問1
点 を実軸に関して対称移動した点と、原点に関して対称移動した点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
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実軸:,原点:( と )
目次 / 複素数平面と二次曲線 / 数学C
—— 複素数を平面上の点として眺めると、足し算は平行移動に、絶対値は距離になる ——
この章では、数と式 第11章で学んだ複素数 $a + bi$ を、平面上の点として表します。実数は数直線の上に並べられましたが、複素数は実部と虚部の2つの実数でできているので、1本の直線では足りません。そこで、座標平面の点 $(a,\ b)$ に複素数 $a + bi$ を対応させた「複素数平面」を考えます。共役な複素数や $-\alpha$ が平面上でどこにあるか、足し算・引き算・実数倍が点をどう動かすかを見たうえで、原点からの距離として「絶対値」を定め、2点間の距離を複素数の引き算で表します。最後に、共役な複素数と絶対値の性質を整理し、図形を複素数の計算で扱う準備をします。
数と式 第11章では、複素数 (, は実数)の計算を学びました。実数なら数直線の上に1つの点として並べられますが、複素数には実部 と虚部 という2つの実数があります。2つの数で位置が決まるものといえば、座標平面の点 です。
座標平面の点 に複素数 を対応させると、すべての複素数を平面上の点で表せる。このように複素数を表した平面を複素数平面(ガウス平面)という。
点 が複素数 を表すとき と書き、点 を単に点 ともいう。
たとえば は、実軸方向に 、虚軸方向に 進んだ点 です。 は点 、 は点 を表します。虚部が の複素数、つまり実数は、虚軸方向に進まないので実軸の上に並びます。これまで使ってきた数直線は、複素数平面の実軸そのものです。
数と式 第11章の相等「 かつ 」は、複素数平面では「同じ点を表す」という意味になります。実部と虚部の組が決まれば点が1つに決まり、逆に点が決まれば複素数が1つに決まるのです。
電車は線路の上しか走れません。前へ進むか後ろへ戻るか、動ける向きは1つだけです。実数は、この線路に並んだ駅のようなものでした。一方、広場を歩く人は、前後に加えて左右にも動けます。複素数平面は、線路(実軸)のまわりに広場を広げ、「横にどれだけ・縦にどれだけ」の2つで場所を決められるようにしたものです。
複素数 を座標平面の点 として表したものが複素数平面で、実数は実軸上、純虚数は虚軸上に並ぶということです。
(1) 次の複素数を表す点が、第何象限にあるか、または実軸上・虚軸上のどちらにあるかを求めなさい。
① ② ③ ④
(2) を実数とします。複素数 を表す点が虚軸上にあるときと、実軸上にあるときの、 の値と をそれぞれ求めなさい。
【解答】
(1) 実部を横の位置、虚部を縦の位置として読みます。
① 点 なので です。
② 点 なので です。
③ 点 なので です。
④ 点 なので です。
(2) は実数なので、実部は 、虚部は です。
虚軸上にあるのは、実部が のときです。 より で、このとき です。
実軸上にあるのは、虚部が のときです。 より で、このとき です。
よって です。
数と式 第11章で学んだ共役な複素数 や、符号を変えた は、複素数平面ではきれいな位置関係になります。
とする。複素数平面上で
である。
で確かめましょう。 は点 で、点 を実軸で折り返した位置です。 は点 で、原点をはさんでちょうど反対側にあります。 は点 、つまり虚軸で折り返した位置です。
実軸上の点は、実軸で折り返しても動きません。これは第11章の「 が実数 」を、図の上で言いかえたものです。
風のない晴れた朝、富士五湖などの湖面には、富士山が逆さまに映る「逆さ富士」が現れます。湖面を境にして、本物の山頂は上に、映った山頂は下に、同じだけ離れて並びます。複素数平面では実軸が湖面の役で、点 と点 は「本物と逆さ富士」の関係です。横の位置(実部)はそのままで、高さ(虚部)だけが上下反対になります。
は実軸、 は原点、 は虚軸に関して、点 と対称な点を表すということです。
とします。点 を次の (1)〜(3) に関して対称移動した点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(1) 実軸 (2) 原点 (3) 虚軸
【解答】
(1) 実軸に関して対称な点は なので、 です。
(2) 原点に関して対称な点は なので、 です。
(3) 虚軸に関して対称な点は なので、 です。
(3) は「実部の符号だけを変える」と覚えてもかまいません。実軸で折り返してから原点に関して対称移動すると、虚軸で折り返したのと同じ位置に来ることも、 という形から読みとれます。
複素数の足し算は、実部どうし・虚部どうしを足すだけでした。これを複素数平面で見ると、点の「移動」になります。
, とする。
, で確かめましょう。 です。原点から点 へは「右へ 、上へ 」進みます。同じ「右へ 、上へ 」を点 から行うと、たどり着くのが点 です。原点 → → と進んでも、原点 → → と進んでも同じ点に着くので、4点は平行四辺形をつくります。
引き算は と考えます。 は「右へ 、下へ 」で、これは点 から点 への移動そのものです。つまり は「 から見た の位置」を表します。数直線で「 から へは だけ進む」と、「行き先 出発点」で計算したのと同じ考え方です。
ボードゲームには「右へ3マス、上へ2マス進む」のような移動カードがあります。同じカードを使えば、どのマスから出発しても、進む向きと道のりは変わりません。複素数 を足すことは、「右へ 、上へ 」のカードを使うことに当たります。どの点に足しても、同じ向きに同じだけずれるのです。
を足すと点は の分だけ平行移動し、 は点 から点 への移動を表すということです。
(1) 点 を実軸方向に 、虚軸方向に だけ平行移動すると、点 になりました。 を求めなさい。
(2) 3点 ,, に対して、四角形 が平行四辺形となるような点 を表す複素数を求めなさい。
【解答】
(1) 実軸方向に 、虚軸方向に の平行移動は、 を足すことです。
よって です。
(2) 点 を表す複素数を とします。四角形 が平行四辺形なので、 から への移動と、 から への移動は同じです。
よって
です。
(確かめ) から へは 、 から へは で一致します。
四角形 は の順に頂点を回ります。向かい合う辺 と で、矢印の向きをそろえて比べるのがコツです。
足し算の次は、実数をかけることを考えます。
とし、 を実数とする。点 は、原点 と点 を通る直線上にある。 なら から見て と同じ側に、 なら反対側にあり、 からの距離は と の距離の 倍である。
したがって、 のとき、3点 ,, が一直線上にあるのは
となる実数 があるとき、またそのときに限る。
また、3点 ,,()が一直線上にあるのは
となる実数 があるとき、またそのときに限る。
に実数 をかけると で、点 になります。たとえば なら、,, は、どれも横と縦の比が のままです。そのため、中学で学んだ比例のグラフ 、つまり原点と点 を通る直線の上に並びます。
3点 ,, の場合は、公式3の引き算を使います。 は から への移動、 は から への移動です。点 を原点まで平行移動して考えれば、「 が直線 上にある」ことは「 から への移動が、 から への移動の実数倍になっている」ことと同じです。
原点に端を留めたゴムひもの先を、点 に結んだとしましょう。引っぱって伸ばせば 、ゆるめて縮めれば 、原点の反対側へ回して引けば の点 に届きます。どれだけ伸び縮みさせても、ゴムひもは原点と を通る1本の直線から外れません。実数倍では向きの軸が変わらず、長さと表裏だけが変わるのです。
実数倍 は原点と点 を通る直線上の点で、3点が一直線上にあることは「移動を表す複素数が実数倍になっている」ことで表せるということです。
次の条件を満たす実数 の値を、それぞれ求めなさい。
(1) 3点 ,, が一直線上にある。
(2) 3点 ,, が一直線上にある。
【解答】
(1) なので、 となる実数 があればよいです。
, は実数なので、実部と虚部を比べて , です。 より です。
(2) から 、 から への移動を表す複素数は
です。 となる実数 があればよいので、実部と虚部を比べて , です。 より です。
(確かめ) のとき、 から への移動は で、たしかに から への移動の 倍です。
「 は実数」とおくから、実部と虚部を別々に比べられます。数と式 第11章の相等で確かめた条件と同じです。
数と式 第3章では、数直線上で原点からの距離を絶対値 と呼びました。複素数平面でも同じように定めます。
原点 と点 の距離を、複素数 の絶対値といい、 で表す。 のとき
である。また、次が成り立つ。
特に である。
点 と原点の距離は、横の長さ 、縦の長さ の直角三角形の斜辺です。三平方の定理から になります。 の実数 なら となり、数と式 第3章の絶対値とぴったり一致します。複素数の絶対値は、実数の絶対値をそのまま平面に広げたものです。
は、数と式 第11章 公式3 の と同じ式です。また、 と は点 と対称な位置にあるので(公式2)、原点からの距離は変わりません。第11章の小話で、交流回路の の大きさを Ω と計算したのが、まさにこの絶対値です。
は、 ではありません。実部と虚部の絶対値をそのまま足すのではなく、2乗して足してから をとります。
公園の入口から、東へ m、北へ m の場所にベンチがあるとします。歩道に沿って歩けば m ですが、芝生を斜めに横切れば m で着きます。絶対値は、この「まっすぐ測った距離」のほうです。
は原点からのまっすぐな距離で、 として共役な複素数とも結びつくということです。
(1) 次の複素数の絶対値を、それぞれ求めなさい。
① ② ③
(2) を満たす実数 の値を求めなさい。
【解答】
(1)
①
②
③
③ は虚軸上で原点から 離れた点なので、図を思い浮かべればすぐに分かります。
(2) は実数なので です。両辺を2乗して
よって です。
絶対値の条件は、両辺を2乗して を外すと扱いやすくなります。
原点からの距離が絶対値なら、2点の間の距離は引き算を使って表せます。
2点 , の距離は
である。, のとき、 となる。
公式3で見たように、 は から への移動を表します。2点をそろって だけ平行移動すると、 は原点 に、 は点 に移ります。平行移動では2点の距離は変わらないので、 は原点と点 の距離、つまり です。 なので、引く順番はどちらでもかまいません。
物差しで2点の間を測るときは、 の目盛りを片方の点に合わせ、もう一方の点の目盛りを読みます。 だけ平行移動するのは、点 に物差しの 、つまり原点を合わせることに当たります。あとは原点からの距離(絶対値)を読めばよいのです。
2点 , の距離は、差の絶対値 で計算できるということです。
3点 ,, を頂点とする三角形 は、どのような三角形かを求めなさい。
【解答】
3辺の長さを、差の絶対値で求めます。
で、さらに です。三平方の定理の逆より なので、三角形 は です。
3辺の長さが分かれば、二等辺三角形か、直角三角形かを判定できます。2乗の形 のまま比べると、根号の計算が省けます。
共役な複素数は、複素数平面で式を扱うときの便利な道具になります。性質をまとめておきましょう。
複素数 , について、次が成り立つ。
(1) ,,()
(2)
(3) が実数
(4) が純虚数 かつ
(1) の和・差・積は、数と式 第11章の厳密定義(定理3)で証明しました。商は、 とおくと なので、両辺の共役をとって です。 なら なので、 が得られます。
(2) は、実軸で2回折り返すと元に戻ることです。(3)(4) は で確かめられます。 は 、つまり のことです。 は 、つまり のことで、さらに なら純虚数です。図でいえば、実軸上の点は実軸で折り返しても動かず、虚軸上の点は実軸で折り返すと原点に関して対称な点と重なります。
(3) を使うと、「 が実数であること」を とおかずに、 を示すだけで確かめられます。
ワープロの「一括置換」で、文書の中の をすべて に置きかえたとします。共役をとるとは、まさにこの置換のことです。 と はどちらも2乗すると になるので、計算の決まりは置換の前後で何も変わりません。そのため、計算を終えてから置換しても、先に置換してから計算しても、同じ結果になります。これが (1) の意味です。
共役をとる操作は和・差・積・商と順番を入れかえてよく、 なら実数、()なら純虚数と判定できるということです。
(1) , を満たす複素数 を求めなさい。
(2) のとき、 は実数であることを示しなさい。
【解答】
(1) (, は実数)とおくと、, です。
より , で、 です。よって です。
別の見方もできます。 と は、和が 、積が の2数なので、数と式 第11章 公式8 より の2つの解です。これを解くと となり、同じ答えになります。
(2) より です。 なので、両辺を で割って
です。よって となります。この共役をとると
で、元の数と等しいので、公式7 (3) より は実数です。(証明終)
「 のとき 」は、この先の章でもくり返し使います。
最後に、かけ算・割り算と絶対値の関係を調べます。
複素数 , と正の整数 について
が成り立つ。一方、和については、一般に は成り立たない。和や差の絶対値は、2乗して
のように計算する。
公式5と公式7を組み合わせると
です。 も も 以上なので、 が得られます。商は にこの式を使えば となり、累乗は積をくり返せば分かります。
たとえば で、 です。一方、 なので、 で一致します。
和のほうは、, なら ですが、 で、等しくありません。そこで2乗の形を展開します。
最後のかっこは とその共役 の和なので、実数です。
写真アプリで画面を 倍にズームし、そこからさらに 倍にズームすると、元の 倍の大きさで見えます。倍率は、かけ算で重なっていきます。複素数のかけ算でも、大きさ(絶対値)はかけ算で重なります。 をかけると大きさが 倍になり、 をかけると 倍になるので、 をかけると 倍です。かけ算で点がどの向きに動くかは、第2章で学びます。
積の絶対値は絶対値の積、商の絶対値は絶対値の商なので、かけ算を実行しなくても大きさが分かり、和の絶対値は2乗して共役を使って計算するということです。
(1) 次の値を、それぞれ求めなさい。
① ② ③
(2) ,, のとき、 を求めなさい。
【解答】
(1)
①
②
③
(確かめ)① を先に計算すると で、 です。② は より で、絶対値は です。
(2) 公式8 の2乗の形を使います。
なので です。
, そのものが分からなくても、絶対値と が分かれば、和の大きさが決まります。
複素数の計算と、複素数平面での意味を並べておきます。
| 複素数の計算 | 複素数平面での意味 |
|---|---|
| 点 を実軸に関して対称移動 | |
| 点 を原点に関して対称移動 | |
| 点 を の分だけ平行移動 | |
| 点 から点 への移動 | |
| ( は実数) | 原点と点 を通る直線上で伸び縮み |
| 原点と点 の距離 | |
| 2点 , の距離 |
足し算・引き算・実数倍は、点を「ずらす」「伸ばす」動きでした。まだ調べていないのは、複素数どうしのかけ算です。第2章では、点の位置を「原点からの距離(絶対値)」と「向き(偏角)」の2つで表す極形式を学び、かけ算が平面上でどんな動きになるかを明らかにします。公式8 の は、そこで「長さはかけ算、角は足し算」という形で完成します。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
点 を実軸に関して対称移動した点と、原点に関して対称移動した点を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
実軸:,原点:( と )
問2
, のとき、 と をそれぞれ求めなさい。
,
問3
を求めなさい。
()
問4
2点 , の距離を求めなさい。
()
問5
を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
は実数とします。複素数 を表す点が実軸上にあるときと、虚軸上にあるときの の値を、それぞれ求めなさい。
実軸上:,虚軸上:
は実数なので、実部は 、虚部は です。
実軸上にあるのは、虚部が のときです。 より です( なら 、 なら )。
虚軸上にあるのは、実部が のときです。 より です(このとき )。
問2 ★
とします。点 を実軸に関して対称移動し、さらに原点に関して対称移動した点を表す複素数を求めなさい。また、その点と点 の位置関係を求めなさい。
。点 と虚軸に関して対称
実軸に関して対称移動した点は です。これを原点に関して対称移動すると
です。点 は 、この点は で、虚部が同じで実部の符号だけが反対です。よって です。
公式2 の「 は虚軸に関して対称」の例です。2回の折り返し(実軸・原点)で、虚軸での折り返しと同じ位置に来ます。
問3 ★
(1) 点 を実軸方向に 、虚軸方向に だけ平行移動すると、点 になるときの
(2) 点 を点 に移す平行移動によって、点 が移る点
上の (1)(2) を表す複素数を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
(1) 実軸方向に 、虚軸方向に の平行移動は、 を足すことです。 より
(2) この平行移動で足す複素数は、「行き先 出発点」です。
点 にも同じ を足すので
平行移動は、どの点も同じだけずらします。1組の「出発点と行き先」から、足す複素数が決まります。
問4 ★
3点 ,, に対して、四角形 が平行四辺形となるような点 を表す複素数を求めなさい。
点 を表す複素数を とします。四角形 が平行四辺形なので、 から への移動と から への移動は同じです。
よって
です。
(確かめ) から へは 、 から へは で一致します。
問5 ★
3点 ,, が一直線上にあるような実数 の値を求めなさい。
なので、 となる実数 があればよいです。
, は実数なので、実部と虚部を比べて , です。 より です。
なので、点 は原点から見て点 と反対側にあり、原点からの距離は 倍です。
問6 ★
(1) (2)
(3) で、実部が である複素数
上の (1)(2) の値と (3) の複素数 を、それぞれすべて求めなさい。
(1) (2) (3)
(1)
(2)
(3) ( は実数)とおきます。 の両辺を2乗して
なので、 です。
(3) の2つの点は、互いに共役で実軸に関して対称です。どちらも原点から の距離にあります。
問7 ★
3点 ,, を頂点とする三角形 の3辺の長さを求めなさい。また、三角形 がどのような三角形かを求めなさい。
,,。 の二等辺三角形
差の絶対値で3辺の長さを求めます。
よって です。
, で等しくないので、直角三角形ではありません。
問8 ★
(1) (2) (3)
上の (1)〜(3) の値を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
公式8 を使うと、かけ算を実行せずに絶対値だけで計算できます。
(1) , なので
(2) なので
(3) , なので
(確かめ)(3) の分母は で、 です。
問9 ★★
等式 を満たす複素数 を求めなさい。
(, は実数)とおくと、 です。
, は実数なので、 と実部・虚部を比べて , です。よって です。
(確かめ) です。
と が混ざった式は、 とおいて実部と虚部に分けるのが基本です。
問10 ★★
2点 , から等しい距離にある実軸上の点 を表す複素数を求めなさい。
点 は実軸上にあるので、実数 で表せます。 より で、両辺を2乗します。 は実数なので
です。
よって で、点 は です。
(確かめ), です。
距離の条件は、2乗して根号を外してから比べます。
問11 ★★
かつ を満たす複素数 をすべて求めなさい。
(, は実数)とおくと、 です。
より です。 の両辺を2乗すると なので
よって です。
は実部の2倍、 は虚部の2倍に をつけたものです。2つの点は、虚軸に関して対称な位置にあります。
問12 ★★
3点 ,, が一直線上にあるような実数 の値を求めなさい。
から 、 から への移動を表す複素数は
です。 となる実数 があればよいので、実部と虚部を比べて
2つ目から1つ目を引くと より です。よって です。
(確かめ) のとき です。
点 は実部と虚部が等しい点で、原点と点 を通る直線上にあります。この問題は、その直線と直線 が交わる点を求めたことになります。
問13 ★★
2点 , に対して、 となるような実軸上の点 を表す複素数をすべて求めなさい。
点 は実軸上にあるので、実数 で表せます。三平方の定理とその逆より、 となるのは のときです。
よって
なので、 です。
(確かめ) のとき ,、 のとき , で、どちらも和が です。 のときは直角二等辺三角形になります。
角度を直接扱わなくても、直角は3辺の長さの関係(三平方の定理)で判定できます。
問14 ★★
,, のとき、 の値と の値をそれぞれ求めなさい。
,
差の絶対値の2乗を、共役を使って展開します。
値を代入すると なので
です。和のほうは
なので です。
2つの式を足すと となり、 で確かめられます。この等式は、平行四辺形の対角線と辺の関係を表しています(厳密定義のページ 定理4)。
問15 ★★
かつ を満たす複素数 をすべて求めなさい。
(, は実数)とおくと、 は 、つまり です。よって と表せます。
の両辺を2乗して
よって です。
は「 は虚軸上の点(純虚数または )」という条件です。 は なので、答えには入りません。図でいえば、虚軸上で点 から距離 の点を探したことになります。
問16 ★★
かつ を満たす複素数 をすべて求めなさい。また、3点 ,, を頂点とする三角形がどのような三角形かを求めなさい。
。正三角形
(, は実数)とおきます。2つの条件の両辺を2乗すると
1つ目から2つ目を引くと より です。1つ目に代入して 、 です。
よって です。
3点 ,, の距離は、,, で、3辺がすべて です。よって です。
点 は、原点からの距離が で、実軸の正の向きから 回った向きにあります。この「距離と向き」で点を表す方法を、第2章で学びます。
問17 ★★★
虚数 について、 が実数であるとき、 を求めなさい。また、さらに となるときの を求めなさい。
,
が実数なので、公式7 (3) より です。
右辺を左辺に移して整理します。
は虚数(実数でない)なので 、つまり です。よって で、 より です。
このとき なので、 です。(, は実数)とおくと、 より です。 から 、 です。
よって です。
(確かめ) のとき で、 です。
とおいて計算すると、 の虚部は になり、 から同じ結論が出ます。共役を使うと、 を分けずに一気に処理できます。
問18 ★★★
, のとき、 の値と をそれぞれ求めなさい。
,
に値を代入すると
です。よって
で、 です。
次に とおきます。 より なので、 です。その共役 は です。また、 なので です。したがって
解の公式より です。
(確かめ) は , を満たします。
3点 ,, は、 なので正三角形の頂点です。 は数と式 第11章 j20 と同じ方程式で、 を満たします。
問19 ★★★
は実数とします。 のとき、点 と点 の距離の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最小値
距離を とすると、 です。 なので、 が最小になるときに も最小になります。
平方完成します(数と式 第10章 公式2)。
で、等号は のときです。よって の最小値は で、 の最小値は です。
です。
(確かめ) のとき で、、その絶対値の2乗は です。
を動かすと、点 は点 、つまり直線 の上を動きます。この問題は、点 からその直線までのいちばん短い距離を求めたことになります。
問20 ★★★
, のとき、 の値と の値をそれぞれ求めなさい。
,
の両辺の共役をとると、公式7 (1) より
です。 より 、つまり です。, も同じなので
両辺に ()をかけると です。よって です。
次に、数と式 第3章の対称式の変形を使います。
(確かめ),, は条件を満たします。, なので、 です。
実数なら「2乗の和が ならすべて 」ですが、複素数では でも ,, は ではありません。原点からの距離が の3点で和が になるのは、3点が正三角形をつくるときです(第4章で詳しく扱います)。
複素数を平面上の点として表すアイデアには、ほぼ同じころ、3人の人物が別々にたどり着いています。
最初の1人は、ノルウェーに生まれ、デンマークで測量の仕事をしていたヴェッセルです(当時の2国は1つの王国でした)。地図を作るために、長さと向きをもつ線分をどう計算するかを考えるうちに、線分を複素数で表すと、足し算もかけ算もうまく扱えることに気づきました。1797年にデンマークの王立科学アカデミーで発表し、論文は1799年に印刷されます。ところが、デンマーク語で書かれた測量家の論文に目を留める数学者は、ほとんどいませんでした。フランス語に訳されて広く知られたのは、発表からおよそ100年後のことです(※年は資料により前後します)。
2人目は、パリに住んでいたスイス出身のアルガンです。本職の数学者ではなく、書店を営んでいたともいわれます(※職業は諸説あり)。1806年、アルガンは複素数を平面上の点で表す小冊子を、名前を出さずに自費で出版しました。この冊子はしばらく埋もれていましたが、1813年に別の数学者が「作者の分からないすばらしい考え」として紹介したのをきっかけに、アルガンが名乗り出ます。英語圏では今でも、複素数平面の図を「アルガン図(Argand diagram)」と呼びます。
3人目が、ドイツのガウスです。ガウスは若いころから同じ考えをもっていたとされますが、1831年に発表した文章の中で、複素数を平面上の点としてはっきり説明しました(※)。大数学者の言葉だったことで、この見方は一気に広まります。日本で「ガウス平面」とも呼ぶのは、そのためです。
数と式 第11章の小話で見たように、虚数は長いあいだ「想像上の数」でした。平面上の点という「目に見える居場所」を与えられて、数学者たちはようやく虚数を安心して使えるようになったのです。
豆知識
ヴェッセルが考えていたのは「向きのある線分」の計算で、これは今のベクトルの考え方の先がけでもあります。公式3 で見た「足し算は矢印をつなぐこと」は、ベクトルの分野でもそのまま出てきます。
スマートフォンの Wi-Fi や携帯電話は、 と の情報を電波の波にのせて運んでいます。そこで活躍するのが、複素数平面です。
電波の波には、「強さ」と「タイミング(波の山がいつ来るか)」という2つのつまみがあります。この2つの組み合わせで、送る波の1つ1つを複素数平面の1点として表せます。原点からの距離(絶対値)が波の強さ、原点から見た向きがタイミングに当たります(向きの表し方は第2章で学びます)。
たとえば 16QAM(QAM は「直交振幅変調」の英語の頭文字)という方式では、実部と虚部をそれぞれ ,,, の4段階から選び、 個の点を使います。16個のうちどの点を送るかで、 と の並び4つ分( 通り)の情報が一度に届くのです。この点の配置図は、夜空の星のように見えることから「コンスタレーション(星座)」と呼ばれます。
ただし、電波は途中で雑音を受けるので、受け取った点は少しずれています。 を送ったのに、 が届いたとしましょう。受信側は、16個の点のうち、届いた点にいちばん近い点を「送られた点」と判断します。
となり、となりの点 との距離 よりずっと近いので、正しく と読みとれます。公式6 の2点間の距離が、毎秒ものすごい回数で計算されているのです。
豆知識
点の数を増やすほど、一度に送れる情報は増えます。Wi-Fi 6 などの新しい規格では、1024個( 個)の点を使う方式もあります。けれども、点どうしの距離が近くなるので、少しの雑音で「となりの点」と読み間違えやすくなります。電波の状態が悪いとき、通信機器が点の少ない方式へ切りかえるのは、点どうしの距離を広くとって読み間違いを防ぐためです。
数列の分野 第2章の小話で、「フラクタル」という言葉をつくった数学者マンデルブロが登場しました。その名前がついた図形「マンデルブロ集合」は、複素数平面の上に描かれます。
作り方はとても単純です。複素数 を1つ選び、 から始めて
をくり返し計算します。できた数の絶対値がいつまでも大きくならなければ、点 を黒くぬります。どこまでも大きくなっていくなら、白のままにします。
いくつか試してみましょう。 なら と行ったり来たりするので、点 は黒です。 なら とどんどん大きくなるので、点 は白です。 では
と2つの値をくり返すので、黒です。一方、 では となり、3回目で絶対値が まで大きくなって、その先も大きくなり続けるので白です。
途中で一度でも絶対値が をこえると、その先は必ず大きくなり続けることが分かっています。そこで、コンピューターに何百万個もの点 でこの計算をさせ、黒と白をぬり分けると、雪だるまのような胴体に無数のこぶがついた、奇妙な図形が浮かび上がります。1980年ごろ、IBM の研究所にいたマンデルブロがコンピューターで描いた図は、多くの人を驚かせました(最初に描いた人については※諸説あり)。境界を拡大すると、どこまでも細かい模様が現れ、ところどころに全体とそっくりな小さな形まで見つかります。
豆知識
マンデルブロ集合の境界がどれほど入り組んでいるかを表す「次元」は、ちょうど であることが、日本の数学者宍倉光広によって証明されました(1998年に論文として発表)。数列 第2章のコッホ曲線の次元は約 でした。マンデルブロ集合の境界は、線でありながら、平面をぬりつぶすほど複雑に曲がりくねっているのです。
※ここは発展ページです。本文では、原点からの距離を三平方の定理で求めて「絶対値」と呼び、2点間の距離を差の絶対値で表しました。ここでは、絶対値と距離を複素数の計算だけで定義し直し、「三角形の2辺の長さの和は、残りの1辺より長い」という距離の基本的な性質を、図に頼らずに証明します。
数と式 第11章の厳密定義では、複素数を実数の組 として定義しました。組 は、そのまま座標平面の点です。複素数平面は、この「組」を図に描いたものだといえます。
複素数 に対して、 は 以上の実数である。その 以上の平方根を の絶対値といい、 で表す。
また、2つの複素数 , に対して、 を2点 , の距離という。
(, は実数)なら で、実数の2乗の和なので 以上です(数と式 第10章)。したがって平方根がとれ、 は本文の公式5と一致します。2点 , の距離は で、座標平面の2点 , の距離そのものです。
定義1 のよいところは、 という形で、絶対値を共役な複素数の計算に持ちこめることです。本文の公式8 も、この形から導きました。
三角不等式の準備として、次の定理を示します。
(, は実数)について
が成り立つ。 となるのは のときに限る。特に であり、等号は が 以上の実数のときに限り成り立つ。
証明 である。 と はどちらも 以上なので、 である(数と式 第10章 公式3)。等号は 、すなわち のときに限る。 も同様である。
また、 である。 となるのは、()かつ ()のとき、すなわち が 以上の実数のときに限る。(証明終)
図でいえば、点 から実軸に下ろした垂線の足までの距離 は、斜辺 より長くならない、ということです。
複素数 , について
が成り立つ。等号は、 が 以上の実数のときに限り成り立つ。
証明 とおくと、その共役は である(本文の公式7)。本文の公式8 のあとで見たように
である。定理1 より で、公式5・公式8 より なので
両辺の中身 , はどちらも 以上なので、 である。
等号が成り立つのは のときで、定理1 より が 以上の実数のときに限る。(証明終)
等号の条件を図で読みましょう。 のとき なので、「 が 以上の実数」は「 となる 以上の実数 がある」ことと同じです。本文の公式4 でいえば、点 が原点から見て点 と同じ側にある(または )ということです。2本の矢印が同じ向きのときだけ、つないだ長さが長さの和になります。
, が実数のときは、数と式 第4章の厳密定義で示した実数の三角不等式 になります。定理2 はその複素数版です。
距離のことばに直すと、次のようになります。3点 ,, について、 に定理2 を使うと
です。「寄り道をすると、まっすぐ行くより遠くなる(遠回りでない寄り道は、まっすぐな道の途中に寄るときだけ)」ということです。また、 から、 も得られます。
複素数 , について
が成り立つ。
証明 共役を使って展開すると
である。辺々を加えると、かっこの部分が打ち消し合って結論を得る。(証明終)
本文の公式3 のとおり、原点・・・ は平行四辺形の頂点で、 と は2本の対角線の長さ、 と は2辺の長さです。定理3 は「平行四辺形の2本の対角線の長さの2乗の和は、4辺の長さの2乗の和に等しい」ことを表しています。実践 j14 で確かめた は、この例です。
三角形の性質としても読めます。三角形 の辺 の中点を とし、全体を平行移動して を原点に置きます。 とすると、 は原点に関して と対称なので です。 とすると、定理3 は
となります。これは中線定理(パップスの定理)と呼ばれる図形の性質で、複素数の計算2行で導けてしまいます。
定義1 の距離 は、次の3つの性質をもちます。
大学の数学では、逆にこの3つを満たすものを一般に「距離」と呼びます。たとえば、碁盤の目のように道が走る街で、道に沿って測った距離 も、この3つを満たす立派な「距離」です。この距離で「原点から距離 の点」を集めると、円ではなく、正方形(ひし形)ができます。どんな距離を選ぶかで、図形の姿まで変わるのです。
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