とは呼びません。
のとき、関数 の値域は である。したがって、最小値は 、最大値は である。
証明 まず、値域の値がこの範囲に入ることを示す。 の各辺に正の数 を掛け、 を足すと
次に、この範囲の値をすべてとることを示す。 を満たす実数 に対し、 とおく。 の各辺から を引いて正の数 で割ると となるので、 は定義域に属し、 である。
以上より、値域は である。, はそれぞれ , で実際にとる値だから、定義3より最小値・最大値である。(証明終)
証明の前半だけでは、「値域は と の間のどこかにある」ことしか言えません。後半の「間の値をすべてとる」があって初めて、値域が隙間のない範囲になります。 のときも、不等号の向きが逆になるだけで同様に示せます。放物線などのなめらかなグラフでも「途中の値をすべてとる」ことは成り立ちますが、一般の場合の証明には数学IIIで学ぶ中間値の定理が必要です。
関数 には最小値が存在しない。
証明 最小値が存在すると仮定し、それを ()とする。 は を満たすので定義域に属し、
となる。これは が最小値であることに反する。よって最小値は存在しない。(証明終)
背理法(数と式 第6章)の典型的な使い方です。値域は で、 は にいくらでも近い値をとりますが、「最小の候補」の は値域に入っていません。本文のエスカレーターで、ロープの張られた降り口の話をしたのはこの状況です。
逆に、定義域が のように両端を含む範囲で、グラフが途切れずにつながっている関数なら、最大値と最小値は必ず存在することが知られています(最大値・最小値の定理。証明は大学で学びます)。第3章で「定義域つきの最大・最小」を求めるとき、答えがいつも見つかるのは、この定理が裏で支えているからです。
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