問1
円 の周上に 3 点 ,, があります。 のとき、 を含まない弧 に対する中心角 を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
(中心角は円周角の 2 倍)
目次 / 図形の性質 / 数学A
—— 弧を「どこから見ても同じ角度」——円が角を一定に保つしくみ ——
円周上の 2 点 $A$,$B$ を、円周上の別の点から見込む角は、どこから見ても同じ大きさになります。これが円周角の定理で、円の図形の話はほとんどここから始まります。この章では、円周角と中心角の関係、直径に対する円周角が $90^\circ$ になること、弧の比と角の比、そして「4 点が 1 つの円の上に並ぶ条件」(円周角の定理の逆・円に内接する四角形)までを学びます。第2章で保留した外心の角 $\angle BOC = 2\angle A$ も、ここで説明がつきます。
円の上の話を始める前に、言葉を 3 つそろえておきます。
「弧 に対する円周角」と言うときは、どちらの弧の話かをはっきりさせる必要があります。点 が優弧の上にあれば、 から見ている弧は劣弧のほうです。以下、ことわりがなければ「弧 」は を含まないほうの弧を指します。
この章の主役は、次のひと言です。弧の大きさが決まれば、円周角の大きさも決まる。
円 の弧 をとり、その弧の上にない円周上の点 から , を見込みます。 をどこに動かしても は変わらず、しかもその大きさは中心角 のちょうど半分です。
理由は、(どれも半径)から二等辺三角形が現れることにあります。 と を結んで円まで延ばした点を とし、直径 で角を 2 つに分けます。
は の二等辺三角形なので 。三角形の外角は、それととなり合わない 2 つの内角の和なので
同じことを 側でもやると 。この 2 つを足せば が出ます。
中心 が の外側にあるときは、足すかわりに引きます(図の (iii))。 が辺 の上に乗ってしまうときは、分ける必要すらなく 1 回で終わりです(図の (ii))。どの置き方でも結論は同じでした。
1 つの円で、弧 に対する円周角は、その弧に対する中心角の半分である。
円形に客席が並んだ劇場を思い浮かべてください。舞台の左端と右端を見込む角度は、席が舞台に近いほど広く、遠いほど狭くなりそうなものです。ところが、客席が同じ円弧の上に並んでいるかぎり、どの席から見ても舞台はまったく同じ広さの角度に収まります。前の席に移っても損をしないし、端の席に回っても損をしない。円という形が、角度を一定に保っているのです。
円周角は「見る位置」ではなく「見ている弧」で決まり、その大きさは中心角の半分だということです。
円 の周上に 3 点 ,, があり、 です。( を含まない弧 に対する中心角)と を求めなさい。
【解答】
は弧 に対する円周角なので、公式1 より
(どちらも半径)なので は二等辺三角形です。底角は等しいので
第2章 公式1 で覚えた と合っています()。第2章では合同を使って示した式が、円周角の定理からはこの 2 行で出ます。
弧 が半円、つまり が直径のときを考えます。中心角は なので、円周角はその半分でいつも です。
逆も成り立ちます。 なら、 は を直径とする円の上にあります。これは公式1 からすぐには出ないので、厳密定義ページで示しますが、使い方のほうが大事です。直角を見つけたら円を思い出す——この章でいちばん出番の多い道具です。
が円の直径のとき、円周上の点 (, と異なる)について
逆に ならば、 は線分 を直径とする円の上にある。
大工さんが大きな円弧を描くとき、コンパスのかわりに直角定規を使う手があります。板に釘を 2 本打ち、直角定規の内側の角を両方の釘に当てたまま滑らせる。すると角の頂点は、2 本の釘を結ぶ線分を直径とする円の弧をなぞります。「直角を保って動く点は円を描く」——公式2 の逆が、そのまま道具になっています。
直径を見たら 、 を見たら直径。この行き来が自由にできれば十分だということです。
円 の直径を 、円周上の点を とします。 のとき、,, を求めなさい。
【解答】
は直径なので、公式2 より
の内角の和から
は弧 ( を含まない側)に対する中心角で、同じ弧に対する円周角が なので
確かめ: で、。,, が一直線(直径)であることと合っています。
同じ円の中では、弧が 2 倍になれば中心角も 2 倍、したがって円周角も 2 倍です。円周角は弧の長さにきれいに比例します。
1 つの円(または半径の等しい円)について
比例するのは弧と角であって、弦は弧に比例しません(弧が 2 倍でも弦は 2 倍になりません)。
回転寿司のレーンを思い浮かべてください。皿がレーンの上を 2 倍の距離だけ流れると、中心から見た向きも 2 倍だけ回ります。席から見ても同じで、皿が「レーン 1 区間ぶん」進んだときの目の動きと、「2 区間ぶん」進んだときの目の動きは、ちょうど 1 対 2 です。ところが、皿の最初の位置と今の位置をまっすぐ結んだ距離は 2 倍にはなりません。これが (3) の但し書き、弧と弦の違いです。
弧・中心角・円周角の 3 つは比例して動くので、どれか 1 つの比が分かれば残りも分かるということです。
円周上に 4 点 ,,, がこの順にあり、 です。弦 と の交点を とするとき、 と を求めなさい。
【解答】
4 つの弧を合わせると円周 1 周ぶん、中心角でいえば です。比の合計は なので、比 1 あたりの中心角は
よって弧 ,,, の中心角は順に ,,, です。
は弧 に対する円周角なので
は三角形の角ではないので、いったん に目を移します。 は弧 に対する円周角なので 。 は の頂点 における外角なので
まとめると「2 本の弦の交点にできる角は、向かい合う 2 つの弧に対する円周角の和」です。 と一息で計算してもかまいません。
ここからは向きを変えて、「円がある」ところから「円があるはずだ」を言う話に入ります。
線分 を、同じ側にある 2 点 , から見込んだ角が等しいとします。。このとき ,,, は 1 つの円の上に並びます。,, を通る円はただ 1 つ決まる(第2章の厳密定義ページ)ので、あとは「 もその円の上にいるしかない」ことを言えばよく、第1章から使ってきた同一法が効きます。
「同じ側」は落とせません。図の右側のように が の反対側にあると、角が等しくても は鏡に映したもう 1 つの円の上に乗ってしまいます。
2 点 , が直線 について同じ側にあり
が成り立つならば、4 点 ,,, は同一円周上にある。
同じ被写体を、同じ画角のレンズで、被写体がちょうど画面いっぱいに写るように撮りたいとします。撮影者が何人いても、条件を満たす立ち位置は 1 本の曲線の上に並びます。その曲線が円弧です。「同じ広さに見える場所の集まり」が円弧になる——公式4 は、それを言っています。
等しい角が同じ側に 2 つ見つかったら、4 点は同じ円の上に乗っているということです。
鋭角三角形 の頂点 , から対辺に下ろした垂線の足を、それぞれ , とします。
(1) 4 点 ,,, が同一円周上にあることを示しなさい。
(2) のとき、 と を求めなさい。
【解答】
(1) , なので
は鋭角三角形なので、 は辺 上、 は辺 上にあり、 と はどちらも直線 について と同じ側にあります。線分 を同じ側から等しい角で見込んでいるので、公式4 より 4 点 ,,, は同一円周上にあります。(証明終)
しかも、その角が だったので、公式2 の逆からこの円は を直径とする円だと分かります。中心は の中点 で、 です。
(2) で なので
は辺 上にあるので 。
同じように で なので 、 は辺 上にあるので 。
2 つが等しくなったのは偶然ではありません。(1) の円で、 と は弧 に対する円周角どうしだからです。
4 つの頂点がすべて 1 つの円の上にある四角形を、円に内接する四角形といいます(その円を外接円と呼びます)。
四角形 が円 に内接するとき、 は弧 ( を含まない側)に対する円周角、 は弧 ( を含まない側)に対する円周角です。この 2 つの弧を合わせると円周 1 周ぶん、中心角でいえば なので
四角形 が円に内接するとき
(2) は (1) から出ます。。
丸いケーキを、向かい合って座った 2 人で分けるところを思い浮かべてください。どこで切っても、2 人の取り分を合わせればケーキ 1 個ぶんです。円に内接する四角形の と は、円周を 2 つの弧に分けて「半分ずつ」見ている角なので、足せば必ず円 1 周の半分、つまり になります。
円に内接する四角形では、向かい合う角が を分け合っているということです。
公式5 の逆も成り立ちます。こちらが、4 点が同じ円の上にあることを示すときの主力になります。
四角形 について、次のどちらかが成り立てば、この四角形は円に内接する。
のとき、自動的に なので、確かめるのは 1 組だけでかまいません。
紙で四角形を切り出し、向かい合う 2 つの角を切り取って並べてみましょう。ぴたりと一直線になれば、その四角形は円に載ります。少しでも重なる、あるいはすき間ができるなら載りません。 になるかどうかだけで、円の存在が決まってしまうわけです。
向かい合う角の和が なら円に内接する——「4 点が同一円周上」を示すときの、いちばん使いやすい入口だということです。
の内心を 、 内の傍心を とします。 のとき、
(1) と を求めなさい。
(2) 4 点 ,,, が同一円周上にあることを、2 通りの方法で示しなさい。
【解答】
(1) 第2章 公式2 と公式5 より
(2) 方法1(公式6) と は直線 について反対側にあるので、,,, はこの順に四角形をなします。向かい合う角は と で、その和は
の値によらず なので、公式6 より四角形 は円に内接します。
方法2(公式2 の逆) は の二等分線、 は の外角の二等分線です。第1章 公式4 より、内角の二等分線と外角の二等分線は直交するので
同じ理由で 。 も も線分 を で見込んでいるので、公式2 の逆より、どちらも を直径とする円の上にあります。(証明終)
方法2 のほうが得るものが多く、この円の直径が であることまで分かります。第2章の j20 で「,,, は を直径とする円の上」と予告したのは、このことでした。
この章で出そろいました。使い分けは、2 点が線分のどちら側にいるかで決まります。
| 場面 | 使う道具 | 形 |
|---|---|---|
| , が の同じ側 | 公式4(円周角の定理の逆) | |
| , が の同じ側で、しかも直角 | 公式2 の逆 | 。円の直径が と分かる |
| 4 点が四角形をなす(向かい合う 2 頂点) | 公式6 | 、または外角 内対角 |
図をかいて、 が 2 つ見えたら公式2 の逆、同じ側の等角が見えたら公式4、四角形が見えたら公式6。この順に探すと迷いません。
この章では、円と「角」の関係を調べました。次の第5章「円の接線と方べきの定理」では、円と直線の関係に進みます。第2章・第3章から持ち越している「円の外の点から引いた 2 本の接線の長さは等しい」をきちんと証明し、接線と弦が作る角が円周角に等しいこと(接弦定理)を学びます。そして、例題3 で見た「2 本の弦の交点」には、角だけでなく長さについてもきれいな関係(方べきの定理)が隠れています。この章の円周角と相似が、その証明の道具になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
円 の周上に 3 点 ,, があります。 のとき、 を含まない弧 に対する中心角 を求めなさい。
(中心角は円周角の 2 倍)
問2
円 の直径を 、円周上の点を (, と異なる)とします。 のとき、 と を求めなさい。
(直径に対する円周角)、
問3
円周上に 4 点 ,,, がこの順にあります。 のとき、 を求めなさい。
(どちらも弧 に対する円周角)
問4
四角形 が円に内接していて です。 を求めなさい。
()
問5
四角形 が円に内接しています。辺 を の先へ延ばした点を とするとき、 ならば はいくらか求めなさい。
(外角は内対角に等しい)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
円 の周上に 3 点 ,, があり、 を含まない弧 に対する中心角が です。 を求めなさい。
は弧 に対する円周角、 は同じ弧に対する中心角です。公式1 より円周角は中心角の半分なので
中心角のほうが大きい、と向きを覚えておくと、2 倍と を取り違えません。
問2 ★
円 の直径を 、円周上の点を (, と異なる)とします。 のとき、,, を求めなさい。
,,
は直径なので、公式2 より 。 の内角の和から
は弧 ( を含まない側)に対する中心角で、同じ弧の円周角が なので
問3 ★
四角形 が円に内接していて、, です。 と を求めなさい。
,
向かい合う角の和は (公式5)なので
確かめ:4 つの内角の和は で、四角形の内角の和と一致します。
問4 ★
円周を 5 等分する点を、順に ,,,, とします。 と を求めなさい。
,
5 等分なので、となり合う 2 点で切り取られる弧 1 つぶんの中心角は です。
は弧 ( を含まない側、弧 1 つぶん)に対する円周角なので
は弧 のうち を含まない側、つまり とたどる弧 2 つぶんに対する円周角なので
「 を含まないほうの弧」を選ぶのがかんじんです。 の側(弧 3 つぶん)を取ると答えが違ってしまいます。
問5 ★
円 の周上に 4 点 ,,, がこの順にあり、弦 と弦 の交点を とします。, のとき、 を求めなさい。
は線分 上にも線分 上にもあるので、 に注目します。この三角形の内角は
は ととなり合って一直線をなす角、つまり の頂点 における外角です。外角はそれととなり合わない 2 つの内角の和なので
「2 本の弦の交点の角は、向かい合う 2 つの弧に対する円周角の和」という形でも覚えられます。
問6 ★
の外心を とします。 のとき、 と を求めなさい。
,
外接円で考えると、 は弧 ( を含まない側)に対する円周角、 は同じ弧に対する中心角です。
なので は二等辺三角形で
第2章 公式1 の と一致します。
問7 ★
四角形 (頂点はこの順)で、, です。4 点 ,,, が同一円周上にあることを示し、さらに のときの を求めなさい。
同一円周上にある(円周角の定理の逆)。
四角形 の頂点はこの順なので、 と は対角線 について同じ側にあります。その 2 点から線分 を見込む角が
と等しいので、公式4(円周角の定理の逆)より 4 点 ,,, は同一円周上にあります。(証明終)
この円で と は、どちらも弧 (, を含まない側)に対する円周角です。したがって
問8 ★
四角形 の内角が ,, です。この四角形が円に内接するかどうかを確かめなさい。
内接する( で )
四角形の内角の和は なので
向かい合う角の和を調べると
公式6 より、この四角形は円に内接すると分かります。
なお、片方の組が なら残りの組も自動的に になります(和が だから)。確かめるのは 1 組だけで十分です。
問9 ★★
円 の周上に 3 点 ,, があり、 です。 を含まない弧 に対する中心角が のとき、 を求めなさい。
は弧 ( を含まない側)に対する円周角なので
より は二等辺三角形で、底角 と は等しいので
別解: なら弧 と弧 が等しく(公式3 (3) の逆)、残りの弧 が ぶんなので、弧 と弧 はそれぞれ ぶん。 は弧 に対する円周角なので です。
問10 ★★
円周上に 4 点 ,,, がこの順にあり、 です。弦 と弦 の交点を とするとき、 と を求めなさい。
,
比の合計は で、4 つの弧を合わせた中心角は です。比 1 あたり
なので、弧 ,,, の中心角は順に ,,,。
は弧 に対する円周角なので
は の頂点 における外角です。 は弧 に対する円周角で 、 は弧 に対する円周角で なので
向かい合う 2 つの弧 , の中心角の和の半分、 と数えても同じです。
問11 ★★
半径 の円 の直径を とし、円周上の点 について とします。 の長さと の面積を求めなさい。
,面積
は直径なので 、そして公式2 より です。直角三角形 で三平方の定理を使うと
直角をはさむ 2 辺が , なので
「直径を見たら直角」を思い出せるかどうかだけの問題です。思い出せれば、あとは の直角三角形を 2 倍したものだと見えます。
問12 ★★
四角形 が円に内接していて、, です。 を求めなさい。
と は向かい合う角なので、公式5 より
対角線 を引くと、 より は二等辺三角形です。底角 と は等しいので
別解: なら弧 と弧 が等しく(公式3 (3) の逆)、 と はそれぞれ弧 ,弧 に対する円周角なので等しい、と言ってもかまいません。
問13 ★★
四角形 が円に内接しています。直線 と直線 が、, の側で点 で交わり、, です。 と を求めなさい。
,
は直線 上で の先、直線 上で の先にあるので、 の辺 の上に が、辺 の上に が乗っています。したがって
の内角の和から
と は円に内接する四角形の向かい合う角なので
確かめ:外角 で、内対角 に等しくなっています(公式5 (2))。
問14 ★★
の外心を とします。, のとき、 と を求めなさい。
,
内角の和から です。
弧 に対する中心角は 。 より は二等辺三角形なので
同じように、弧 に対する中心角は で、 より
第2章 公式1 の , と合っています。残る も入れると、 で「」も確かめられます。
問15 ★★
の外接円を とし、 の二等分線と円 の交点のうち でないほうを とします。 が を含まない弧 の中点であること、および であることを示しなさい。
等しい円周角には等しい弧が対応するので弧 = 弧 。等しい弧には等しい弦が対応するので
は の二等分線なので
は弧 ( を含まない側)に対する円周角、 は弧 ( を含まない側)に対する円周角です。等しい円周角に対する弧は等しい(公式3 (1) の逆)ので
2 つを合わせると を含まない弧 になるので、 はその弧の中点です。
さらに、等しい弧に対する弦は等しい(公式3 (3))ので
(証明終)
の二等分線が向かいの弧を「ちょうど半分に切る」ことになります。 はこのあと j18・j20 でも主役になる点です。
問16 ★★
四角形 が円に内接していて です。 がこの円の直径であることを示し、,, のときの を求めなさい。
より は直径。
で、 は , を通る円の上にあります。公式2 の逆より、 は を直径とする円の上にあり、この円は ,, を通る円、つまり四角形の外接円と一致します(3 点を通る円はただ 1 つ)。よって は直径です。(証明終)
直角三角形 で三平方の定理を使うと
が直径なので、公式2 より です。直角三角形 で
別解:(公式5)から を出しても同じです。
問17 ★★★
四角形 の 4 つの内角の二等分線について、 と の二等分線の交点を 、 と の交点を 、 と の交点を 、 と の交点を とします。4 点 ,,, がこの順に四角形をなすとき、四角形 が円に内接することを示しなさい。
, で、和は なので、公式6 より円に内接する
に注目します。 は の二等分線、 は の二等分線なので
は の二等分線上で から見て の反対側、 は の二等分線上で から見て の反対側にあります。したがって は の対頂角で
まったく同じことを で行うと
この 2 つは四角形 の向かい合う角です。足すと、四角形 の内角の和 が であることから
向かい合う角の和が なので、公式6 より四角形 は円に内接します。(証明終)
もとの四角形の形をまったく使っていないところが、この問題の見どころです。,,, の個々の値は最後に消えてしまい、「和が 」だけが効いています。
問18 ★★★
の内心を 、外接円の を含まない弧 の中点を とします。 を示しなさい。
より は二等辺三角形で 。 は j15 による
内心 は の二等分線上にあるので、,, はこの順に一直線上に並びます(j15 の と同じ点です)。また j15 より です。
残りは です。, とおきます。
を求める は弧 に対する円周角で、 も同じ弧 に対する円周角なので
は の二等分線なので 。 と は直線 について反対側にあるので、 は 2 つの角の和になり
を求める は の頂点 における外角です(,, が一直線だから)。外角は残り 2 つの内角の和なので
2 つが等しいので は の二等辺三角形です。よって
(証明終)
は「,, から等距離な点」でした。この事実は、三角形の問題で内心が出てきたときの定番の入口になります。
問19 ★★★
鋭角三角形 で、 から辺 に下ろした垂線の足を 、 から辺 に下ろした垂線の足を とし、 と の交点を とします。直線 と辺 の交点を とするとき、4 点が同一円周上にあることだけを使って を示しなさい。
四角形 と四角形 がともに円に内接することから が出て、 より
(a) 4 点 ,,, は同一円周上 は 上にあるので 、 は 上にあるので 。四角形 の向かい合う角 と の和が なので、公式6 より円に内接します。
(b) 4 点 ,,, は同一円周上 で、, は直線 の同じ側にあるので、公式4 より同一円周上にあります(例題4)。
(c) 角を渡り歩く (a) の円で、 と は弦 に対する円周角で、 と は の同じ側にあります。よって
は線分 上にあるので 。次に (b) の円で、 と は弦 に対する円周角で、 と は の同じ側にあるので
は の直角三角形なので 。
(d) 仕上げ は線分 上、 は辺 上にあるので 。(c) をつなぐと
の内角の和から
よって です。(証明終)
第2章 公式5 では、外側に大きな三角形を作って外心に帰着させる方法で垂心の存在を示しました。円周角を使うと、補助の三角形を作らずに角をたどるだけで同じ結論に着きます。
問20 ★★★
の内心を 、 内の傍心を 、外接円の を含まない弧 の中点を とします。 が線分 の中点であることを示し、 が成り立つことを示しなさい。
より 。j18 の と合わせて は の中点
も も の二等分線上にあり(第2章 公式2・5)、 もその二等分線と外接円の交点でした(j15)。したがって ,,, はこの順に一直線上に並びます。
j18 より
が分かっているので、あとは を示せば が と の中点だと言えます。
が二等辺であること より は二等辺三角形なので
は の二等分線、 は の外角の二等分線なので、第1章 公式4 より 。 は線分 上にあるので
一方、 は の直角三角形なので、残りの 2 角の和は 。( が線分 上)なので
2 つを見比べると なので、 は二等辺三角形で
結論 で、,, は一直線上にあるので、 は線分 の中点です。さらに も合わせて
(証明終)
例題5 で「,,, は を直径とする円の上にある」ことを示しました。いまその円の中心が 、つまり弧 の中点だと分かったわけです。 の外接円の上の 1 点が、内心と傍心の円の中心を兼ねている——三角形の「心」どうしは、こういう形でつながっています。
美術館で絵を見るとき、壁に近づきすぎると首が痛くなり、離れすぎると絵が小さくなります。ちょうどよい距離がありそうだ、という感覚は誰にでもあるでしょう。これを数学の問題として最初に書いたのが、1471 年のレギオモンタヌスです。
彼の問いはこうでした。「棒が垂直に吊るされている。地面のどの点から見ると、棒はいちばん大きな角度に見えるか」。答えを出すには、棒の両端を通り、目の高さの直線に接する円を考えます。接点に立ったときが最大です。
なぜかというと、目の高さの直線上の別の点に立つと、その点は円の外側に出てしまうからです。円の外の点から棒の両端を見込む角は、円周上から見込む角より必ず小さくなります(外の点から円まで線を伸ばし、三角形の外角を 1 つぶん引くことになるため)。円周上、つまり接点にいるときだけが最大、というわけです。
この問題は「数学の歴史に現れた最初の極値問題」と呼ばれることがあります(※そう呼べるかは定義次第で、諸説あります)。微分が登場するのはこの 200 年後なので、当時は円周角だけで解くしかありませんでした。
いまでも同じ計算が使われている場所があります。ラグビーのコンバージョンキックです。トライした地点を通り、ゴールラインに垂直な線の上ならどこに置いてもよい。2 本のポールを見込む角がいちばん大きくなる点まで下がるのが、理屈の上では最適です。トライがゴールポストから横に離れているほど、最適な位置は遠くなります。
豆知識
レギオモンタヌスは本名をヨハネス・ミュラーといい、ドイツのケーニヒスベルク(「王の山」)の生まれです。当時の学者の習慣で地名をラテン語に直し、「レギオモンタヌス(王の・山の)」と名乗りました。彼が作った天体位置表は航海者に重宝され、1504 年にジャマイカで立ち往生したコロンブスが、その表から月食の日を知って現地の人々を驚かせた——という有名な話が残っています(※逸話の細部には諸説あります)。
GPS のなかった時代、陸地の見える海で自分の位置を知るには、海図に載っている目標物(灯台・岬・煙突など)を使いました。方法は驚くほど単純です。目標物を 3 つ選び、六分儀で「左の目標と真ん中の目標のあいだの角」「真ん中の目標と右の目標のあいだの角」の 2 つを測る。それだけです。
角が 1 つ決まれば、その角で 2 つの目標を見込める点の集まりが分かります。円周角の定理から、それは 2 つの目標を結ぶ弦をもつ円弧です。角を 2 つ測れば円弧が 2 本引け、その交点が自分の位置になります。距離はひとつも測っていないのに、位置が出てしまう。この手順を後方交会法といい、数学の問題としてはオランダのスネリウスが 1617 年に、フランスのポテノーが 1692 年に扱ったので「スネリウス・ポテノーの問題」とも呼ばれます(※どちらを先とするかは資料によります)。
ところが、この方法には効かない場所があります。3 つの目標物と自分が、たまたま 1 つの円の上に並んでしまったときです。円周角の定理によれば、その円弧の上ではどこに動いても角は同じ。つまり測った 2 つの角がぴったり同じ値になり、円弧が重なって交点が決まりません。位置が「その円のどこか」としか分からなくなります。
この円を、海図の世界では危険円と呼びます。航海の教科書には「3 つの目標物を通る円の上、またはその近くでは観測してはいけない」と書かれています。円周角の定理が、そのまま実務のルールになっているわけです。
豆知識
測った 2 つの角から位置を求める作業には、三桿分度器という道具が使われました。中央の腕を 0 度に固定し、左右 2 本の腕を測った角度に開いて海図の上を滑らせ、3 本の腕がそれぞれ目標物に重なるように置く。そのときの中心の穴に鉛筆を差すと、そこが自船の位置です。方程式を解くかわりに、道具のほうに円周角の定理を組み込んでしまった例といえます。
三角形の外接円の上に点 をとり、 から 3 辺(またはその延長)に垂線を下ろします。すると、3 つの垂線の足が一直線に並びます。逆に、3 つの足が一直線になるのは が外接円の上にあるときだけです。この直線をシムソン線といいます。
証明には、この章で学んだ道具がそのまま使えます。 と 2 つの垂線の足は、直角が 2 つ並ぶので同一円周上(公式4)。 を含む四角形が円に内接することから角が等しくなり、それをつないでいくと 3 点が一直線に並ぶ、という流れです。
さて、名前の話です。ロバート・シムソンは 18 世紀スコットランドの数学者で、グラスゴー大学でユークリッド『原論』の校訂版を出し、それが英語圏の幾何学教育を長く支えました。名の通った人物です。ところが、彼の著作にこの定理は出てきません。実際にこの定理を発表したのは、同じスコットランドのウィリアム・ウォレスで、1799 年のことでした(※経緯の詳細には諸説あります)。「ウォレス線」と呼ぶべきだという主張は、いまでもときどき見かけます。
第3章で、チェバの定理を 11 世紀にイブン・フードが先に証明していた話をしました。定理の名前は、最初に見つけた人の名前とは限りません。
豆知識
この現象には名前がついています。統計学者のスティグラーが 1980 年に唱えたスティグラーの法則——「科学的発見に、その発見者の名前がつくことはない」。おもしろいのは、スティグラー自身がこの法則の発見者を社会学者マートンだとしていることです。法則が自分自身に当てはまるように作られている、という念の入れようでした(※もちろん半分は冗談です)。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「公式1〜6 を使えること」で十分ですが、「円周角の定理はなぜ 3 通りに分けて証明するのか」「逆はどうやって示すのか」「 を超える中心角はどう扱うのか」が気になる人のために、この章の定理を順番に組み立て直します。第2章の厳密定義ページの定理(3 点を通る円はただ 1 つ)を使います。
円 の周上の異なる 2 点 , は、円周を 2 つの部分に分ける。そのそれぞれを、, を端とする弧という。短いほうを劣弧、長いほうを優弧という( が直径のときは 2 つとも半円で、区別しない)。
1 つの弧 に対して、その両端 , と中心 が作る角のうち、 の側にある角を の中心角という。 が優弧のときは を超える角(優角)をとるものとし、 が半円のときは とする。中心角は より大きく より小さい。
円周上の点 (, と異なる)に対し、 を、 を含まないほうの弧に対する円周角という。
「弧に対する」という言い方をするのは、円周角の大きさが弧だけで決まるからです。中心角に優角を許しておくと、次の定理を場合分けなしの 1 本の式で書けます。
円 の弧 (端点 ,)に対する中心角を 、 の上にない円周上の点を とすると
証明 と を通る直線が円と再び交わる点を とする( は直径)。 より は二等辺三角形なので 。三角形の外角は、それととなり合わない 2 つの内角の和だから 。 は線分 上にあるので で
同じ理由で
の位置で 3 つに分かれる。
(i) が弧 の上にあるとき。このとき半直線 は の内部を通り、。また中心角 ( の側の角)は に等しい。(1)+(2) より 。 が を超えるときは が優角になるが、式はそのまま成り立つ。
(ii) が または に一致するとき。 とすると (1) だけで 。
(iii) が弧 の上にないとき( と同じ側にあるとき)。, のうち に近いほうを としてよい。半直線 が の内部を通るので 、同様に 。(1)-(2) より 。(証明終)
3 通りに分けるのは、 を引いたときに角が「和になるか・そのままか・差になるか」が変わるからでした。証明の本体である (1)(2) は、どの場合でも同じ 1 行です。
(1) が円 の直径で、 が円周上の点(, と異なる)ならば 。
(2) 逆に ならば、 は線分 を直径とする円の上にある。
証明 (1) 弧 は半円なので中心角は 。定理1 より 。
(2) の中点を とし、半直線 上に となる点 をとる。四角形 は 2 本の対角線 , がたがいの中点 で交わるので平行四辺形である。 より、この平行四辺形は長方形であり、長方形の 2 本の対角線は等しいので 。よって
は から の距離にあるので、 を直径とする円の上にある。(証明終)
(2) から、直角三角形の外心が斜辺の中点であることがただちに出ます。第1章で中学の知識として使っていた事実の、正式な根拠です。
2 点 , が直線 について同じ側にあり ならば、4 点 ,,, は同一円周上にある。
証明 ,, を通る円 をとる(3 点を通る円はただ 1 つ。第2章 厳密定義ページ 定理3)。 がこの円の上にないとして矛盾を導く。半直線 と円 の交点のうち でないほうを とすると、 は直線 について と同じ側にあり、(定理1 より、同じ弧 に対する円周角)。
が円の内部にあるとき、,, はこの順に並ぶ。 は の頂点 における外角なので
が円の外部にあるとき、,, はこの順に並ぶので、同じ議論を について行って
つまり 。どちらの場合も に反する。よって は円 の上にある。(証明終)
いまの証明の途中で、次のことも示せました。あとで使うので取り出しておきます。
線分 の一方の側で考える。円 が , を通り、その側の円周上の点から を見込む角を とすると、同じ側にある点 について
証明 定理3 の証明の 2 つの不等式が、そのままこの主張である。(証明終)
「 を一定の角度で見込む点の集まりは円弧である」という言い方は、この定理4 まで込みで理解しておくと使いやすくなります。近づけば広く、離れれば狭く見えるのが普通で、円弧の上だけが「同じ広さ」の境目なのです。
1 つの円(または半径の等しい 2 つの円)において、次の 3 つはたがいに同値である。
(1) 2 つの弧の長さが等しい (2) 2 つの中心角が等しい (3) 2 つの弦の長さが等しい(ただし弧は劣弧どうし、または優弧どうしで比べる)
証明 (1) (2):半径 の円で、中心角 (弧度法)の弧の長さは である。 が共通なら弧の長さと中心角は比例するので同値。
(2) (3):中心角が等しければ、 と は ,, で 2 辺夾角が等しく合同。よって 。
(3) (2):,, で 3 辺が等しく合同。よって 。(証明終)
弧の長さが中心角に比例すること()は、円周の長さを定義する段階で認めている事実です。まず円周を 等分して「中心角が なら弧も 」を示し、有理数倍へ広げ、最後に連続性で一般の角に渡す、という順で組み立てられます。ここではその結果だけを使いました。
なお、弦は弧に比例しません。中心角 の弦の長さは で、 の 1 次式ではないからです。 を 2 倍しても弦は 2 倍にならず、 が に近づくと弦は直径で頭打ちになります。
(1) 四角形 が円に内接するならば 。
(2) 逆に、四角形 で ならば、この四角形は円に内接する。
証明 (1) は弧 ( を含まない側)に対する円周角、 は弧 ( を含まない側)に対する円周角である。この 2 つの弧を合わせると円周 1 周ぶんで、中心角の和は 。定理1 より
(2) ,, を通る円 をとる。四角形 の頂点はこの順なので、 は対角線 について と反対側にある。その側の円周上の点 をとると、(1) を四角形 に使って
は について と同じ側にあるので、定理4 より、 が円の内部なら 、外部なら となって上の等式に反する。よって は円 の上にあり、四角形 は円 に内接する。(証明終)
定理3 と定理6 (2) は、どちらも「定理4 で内側・外側を排除する」という同じ形の議論です。第1章から使ってきた同一法(結論を否定して、一意性に反することを示す)が、円でもそのまま働いています。
最後に、公式4 で「同じ側」が外せない理由を、定理4 の言葉で言い直しておきます。 の一方の側で の角に見える点の集まりは 1 本の円弧です。反対側にも同じ に見える円弧がありますが、それは最初の円弧を直線 について折り返したもので、両者を合わせた図形は円ではありません( のところで折れ曲がっています)。 と が別々の弧に乗っていると、角が等しくても同一円周上にはならないのです。
この章の学習が終わったら
学習完了テストを受ける