問1
極限 を求めなさい。
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分母・分子を で割って
目次 / 微分積分 / 数学III
—— 「限りなく近づく」を、無限の先と数III の微分へ広げる ——
ここから数学IIIに入ります。第1章では「$x$ が $a$ に近づくとき」の極限を学びましたが、この章では近づく先を**無限の先**まで広げます。番号 $n$ をどこまでも大きくしたときの数列の行き先、無限に続く足し算(無限級数)の和、$x \to \infty$ や片側からの極限、そして三角関数の微分の鍵になる $\dfrac{\sin\theta}{\theta}$ の極限を順に扱います。後半では、グラフが「つながっている」ことを極限で言い表す**連続**と中間値の定理を学び、最後に、数IIIの微分で使う新しい記号 $\dfrac{dy}{dx}$ を導入します。数列の分野で何度も出てきた「落ち着き先」に、ここできちんと名前を付けます。
数列の分野では、 のように、 を大きくすると一定の値に近づく数列がたくさん出てきました。「落ち着き先」と呼んでいたその値を、極限の言葉で表します。
数列 で、 を限りなく大きくするとき、 が一定の値 に限りなく近づくならば、 は に収束するといい、 を極限値といいます。収束しないときは発散するといいます。
「 が限りなく大きくなるとき、 は に収束する」と読みます。 は「無限大」と読み、数ではなく「限りなく大きくなる」ようすを表す記号です。
発散には次の3つの場合があります。
収束する数列の和・差・定数倍・積・商の極限は、第1章 厳密定義の定理1と同じように、極限値の和・差・定数倍・積・商になります(商は分母の極限が でないとき)。
大富豪の財布を想像してください。預金が 100 億円ある人にとって、財布の小銭が 300 円か 500 円かは、全財産にほとんど影響しません。 で が大きいとき、 や は大富豪の小銭のようなもので、式の行き先は最高次の で決まります。分母の最高次で割るのは、小銭がどれだけ小さいかを の形ではっきり見せる操作です。
数列の極限は、 をどこまでも大きくしたときの行き先であり、分数なら最高次の項だけが行き先を決めるということです。
次の極限を求めなさい。
【解答】
(1) 分母の最高次 で分母・分子を割ります。
(2) は の形なので、分子を有理化します。
(最後は分母・分子を で割りました。)よって極限は です。
(3) で、, なので
※ (3) を「」としてはいけません。 は数ではないので、ふつうの計算の規則は使えません。
のように、式を変形しても行き先が直接わからない数列があります。そのときは、行き先のわかる2つの数列で両側からはさみます。
すべての について で
満員電車で、両隣の人に肩を押されながらドアへ向かう場面を思い浮かべてください。右の人も左の人も同じドアから降りるなら、真ん中にはさまれたあなたも、そのドアから降りるしかありません。両側の数列が同じ値 に向かうなら、はさまれた数列も に向かいます。
行き先が直接わからない数列でも、同じ値に向かう2つの数列ではさめれば、その値に収束するということです。
極限 を求めなさい。
【解答】
は によって と値が変わり続けますが、いつも 以上 以下です。両辺に正の数 を掛けて
なので、はさみうちの原理より
※ 振動する でも、 に向かう を掛ければ、振れ幅ごと に押しつぶされます。
数列の分野の等比数列や漸化式の一般項には、いつも が入っていました。その行き先は、公比 の値で次のように決まります。
のときは振動し、極限はありません。したがって、 が収束するための条件は です。
カラオケでマイクをスピーカーに近づけると、「キーン」というハウリングが起こります。スピーカーの音をマイクが拾い、増幅されてまたスピーカーから出る、というくり返しです。1周するたびに音が 倍になるとすると、 が より小さければ音はすぐ消え、 より大きければどんどん大きくなってキーンと鳴ります。ちょうど なら同じ大きさで鳴り続けます。 の行き先も、 が より大きいか小さいかの境目で、がらりと変わります。
は なら に消え、 なら限りなく大きくなり、 なら のまま、 なら振動するということです。
(1) 極限 を求めなさい。
(2) , で定められる数列 の極限 を求めなさい。
【解答】
(1) いちばん大きい底の累乗 で分母・分子を割ります。
(2) 数列 第6章の方法で一般項を求めます。 を解くと で、
数列 は初項 ,公比 の等比数列なので
より です。
※ 数列の分野で「落ち着き先」と呼んだ は、公比 が のとき、ちょうど極限値になります。
無限に続く数列 の項を順に足した式 を無限級数といい、 と書きます。無限個を一度に足すことはできないので、第 項までの和(部分和) を作り、その極限で和を決めます。
部分和 が に収束するとき、無限級数は収束するといい、 をその和とする。
が発散するときは、無限級数は発散するといいます。
初項 ,公比 の無限等比級数 は
( なら で、公式3から となるのが のときです。)
スーパーボールを床に落とすと、何回も跳ねながら、だんだん低くしか跳ね上がらなくなります。毎回、前の高さの半分まで跳ね返るとすると、跳ねる回数は限りなく続きますが、ボールが動く距離の合計は のような無限等比級数で、ある値を超えません。無限回の足し算でも、足す量が一定の割合で小さくなっていけば、和は1つの数に落ち着きます。
無限級数の和は部分和の極限であり、無限等比級数は公比が のときだけ収束して、和は「初項 ÷(1 − 公比)」になるということです。
(1) 循環小数 を分数で表しなさい。
(2) 無限等比級数 が収束するような の値の範囲と、そのときの和を求めなさい。
【解答】
(1) は、初項 ,公比 の無限等比級数です。
(2) 初項 ( でない),公比 なので、収束する条件は ,つまり です。このとき和は
※ 同じ方法で となります。 は「 に近い数」ではなく、 そのものです。
関数でも、 を限りなく大きくしたり、片側だけから近づけたりできます。
公式1の性質(和・差・積・商)と公式2のはさみうちの原理は、関数の極限でもそのまま使えます。 では とおいて に直すと、符号の間違いを防げます。
川にかかる橋の継ぎ目に、段差があるところを想像してください。左岸から来た車は高さ cm の路面を走って継ぎ目に近づき、右岸から来た車は高さ cm の路面を走って近づきます。どちらも同じ継ぎ目に向かっているのに、たどり着く高さが違います。これでは「継ぎ目での高さ」を1つに決められません。片側極限が左右で違うとき、極限はない、というのはこういうことです。
極限は や片側からの近づき方にも広げられ、左右から近づいた値が一致するときだけ、ふつうの極限が存在するということです。
次の極限を調べなさい。極限がある場合はその値を求めなさい。
【解答】
(1) のとき なので、分母・分子を で割って
(2) 片側極限を調べます。 が正のまま に近づくと は限りなく大きくなり、負のまま近づくと負で絶対値が限りなく大きくなります。
右側極限と左側極限が一致しないので、 は です。
※ (1) で にすると、 となるので、極限は になります。 としてよいのは のときだけです。
三角関数の分野 第5章の小話で、「ラジアンを使うと となり、微分の式から が消える」と予告しました。その正体が、次の極限です。
をラジアンで測るとき
わけ とします。上の図の単位円(半径 )で、,, とすると、三角形 < 扇形 < 三角形 なので
(正の数)を掛けて逆数をとると 。 のとき なので、はさみうちの原理より です。 のときは なので、 でも同じです。
地球は丸いのに、グラウンドに立って見わたすと地面は平らに見えます。大きな円のごく一部だけを見ると、曲がった弧はほとんどまっすぐな線と区別がつかないからです。単位円でも、角 が小さいとき、弧の長さ と、高さ はほとんど同じになります。その「ほとんど同じ」の比が、ぴったり に近づくというのが公式6です。
ラジアンで測ると、小さな角では と がほぼ等しく、その比の極限はちょうど になるということです。
次の極限を求めなさい。
【解答】
(1) の中身 , を分母に作ります。
のとき , なので、公式6より
(2) なので
※ (1) の は の逆数なので、極限は です。
グラフが途切れずにつながっていることを、極限を使って言い表します。
関数 が で連続であるとは
が成り立つことである。つまり、極限が存在して、その値が での値と一致することです。区間のすべての点で連続なとき、その区間で連続といいます。
ろうそくに火をつけると、長さが cm から少しずつ短くなっていきます。 cm になるまでの間には、必ず「ちょうど cm」の瞬間があります。ろうそくは途中の長さを飛ばして、いきなり短くなったりしないからです。連続な関数も同じで、グラフが途切れていないので、 と の間の値はどれも必ずどこかで通ります。
連続とは「近づいた先の値」と「その点での値」が一致することであり、連続な関数は途中の値を飛ばさないので、符号が変われば必ず間に解があるということです。
(1) 関数 (), が で連続になるように、定数 の値を定めなさい。
(2) 方程式 は、 の範囲に実数解をもつことを示しなさい。
【解答】
(1) のとき なので、 です(第1章 例題1(2))。連続になるのは、これが と一致するときなので です。
(2) とおくと、 は で連続で
中間値の定理より、 となる が にあります。つまり、方程式 は に実数解をもちます。(証明終)
※ 第6章では、3次方程式の実数解を「符号が変わる所に解がある」と数えました(第6章 j14)。その根拠が中間値の定理です。(2) のように、式で解けない方程式でも、解がある範囲はわかります。
最後に、ここまで や と書いてきた導関数に、数IIIでよく使うもう1つの書き方を加えます。
で、 の増える量を ,それに対する の増える量を とします( は「デルタ」と読み、「差」を表す記号です)。第1章の を と書きかえると、平均変化率は で、導関数はその極限です。
この極限を と書き、「ディーワイ・ディーエックス」と読みます。
は、どれも同じ導関数を表します。
料理のレシピでは、同じ量を「小さじ1」とも「5 mL」とも書きます。どちらで書いても入れる量は同じで、手元の道具や場面で書きやすいほうを選びます。 と も同じ導関数の2つの書き方です。 は短く書け、 は「何を何で微分したか」まで書けます。
は平均変化率 の極限を表す記号で、, と同じ導関数の別の書き方だということです。
()について、 を定義に従って求めなさい。
【解答】
は で の形になるので、分子を有理化します(例題1(2) と同じ方法です)。
よって
※ と書くと、答えは です。第2章の が、 でも成り立っています。 が分数や負の数のとき、そして三角関数・指数関数・対数関数の微分は、次の第11章で学びます。三角関数の微分には、この章の公式6が鍵になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
極限 を求めなさい。
分母・分子を で割って
問2
極限 を求めなさい。
なので
問3
無限等比級数 の和を求めなさい。
初項 ,公比 なので
問4
極限 を求めなさい。
問5
のとき、 を求めなさい。
は と同じなので
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
極限 を求めなさい。
分母の最高次 で分母・分子を割ります。
問2 ★
極限 を求めなさい。
の形なので、分子を有理化します。
(最後は分母・分子を で割りました。) のとき です。
問3 ★
極限 を求めなさい。
いちばん大きい底の累乗 で分母・分子を割ります。 なので
問4 ★
無限等比級数 の和を求めなさい。
初項 ,公比 です。 なので収束し、和は
問5 ★
循環小数 を分数で表しなさい。
は、初項 ,公比 の無限等比級数です。
問6 ★
極限 を求めなさい。
分母の最高次 で分母・分子を割ります。
問7 ★
極限 を求めなさい。
の中身 を分母に作ります。
のとき なので、公式6より です。
問8 ★
関数 について、極限 と をそれぞれ求めなさい。
,
のとき、 は正のまま に近づくので、 は限りなく大きくなります。
のとき、 は負のまま に近づくので、 は負で絶対値が限りなく大きくなります。
(左右の片側極限が一致しないので、 は存在しません。)
問9 ★★
は でない実数とする。極限 を、 の値で場合分けして求めなさい。
のとき , のとき , または のとき
公式3の境目 ,, で分けます( は、 が奇数のとき分母が になるので除かれています)。
( では 自体は振動しますが、 は に向かうので、この式は収束します。)
問10 ★★
無限級数 が収束するような の値の範囲を求めなさい。また、そのときの和を求めなさい。
。和は のとき , のとき
初項 ,公比 の無限等比級数です。初項が かどうかで分けます。
以上より、収束する範囲は で、和は です。
(和が だけ飛び離れているのが、この問題の面白いところです。 を忘れやすいので注意しましょう。)
問11 ★★
極限 を求めなさい。
と分けます。 のとき より
で両端は に近づくので、はさみうちの原理より 。よって
(公式6の は のときの話です。 では になります。)
問12 ★★
, で定められる数列 の一般項と、極限 を求めなさい。
,極限
を解くと で
数列 は初項 ,公比 の等比数列なので
より なので、 です。
(項は と、 の上と下を交互に行き来しながら近づきます。)
問13 ★★
極限 を求めなさい。
とおくと、 のとき です。
のとき です。
( のまま「 で割って 」とすると、 では となることを見落としやすく、答えを や と間違えがちです。)
問14 ★★
が成り立つように、定数 , の値を定めなさい。
,
で分母 なので、極限が有限の値になるには分子 が必要です。
このとき分子は なので
より , です。
(確かめ:。「分子 」は必要条件なので、最後に極限が になることまで確かめます。)
問15 ★★
極限 を求めなさい。
分母・分子に を掛けて、 を使います。
のとき です。
(この結果から、 が に近いとき とわかります。第13章の近似式で再び登場します。)
問16 ★★
無限級数 の和を求めなさい。
等比級数ではないので、部分和 を求めてから極限をとります。 と差に分けると
途中が打ち消し合い、前の と後ろの が残ります。
(数列 第3章 公式4の「差に分けて打ち消す和」です。1つおきに打ち消すので、2つずつ残ります。)
問17 ★★★
一辺の長さ の正三角形 に内接する円を , に内接する正三角形を , に内接する円を とし、以下同じように限りなく続ける。円 の面積の和を求めなさい。
一辺 の正三角形の高さは で、内接円の中心は重心と一致するので、半径は高さの ,つまり です。
逆に、半径 の円に内接する正三角形の一辺は です(外接円の半径=高さの から)。したがって の一辺は
で、正三角形の一辺は毎回 倍、円の半径も 倍、面積は 倍になります。
の半径は で、面積は 。面積の和は初項 ,公比 の無限等比級数なので
問18 ★★★
方程式 は、 の範囲に実数解をもつことを示しなさい。
とおくと , なので、中間値の定理より示される。
とおきます。 と はともに連続なので、 は で連続です。
中間値の定理より、 となる が に少なくとも1つあります。 は のことなので、方程式 は に実数解をもちます。(証明終)
(この解は で、式では表せません。関数電卓を「ラジアン」にして のボタンをくり返し押すと、この値に落ち着いていきます。)
問19 ★★★
二項定理を用いて、極限 を求めなさい。
のとき、二項定理より
(省いた項はすべて正です。)両辺の逆数をとって を掛けると
のとき なので、はさみうちの原理より
( と はどちらも限りなく大きくなりますが、 のほうが圧倒的に速く大きくなります。公式3の証明で使った では足りず、 の項まで使うのがポイントです。)
問20 ★★★
, で定められる数列 について、不等式 を示し、極限 を求めなさい。
(不等式は解説のとおり)極限
で、 なら なので、すべての項が正です。
を、分子の有理化と同じ要領で変形します。
より分母は より大きいので
これをくり返し使うと
右辺 なので、はさみうちの原理より ,つまり です。
( は、 を解いた「落ち着き先」です。数列 第8章 j20 で「増えながら を超えない」と見た数列が、確かに に収束することが示せました。一般項が求められない漸化式でも、落ち着き先とのずれが等比数列以下に縮むことを示せば、極限がわかります。)
ニュートンとライプニッツが微分積分を作ってから半世紀ほどたった1734年、アイルランドの哲学者で聖職者のジョージ・バークリーが、『解析者』という本で微分積分を痛烈に批判しました。
当時の微分の計算は、第1章の のように、まず を でない量として割り算し、最後に を として消す、というものでした。バークリーは「 が でないなら は ではない。 なら最初の割り算ができない。都合よく だったり でなかったりする は、消え去った量の亡霊ではないか」と皮肉ったのです。計算の答えは正しいのに、理屈がきちんと説明できない。数学者たちは、この指摘に100年近く悩むことになります。
答えを出したのは19世紀の数学者たちでした。フランスのコーシーは1821年の教科書で、微分や連続を「極限」を土台にして説明し直しました。さらにドイツのワイエルシュトラスが、「限りなく近づく」を、第1章の厳密定義で紹介した - の不等式だけで言い表す形に整えました(誰がどこまで整えたかには諸説あります)。 は に「なる」のではなく、 に「近づく」だけ。この章で学んだ極限の考え方は、亡霊を追い払うために作られたものなのです。
豆知識
アメリカのカリフォルニア大学バークレー校がある町バークレーの名前は、このジョージ・バークリーにちなんで付けられました。数学を批判した哲学者の名前が、世界有数の数学研究の拠点の名前になっているのは、ちょっと面白い巡り合わせです。
振り子の糸を少し傾けて手を離すと、振り子は同じリズムで往復します。振れ幅が大きくても小さくても、1往復にかかる時間(周期)はほとんど変わりません。これを振り子の等時性といいます。若いころのガリレオが、ピサの大聖堂で揺れるランプを見て気づいたという話が有名です(この逸話には諸説あります)。
振り子の動きを式で表すと、糸の傾き に対して が現れます。ここで振れ幅が小さいとき、公式6の から と置きかえると、式が一気に簡単になり、周期が糸の長さ だけで決まる ( は重力加速度)になります。振れ幅が式から消えるので、等時性が説明できるのです。
逆にいえば、振れ幅が大きいと の近似がずれてきて、周期は少しずつ長くなります。オランダのホイヘンスは1656年に振り子時計を作り、のちに、振れ幅によらず周期がきっちり同じになる「サイクロイド」という曲線に沿って振り子を振らせる工夫も考えました。
豆知識
長さ約 m の振り子は、片道がほぼ 秒になります( 秒で1往復)。18世紀の終わり、フランスで長さの単位を新しく決めるとき、この「1秒で片道を振る振り子の長さ」を 1 メートルにする案も検討されました。結局は、地球の子午線の長さをもとに決められました。
無限級数が収束するなら、足す項は に近づかなければなりません。では逆に、項が に近づけば、和は必ず収束するのでしょうか。答えは「いいえ」で、代表的な例が調和級数です。
14世紀のフランスの学者ニコル・オレームは、項を次のように区切って、この和が限りなく大きくなることを示しました。
かっこの中はどれも 以上です(たとえば )。 以上のかたまりが無限に続くので、部分和は追い出しで に発散します。
ただし、その増え方は驚くほどゆっくりです。和が を超えるには 項、 を超えるにはおよそ 項も足さなければなりません。コンピューターで足し続けても、一生かかっても には届かないのに、いつかは必ずどんな数でも超えるのです。
豆知識
同じ厚さの本を机の端に積み、上の本ほど外へずらしていくと、どこまで外へ張り出せるでしょうか。うまく積むと、上から 冊目を本の長さの ずつずらせて、張り出しの合計は調和級数の半分 になります。4冊積めば、いちばん上の本は机から完全にはみ出します。冊数を増やせば、張り出しはいくらでも大きくできます(ただし、本の数は恐ろしく必要です)。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、「限りなく近づく」という直感で極限を扱えれば十分です。第1章では関数の極限を - 論法で定めました。ここでは数列の極限を同じ考え方で定め、はさみうちの原理を証明し、数列が収束するための「実数ならではの」性質と、連続関数の定理をまとめます。
であるとは、次が成り立つことをいう。
どんな正の数 に対しても、ある自然数 をうまく選べば
とできる。
また、 であるとは、どんな正の数 に対しても、ある自然数 をうまく選べば、 とできることをいう。
第1章の定義1で「 を に距離 以内まで近づければ」と言っていた部分が、「番号を から先にすれば」に変わっただけです。誤差の目標 をどれほど厳しくされても、ある番号から先の項はすべて から 未満のところにいる、というのが収束の意味です。
たとえば は、 に対して を より大きい自然数に選べば、 のとき となることで確かめられます。こうした がいつでも見つかる(自然数はいくらでも大きくとれる)ことを、アルキメデスの性質といいます。
ある番号から先のすべての で であり、 ならば、 である。
証明 正の数 を任意にとる。 より、ある から先で ,とくに となる。 より、ある から先で となる。不等式 が から先で成り立つとして、 を のうち最大のものにとると、 のとき
すなわち である。(証明終)
を「いちばん遅いもの」に合わせるのが、- 論法でよく使う手です。本文の公式1の性質(和・積・商の極限)も、同じように証明できます。
数列 が増加()で、上に有界(ある定数 があって、つねに )ならば、 は収束する。減少で下に有界な場合も同様である。
この定理は、ほかの定理から証明するというより、実数とはこういうものだという性質(実数の連続性)の1つの言い方として、出発点に置かれることが多い主張です。有理数だけの世界では成り立ちません。たとえば ( の小数を1桁ずつ延ばした数)は増加で を超えませんが、行き先の が有理数でないので、有理数の世界では「行き先がない」のです。
実践 j20 の は、数列 第8章 j20 で「増えながら を超えない」ことを確かめた数列でした。定理2を使えば、その時点で「何かの値に収束する」ことまでは言えます。行き先を とすると、漸化式の両辺の極限をとって , とわかります。j20 では、ずれ を直接はさむ方法で、定理2を使わずに示しました。
無限級数 が収束するならば、 である。
証明 部分和を ,和を とする。 のとき で、, なので
(証明終)
対偶をとると、「 が に近づかなければ、無限級数は発散する」となります。(数列 第5章 小話2のグランディの級数)は、項が に近づかないので発散です。
逆は成り立ちません。小話3の調和級数 は、項が に近づくのに発散します。また、数列 第5章の厳密定義で紹介したリーマンの再配列定理は、 のように「収束はするが、項の絶対値の和は発散する」級数についての定理です。こうした級数では、足す順番を変えると和が変わってしまいます。無限級数では、有限の和の常識がそのまま通用するとは限りません。
関数 が で連続であるとは、どんな正の数 に対しても、ある正の数 をうまく選べば
とできることをいう。
第1章の定義1と比べると、極限値 が に変わり、「」の条件がなくなっています。 そのものでの値も込めて近いことを要求するので、本文の公式7「」と同じ意味になります。
が で連続で、(または )ならば、 となる が に存在する。(証明略)
第6章の厳密定義(定理1)で、この定理を「証明略」として紹介し、有理数だけの世界では の解がないという反例を見ました。定理2と同じく、中間値の定理も実数の連続性に支えられています。証明は、区間を半分に分けて「符号が変わるほう」を選び続け、区間の端の数列に定理2を使うのが代表的な方法です(二分法)。
最後に、本文の公式6の証明について一言だけ補足します。「三角形 < 扇形 」で使った扇形の面積 は、弧の長さ(ラジアン)が であることがもとになっています。ところが、曲線の長さや面積をきちんと定めるには、極限や積分が必要です(第9章の定義1)。そのため大学では、三角関数を無限級数などで定義し直し、図に頼らずに を示す方法もとられます。高校の証明が間違っているわけではなく、「どこから出発するか」の違いです。
この章の学習が終わったら
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