問1
鋭角三角形 の外心を とします。, のとき、 を求めなさい。
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(二等辺三角形の底角の和 より )
目次 / 図形の性質 / 数学A
—— 3 本の線が 1 点に集まる——外心・内心・重心、そして垂心・傍心 ——
三角形に 3 本の直線を引くと、ふつうは交点が 3 つできます。ところが「3 辺の垂直二等分線」「3 つの角の二等分線」「3 本の中線」は、どんな三角形でもぴったり 1 点で交わります。この章では、そうした特別な点——外心・内心・重心・垂心・傍心の「五心」——を学びます。第1章で学んだ角の二等分線と比、平行線と線分の比が、ここで活躍します。
第1章に続き、 の ,, の向かいの辺の長さを ,, と書きます。三角比の分野(第3章・第4章)と同じく、外接円の半径を 、内接円の半径を 、 の面積を とします。
三角形に適当な 3 本の直線を引くと、ふつうは交点が 3 つできます。ところが、ある決まった引き方をすると、3 本がどんな三角形でもぴったり 1 点に集まります。この章では、その代表の 5 つの点をまとめて五心と呼び、1 つずつ調べます。
| 名前 | 記号 | どの 3 本の直線の交点か | 何の中心か |
|---|---|---|---|
| 外心 | 3 辺の垂直二等分線 | 外接円(3 頂点を通る円) | |
| 内心 | 3 つの内角の二等分線 | 内接円(3 辺に接する円) | |
| 重心 | 3 本の中線 | 三角形の板のつり合う点 | |
| 垂心 | 各頂点から向かいの辺への垂線 | — | |
| 傍心 | など | 1 つの内角と 2 つの外角の二等分線 | 傍接円 |
中心になるのは外心・内心・重心の 3 つです。垂心と傍心は、最後にまとめて紹介します。
中学で学んだとおり、線分 の垂直二等分線( の中点を通り に垂直な直線)の上の点は、 と から等しい距離にあります。逆に、 となる点 はすべて垂直二等分線の上にあります。
の辺 の垂直二等分線と辺 の垂直二等分線の交点を とします。 は の垂直二等分線上にあるので 、 の垂直二等分線上にあるので 。すると なので、 は辺 の垂直二等分線の上にもあります。こうして 3 本が 1 点で交わることが分かります。
の 3 辺の垂直二等分線は 1 点 で交わり
この点 を の外心といい、 を中心とする半径 の円が外接円です。
3 つの村が共同で給水塔を 1 つ建てることになりました。どの村から見ても公平なように、3 つの村からの距離がちょうど等しい場所を探します。村 と村 から等しい場所は 2 村を結ぶ線分の垂直二等分線上、村 と村 から等しい場所はその垂直二等分線上。その 2 本の交点が答えで、そこは自動的に村 と村 からも等距離です。村が大きく開いた(鈍角の)配置だと、公平な場所は 3 村に囲まれた土地の外へはみ出してしまいます。
外心は「3 頂点から等しい距離にある点」で、3 辺の垂直二等分線の交点であり、外接円の中心だということです。
鋭角三角形 の外心を とします。, のとき、 と を求めなさい。
【解答】
より、,, は二等辺三角形なので
とおくと、 の内角の和は 。よって で
とも一致します。外心の角の問題は、「二等辺三角形の底角」を書きこむところから始めましょう。
外心が「3 頂点から等距離の点」なら、内心は「3 辺から等距離の点」です。
第1章の厳密定義ページで、角の二等分線上の点は角をはさむ 2 辺から等しい距離にあることを確かめました。逆に、角の内部にあって 2 辺から等しい距離にある点は、その角の二等分線の上にあります。
の二等分線と の二等分線の交点を とします。 は辺 , から等距離で、辺 , からも等距離です。つまり 3 辺すべてから等距離なので、 の二等分線の上にもあります。
の 3 つの内角の二等分線は 1 点 で交わり、 から 3 辺までの距離はすべて等しい()。この点 を内心といい、 を中心とする半径 の円が内接円です。内心はいつも三角形の内部にあります。
(2) 直線 と辺 の交点を とすると
(3) 内接円と辺 ,, の接点を ,, とすると
三角形の箱に、丸いクッキーをできるだけ大きく焼いて入れたいとします。クッキーを少しずつ大きくしていくと、どこかの壁にぶつかります。ぶつからない向きへずらしながらさらに大きくすると、最後は 3 つの壁すべてに触れて、もう動けなくなります。そのとき中心は 3 つの壁から同じ距離にあり、それが内心です。どんな形の三角形でも、このクッキーは必ず箱の中に収まります。内心がいつも内部にあるのはそのためです。
内心は「3 辺から等しい距離にある点」で、3 つの内角の二等分線の交点であり、内接円の中心だということです。
(1) の内心を とします。 のとき、 を求めなさい。
(2) ,, の の内心を 、直線 と辺 の交点を 、内接円と辺 の接点を とします。 と の長さを求めなさい。
【解答】
(1) なので 。
公式2 (1) で としても同じです。
(2) 第1章 公式3 より なので 。 で は の二等分線なので、もう一度公式3を使うと
(公式2 (2) で としても同じ。)接点までの長さは、,, とおくと
3 式を足して 。ここから 、。
角の二等分線が と交わる点 ()と、内接円の接点 ()は別の点です。混同しないようにしましょう。
重心に進む前に、第1章 公式1 の特別な場合を 1 つ用意します。
の辺 , の中点をそれぞれ , とすると
三角形の紙を、頂点 が底辺 にぴったり重なるように、 と平行な折り目で折ってみてください。 から折り目までの距離と、折り目から までの距離が等しくなるので、折り目はちょうど高さの半分の位置を通ります。そして折り目の長さを測ると、底辺のちょうど半分になっています。折り目の両端が、辺 , の中点です。
2 辺の中点を結ぶ線分は、残りの辺に平行で長さはその半分だということです。
の台形 で , です。辺 , の中点をそれぞれ , とするとき、 の長さを求めなさい。
【解答】
対角線 の中点を とします。
で、, は , の中点なので、公式3より ,。
で、, は , の中点なので ,。
なので、 と はどちらも を通り に平行な直線の一部です。平行線は 1 本しか引けないので、,, は一直線上に並びます。よって
一般に、台形の脚の中点を結ぶ線分の長さは上底と下底の平均 です。「一直線に並ぶ」ことを確かめてから足すのがポイントです。
三角形の頂点と、向かいの辺の中点を結ぶ線分を中線といいます。中線は、三角形の面積をちょうど半分に分けます(第1章 公式5 (1))。
中線 と の交点を とします。, は辺の中点なので、中点連結定理より ,。錯角が等しいので で、相似比は です。よって
中線 と の交点についても同じ議論ができ、やはり を に内分する点になります。 を に内分する点は 1 つしかないので、それは です。こうして 3 本の中線が で交わります。
の 3 本の中線 ,, は 1 点 で交わり、 は各中線を頂点の側から に内分する。
この点 を重心といいます。
厚紙で三角形を切り抜き、指先 1 本で水平に支えようとすると、うまくつり合う点がただ 1 つあります。それが重心です。三角形を に平行な細い帯に切り分けて考えると、どの帯も中点は中線 の上にあります(中点連結定理と同じ理屈です)。だから三角形は、 に沿って置いた定規の上でつり合います。同じことが 3 本の中線のどれについても言えるので、3 本の交点で支えれば、どちらにも傾かないのです。
重心は 3 本の中線の交点で、各中線を頂点の側から に分け、三角形を面積の等しい 3 つに分ける点だということです。
面積 の の重心を 、辺 の中点を とします。中線 の長さが のとき、, の長さと、, の面積を求めなさい。
【解答】
公式4より なので
面積は 。 で、 は の中点なので 。
「」は頂点の側が 2 です。, と逆にしないように、「重心は辺の側に寄っている」と図で確かめましょう。
残りの 2 つは、ここで性質をまとめて紹介します。
各頂点から向かいの辺(またはその延長)に下ろした垂線は、1 点で交わります。この理由は外心に帰着させるときれいに示せます(厳密定義ページ)。
一方、 の外角の二等分線と の外角の二等分線の交点を とすると、 は直線 , から等距離で、直線 , からも等距離です。すると直線 , から等距離なので、 は の二等分線の上にあります。内心と同じ理屈で、今度は三角形の外に中心ができるわけです。
(1) の各頂点から向かいの辺またはその延長に下ろした 3 本の垂線は 1 点 で交わる。この点を垂心という。
(2) の二等分線と、, の外角の二等分線は 1 点 で交わる。この点を( 内の)傍心という。
正三角形では、外心・内心・重心・垂心の 4 つが一致します。
三角形の形をした公園の 3 つの角に 1 人ずつ立ち、それぞれが向かいの柵まで最短距離でまっすぐ歩くとします。最短の道は柵に垂直な道なので、3 人の歩く道は 3 本の垂線です。公園がどんな形でも、3 人の道は 1 か所で交差します。その交差点が垂心です。
垂心は 3 本の垂線の交点、傍心は 1 つの内角と 2 つの外角の二等分線の交点で、傍心は三角形の外にある「3 直線から等距離の点」だということです。
, の があります。
(1) 垂心を とするとき、 を求めなさい。
(2) 内の傍心を とするとき、 を求めなさい。
【解答】
(1) 垂線 , の足を (辺 上),(辺 上)とします。四角形 で なので
は の対頂角なので 。
(2) 。 は外角の二等分線上にあるので
公式5 (2) の と一致します。内心なら で、 になっています(実践問題で理由を考えます)。
重心は「中線」、内心は「角の二等分線」が 1 点で交わる点でした。では、3 本の線が 1 点で交わるのは一般にどんなときでしょうか。その答えが次の第3章「チェバの定理・メネラウスの定理」です。重心や内心が 1 点で交わることも、チェバの定理から一気に説明できます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
鋭角三角形 の外心を とします。, のとき、 を求めなさい。
(二等辺三角形の底角の和 より )
問2
の内心を とします。 のとき、 を求めなさい。
()
問3
の辺 , の中点をそれぞれ , とします。 のとき、 の長さを求めなさい。
(中点連結定理より )
問4
の重心を 、辺 の中点を とします。 のとき、 の長さを求めなさい。
( より )
問5
, の直角三角形 の外接円の半径を求めなさい。
(直角三角形の外心は斜辺 の中点)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
鋭角三角形 の外心を とします。, のとき、 と を求めなさい。
,
なので ,, は二等辺三角形で
とおくと、 の内角の和から 、。よって
とも一致します。
問2 ★
の内心を とします。, のとき、 と を求めなさい。
,
で 。, は角の二等分線なので
なので 。
公式2 (1) に を入れて としても求められます。
問3 ★
,, の について、外接円の半径 と内接円の半径 を求めなさい。
,
なので の直角三角形です(三平方の定理の逆)。外心は斜辺 の中点なので
面積は 、周の長さは なので、 より 、。
別解: から接点までの長さは公式2 (3) より 。直角の頂点 、2 つの接点、内心 は 1 辺 の正方形を作るので、 です。
問4 ★
,, の の内接円が、辺 ,, とそれぞれ点 ,, で接しています。 と の長さを求めなさい。
,
円の外の点から引いた 2 本の接線の長さは等しいので、,, とおくと
3 式を足すと 、。よって
( で、 と合います。)「 は周の長さの半分」と覚えておくと、公式2 (3) の形がすぐに出ます。
問5 ★
四角形 の辺 ,,, の中点をそれぞれ ,,, とします。対角線の長さが , のとき、四角形 の周の長さを求めなさい。
三角形を 1 つずつ取り出して、中点連結定理を使います。
周の長さは 。一般に に等しくなります。
問6 ★
面積 の の重心を 、辺 の中点を とします。 と の面積を求めなさい。
,
なので 。 と は底辺 が共通で、高さの比は なので
は の中点なので、。
問7 ★
, の直角三角形 の外心を とします。 と を求めなさい。
,
直角三角形の外心は斜辺 の中点なので、 は 上にあり です。
。 は の二等辺三角形なので 。
は の二等辺三角形なので 、よって
「斜辺の中点は 3 頂点から等距離」なので、直角三角形は斜辺の中点で 2 つの二等辺三角形に分かれます。
問8 ★
で , です。辺 の中点 を通り辺 に平行な直線が、辺 と交わる点を とするとき、 と の長さを求めなさい。
,
中点連結定理の逆より、 を通り に平行な直線は辺 の中点を通ります(第1章 公式1 (2) で から )。よって は の中点で
問9 ★★
, の の外心を 、内心を とします。,, を求めなさい。
,,
で、すべての角が鋭角なので は内部にあります。,, とおくと、二等辺三角形の底角から
は の二等分線なので 。
なので、半直線 は と の間にあり
確かめ: で、 となり合っています。
問10 ★★
,, の の内心を とし、直線 と辺 の交点を とします。 の長さと を求めなさい。
,
は の二等分線なので、第1章 公式3 より 。
で、 は の二等分線なので、公式3をもう一度使うと
公式2 (2) の とも一致します。
問11 ★★
,, の の内接円の半径 と、内接円と辺 の接点を とするときの の長さを求めなさい。
,
から に垂線 を下ろし、 とすると、三平方の定理より
なので、。周の長さは なので
接点までの長さは公式2 (3) より
()と ()は近いけれど別の点です。
問12 ★★
面積 の の重心 を通り、辺 に平行な直線が辺 , と交わる点をそれぞれ , とします。 と四角形 の面積を求めなさい。
,四角形
辺 の中点を とすると、 は中線 上にあり 。 なので で、相似比は です( で から )。
相似な三角形の面積の比は相似比の 2 乗なので
四角形 。
「重心は中線の の位置」を、平行線で辺 , に運んだ形です。 もすぐ分かります。
問13 ★★
四角形 の辺 ,,, の中点をそれぞれ ,,, とするとき、四角形 は平行四辺形であることを示しなさい。
対角線 を引き、 と で中点連結定理を使うと ,。1 組の対辺が平行で長さが等しい。
対角線 を引きます。
で、, は , の中点なので、中点連結定理より
で、, は , の中点なので
(1)(2) より かつ 。1 組の対辺が平行で長さが等しいので、四角形 は平行四辺形である。
(証明終)どんな四角形でも(へこんだ四角形でも)中点を結ぶと平行四辺形になります。この事実はヴァリニョンの定理と呼ばれます。
問14 ★★
平行四辺形 で、辺 の中点を 、線分 と対角線 の交点を とします。 のとき、 の長さと、 の面積が平行四辺形 の面積の何倍かを求めなさい。
, 倍
対角線 , の交点を とすると、平行四辺形の対角線はたがいに他を二等分するので は の中点です。
で、 と はどちらも中線なので、交点 は の重心です。よって で
重心と中線で分けた 6 つの三角形は面積が等しいので、。 は平行四辺形の半分なので
「平行四辺形の中に重心が隠れている」ことに気づけば、比の計算はいりません。
問15 ★★
,, の直角三角形 の重心を 、内心を とします。内接円の半径 と、線分 の長さを求めなさい。
,
。面積 、周の長さ なので 、。
は直線 からも直線 からも距離 です。
次に の位置を調べます。 の中点を とすると は中線 上で 。 は直線 上にあるので、 から直線 までの距離は、 から直線 までの距離 の で 。同様に、 から直線 までの距離は の で 。
も も直線 から距離 (同じ側)なので、 です。 なので、 の長さは直線 までの距離の差になり
直角をはさむ 2 辺 , を目盛りのついた 2 本の軸と見ると、 も も「2 本の軸からの距離」だけで位置が決まるので、差をとるだけで距離が出ます。
問16 ★★
, の二等辺三角形 の外接円の半径 、内接円の半径 、外心 と内心 の距離 を求めなさい。
,,
の中点を とすると 、。二等辺三角形は について対称なので、外心・内心・重心はすべて 上にあります。
()、周の長さ なので 、。 は から距離 なので 。
() は 上で 。 として直角三角形 で三平方の定理を使うと
で、 も も から見て同じ側( の側)にあるので
確かめ:(オイラーの式、小話を参照)に入れると で合っています。
問17 ★★★
鋭角三角形 の垂心を 、外心を とするとき、 が成り立つことを示しなさい。
と の交点を とすると、直角三角形 で 。二等辺三角形の底角 から 。
鋭角三角形なので も も内部にあります。
直線 と辺 の交点を とすると、 です。直角三角形 で
一方、 なので、,, とおけて、内角の和から 。 なので
(1)(2) より 。
(証明終) と は、 の二等分線をはさんで対称な位置にあります。垂心と外心は、角の二等分線について「鏡に映した」関係の 2 点です。
問18 ★★★
鋭角三角形 で、頂点 から辺 に下ろした垂線を とすると、,, です。 の垂心を とするとき、 と の長さを求めなさい。
,
垂心 は 上にあります。 から に下ろした垂線を とすると、 は 上にもあります。
直角三角形 で 。直角三角形 で 。よって で、 なので
対応する辺の比から 、すなわち
という形は、第5章の「方べきの定理」でも現れます。
問19 ★★★
,, の で、 内の傍接円が辺 と点 で、辺 の の先への延長と点 で、辺 の の先への延長と点 で接しています。 と の長さを求めなさい。
,
円の外の点から引いた 2 本の接線の長さは等しいので
なので
これは周の長さの半分です。。
比べてみると、内接円と の接点を とすれば で、。内接円の接点と傍接円の接点は、辺 の中点について対称な位置にあります。
問20 ★★★
の内心を 、 内の傍心を とします。 のときの を求め、さらに一般に が成り立つことを示しなさい。
。, なので、四角形 の残りの 2 角の和が 。
(前半), なので
なら 。
(後半) は の内角の二等分線、 は の外角の二等分線です。第1章 公式4 のとおり、内角と外角の二等分線は直交するので 。同様に 。
は三角形の内部、 は辺 について と反対側にあるので、四角形 ができ、その内角の和は です。よって
(証明終) なら で、 と確かめられます。向かい合う角の和が なので、4 点 ,,, は を直径とする 1 つの円の上にあります(第4章で扱う「円に内接する四角形」の形です)。
外心・重心・垂心は、それぞれまったく別の決め方をした点です。ところが、どんな三角形でもこの 3 点は 1 本の直線の上に並びます。しかも重心は、外心と垂心を結ぶ線分をいつも に内分します()。これを見つけたのは 18 世紀の数学者レオンハルト・オイラーで、1765 年ごろの論文で示されました(※論文の年は 1763 年・1767 年などとされることもあります)。この直線はオイラー線と呼ばれています。
直角三角形で確かめてみましょう。 なら、垂心は直角の頂点 、外心は斜辺 の中点 です。重心は中線 を の側から に分ける点なので、たしかに ()と ()を結ぶ線分の上にあり、 です。二等辺三角形なら、3 点はどれも対称の軸の上に並びます。
一方、内心はふつうオイラー線の上にはありません。そのかわりオイラーは、外心と内心の距離について という式も残しました(※イギリスのチャップルが 1746 年に先に発表していたとも言われます)。左辺は 以上なので 、つまり「外接円の半径は内接円の半径の 2 倍以上」で、等号は正三角形のときだけです。
豆知識
オイラー線の上には、もう 1 つ有名な点があります。3 辺の中点、3 本の垂線の足、垂心と各頂点を結ぶ線分の中点——合わせて 9 個の点は、いつも 1 つの円の上にあります。この九点円の中心は外心と垂心のちょうど真ん中にあり、半径は外接円の半分です。1822 年にドイツのフォイエルバッハは、九点円が内接円と 3 つの傍接円すべてに接することまで示しました(※九点円そのものの発見者には諸説あり)。
どんな形の三角形でもかまいません。3 つの辺それぞれに、外側へ向けて正三角形を貼りつけます。そして、貼りつけた 3 つの正三角形の中心(正三角形なので外心・内心・重心はすべて同じ点です)を結ぶと——なんと、いつも正三角形ができます。
これはナポレオンの定理と呼ばれ、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが見つけたと言われてきました。ナポレオンは砲兵将校として数学を学び、数学者のラプラスやラグランジュとも交流がありました。ただ、本人が発見したという確かな記録はなく、知られている最も古い発表は 1825 年のイギリスの雑誌だとされます(※名前の由来には諸説あり)。
この定理のすごいところは、もとの三角形がどんなにいびつでも、結果が必ず「いちばん整った三角形」になる点です。いびつさが、3 つの正三角形の中でうまく打ち消し合っているのです。
豆知識
同じ図で、各頂点と「向かいの辺に貼った正三角形の、遠いほうの頂点」を結ぶと、3 本の線はやはり 1 点で交わります。3 つの角がすべて より小さい三角形では、この点から 3 頂点までの距離の和 が最小になり、どの 2 頂点を見込む角も です。この点はフェルマー点と呼ばれ、17 世紀にフェルマーが出した問題をトリチェリが解いたと伝えられます(※伝承による)。第1章の実践問題で の大きさを評価しましたが、その最小値を与える点が、ここで登場したわけです。3 つの町を結ぶ道路の総延長を最短にしたいときにも、この の分かれ道が現れます。
この章では 5 つの「心」を学びましたが、三角形の中心と呼べる点はそれだけではありません。アメリカの数学者クラーク・キンバーリングは、三角形の中心を集めた『三角形の中心百科事典』(Encyclopedia of Triangle Centers、略して ETC)を 1990 年代にインターネット上で公開しました。世界中の研究者や愛好家が新しい中心を報告し続け、登録数は 2020 年代に数万個に達しています(※件数は今も増え続けています)。
百科事典では、中心に ,,… と番号がついています。 が内心、 が重心、 が外心、 が垂心、 が九点円の中心です。この章の主役たちは、最初の番号を占める「古株」なのです。
中心として登録されるには、「三角形を拡大・縮小・回転しても、同じ位置関係の点に移る」「3 つの頂点を平等に扱って決まる」といった条件を満たす必要があります。実は傍心は、この意味での「中心」には入りません。傍心は 3 つあり、どの頂点を選ぶかで決まる点だからです。5 つをひとまとめに「五心」と呼ぶのは、日本の数学教育でよく見られる言い方です(※英語圏では、それぞれを個別に扱うのがふつうです)。
豆知識
英語の名前には、それぞれの決め方が表れています。外心 circumcenter の circum は「まわり」(外接円 circumcircle の中心)、内心 incenter の in は「内側」、傍心 excenter の ex は「外側」です。垂心 orthocenter の ortho は「まっすぐ・直角」の意味で、歯並びを整える矯正歯科(orthodontics)と同じ語源です。重心 centroid は「中心 center のようなもの」という意味です。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「公式1〜5を使えること」で十分ですが、「3 本の線が 1 点で交わることは、どう証明すれば完全なのか」「垂心はなぜ存在するのか」が気になる人のために、証明を紹介します。第1章の厳密定義ページの定理(内分点はただ 1 つ、平行線と線分の比)を使います。
3 本以上の直線がすべて同じ 1 点を通るとき、それらの直線は 1 点で交わるという。 について
定義では「1 点で交わるとき」と条件をつけました。本当に 1 点で交わることは、これから定理として示します。
点 が線分 の垂直二等分線上にあることと、 であることは同値である。
証明 の中点を とする。 のときは明らかなので、 とする。
() が垂直二等分線上にあれば、 と で , は共通,。2 辺とその間の角が等しいので合同で、。
() ならば、 と は 3 辺がそれぞれ等しいので合同で、。2 つの和は なので、どちらも 。よって で、 は垂直二等分線上にある。(証明終)
の 3 辺の垂直二等分線は 1 点で交わる。
証明 辺 , の垂直二等分線をそれぞれ , とする。もし なら、 に垂直な と に垂直な も平行になり、 を共有するので ,, が一直線上に並んでしまう。よって と は 1 点 で交わる。
定理1より、 は 上にあるので 、 上にあるので 。よって となり、再び定理1より は辺 の垂直二等分線上にある。(証明終)
3 点 ,, を通る円の中心は、3 点から等距離なので必ず です。「一直線上にない 3 点を通る円はただ 1 つ」ということも、この定理から分かります。
()の内部の点 から直線 , に下ろした垂線の足を , とする。 が の二等分線上にあることと、 であることは同値である。
証明 直角三角形 と は、斜辺 が共通である。
() なので、, はそれぞれ半直線 , 上にあり、。斜辺と 1 つの鋭角がそれぞれ等しいので合同で、。
() ならば、斜辺と他の 1 辺がそれぞれ等しいので合同で、。 が鈍角のときは、足 が半直線 の反対側( の向こう)に落ちることがあり、そのときは である( も同様)。足の位置で場合を分けると、 から「」か「」のどちらかが出るが、後者は に反する。よって 。(証明終)
第1章では()だけを使いました。内心の存在には()が必要です。「角の内部の点」という条件を外すと、2 直線から等距離な点には外角の二等分線上の点も含まれます。傍心はそちらを使います。
の 3 つの内角の二等分線は 1 点で交わる。また、 の二等分線と , の外角の二等分線も 1 点で交わる。
証明 (内心) の二等分線は辺 と、 の二等分線は辺 と交わるので、2 本は三角形の内部の点 で交わる。定理3より、 から直線 , までの距離は等しく、直線 , までの距離も等しい。よって から直線 , までの距離は等しく、 は の内部にあるので、定理3より の二等分線上にある。
(傍心), の外角の二等分線が辺 となす角( と反対側)は , で、その和は 。よって 2 本は について と反対側の点 で交わる。内心と同じく は直線 ,, から等距離で、 は の内部にあるので、定理3より の二等分線上にある。(証明終)
の辺 , の中点を , とすると、, である。
証明 第1章の定理3(平行線と線分の比の逆)からすぐに出るが、ここでは比を使わない証明を示す。
線分 を の先へ延ばし、 となる点 をとる。 と で、,,対頂角で 。よって で、,。
錯角が等しいので 、すなわち 。 と合わせて、1 組の対辺が平行で長さが等しいので、四角形 は平行四辺形である。よって ,。 なので、,。(証明終)
の 3 本の中線 ,, は 1 点 で交わり、 である。
証明 中線 と は三角形の内部の点 で交わる。定理5より ,。錯角が等しいので で、相似比は 。よって 。
同様に、中線 と の交点を とすると、(,)より 。 と はどちらも線分 を に内分する点なので、第1章の定理1(内分点はただ 1 つ)より 。よって 3 本の中線は で交わり、 も成り立つ。(証明終)
同じ点が 2 通りの方法で得られたら同じ点、という同一法です。
の各頂点から向かいの辺を含む直線に下ろした 3 本の垂線は 1 点で交わる。
証明 を通り に平行な直線、 を通り に平行な直線、 を通り に平行な直線を引く。どの 2 本も平行でないので、3 本は三角形 を作る( は , を通る 2 本の交点、他も同様)。
四角形 は 2 組の対辺がそれぞれ平行なので平行四辺形で、。同様に四角形 も平行四辺形で、。よって は線分 の中点である。同様に は の、 は の中点である。
から への垂線は、 なので にも垂直で、 の中点 を通る。つまり の垂直二等分線である。他の 2 本も同様なので、 の 3 本の垂線は の 3 辺の垂直二等分線であり、定理2より 1 点で交わる。(証明終)
垂心は、2 倍に拡大して裏返した三角形の外心だったのです。この「辺に平行な線で大きな三角形を作る」考え方は、小話のオイラー線の証明にもつながります。
の外心と重心が一致するならば、 は正三角形である。内心と重心が一致する場合も同様である。
証明 (外心 重心)一致する点を とし、辺 の中点を とする。 は中線 上にあって である。 は外心なので、定理1より の垂直二等分線上にあり、 もその上にある。よって直線 、すなわち直線 は の垂直二等分線であり、 はその上にあるので 。同様に となり、正三角形である。
(内心 重心)一致する点を とすると、中線 は を通るので の二等分線でもある。第1章の公式3より で、 なので 。同様に となり、正三角形である。(証明終)
逆に正三角形なら、対称性から外心・内心・重心・垂心の 4 つが一致します。「どれか 2 つが一致する」ことは、正三角形であることの言いかえになっているのです。
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