問1
, が 1次独立のとき、 を満たす実数 , を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
係数を比べて , より
目次 / ベクトル / 数学C
—— 位置ベクトルと内積を組み合わせて、図形の問題を計算で解く ——
第3章の内積と第4章の位置ベクトルを組み合わせて、図形の問題に取り組みます。2 本の直線の交点を「2 通りに表して係数を比べる」方法で求め、線分の長さや角の大きさ、垂直かどうかを内積の計算で調べます。後半では、垂線の足・内心・垂心といった三角形の特別な点をベクトルで表し、外心・重心・垂心が一直線に並ぶ「オイラー線」まで、式の計算だけで確かめます。
第4章の終わりで、「係数の和が 」の形が 2 直線の交点を求めるときに活躍する、と予告しました。この章は、その約束を果たすところから始めます。
三角形 OAB で , とすると、平面上のどんな点 P も の形にただ 1 通りに書けます。第1章で学んだ「ベクトルの分解」です。 と は零ベクトルでなく平行でもない、つまり 1次独立 なので、分解の仕方は 1 つしかありません。
この「1 つしかない」ことを裏返すと、強力な道具になります。
, が 1次独立のとき
とくに です。
2 直線の交点の求め方
「2 通りに表す」ときには、第4章の公式6(直線 AB 上の点は係数の和が )を使います。たとえば点 P が直線 AD 上にあれば、実数 を使って と書けます。
マンションの部屋を「階」と「部屋番号」で伝える場面を考えてください。3 階の部屋は、部屋番号をどう変えても 5 階の部屋にはなりません。階と部屋番号はたがいに代わりがきかないので、2 人が別々のメモで同じ部屋を指しているなら、メモの階どうし、部屋番号どうしが必ず一致します。 と が 1次独立であることが、この「代わりがきかない」にあたります。
1次独立な , で表した式は、係数どうしを比べてよく、同じ点を 2 通りに表して係数を比べれば交点が求まるということです。
三角形 OAB で、, とします。辺 OA を に内分する点を C、辺 OB を に内分する点を D とし、線分 AD と線分 BC の交点を P とします。
(1) を , で表しなさい。
(2) 直線 OP と辺 AB の交点を Q とするとき、 と を求めなさい。
【解答】
(1) , です。
P は線分 AD 上にあるので、実数 を使って
P は線分 BC 上にもあるので、実数 を使って
, は 1次独立なので、係数を比べて
2 つ目から 。これを 1 つ目に代入すると
です。よって
( から 、 から も分かります。)
(2) Q は直線 OP 上にあるので、実数 を使って と書けます。Q は直線 AB 上にもあるので、係数の和が です。
したがって で、第4章の公式6から 。
また なので 、つまり です。
図形の性質 第3章のチェバの定理で確かめると、 となり、ぴったり合っています。
図形の中の長さや角を求めるには、第3章の「2 乗して展開」を使います。三角形 OAB なら、,, の 3 つの数さえ分かっていれば、 で表されたどんな線分の長さも計算できます。
のとき
2 つのベクトル , のなす角 は
から求めます(第3章の公式3)。 も、, で表してから展開します。
建築の図面に似ています。家の図面には、柱の位置と主な寸法が書いてあれば十分で、斜めに渡す梁の長さまですべて書きこむ必要はありません。必要になったら、図面の数字から計算で割り出せるからです。,, の 3 つは、三角形 OAB の図面の「主な寸法」にあたります。
線分の長さや角は、ベクトルを , で表して 2 乗・内積を展開すれば、,, の 3 つの数から計算できるということです。
三角形 OAB で、,, とし、, とします。辺 AB を に内分する点を P とするとき、次の値を求めなさい。
(1) 辺 AB の長さ (2) 線分 OP の長さ (3)
【解答】
まず 3 つの基本の数をそろえます。
(1)
よって です。
(2) なので
ですから、 です。
(3)
2 本の線分が垂直かどうかは、第3章の垂直条件で調べられます。図形の問題では、線分を表すベクトルを , で書き、内積が になるかどうかを計算します。
, のとき
よく使う変形(第3章の公式5):
「垂直を示しなさい」という問題は、内積を展開したときに打ち消し合いが起こるように仕組まれていることがほとんどです。上の変形は、その代表です。
凧(たこ)の骨組みを思い出してください。昔ながらのひし形の凧は、2 本の竹ひごを十字に組んで作ります。縦と横の骨が垂直に交わり、どちらの骨も相手の真ん中を通っているので、4 つの辺の長さがそろったひし形になります。次の例題 (1) は、この逆、つまり「4 辺がそろった平行四辺形なら、対角線はかならず垂直に交わる」ことを内積で確かめます。
図形の垂直は、線分を表すベクトルの内積が になることと同じで、展開したときの打ち消し合いが証明の決め手になるということです。
(1) 平行四辺形 OACB で , とします。対角線 OC と AB が垂直であることと、平行四辺形 OACB がひし形であることが同値であることを示しなさい。
(2) 三角形 OAB で , とし、辺 AB を に内分する点を P とします。 となるとき、内積 と を求めなさい(,)。
【解答】
(1) , です。どちらも ではないので、公式3から
は、となり合う 2 辺 OA,OB の長さが等しいこと、つまり平行四辺形 OACB がひし形であることです。(証明終)
(2) , です。垂直なので
よって で
です。 が負なので、 は鈍角だと分かります。
三角形の高さを求めたり、点から直線までの最短距離を求めたりするときには、垂線の足(点から直線へ垂直に下ろした線が、直線と交わる点)の位置が必要になります。
点 B から直線 OA に下ろした垂線の足を H とします。H は直線 OA 上にあるので、実数 を使って と書けます。そして が と垂直ですから
, のとき、点 B から直線 OA に下ろした垂線の足 H は
このベクトルを、 の 上への正射影ベクトルといいます。
直線 OA 以外の直線(たとえば直線 AB)に下ろす場合は、足を「係数の和が 」の形でおき、垂直条件から係数を決めます。
第3章で学んだ正射影 は「長さ(符号つき)」でした。 は の向きの単位ベクトルなので、公式4は
と書き直せます。つまり、正射影の長さに向きをつけたものが正射影ベクトルです。 のときは係数が負になり、H は O をはさんで A と反対側にきます。
川沿いの一本道から、少し離れた家へ向かうことを考えてください。道のどこから家へ曲がれば、いちばん近いでしょうか。答えは、家からまっすぐ直角に道へ下ろした地点です。そこより手前でも先でも、斜めに歩くぶん遠回りになります。垂線の足は、直線の上で「いちばん近い点」なのです(厳密定義の定理1で証明します)。
点から直線へ下ろした垂線の足は、足を直線上の点として文字でおき、「足から点へのベクトルが直線と垂直」という条件で係数を決めれば求まり、直線 OA の場合は になるということです。
三角形 OAB で ,, とし、, とします。
(1) 点 B から直線 OA に下ろした垂線の足を K とするとき、 を で表しなさい。
(2) 点 O から直線 AB に下ろした垂線の足を H とするとき、 を , で表しなさい。
(3) 線分 OH の長さを求めなさい。
【解答】
(1) 公式4から
(2) H は直線 AB 上にあるので、実数 を使って とおけます。 より
左辺を展開して整理します。
なので
係数がどちらも正なので H は辺 AB 上にあり、 です。
(3)
なので、 です。
別の方法で確かめます。第3章の公式6から三角形 OAB の面積は 、また より 。高さ OH は で、一致しました。
図形の性質 第2章で、三角形の 3 つの内角の二等分線は 1 点で交わり、その点が内心(内接円の中心)であることを学びました。内心の位置ベクトルは、同じ図形の性質 第1章の「角の二等分線と辺の比」から求められます。
三角形 ABC で、3 辺の長さを ,, とします(辺の長さの はベクトル とは別物です)。 の二等分線と辺 BC の交点を D とすると、 なので
内心 I は、三角形 ABD で の二等分線と AD の交点でもあるので
よって
三角形 ABC で ,, とするとき、内心 I の位置ベクトルは
各頂点には、向かい合う辺の長さが係数として付きます。
重心 は 3 頂点の「ふつうの平均」でした。内心は、各頂点に重みを付けた平均です。クラスで意見をまとめるとき、班の人数に応じて票の重さを変えることがあります。内心の式では、頂点 A の「票の重さ」が向かいの辺 BC の長さ になっています。係数の和は で、第4章で見たとおり、ちゃんと 1 つの点を表す形です。
内心は、3 頂点の位置ベクトルに向かい合う辺の長さで重みを付けて平均した点で、角の二等分線と辺の比から導けるということです。
三角形 ABC で ,, とします。内心を I とするとき、 を , で表しなさい。
【解答】
基準点を A にとると です。,, を公式5に入れて
公式を使わずに確かめます。 の二等分線と BC の交点を D とすると、 なので
三角形 ABD で の二等分線を考えると ですから
で、一致しました。
最後に、外心(外接円の中心)を基準点にとる方法を紹介します。外心 O を基準点にすると、3 頂点がすべて外接円の上にあるので
となり、大きさがそろいます。これが計算を大きく楽にしてくれます。
円いテーブルの中心に立って料理を配る給仕の人を想像してください。どの席にも同じ距離だけ手を伸ばせば届くので、席ごとに歩き回る必要がありません。外心を基準点にとるのは、それと同じで、「3 つの長さが全部 」という対称な状況を最初から作っておく工夫です。
三角形 ABC の外心 O を基準点にとり、,, とする。このとき、垂心(3 本の垂線の交点)H は
で、重心 G とあわせて が成り立つ。したがって、外心 O・重心 G・垂心 H は一直線上にあり(この直線をオイラー線という)、 である。
図形の性質 第2章では、この性質を小話で紹介しました。ベクトルを使うと、次の例題のとおり数行の計算で証明できます。
外心を基準点にとると 3 頂点の位置ベクトルの大きさがそろい、垂心が という簡単な式で表せて、外心・重心・垂心が一直線に並ぶことまで分かるということです。
三角形 ABC の外心を O とし、,, とします。 で定まる点 H が三角形 ABC の垂心であることを示し、さらに重心 G について であることを示しなさい。ただし、三角形 ABC は直角三角形ではないものとします。
【解答】
です。
, なので
三角形 ABC が直角三角形でないので、H は頂点 A と一致せず です( なら BC が外接円の直径になり、 になってしまいます)。よって で、H は A から BC へ下ろした垂線の上にあります。
同じように , から
で、H は B からの垂線の上にもあります。2 本の垂線の交点なので、H は垂心です。
重心は なので、 はすぐに分かります。(証明終)
内積を展開したとき、 が「半径の 2 乗どうしの差」として消えるところが、外心を基準点にとった効果です。
この章では、交点・長さ・垂直・垂線の足・三角形の中心という図形の定番を、すべて「, で表して計算する」という 1 つの方針で解きました。第6章では、点が動いてえがく直線や円を、ベクトルの式(ベクトル方程式)で表します。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
, が 1次独立のとき、 を満たす実数 , を求めなさい。
係数を比べて , より
問2
,, のとき、 を求めなさい。
より
問3
のとき、内積 の値を求めなさい。
(ひし形の対角線は垂直)
問4
, のとき、 の 上への正射影ベクトルを で表しなさい。
問5
三角形 ABC で ,, とします。3 頂点の位置ベクトルを ,, とするとき、内心 I の位置ベクトルを求めなさい。
(各頂点に向かい合う辺の長さが付く)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
, が 1次独立のとき、 を満たす実数 , を求めなさい。
,
, は 1次独立なので、両辺の係数を比べてよいです(公式1)。
1 つ目から 。2 つ目に代入して 。
よって です。
問2 ★
,, のとき、(1) 、(2) を求めなさい。
(1) (2)
2 乗して展開します(公式2)。
(1)
よって です。
(2)
よって です。
問3 ★
三角形 OAB で ,, とします。辺 AB の中点を M とするとき、(1) 辺 AB の長さ、(2) 線分 OM の長さを求めなさい。
(1) (2)
, とすると
(1)
よって です。
(2) なので
よって です。
中線定理 で確かめると、左辺 、右辺 で一致します。
問4 ★
三角形 OAB で とし、辺 AB の中点を M とします。 であることを、ベクトルを使って示しなさい。
, とすると、条件は です。
内積を計算します(公式3の変形)。
三角形なので 、また O は直線 AB 上にないので です。よって です。(証明終)
二等辺三角形の頂点と底辺の中点を結ぶ線は底辺に垂直、という中学校で習った性質を、計算で確かめたことになります。
問5 ★
三角形 OAB で , とします。辺 OA の中点を C、辺 OB を に内分する点を D とし、線分 AD と線分 BC の交点を P とするとき、 を , で表しなさい。
, です。
P は線分 AD 上にあるので、実数 を使って
P は線分 BC 上にもあるので、実数 を使って
, は 1次独立なので係数を比べて
2 つ目から 。1 つ目に代入すると
です。よって
( の式に代入しても , で一致します。)
問6 ★
三角形 OAB で , とします。点 B から直線 OA に下ろした垂線の足を H とするとき、 を で表しなさい。また、H は O から見て A と同じ側と反対側のどちらにあるか求めなさい。
、H は O をはさんで A と反対側
, として公式4を使います。
係数が負なので、 は と逆向きです。つまり H は O をはさんで A と反対側 にあります。
は が鈍角であることを表していて、鈍角の頂点から先へはみ出したところに垂線の足がくる、という図の見た目とも合っています。
問7 ★
座標平面上の原点 O と 2 点 A,B について、点 B から直線 OA に下ろした垂線の足 H の座標を求めなさい。
, とします。
公式4から
よって です。
確かめ: で、 との内積は です。
問8 ★
座標平面上の 3 点 O,A,B を頂点とする三角形 OAB の内心 I の座標を求めなさい。
3 辺の長さは
公式5では、各頂点に向かい合う辺の長さを付けます。O の向かいは AB 、A の向かいは OB 、B の向かいは OA です。分子と分母を先に計算すると
なので
よって です。
I は 2 本の座標軸から距離 にあり、内接円の半径が であることも分かります(直角三角形の内接円の半径 と一致)。
問9 ★★
平行四辺形 ABCD で , とします。辺 BC を に内分する点を E、辺 CD の中点を F とし、線分 AE と線分 BF の交点を P とします。 を , で表し、 を求めなさい。
,
基準点を A にとります。, なので
P は線分 AE 上にあるので、実数 を使って
P は線分 BF 上にもあるので、実数 を使って
, は 1次独立なので係数を比べて
2 つ目を 1 つ目に代入すると ,つまり で 、 です。
なので 、よって です。
問10 ★★
,, とします。(1) 内積 と、, のなす角 を求めなさい。(2) 実数 が変化するとき、 の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
(1) , (2) のとき最小値
(1) を展開します。
よって 。 で、 から です。
(2) 2 乗して の二次関数とみます。
のとき最小値 をとります。 なので、2 乗が最小のとき大きさも最小です。
よって のとき、最小値 です。
このとき で、 は と垂直になっています。 が の 上への正射影ベクトル に一致するときが「いちばん短い」ときで、公式4の「垂線の足はいちばん近い点」の実例です。
問11 ★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。点 O から直線 AB に下ろした垂線の足を H とするとき、 を , で表し、線分 OH の長さを求めなさい。
,
,, です。
H は直線 AB 上にあるので とおけます。 より
なので です。
長さは
なので です。
確かめ:三角形 OAB の面積は 、 です。高さは で一致します。
問12 ★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。 の二等分線と辺 AB の交点を D、三角形 OAB の内心を I とするとき、 と を , で表しなさい。
,
角の二等分線と辺の比から です。
です。I は三角形 OAD で の二等分線と OD の交点でもあるので
したがって
公式5で確かめます。O の向かいの辺 AB 、A の向かいの OB 、B の向かいの OA なので
で一致します。
問13 ★★
平行四辺形 OACB で , とします。2 本の対角線 OC,AB の長さが等しいことと、平行四辺形 OACB が長方形であることが同値であることを示しなさい。
なので、
, です。2 つの大きさの 2 乗を展開します。
差をとると
長さは 以上なので、長さが等しいことと 2 乗が等しいことは同じです。したがって
(, なので内積 は垂直と同じ。)となり合う 2 辺が垂直な平行四辺形は長方形です。(証明終)
例題3 (1) の「対角線が垂直 ⇔ ひし形」と対になる性質で、あちらは 、こちらは が決め手になっています。
問14 ★★
三角形 ABC と点 P が を満たしています。三角形 PBC,PCA,PAB の面積の比を求めなさい。
基準点を A にとり、,, とします。
内分点の形が見えるように変形します。
は辺 BC を に内分する点 D の位置ベクトルなので、、つまり です。
三角形 ABC の面積を とすると
なので
式の係数 が、それぞれの頂点の「向かい側」の三角形の面積比にそのまま現れました(第4章の厳密定義 定理2 の重心座標)。
問15 ★★
三角形 ABC の外心を O とし、 が成り立つとします。三角形 ABC が正三角形であることを示しなさい。
と から 。同様に 3 つの内積がすべて等しく、
,, とし、外接円の半径を とすると です。
条件から 。両辺の大きさを 2 乗します。
同じように , から です。すると
で、, も同じ計算で になります。3 辺の長さがすべて なので、三角形 ABC は正三角形です。(証明終)
条件は「外心 O と重心 G が一致する」()と言いかえられます。公式6と合わせると、このとき垂心 H も O に重なり、オイラー線がつぶれて 1 点になります。
問16 ★★
座標平面上の 3 点 O,A,B を頂点とする三角形 OAB の垂心 H の座標を求めなさい。
とします。垂心は 3 本の垂線の交点なので、そのうち 2 本の条件を使います。
: なので
:, なので
を代入して 、。よって です。
残りの 1 本も確かめます。, で、内積は 。たしかに 3 本目の垂線の上にもあります。
問17 ★★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。三角形 OAB の外心を P とするとき、 を , で表し、外接円の半径を求めなさい。
,半径
,, です。 とおきます。
外心は辺 OA の垂直二等分線上にあるので、OA の中点を M とすると 、つまり
( は、P から直線 OA に下ろした垂線の足までの符号つき長さ × 。足が OA の中点にくる、という意味です。)同じように です。
成分のように書き出すと
1 つ目を 3 で割って 。2 つ目から引くと 、。よって 、 です。
半径は です。
よって半径は です。
正弦定理で確かめます。 なので 、 で一致します。
問18 ★★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。三角形 OAB の垂心を H とするとき、 を , で表しなさい。
とおきます。垂心は 3 本の垂線の交点なので、A からの垂線と B からの垂線の条件を使います。
:、つまり 。
:、つまり 。
2 つ目を 2 で割ると 。1 つ目から引いて 、。 より 。
O からの垂線も確かめます。
たしかに で、3 本の垂線が H で交わっています。係数がどちらも正で和が なので、H は三角形の内部にあります(3 つの角がすべて鋭角であることと対応しています)。
問19 ★★★
三角形 ABC で、頂点 A から辺 BC に下ろした垂線と、頂点 B から辺 CA に下ろした垂線の交点を H とし、H は C と一致しないものとします。 であることを示しなさい。
H を基準点にとると ,。2 式を足すと が出て、
基準点を H にとり、,, とします。
H は A からの垂線の上にあるので です(H が A と一致するときは で、内積はやはり )。どちらの場合も
同じように、B からの垂線の条件から
(i) と (ii) を足すと
これは です。仮定から 、三角形なので 。よって です。(証明終)
3 本目の垂線も H を通る、つまり 三角形の 3 本の垂線は 1 点で交わる ことが、内積の足し算だけで示せました。(i) と (ii) が「巡回」の形になっていて、足すと 1 項ずつ打ち消し合うところがポイントです。
問20 ★★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。辺 OA の中点を M、辺 OB を に内分する点を N とし、線分 AN と線分 BM の交点を P とします。(1) を , で表しなさい。(2) 線分 OP の長さを求めなさい。(3) 直線 OP と辺 AB の交点を Q とするとき、 を求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) , です。
P は線分 AN 上にあるので、実数 を使って
P は線分 BM 上にもあるので、実数 を使って
係数を比べて ,。2 つ目から を 1 つ目に代入すると
よって
( で、, と一致します。)
(2) ,, です。
よって です。
(3) とおくと、Q は直線 AB 上にあるので係数の和が です。
なので、第4章の公式6から です。
チェバの定理で確かめると で、正しく成り立っています。
アクションゲームで、剣を振ったときに敵に当たったかどうかは、どうやって決めているのでしょうか。画面の絵をそのまま重ね合わせて調べると時間がかかりすぎるので、多くのゲームでは、キャラクターや武器を円や線分といった単純な形に置きかえて計算します。この単純な形を当たり判定(コリジョン)と呼びます。
たとえば剣を線分 AB、敵を中心 C・半径 の円で表したとしましょう。当たったかどうかは、「線分 AB 上でいちばん C に近い点までの距離が 以下か」で決まります。いちばん近い点を探すのに使うのが、この章の垂線の足です。 として
を計算すると、 が C から直線 AB に下ろした垂線の足 H です(公式4そのものです)。ただし剣には長さがあるので、 が より小さければ (根元の A)、 より大きければ (切っ先の B)に置きかえます。この「はみ出した値を端に押し戻す」処理はクランプと呼ばれ、プログラムでは 1 行で書けます。
最後に と を比べれば判定は終わりです。平方根を計算しないで 2 乗のまま比べるのは、処理を少しでも速くするための定番の工夫です。1 秒に数十回、画面の中のあらゆる組み合わせで同じ計算をくり返すので、こうした小さな節約が効いてきます。
豆知識
ボールが壁で跳ね返る向きも、内積だけで計算できます。壁に垂直な単位ベクトルを 、ボールの速度を とすると、跳ね返ったあとの速度は です。 は の「壁に向かう成分」(正射影ベクトル)なので、それを 2 回引いて向きを反転させているわけです。ブロック崩しやビリヤードのゲームは、この式で球を跳ね返らせています。
虹を見ると分かるとおり、光にはたくさんの波長がまざっています。どの波長がどれだけ含まれているかを細かく並べると、光ごとに何百もの数の組ができあがります。ところが、私たちの目がその光から受け取る数は、ほとんどの場合たった 3 つです。網膜にある 3 種類の錐体細胞(おもに赤っぽい光・緑っぽい光・青っぽい光に反応する細胞)が、それぞれどれだけ反応したか、という 3 つの数です。
それぞれの錐体の反応は、光の「波長ごとの強さ」と、その錐体の「波長ごとの感じやすさ」を、波長ごとに掛けて足し合わせたものになります。成分どうしを掛けて足す、つまり第3章の内積です。目は、何百次元もある光のベクトルを、3 本のベクトルとの内積で 3 つの数に縮めているのです。
縮めてしまうと、元の情報は戻せません。第1章のクレーンゲームのたとえで言えば、ボタンが足りない状態です。そのため、中身のまったく違う 2 つの光が、3 つの内積だけはたまたま一致して、人間にはまったく同じ色に見えることがあります。これを条件等色(メタメリズム)といいます。テレビやスマートフォンの画面は、この性質を逆手にとって、赤・緑・青の 3 色の光だけで、夕焼けや木の葉の色を「同じに見える別の光」として作り出しています。
豆知識
お店で選んだ服を家に帰って見ると色が違って見えた、という経験はないでしょうか。照明の光の中身が変わると、それまで一致していた 3 つの内積がずれて、「同じに見えていた 2 つの色」が別々の色に分かれてしまうことがあります。上下の服を別々の店で買うと、蛍光灯の下ではそろっていた色が、日の光の下では違って見えるのはこのためです。色を厳しく合わせる印刷や塗装の現場では、何種類もの光の下で見比べて確かめます。
サッカーのゴールキーパーは、シュートを打たれる直前、どこに立つのがよいのでしょうか。よく教えられるのは、「ボールと左右のゴールポストを結んでできる角の、二等分線の上に立つ」という考え方です(※実際の立ち位置は、相手の利き足や体勢、チームの約束ごとによって変わります)。
ボールの位置を頂点とし、2 本のポストへ向かう線を 2 辺とする三角形を思い浮かべてください。シュートのコースは、この角の内側に扇のように広がっています。二等分線の上に立つと、自分から左右のコースまでの「守る幅」がちょうど同じになり、どちらに打たれても同じだけ手を伸ばせば届きます。左に寄れば右ががら空きになり、右に寄れば左が空きます。
さらに、前に出るほど角をふさぐ幅は広くなりますが、頭の上を越えるループシュートには弱くなります。二等分線の上を前後に動いて、「どこまで前に出るか」を決めるのがキーパーの腕の見せどころです。この章の公式5で内心を求めたとき、角の二等分線と辺の比を使いました。キーパーは、その二等分線を毎回、目と体で引き直していることになります。
豆知識
三角形の 3 つの角の二等分線が 1 点(内心)で交わるのは、「2 辺から等しい距離にある点の集まり」が二等分線だからです。内心は 3 辺すべてから等しい距離にあり、その距離が内接円の半径になります。三角形の土地に、どの境界線からも同じだけ離して木を 1 本植えたいとき、植える場所は内心しかありません。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、本文の公式を使って交点・長さ・垂線の足・三角形の中心を計算できれば十分です。本文で「証明は厳密定義で」と約束した「垂線の足がいちばん近い点である理由」や、垂心・オイラー線の先にある九点円などに興味がある人のために、少し踏みこんだ内容をまとめます。
本文の公式4では、垂線の足を「足から点へのベクトルが直線と垂直」という条件で求めました。これがなぜ「直線の上でいちばん近い点」になるのかを、内積だけで証明します。
とする。ベクトル に対して
を、 の 上への正射影ベクトルという。
とし、 とおく。このとき次が成り立つ。
(1) である。逆に、実数 について ならば である。
(2) すべての実数 について
が成り立つ。とくに で、等号は のときに限る。
証明 とおくと である。
(1) 。逆に ならば で、 から である。
(2) と分ける。両辺の大きさを 2 乗すると
(1) より中央の項は であり、 だから等式が成り立つ。第 2 項は 以上で、 になるのは のときに限る。(証明終)
(2) は、直角三角形の三平方の定理そのものです。O を始点に の終点を B、 の終点を K、 の終点を H とすると、 の直角三角形で「斜辺 BK は、辺 BH より長い」と言っています。本文 j10 の の最小値が、ちょうど垂直になる でとられたのはこのためです。
参考 この定理は、統計の最小二乗法の土台でもあります。データの点に直線を当てはめるとき、「ずれの 2 乗の和を最小にする直線」を探しますが、それは何十次元ものベクトルを、ある平面の上へ正射影する計算と同じです。ずれのベクトルが平面と垂直になる、という条件(正規方程式と呼ばれます)から係数が決まります。
本文の例題6では「三角形が垂心をもつ」ことを前提にしていました。j19 で示したとおり、3 本の垂線が 1 点で交わることは内積の計算で確かめられます。ここでは、それを基準点によらない恒等式の形にまとめます。
平面上の任意の 4 点 A,B,C,X について
が成り立つ。したがって、三角形 ABC で A からの垂線と B からの垂線の交点を H とすると、H は C からの垂線の上にもある。
証明 左辺を を含む部分と含まない部分に分ける。 を含む部分は
含まない部分は
よって恒等式が成り立つ。 とおくと、第 1 項と第 2 項は垂直の条件から なので、第 3 項も 、すなわち である。(証明終)
A,B からの 2 本の垂線は、BC と CA が平行でない(三角形である)ので必ず 1 点で交わります。したがって、どんな三角形にも垂心がただ 1 つあります。
本文の公式6では、外心 O を基準点にして を得ました。同じ基準点のまま、さらに 1 つの円を見つけることができます。
三角形 ABC の外心 O を基準点とし、外接円の半径を 、垂心を H とする。点 N を
で定める(N は線分 OH の中点)。このとき、次の 9 点はすべて N を中心とする半径 の円の上にある。
証明 辺 BC の中点を L とすると で、 である。
線分 AH の中点を L′ とすると だから で、やはり である。他の辺・頂点についても、文字を入れかえるだけで同じ計算になる。
さらに なので、L と L′ は N に関して対称で、線分 LL′ はこの円の直径である。A から BC に下ろした垂線の足を D とする。D が L,L′ のどちらとも異なるとき、L′ は垂線 AD 上(A と H を結ぶ直線上)、L は BC 上にあるから となり、D は LL′ を直径とする円の上にある。D が L または L′ と一致するときは、D がこの円の上にあることは明らかである。(証明終)
九点円(フォイエルバッハ円とも呼ばれます)の中心 N は、オイラー線の上で O と H のちょうど真ん中にあります。外心 O・重心 G・九点円の中心 N・垂心 H の 4 点が、 の間隔で 1 本の直線に並ぶことも、, からすぐに分かります。
本文では、, が垂直でなくても、,, の 3 つの数を使って計算しました。定理1を使えば、1次独立な , から、たがいに垂直な組を作り直すこともできます。
, が 1次独立のとき
とおくと、 で、, はともに でない。さらに、平面上の任意のベクトル は
と、内積だけで係数が求まる形に分解できる。
証明 定理1 (1) から 。 とすると が の実数倍になり、1次独立に反する。
, は垂直で でないから平行でなく、1次独立である。よって と表せる。両辺と の内積をとると より 、同様に となり、係数が決まる。(証明終)
垂直な組を使うと、分解の係数を連立方程式で解く必要がなくなり、内積 1 回で 1 つずつ求まります。座標軸が直交していると成分の計算が楽になる(第3章の厳密定義 定理1)のも、同じ理由です。この手順を 3 本、4 本とくり返して、たがいに垂直な組を作る方法をグラム・シュミットの直交化といい、大学の線形代数で学びます。
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