問1
偏角 を として、 を極形式で表しなさい。
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(,,)
目次 / 複素数平面と二次曲線 / 数学C
—— 点を「距離」と「向き」で表すと、かけ算は拡大と回転になる ——
第1章では、複素数 $a + bi$ を「横にどれだけ・縦にどれだけ」で決まる点として表しました。この章では、同じ点を「原点からの距離」と「実軸の正の向きから測った角」の2つで表す**極形式**を学びます。角は三角比と三角関数 第5章の弧度法で書きます。極形式で見ると、複素数どうしのかけ算は「長さはかけ算、角は足し算」という単純な規則になり、割り算はその逆になります。そこから、ある複素数をかけることが点を回転させる操作だと分かります。最後に、原点以外の点を中心とする回転を、平行移動と組み合わせて表します。
第1章では、複素数 を「実軸方向に 、虚軸方向に 」進んだ点として表しました。同じ点は、「原点からどれだけ離れているか」と「どの向きにあるか」の2つでも決められます。距離は第1章の絶対値 です。向きは、三角比と三角関数 第5章の一般角と同じように、実軸の正の向きから反時計回りに測った角で表します。
でない複素数 について、 とする。実軸の正の部分から、原点 と点 を結ぶ線分まで測った角 を の偏角といい、 で表す。このとき , なので
と表せる。これを の極形式という。
で確かめましょう。まず です。偏角 は、, を満たす角なので です。よって
となります。
, という式は、三角関数 第6章で学んだ単位円の点 を 倍したものです。点 を原点に向かって縮め、原点からの距離を にした点が、単位円の上の点 に当たります。極形式は、「単位円の点を 倍した点」という読み方ができるのです。
偏角を求めるときは、 だけで決めないようにします。たとえば と はどちらも ですが、偏角は と で、向きが正反対です。「点を打つ → を求める → , の値と象限から を決める」の順に進めると迷いません。三角関数 第11章の合成で、点 から角を読んだのと同じ手順です。
待ち合わせ場所を人に教えるとき、「駅から東へ m、北へ m」と言うこともできますし、「駅から北東よりの方向へまっすぐ m」と言うこともできます。前者が の書き方、後者が極形式の書き方です。どちらでも同じ場所にたどり着けますが、この章で見るように、かけ算をするときは後者のほうがずっと便利になります。
極形式 は、点を「原点からの距離 」と「実軸から測った角 (偏角)」で表す書き方だということです。
(1) 偏角 を として、次の複素数を極形式で表しなさい。
① ② ③
(2) を の形で表しなさい。
【解答】
(1)
① です。, で、点 は第4象限にあるので です。
② です。, なので です。
③ です。, なので です。
① は も偏角の1つですが、 の範囲で答えるので にします。③ のように虚軸上の点は、図を思い浮かべれば偏角がすぐに読めます。
(2) , なので
です。
極形式には決まった形があります。見た目が似ていても、形がそろっていない式は極形式とは呼びません。
極形式 は、次の4つがそろった形である。
① ② 実部が 、虚部が ③ 2か所の角が同じ ④ 間の符号がプラス
そろっていないときは、三角関数の性質を使って直す。
特に のとき
である。
3本の式は、三角関数 第6章の公式4・公式5(,, の公式)を当てはめただけです。たとえば1本目は、, から出てきます。
は極形式にそっくりですが、④ がマイナスです。値を計算すると で、この点は第4象限にあります。偏角は ではなく ( で選ぶなら )です。「見た目の角をそのまま偏角と読まない」ことが大切です。
共役と の式は、第1章 公式2 の図と一致します。 は実軸に関して対称な点なので、角が上下反対の になります。 は原点に関して対称な点なので、ちょうど半周まわった の向きです。どちらも原点からの距離 は変わりません。
役所に出す書類は、決まった欄に決まった書き方で記入しないと受けつけてもらえません。中身が同じでも、名前の欄に住所を書いたら差し戻されます。極形式も、「 は正、 が前で に 、角は2か所同じ、間はプラス」という書式を守ってはじめて、 と を「距離」「偏角」として読めるのです。
極形式は「、 と 、同じ角、プラス」の書式で書き、崩れているときは ,, の公式で直すということです。
とし、偏角は を用いた式で書くものとします。次の複素数を、それぞれ極形式で表しなさい。
(1) (2)
【解答】
(1) 実部が 、虚部が です。, なので
です。点は第2象限にあり、点 と虚軸に関して対称な位置です。
(2) まず と分けて、 にします。かっこの中は公式2の3本目で
です。これに をかけると、公式2の2本目より角が だけ増えるので
です。
(確かめ)加法定理で , となり、元の式と一致します。
直す順番は「 の符号を片づける → と の位置を合わせる → 符号を合わせる」です。1つずつ片づければ、どんな形でも極形式にできます。
極形式のいちばんの使いどころが、かけ算です。
, のとき
である。したがって
が成り立つ(偏角の等式は、 の整数倍の違いを除いて成り立つ)。
かっこの部分を展開して、実部と虚部に分けます。
2行目は、三角比と三角関数 第9章の加法定理そのものです。 は「仲間どうし・逆符号」、 は「たすき掛け・同符号」で、展開した形とぴったり重なります。
, で確かめましょう。, なので、公式3 から
です。展開すると で、たしかに一致します。
第1章 公式8 で、(長さはかけ算)を学びました。公式3 は、そこに「角は足し算」を加えて、かけ算の全体像を完成させたものです。
第1章では、写真アプリのズームを重ねると倍率がかけ算になる、という話をしました。写真アプリには「回転」ボタンもあります。 倍にズームして 回し、さらに 倍にズームして 回すと、写真は元の 倍の大きさで、 回った向きになります。倍率はかけ算、回した角は足し算です。複素数 をかけることは、この「ズーム 倍と回転 」を1回で行う操作なのです。
極形式どうしのかけ算は、絶対値をかけ、偏角を足すだけで済むということです。
(1) , のとき、 を極形式で表しなさい。また、 の形でも表しなさい。
(2) を、展開する方法と極形式を使う方法の2通りで計算することにより、 と の値を求めなさい。
【解答】
(1) 絶対値をかけ、偏角を足します。, なので
です。, より、 です。
(確かめ), を展開すると、 です。
(2) 展開すると
です。一方、, なので、 より
です。2つの結果の実部と虚部を比べて
です。三角関数 第9章で加法定理から求めた値と同じになりました。加法定理を覚えていなくても、複素数のかけ算を1回すれば取り出せます。
かけ算の逆である割り算は、操作も逆になります。
, のとき
である。したがって , が成り立つ。特に、 のとき
である。
公式3 で , とすると
です。つまり の逆数は です。 で割ることは、 をかけることと同じなので、公式3 により絶対値は 、偏角は になります。
と (公式2)は、どちらも偏角が で、向きが同じです。違うのは距離だけで、 は 、 は です。これは第1章の を、図で読んだものになっています。
動画を巻き戻すと、進んだ場面が逆の順に戻っていきます。 をかけることが「 倍に拡大して だけ回す」再生だとすれば、 で割ることは、それを巻き戻して「 倍に縮めて だけ回す」ことです。かけてから割れば、元の場面にぴったり戻ります。
割り算は、絶対値を割り、偏角を引けばよく、 は と同じ向きで距離が の点だということです。
(1) を極形式で表し、さらに の形で表しなさい。
(2) のとき、 と を、偏角 を として、それぞれ極形式で表しなさい。
【解答】
(1) , です。絶対値は 、偏角は なので
です。
(確かめ)分母の共役 を分母・分子にかけると、 で一致します。
(2) 公式4 より、 の絶対値は 、偏角は です。 に入れるため を足すと なので
です。公式2 より、 は絶対値 、偏角 なので
です。
のように , の値がすぐに分からない角でも、極形式なら偏角の計算だけで答えが出せます。
公式3 を「点の動き」として読み直します。
とする。点 に をかけた点 は、点 を原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍した点である。特に
とすると、公式3 から です。距離が から に、偏角が から に変わります。これが「 回して 倍」の意味です。 なら反時計回り、 なら時計回りに回ります(三角関数 第5章の一般角と同じ向きの約束です)。
なので、 をかけると 回ります。たとえば に をかけると で、点 が点 に移ります。 を2回かけると の回転を2回、つまり の回転で、これは第1章 公式2 の「 は原点に関して対称」と同じです。 という式は、「4分の1回転を2回すると半回転」と言いかえられるのです。
三角関数 第9章 j18 で、点 を原点のまわりに だけ回転した点が になることを示しました。 を展開すると、実部と虚部がちょうどこの2つになります。複素数を使うと、あの回転の公式が「かけ算1回」で書けてしまいます。
体育の授業の号令を思い出してください。「左向け左」で体の向きが 左(反時計回り)に回り、「回れ右」で 回ります。 をかけるのは「左向け左」、 をかけるのは「回れ右」です。「左向け左」を2回続けると、「回れ右」と同じ向きになります。これが です。
絶対値 の複素数 をかけることは、原点のまわりに だけ回すことで、 をかけると 回るということです。
(1) 点 を、原点のまわりに だけ回転した点を表す複素数を求めなさい。
(2) 原点 と点 に対して、三角形 が正三角形となるような点 を表す複素数をすべて求めなさい。
【解答】
(1) をかけます。
(2) 正三角形なので , です。点 は、点 を原点のまわりに または だけ回転した点です。
回転するときは
回転するときは
よって です。
正三角形の問題は「回転の向きが2通り」あることを忘れないようにします。2つの答えは、直線 をはさんで反対側にあります。
公式5 の回転の中心は原点でした。中心が別の点のときは、第1章の平行移動と組み合わせます。
点 を中心として、点 を だけ回転した点を とすると
すなわち
である。
3つの手順に分けると分かりやすくなります。
平行移動では点どうしの位置関係が変わらないので、この3つの手順で「 を中心とする回転」ができあがります。第1章 公式3 で見たように、 は「 から見た の位置」、 は「 から見た の位置」です。公式6 は「 から見た位置を だけ回す」と読むこともできます。
分度器で角を測るときは、まず分度器の中心の印を角の頂点にぴったり合わせます。中心がずれていると、目盛りを正しく読めません。点 を中心に回すときに の平行移動をするのは、回転の「分度器」の中心である原点を、点 に合わせる作業に当たります。
点 を中心とする回転は、「 を原点に運ぶ → 原点のまわりに回す → 元に戻す」の3手順で、式は になるということです。
(1) 正方形 の頂点は、この順に反時計回りに並んでいます。, のとき、頂点 , を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(2) 点 を、点 を中心として だけ回転した点を表す複素数を求めなさい。
【解答】
(1) 頂点が反時計回りに並ぶので、点 は、点 を点 を中心として だけ回転した点です。 とすると、公式6 で なので
よって です。
点 は、点 を から への移動と同じだけ平行移動した点です(第1章 公式3)。
(確かめ)点 を点 を中心として だけ回転しても、 となり、同じ点 が得られます。
(2) 中心は です。 なので、公式6 より
です。
最後の「」を忘れると、原点のまわりの回転と区別がつかなくなります。中心を戻すところまでが1セットです。
極形式で見た複素数の計算と、複素数平面での意味を並べておきます。 とします。
| 複素数の計算 | 絶対値 | 偏角 | 複素数平面での意味 |
|---|---|---|---|
| 実軸に関して対称移動 | |||
| 原点に関して対称移動( 回転) | |||
| と同じ向きで、距離が | |||
| 長さはかけ算、角は足し算 | |||
| 長さは割り算、角は引き算 | |||
| 変わらない | 原点のまわりに 回転 | ||
| 変わらない | 原点のまわりに 回転 |
同じ数を何回もかけるとどうなるでしょうか。公式3 をくり返すと、 を 回かけた は、絶対値が 、偏角が になりそうです。第3章では、これをド・モアブルの定理として確かめ、 を満たす複素数(1 の 乗根)が、単位円の上に正多角形の頂点として並ぶことを見ていきます。第1章 j18 に出てきた は なので、 は「 回転を3回」で になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
偏角 を として、 を極形式で表しなさい。
(,,)
問2
を の形で表しなさい。
問3
, のとき、 を極形式で表しなさい。
(絶対値は 、偏角は )
問4
, のとき、 を極形式で表しなさい。
(。絶対値は 、偏角は )
問5
点 を、原点のまわりに だけ回転した点を表す複素数を求めなさい。
( をかける:)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1) (2) (3) (4)
偏角 を として、上の (1)〜(4) を、それぞれ極形式で表しなさい。
(1) (2) (3) (4)
「点を打つ → を求める → , の値と象限から 」の順に進めます。
(1) です。, で、点は第4象限にあるので です。
(2) です。, で、第3象限なので です。
(3) 点 は実軸の負の部分にあるので、, です。 です。
(4) 点 は虚軸の負の部分にあるので、, です。
(2) を だけで考えると と間違えやすいので、象限を必ず確かめます。
問2 ★
(1) (2) (3)
上の (1)〜(3) を、それぞれ の形で表しなさい。
(1) (2) (3)
, の値を代入して、 をかけます。
(1) , なので
(2) , なので
(3) , なので
(2) の偏角 は、 を足した と同じ向きです。偏角が負でも、値を代入する手順は変わりません。
問3 ★
とし、偏角は を用いた式で書くものとします(範囲は問いません)。
(1) (2) (3)
上の (1)〜(3) を、それぞれ極形式で表しなさい。
(1) (2) (3)
公式2 の書式「、 と 、同じ角、プラス」に合わせます。
(1) 間の符号がマイナスです。, より
です。偏角を として と書いても正解です。
(2) にあたる数が負です。 と分け、 をかけると角が 増えることを使います。, より
(3) 実部が 、虚部が です。, より
です。
(3) は と同じ式です。 をかけると角が 増える(公式5)ことからも、同じ答えが出ます。
問4 ★
, とします。偏角 を として、 と を、それぞれ極形式で表しなさい。
は , は
まず、それぞれを極形式で表します。
積は絶対値をかけて偏角を足します。, なので
商は絶対値を割って偏角を引きます。, なので
(確かめ) で、絶対値の2乗は 、点は第2象限にあります。 は第2象限の角なので合っています。
問5 ★
(1) (2)
点 を、原点のまわりに上の (1)(2) の角だけ回転した点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
をかけます(公式5)。
(1) なので
(2) なので
(確かめ)(2) の点 は、点 を時計回りに 回した位置にあり、原点からの距離はどちらも です。
問6 ★
(1) 点 に をかけると、点 がどのように移るか
(2) 点 を原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍にした点
上の (1) の移り方と、(2) の点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(1) 原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍にした点に移る (2)
(1) を極形式で表すと
です。公式5 より、 をかけると、点 は原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍にした点に移ります。
(2) (1) の移し方そのものなので、 をかけます。
(確かめ), で、距離はたしかに 倍です。
「回転と拡大」をまとめて1つの複素数で表せるのが、極形式の強みです。
問7 ★
とします。 の絶対値と、 の範囲の偏角 を、展開せずに求めなさい。
,
それぞれを極形式で表します。
公式3 より、絶対値は 、偏角は です。
(確かめ)展開すると です。絶対値の2乗は で 、点は第2象限にあり、 も第2象限の角です。
問8 ★
(1) (2)
点 を、点 を中心として上の (1)(2) の角だけ回転した点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
公式6 の3手順で考えます。まず を原点に運ぶと、 は に移ります。
(1) の回転は をかけることなので、 です。中心を元に戻して
(2) の回転は をかけることなので、 です。中心を元に戻して
(確かめ) からの距離は、,, で、すべて等しくなっています。
問9 ★★
を、展開する方法と極形式を使う方法の2通りで計算することにより、 と の値を求めなさい。
,
展開すると
です。一方、, です。 なので
です。実部と虚部を比べると
です(分母・分子に をかけて有理化しました)。
(確かめ) は第2象限の角なので、 が負、 が正で、符号が合っています。三角関数 第9章で と分けて加法定理で求めた値とも一致します。
問10 ★★
2点 , に対して、三角形 が正三角形となるような点 を表す複素数をすべて求めなさい。
点 は、点 を点 を中心として または だけ回転した点です。 から見た の位置は
です。これを 回すと、偏角は または になります。
回すとき: なので、 です。
回すとき: なので、 です。
よって です。
(確かめ) のとき , で、 と等しくなります。
から見た の位置を極形式にしておくと、回したあとの点も極形式のまま読めるので、計算が軽くなります。
問11 ★★
ある点 を原点のまわりに だけ回転すると、点 になりました。 を求めなさい。
回転の式は です。元に戻すには、逆向きに だけ回転します(公式4:割り算は角の引き算)。
なので
です。
(確かめ) で、元の点に戻ります。
極形式で見ると、 と はどちらも絶対値が で、偏角はそれぞれ , です。偏角の差がちょうど です。
問12 ★★
()とし、 とします。
(1) が負の実数になるとき
(2) が純虚数になるとき
上の (1)(2) それぞれの場合について、 の値と を求めなさい。
(1) , (2) のとき , のとき
なので、公式3 より
です。 より、偏角 の範囲は です。
(1) 負の実数は、実軸の負の部分にある点で、偏角が の向きです。範囲内で となるのは で、このとき です。
(2) 純虚数は、原点を除く虚軸上の点で、偏角が または の向きです。範囲内で となるのは です。
のとき , のとき です。
「実数」「純虚数」の条件は、極形式では「偏角が実軸・虚軸の向き」と読めます。偏角の範囲を先に書いておくと、答えの取りこぼしを防げます。
問13 ★★
とします。
(1) (2)
偏角 を として、上の (1)(2) を、それぞれ極形式で表しなさい。
(1) (2)
公式2 より、 は絶対値が 、偏角が です。絶対値と偏角を別々に計算します。
(1) 絶対値は 、偏角は です。 を足して にすると
(2) なので、公式3 より絶対値は 、偏角は です。これを で割ると、絶対値は 、偏角は です。
で割ることは、偏角 を引く、つまり を足すことです。(1) の は絶対値がいつも になり、点 の偏角の 倍の向きを指します。
問14 ★★
正六角形 の頂点は、この順に反時計回りに並んでいます。, のとき、頂点 , を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
,
正六角形の外角は です。反時計回りに辺をたどると、次の辺へ進む向きは ずつ左へ回ります。つまり「前の辺の移動」に をかけたものが「次の辺の移動」です。
から への移動は です。 から への移動は
なので、 です。
から への移動は、さらに 回して
なので、 です。
(確かめ) です。正六角形で向かい合う頂点を結ぶ対角線は、1辺の 倍なので合っています。
問15 ★★
, のとき、 と を、それぞれ求めなさい。
,
なので、 です。
次に と変形します。
その絶対値は です。積の絶対値は絶対値の積なので
です。
図で読むと、点 は点 を原点のまわりに 回して 倍した点です。三角形 は 辺が と 、間の角が なので、余弦定理(三角比と三角関数 第3章)でも となり、同じ答えが出ます。
問16 ★★
(1) ,
(2) ,
上の (1)(2) を満たす複素数 を、それぞれ の形で求めなさい。
(1) (2)
, を使って、 を取り出します。
(1) なので、 より です。
(2) なので、 より です。
(確かめ)(2) で で、虚軸の正の部分にあり、偏角は です。
偏角の等式は の整数倍の違いを除いて成り立ちますが、 と は ごとに同じ値なので、 は1つに決まります。
問17 ★★★
,,, で、,,, はどれも より大きく より小さい角とします。
(1) を計算して、 の値を求めなさい。
(2) を計算して、 の値を求めなさい。
(1) (2)
点 は第1象限にあり、 です。 で なので、 は の偏角です。
同じように、,, はそれぞれ ,, の偏角です。
(1) 公式3 より、 の偏角の1つは です。一方、計算すると
なので、( は整数)です。 なので、 です。
(2) 同様に、偏角の1つは です。計算すると
で、 です。 の範囲で偏角が となるのは だけなので、 です。
偏角は の整数倍の違いを除いてしか決まらないので、最後に「角の和の範囲」で1つにしぼるところが大切です。
1706年、イギリスのマチンは同じ考え方の等式 (,)を使って、円周率を100桁まで計算しました。複素数で書くと の偏角が になる、という等式です。
問18 ★★★
とし、偏角は を用いた式で書くものとします。
(1) のとき
(2) のとき
上の (1)(2) それぞれの場合に、 を極形式で表しなさい。
(1)
(2)
三角関数 第10章の半角の公式・2倍角の公式を、 について使います。
より
です。この形は のときだけ極形式なので、 の符号で場合を分けます。
(1) より です。よって上の式がそのまま極形式で
(2) より なので、 は になれません。 を前に出し、公式2 の「 をかけると角が 増える」を使います。
図で読むと、 なので、4点 ,,, はひし形をつくります(第1章 公式3 の平行四辺形で、2辺の長さが等しいもの)。ひし形の対角線は角を2等分するので、 の向きは と のちょうど真ん中の です。(2) では点 が原点をはさんで反対側に来るので、 だけずれます。
問19 ★★★
原点 と2点 , があり、 とします。点 を原点のまわりに だけ回転した点を ,点 を原点のまわりに だけ回転した点を とします。このとき、 であり、直線 と直線 が垂直であることを示しなさい。
(証明), より 。 から への移動は、 から への移動を 回転したもの
公式5 より、 は , は で表されます。 から への移動と、 から への移動を表す複素数は
です。1つ目に をかけると
となり、2つ目と一致します。つまり
です。 より なので、 で、 でもあります。
両辺の絶対値をとると、 より 、すなわち です。
また、 から への移動は、 から への移動に をかけたもの、つまり だけ回転したものです。向きが ずれているので、直線 と直線 は垂直です。(証明終)
図で読むと、, は、三角形 の辺 , をそれぞれ1辺とする正方形の頂点です(,, が反時計回りなら、2つの正方形は三角形の外側にできます)。「 と は長さが等しく垂直」という図形の性質が、 をかける1行で示せました。
問20 ★★★
点 を、点 を中心として だけ回転し、続けてその点を、点 を中心として だけ回転した点を とします。
(1) を の式で表しなさい。
(2) 点 を点 に移すこの移動は、ある1つの点を中心とする回転1回と同じです。その中心を表す複素数と、回転の角を求めなさい。
(1) (2) 中心 ,回転の角 (点 に関する対称移動)
(1) 1回目の回転でできる点を とします。公式6 で なので
です。2回目は点 が中心なので
(2) 回転の中心は、動かない点です。 となる点を とすると
です。(1) の式から を2つに分けると
と書けます。これは「点 から見た位置 に をかける」式なので、公式6 より、点 を中心として だけ回転する移動です。
よって です(点 に関する対称移動と同じです)。
(確かめ) のとき、1回目で 、2回目で です。(1) の式でも 、点 と点 の真ん中は で、たしかに点 に関して対称です。
の回転を2回すると、中心が違っても全体としては の回転になります。かける複素数 が回転の角を決め、中心の位置は足し算の部分が決めているのです。
物理学者のガモフは、1947年に出した一般向けの本『1, 2, 3…無限大』の中で、複素数の使い道を見せるために、こんな宝探しの話を書いています(※物語の細部は版や訳によって少しずつ異なります)。
ある若者が、ひいおじいさんの遺品から古い羊皮紙を見つけました。そこには、ある島に宝を埋めた場所が、次のように書かれていました。
「島には、絞首台が1つと、樫の木と松の木が1本ずつある。絞首台から樫の木まで歩数を数えながらまっすぐ歩き、樫の木で右へ直角に曲がって、同じ歩数だけ進んで杭を打て。絞首台に戻り、今度は松の木まで歩数を数えながら歩き、松の木で左へ直角に曲がって、同じ歩数だけ進んで杭を打て。宝は2本の杭のちょうど真ん中にある。」
若者は島へ渡りました。2本の木はすぐに見つかりましたが、絞首台は朽ちて跡形もありません。出発点が分からないので、若者はあちこちを掘り返したあげく、何も見つけられずに帰ってきました。
ところが、この章の道具を使うと、絞首台の位置は要らないのです。樫の木を点 、松の木を点 、絞首台を点 とします。右へ直角に曲がるのは をかけること、左へ直角に曲がるのは をかけることです(公式5)。
2本の杭の真ん中は、2つの複素数を足して で割った点です(第4章で詳しく扱います)。足してみると
で、 がきれいに消えてしまいます。宝は、絞首台がどこにあったとしても、点 にあるのです。つまり、樫の木から松の木へ向かって左側に、2本の木の間の距離の半分だけ離れた場所です。試しに絞首台が原点 にあったとすると、杭は と で、たしかに真ん中は です。
豆知識
ガモフは、宇宙が高温・高密度の状態から膨らんできたという「ビッグバン」の考え方を早くから研究した一人です。1948年に弟子のアルファーと書いた論文には、実際には研究に加わっていなかった物理学者ベーテの名前も並べられ、3人の名前が「アルファー・ベーテ・ガモフ」とギリシャ文字の ,, に聞こえるようにされました。宝探しの話と同じく、ガモフの遊び心がよく表れた逸話です。
複素数をかけると、平面の点が回ります。それなら、3次元の空間の回転も、何かの「数」のかけ算で表せないでしょうか。この問いに取りつかれたのが、アイルランドの数学者ハミルトンです。数と式 第11章の厳密定義で、複素数を実数の組 として定義した人物でもあります。
平面の点が2つの数の組 なら、空間の点は3つの数の組 で表せばよさそうです。ハミルトンは、この3つ組のかけ算の規則を十年以上も探し続けましたが、どうしてもうまくいきませんでした(※期間は資料によって異なります)。朝食の席では、息子たちから毎日のように「お父さん、3つ組のかけ算はできるようになった?」と聞かれ、「足し算と引き算しかできないよ」と答えていたそうです。
1843年10月16日、ハミルトンは妻とダブリンの運河沿いを歩いていました。ブルーム橋にさしかかったとき、答えがひらめきます。数を3つではなく 4つ 組にし、新しい単位 ,, が
を満たすとすればよい、というものでした。ハミルトンは忘れないうちにと、ナイフでこの式を橋の石に刻みつけたといわれます。こうして生まれた の形の数が四元数です。
四元数には、ふつうの数にはない性質があります。 なのに で、かける順番を入れかえると答えが変わるのです。これは欠点ではありません。手元の本を、縦の軸のまわりに 回してから横の軸のまわりに 回した場合と、順番を逆にした場合を比べてみてください。本の向きが違ってしまいます。空間の回転は、もともと順番で結果が変わるものなので、それを表す数も順番で答えが変わる必要があったのです。
四元数は、今では3Dゲームや映画のCGでキャラクターやカメラの向きを計算したり、人工衛星や探査機の姿勢を制御したり、スマートフォンが自分の傾きを知ったりするのに使われています。平面の回転を複素数のかけ算で書けるように、空間の回転を四元数のかけ算で書けるからです。
豆知識
ハミルトンが刻んだ文字は今では残っていませんが、ブルーム橋には記念の石板がはめこまれています。毎年10月16日には、ダブリン近郊のダンシンク天文台からブルーム橋まで歩く「ハミルトン・ウォーク」という催しが開かれ、世界中から数学好きが集まります。
工場で車を組み立てるロボットアームは、いくつもの関節をもっています。関節の角度を決めたとき、アームの先端はどこに来るのでしょうか。平面の上で動く、関節が2つのアームで考えてみましょう。
根元(肩)を原点に置き、肩からひじまでの長さを 、ひじから先端までの長さを とします。肩の関節を実軸から だけ回し、ひじの関節をそこからさらに だけ曲げます。ひじの位置は、長さ で偏角 の点です。先端までの腕は、肩が回ったぶんと、ひじが曲がったぶんの両方だけ向きが変わっているので、偏角は です。先端の位置は、この2本の矢印を足して
となります。
たとえば ,,, なら、ひじは 、先端へ向かう腕は偏角 で長さ なので です。先端は に来ます。
ポイントは、「根元に近い関節を回すと、その先にある部分がすべていっしょに回る」ことです。これは、先にある腕に をかけることに当たります。関節が6つある産業用ロボットでも、根元から順に「回転のかけ算」を重ねていけば、先端の位置が計算できます。関節ごとの角度が、偏角の足し算として積み重なっていくのです。
豆知識
角度から先端の位置を求める計算を順運動学、逆に「先端をこの位置に持っていくには、関節を何度にすればよいか」を求める計算を逆運動学といいます。逆のほうがずっと難しい問題です。上の例で先端を に置きたいとき、肩から先端までの距離は です。3辺が ,, の三角形に余弦定理を使うと となり、ひじの角は の2通りに決まります。人間の腕でも、同じ場所に手を置くのに「ひじを上げる」「ひじを下げる」の2つの姿勢があるのと同じです。
※ここは発展ページです。本文では、偏角を「実軸の正の向きから測った角」と図で説明し、積の偏角が和になることを加法定理で確かめました。ここでは偏角を式で定義し直し、「極形式はどこまで1通りに決まるのか」「偏角の等式はどういう意味で成り立つのか」をはっきりさせます。最後に、複素数をかける操作が図形の形を変えないことを示します。
でない複素数 (, は実数)について、 とする。
を満たす実数 を、 の偏角という。 が偏角の1つであるとき、 の偏角全体は ( は整数)の形の実数全体である。
この定義がきちんと意味をもつことを確かめます。 なので で、 です。つまり点 は単位円の上にあります。三角比と三角関数 第6章で見たように、単位円の上の点はどれも の形に書けるので、条件を満たす は必ず存在します。
また、2つの角 , で と の値がどちらも等しいのは、単位円の上の同じ点を指すとき、つまり動径が一致するときです。三角関数 第5章より、それは が の整数倍のときに限ります。これが定義1 の最後の文の理由です。
のときは で割れないので、偏角は定めません。原点には「向き」がない、ということです。
, と実数 , について
が成り立つのは、 かつ となる整数 があるとき、またそのときに限る。
証明 () である。両辺の絶対値をとると、第1章 公式8 より 、すなわち である。両辺を ()で割ると で、, の値は実数なので、実部と虚部を比べて , である。定義1 のあとで述べたことから、 は の整数倍である。
(), は周期 をもつので、, である。 とあわせて両辺は等しい。(証明終)
という条件がないと、一意性はくずれます。たとえば と は同じ複素数 ですが、「」にあたる数が と 、「角」が と で、どちらも違います。本文の公式2 で「」を書式の最初に置いたのは、定理1 を成り立たせるためです。
でない複素数 , について、 を の偏角の1つ、 を の偏角の1つとする。このとき、 は の偏角の1つであり、 は の偏角の1つである。
証明 , とすると , である。展開して加法定理を使うと、本文の公式3 と同じ計算で
を得る。 なので、定義1 より は の偏角である。商は、 の偏角の1つを とすると、 にいま示したことを使って が の偏角になる。定義1 より と書けるので、 も の偏角である。(証明終)
本文では と書きましたが、定理2 が言っているのは「右辺は左辺の偏角の1つ」ということです。偏角を の1つの値に決めてしまうと、等式は成り立たないことがあります。たとえば ですが、 で です。 は と等しくありません。 だけずれているのです。
そこで、2つの角 , の差が の整数倍であることを
と書き、「 を法として等しい」と読むことがあります。この記号を使えば、定理2 は と正確に書けます。時計の針が 時と 時で同じ位置を指すように、偏角は「1周ぶんの違いは気にしない」数なのです。
とし、複素数平面の各点 を点 に移す移動を考える。このとき、任意の2点 , について
が成り立つ。したがって、一直線上にない3点 ,, を頂点とする三角形 は、この移動で、3点 ,, を頂点とする三角形 に移り、2つの三角形は相似比 で相似である。特に のとき、2つの三角形は合同である。
証明 である(第1章 公式8)。同じように , なので、3辺の比がすべて に等しい。
3点 ,, が一直線上にあるとすると、第1章 公式4 より となる実数 がある。両辺を で割ると となり、,, が一直線上にあることになって仮定に反する。よって三角形 ができ、3組の辺の比がすべて等しいので、中学で学んだ相似条件より2つの三角形は相似である。 なら3辺がそれぞれ等しいので合同である。(証明終)
本文 公式5 の「 をかけると 回して 倍」は、図形でいえば「形を保ったまま、回して拡大する」ことです。定理3 はそれを、距離の計算だけで確かめたものです。点 を中心とする回転(公式6)も、 と平行移動を組み合わせただけなので、同じように図形を合同な図形に移します。
一方、共役をとる移動 も、 なので距離を変えません。けれどもこれは実軸での折り返しで、三角形を「裏返し」にします。反時計回りに並んでいた頂点は、時計回りに並びかわります。複素数をかける移動は、形も向きの回り方も保つ、という点で折り返しと区別されます。
複素数 に、4つの実数を正方形に並べた
を対応させます。このような数の並びを行列といい、大学の数学では「行列どうしのかけ算」を定めます。その規則で計算すると、複素数のかけ算と行列のかけ算がぴったり対応することが分かっています。とくに に対応する行列は
で、回転行列と呼ばれます。三角関数 第9章 j18 の回転の公式 の係数が、そのまま並んでいます。複素数のかけ算は、平面の回転と拡大を表す特別な行列のかけ算だった、ということです。
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