目次 / データの分析と統計 / 数学B

第10章 仮説検定

—— 正規分布を物差しにして、「偶然では片づけられない差」を見分ける ——

第5章では、コイン投げの実験で確率を見積もりながら、仮説検定の考え方を学びました。この章では、第8章の正規分布と第9章の標本平均・標本比率の分布を使って、同じ判断を**計算で**行います。帰無仮説のもとで標準化した値 $Z$ が、あらかじめ決めた**棄却域**に入るかどうかで結論を出し、母比率と母平均の検定、片側検定と両側検定、信頼区間との対応を扱います。最後に、「有意な差」と「大きな差」は別物だという注意で、データの分析と統計の分野を締めくくります。

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実験から計算へ

第5章では、新しいパッケージ B を 20 人中 15 人が選んだとき、「B のほうが好まれる」といえるかを、コインを 20 回投げる実験を 1000 セットくり返して調べました。第7章では、同じ確率を二項分布で正確に計算しました。

けれども、400 人や 2500 人に聞いた調査で、二項分布の項を何百個も足すのは大変です。そこで第8章の結果を思い出します。nn が大きいとき、二項分布は正規分布で近似でき、標準化すれば 1 枚の正規分布表で確率が分かりました。第9章では、標本平均も nn が大きければ正規分布で近似できることを学びました。

この章では、この 2 つの近似を物差しにして、仮説検定を計算で行います。考え方は第5章とまったく同じで、道具だけが新しくなります。

数学B の仮説検定

公式1:検定統計量・棄却域・p値

帰無仮説を H0H_0、対立仮説を H1H_1、有意水準を α\alpha で表す。

  • H0H_0 が正しいと仮定したときに分布が分かる量で、H0H_0 と H1H_1 のどちらに有利かを表すものを検定統計量という。この章では、標準化した値 ZZ を検定統計量に使う。H0H_0 のもとで、ZZ は近似的に標準正規分布 N(0, 1)N(0,\ 1) に従う。
  • H0H_0 のもとで ZZ がその範囲に入る確率が α\alpha になるように決めた範囲を棄却域という。有意水準 α\alpha=0.05{}= 0.05 のとき、棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 である。
  • 実際のデータから計算した ZZ の値 z0z_0 が棄却域に入れば H0H_0 を棄却し、入らなければ棄却しない。
  • H0H_0 のもとで、z0z_0 と同じか、それより H1H_1 に有利な値が出る確率をp値という。∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 を棄却域とする検定では、p値は P(∣Z∣≧∣z0∣)P(\lvert Z \rvert \geqq \lvert z_0 \rvert) であり、「z0z_0 が棄却域に入る」ことと「p値 ≦α\leqq \alpha」は同じである。

この章で使う正規分布表の値は次のとおりである(p(u)p(u)=P(0≦Z≦u){}= P(0 \leqq Z \leqq u))。

uup(u)p(u)
1.00.3413
1.50.4332
1.6450.4500
1.80.4641
1.960.4750
2.00.4772
2.330.4901
2.40.4918
2.50.4938
2.580.4951
3.00.4987

H0H_0,H1H_1,α\alpha、p値、棄却域は、第5章の厳密定義のページで導入した言葉です。「有意水準以下なら棄却」という判断の仕方も第5章のままです。

棄却域が ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 になるのは、p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 より、ZZ が −1.96-1.96 以下になる確率と 1.961.96 以上になる確率がどちらも 0.50.5−0.4750{}- 0.4750=0.025{}= 0.025 で、合わせてちょうど 0.050.05 だからです。「帰無仮説が正しいなら、ZZ が ±1.96\pm 1.96 の外に出るのは 20 回に 1 回しかない」ので、外に出たら帰無仮説を疑います。有意水準 0.010.01 なら、同じ理由で棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 です(2×(0.5−0.4951)2 \times (0.5 - 0.4951)=0.0098{}= 0.0098≒0.01{}\fallingdotseq 0.01)。

0 −1.96 1.96 両側検定(有意水準 0.05) 0.025 0.025 棄却域:|Z| ≧ 1.96 0 1.645 片側検定(有意水準 0.05) 0.05 棄却域:Z ≧ 1.645

スピード違反の取り締まりにたとえてみます。道路の制限速度が時速 50 km でも、速度計の誤差やちょっとした加速があるので、51 km で走った車をいちいち止めていたらきりがありません。そこで「ここを超えたら違反切符」という線を、取り締まりの前に決めておきます。ZZ は測った速さ、棄却域は「切符を切る範囲」です。線を超えた車だけを止め、線の内側の車は「違反とはいえない」として見送ります。

帰無仮説のもとで N(0, 1)N(0,\ 1) に従う ZZ を計算し、それがあらかじめ決めた棄却域(有意水準 0.050.05 なら ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96)に入れば帰無仮説を棄却するということです。

例題1:仮説と棄却域を決める

「このさいころは 1 の目が出にくい」という主張を、さいころを何回も投げた結果から有意水準 0.050.05 で調べます。1 の目が出る確率を pp とし、検定統計量 ZZ は pp が小さいほど小さな値になるように作るものとします。

(1) 帰無仮説 H0H_0 と対立仮説 H1H_1

(2) 棄却域を ZZ の不等式で表したもの(p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500 を使う)

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

(1) 示したい主張が対立仮説、「ふつうのさいころと同じ」が帰無仮説です。

H0:p\displaystyle H_0 : p=16,\displaystyle {}= \frac{1}{6},H1:p\displaystyle H_1 : p<16\displaystyle {}< \frac{1}{6}

(2) 対立仮説に有利なのは ZZ が小さい側だけなので、棄却域は左端だけにとります。P(Z≦−1.645)P(Z \leqq -1.645)=0.5{}= 0.5−0.4500{}- 0.4500=0.05{}= 0.05 より

Z≦−1.645‾\underline{Z \leqq -1.645}

このように一方の端だけに棄却域をとる検定を片側検定といいます(公式3 でくわしく扱います)。

母比率の検定

公式2:母比率の検定

帰無仮説を H0:pH_0 : p=p0{}= p_0 とする。大きさ nn の無作為標本で、ある性質をもつものが XX 個(標本比率 RR=Xn{}= \dfrac{X}{n})であったとき、nn が大きければ、H0H_0 のもとで

Z\displaystyle Z=X−np0np0(1−p0)\displaystyle {}= \frac{X - np_0}{\sqrt{np_0(1 - p_0)}}=R−p0p0(1−p0)n\displaystyle {}= \frac{R - p_0}{\sqrt{\dfrac{p_0(1 - p_0)}{n}}}

は近似的に N(0, 1)N(0,\ 1) に従う。対立仮説が H1:pH_1 : p≠p0{}\neq p_0 のとき、有意水準 0.050.05 の棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 である。

H0H_0 のもとでは XX は二項分布 B(n, p0)B(n,\ p_0) に従うので、第7章 公式2 より期待値 np0np_0、標準偏差 np0(1−p0)\sqrt{np_0(1-p_0)} で、第8章 公式6 より nn が大きければ正規分布で近似できます。XX の式の分母・分子を nn で割ったものが RR の式です。

第9章の母比率の推定では、分からない pp の代わりに標本比率 RR を使って R(1−R)n\sqrt{\dfrac{R(1-R)}{n}} としました。検定では pp の値を p0p_0 と仮定して計算するので、標準偏差にも p0p_0 を使います。推定は「分からない pp を探す」作業、検定は「pp=p0{}= p_0 という仮定を試す」作業なので、使う値が違うのです。

身長計を思い浮かべてください。健康診断の身長計は、壁に目盛りが固定されていて、測られる人の背に合わせて目盛りを動かすことはありません。検定で標準偏差に p0p_0 を使うのも同じで、物差しは「帰無仮説の世界」に固定し、データはその物差しに当てて測られる側に回ります。データに合わせて物差しを伸び縮みさせては、公平な判定になりません。

母比率の検定では、帰無仮説の p0p_0 を使って ZZ=X−np0np0(1−p0){}= \dfrac{X - np_0}{\sqrt{np_0(1-p_0)}} を計算し、両側検定なら ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 で棄却するということです。

例題2:発芽率の検定

ある種の発芽率は 0.80.8 とされています。新しく仕入れた種から 400400 粒を無作為に選んでまいたところ、304304 粒が発芽しました。この種の発芽率は 0.80.8 と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 で検定します。検定の結論を求めなさい。


【解答】

発芽率を pp とし、次の仮説を立てます。

H0:p\displaystyle H_0 : p=0.8,\displaystyle {}= 0.8,H1:p\displaystyle H_1 : p≠0.8\displaystyle {}\neq 0.8

H0H_0 のもとで、発芽する粒数 XX は B(400, 0.8)B(400,\ 0.8) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=400×0.8\displaystyle {}= 400 \times 0.8=320,\displaystyle {}= 320,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=400×0.8×0.2\displaystyle {}= \sqrt{400 \times 0.8 \times 0.2}=64\displaystyle {}= \sqrt{64}=8\displaystyle {}= 8

です。nn=400{}= 400 は大きいので、ZZ=X−3208{}= \dfrac{X - 320}{8} は近似的に N(0, 1)N(0,\ 1) に従い、棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。XX=304{}= 304 のとき

z0\displaystyle z_0=304−3208\displaystyle {}= \frac{304 - 320}{8}=−2\displaystyle {}= -2

∣z0∣\lvert z_0 \rvert=2{}= 2≧1.96{}\geqq 1.96 なので、z0z_0 は棄却域に入り、H0H_0 は棄却されます。したがって、発芽率は 0.8 と異なるといえる‾\underline{0.8 \text{ と異なるといえる}}。

p値で見ると、P(∣Z∣≧2)P(\lvert Z \rvert \geqq 2)=2×(0.5−0.4772){}= 2 \times (0.5 - 0.4772)=0.0456{}= 0.0456 で、0.050.05 以下です。

片側検定

公式3:片側検定と両側検定

対立仮説が H1:pH_1 : p>p0{}> p_0 のように一方の向きだけを考えるときは、棄却域をその向きの端だけにとる(片側検定)。H1:pH_1 : p≠p0{}\neq p_0 のように両方の向きを考えるときは、両端にとる(両側検定)。

検定有意水準 0.050.05有意水準 0.010.01
両側検定∣Z∣≧1.96\lvert Z \rvert \geqq 1.96∣Z∣≧2.58\lvert Z \rvert \geqq 2.58
右側検定Z≧1.645Z \geqq 1.645Z≧2.33Z \geqq 2.33
左側検定Z≦−1.645Z \leqq -1.645Z≦−2.33Z \leqq -2.33

両側検定は H1:pH_1 : p≠p0{}\neq p_0、右側検定は H1:pH_1 : p>p0{}> p_0、左側検定は H1:pH_1 : p<p0{}< p_0 のときに使う。

どちらの検定を使うかは、データを見る前に、対立仮説から決める。

片側検定では、有意水準 0.050.05 をすべて一方の端に置くので、境目が 1.961.96 から 1.6451.645 に下がります(0.50.5−p(1.645){}- p(1.645)=0.05{}= 0.05)。有意水準 0.010.01 なら 0.50.5−p(2.33){}- p(2.33)=0.0099{}= 0.0099≒0.01{}\fallingdotseq 0.01 より 2.332.33 です。「上がったか」だけを知りたいときに、下がった側まで見張る必要はない、という考え方です。

ただし、片側にするか両側にするかを結果を見てから選ぶと、境目を都合よく下げられてしまいます。第5章で「ゴールポストを試合の途中で動かさない」と学んだのと同じで、向きは調査の前に決めておきます。

手紙の重さで考えてみましょう。定形郵便物は重さによって料金が決まっていて、切手が足りるかどうかは「決められた重さを超えていないか」だけで判断します。軽すぎる手紙が問題になることはありません。「超えたかどうか」だけが気になる場面では、見張るのは片側だけで十分です。

対立仮説が一方の向きだけなら片側検定で、有意水準 0.050.05 の棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645(または ZZ≦−1.645{}\leqq -1.645)になり、向きはデータを見る前に決めるということです。

例題3:会員登録率の片側検定

あるお店では、これまで購入者の 2020% が会員登録をしていました。登録の特典を新しくしたところ、購入者 625625 人のうち 143143 人が登録しました。特典を新しくしてから登録率が上がったといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 で検定します。

(1) 片側検定での結論

(2) 仮に「登録率が変わった」かどうかを両側検定で調べた場合の結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

登録率を pp とします。H0:pH_0 : p=0.2{}= 0.2 のもとで、登録者数 XX は B(625, 0.2)B(625,\ 0.2) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=625×0.2\displaystyle {}= 625 \times 0.2=125,\displaystyle {}= 125,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=625×0.2×0.8\displaystyle {}= \sqrt{625 \times 0.2 \times 0.8}=100\displaystyle {}= \sqrt{100}=10\displaystyle {}= 10z0\displaystyle z_0=143−12510\displaystyle {}= \frac{143 - 125}{10}=1.8\displaystyle {}= 1.8

(1) H1:pH_1 : p>0.2{}> 0.2 で、棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645 です。1.81.8≧1.645{}\geqq 1.645 なので H0H_0 は棄却され、登録率は 上がったといえる‾\underline{\text{上がったといえる}}。

(2) H1:pH_1 : p≠0.2{}\neq 0.2 で、棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。1.81.8<1.96{}< 1.96 なので H0H_0 は棄却されず、登録率が 変わったとは判断できない‾\underline{\text{変わったとは判断できない}}。

p値は、片側では 0.50.5−0.4641{}- 0.4641=0.0359{}= 0.0359、両側ではその 2 倍の 0.07180.0718 です。同じデータでも、片側か両側かで結論が分かれます。

母平均の検定

公式4:母平均の検定

帰無仮説を H0:mH_0 : m=m0{}= m_0 とする。母標準偏差 σ\sigma の母集団から大きさ nn の無作為標本を抽出し、標本平均が X‾\overline{X} であったとき、nn が大きければ、H0H_0 のもとで

Z\displaystyle Z=X‾−m0σ/n\displaystyle {}= \frac{\overline{X} - m_0}{\sigma / \sqrt{n}}

は近似的に N(0, 1)N(0,\ 1) に従う。棄却域は公式3 の表と同じである。σ\sigma が分からないときは、nn が大きければ標本標準偏差 SS(または U2\sqrt{U^2})で代用してよい。

第9章 公式4 より、標本平均 X‾\overline{X} は近似的に N(m, σ2n)N\left(m,\ \dfrac{\sigma^2}{n}\right) に従います。帰無仮説の m0m_0 で標準化したのが ZZ です。分母が σ\sigma ではなく σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} であることに注意しましょう。比べる相手は「1 個の値のばらつき」ではなく「平均のぶれ」です。

100 m 走とマラソンで考えます。0.50.5 秒の差は、100 m 走なら順位ががらりと変わる大差ですが、マラソンなら誤差のようなものです。差が大きいか小さいかは、その競技の記録がふだんどれくらいぶれるかと比べて初めて決まります。ZZ は、X‾\overline{X} と m0m_0 の差を「平均のぶれ σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}」を単位にして測り直した値です。

母平均の検定では、差 X‾\overline{X}−m0{}- m_0 を平均のぶれ σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} で割った ZZ を、比率の検定と同じ棄却域と比べるということです。

例題4:袋菓子の重さの検定

ある工場の袋菓子は、重さ 100100 g と表示されています。100100 袋を無作為に抽出して重さを量ったところ、平均値は 101.2101.2 g でした。重さの母標準偏差を 55 g として、この工場の袋菓子の重さの母平均は 100100 g と異なるといえるかどうかを、両側検定で調べます。

(1) 有意水準 0.050.05 での結論

(2) 有意水準 0.010.01 での結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

H0:mH_0 : m=100{}= 100,H1:mH_1 : m≠100{}\neq 100 とします。σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=5100{}= \dfrac{5}{\sqrt{100}}=0.5{}= 0.5 なので

z0\displaystyle z_0=101.2−1000.5\displaystyle {}= \frac{101.2 - 100}{0.5}=2.4\displaystyle {}= 2.4

(1) 棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。2.42.4≧1.96{}\geqq 1.96 なので H0H_0 は棄却され、母平均は 100 g と異なるといえる‾\underline{100 \text{ g と異なるといえる}}。

(2) 棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 です。2.42.4<2.58{}< 2.58 なので H0H_0 は棄却されず、母平均は 100 g と異なるとは判断できない‾\underline{100 \text{ g と異なるとは判断できない}}。

これは第9章 例題5 と同じデータです。そこでは、信頼度 95% の信頼区間 [ 100.22, 102.18 ][\,100.22,\ 102.18\,] は 100100 を含まず、99% の信頼区間 [ 99.91, 102.49 ][\,99.91,\ 102.49\,] は 100100 を含みました。検定の結論と、ぴったり対応しています(次の公式5)。

信頼区間との関係

公式5:両側検定と信頼区間の対応

母平均 mm の両側検定 H0:mH_0 : m=m0{}= m_0 について、次の 2 つは同じことである。

  • 有意水準 0.050.05 の両側検定で H0H_0 が棄却されない(∣z0∣\lvert z_0 \rvert<1.96{}< 1.96)
  • m0m_0 が、信頼度 95% の信頼区間に含まれる(区間の両端は X‾\overline{X}−1.96⋅σn{}- 1.96 \cdot \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} と X‾\overline{X}+1.96⋅σn{}+ 1.96 \cdot \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}})

有意水準 0.010.01 と信頼度 99%(2.582.58)についても同じである(区間のちょうど端の値だけは、厳密定義のページで扱う)。

∣z0∣\lvert z_0 \rvert<1.96{}< 1.96 の両辺に σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} を掛けると

∣X‾−m0∣\displaystyle \lvert \overline{X} - m_0 \rvert<1.96⋅σn\displaystyle {}< 1.96 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}

です。これは「X‾\overline{X} から見て m0m_0 が 1.96⋅σn1.96 \cdot \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} より近い」ことで、「m0m_0 から見て X‾\overline{X} が近い」ことと同じです。検定は m0m_0 のまわりに幅をとって X‾\overline{X} が入るかを見て、推定は X‾\overline{X} のまわりに幅をとって m0m_0 が入るかを見ます。

44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 X̄ = 48.5 46.54 50.46 信頼度 95% の信頼区間 = X̄ ± 1.96 m₀ = 50:区間の中 → 棄却しない m₀ = 46:区間の外 → 棄却する

声の届く距離を思い浮かべてください。A さんの声が B さんに届くなら、同じ大きさの声で B さんが呼べば A さんにも届きます。距離は、どちらから測っても同じだからです。「m0m_0 の声(検定の幅)が X‾\overline{X} に届く」ことと、「X‾\overline{X} の声(信頼区間の幅)が m0m_0 に届く」ことは、同じ事実を両側から言っているだけです。

この対応を使うと、1 つの信頼区間から、たくさんの m0m_0 について一度に検定の結論が読み取れます。信頼区間に入る値はすべて「棄却されない値」、外の値はすべて「棄却される値」です。

有意水準 0.050.05 の両側検定で棄却されない m0m_0 は、信頼度 95% の信頼区間に含まれる値とちょうど一致するということです。

例題5:信頼区間から検定の結論を読む

ある電池の使用可能時間について、6464 個を無作為に抽出して調べたところ、平均値は 48.548.5 時間でした。母標準偏差を 88 時間とします。

(1) 母平均 mm に対する信頼度 95% の信頼区間

(2) 有意水準 0.050.05 の両側検定で、H0:mH_0 : m=50{}= 50 と H0:mH_0 : m=46{}= 46 のそれぞれが棄却されるかどうか

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

(1) σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=864{}= \dfrac{8}{\sqrt{64}}=1{}= 1 なので、1.96×11.96 \times 1=1.96{}= 1.96 より

[ 48.5−1.96,  48.5+1.96 ]\displaystyle [\,48.5 - 1.96,\ \ 48.5 + 1.96\,]=[ 46.54,  50.46 ]‾\displaystyle {}= \underline{[\,46.54,\ \ 50.46\,]}

(2) 公式5 より、区間に含まれる 5050 は 棄却されない‾\underline{\text{棄却されない}}、区間に含まれない 4646 は 棄却される‾\underline{\text{棄却される}}。

ZZ を計算しても確かめられます。m0m_0=50{}= 50 なら z0z_0=48.5−501{}= \dfrac{48.5 - 50}{1}=−1.5{}= -1.5 で ∣z0∣\lvert z_0 \rvert<1.96{}< 1.96、m0m_0=46{}= 46 なら z0z_0=48.5−461{}= \dfrac{48.5 - 46}{1}=2.5{}= 2.5 で ∣z0∣\lvert z_0 \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。

「有意な差」の読み方

公式6:検定の手順と結論の読み方

正規分布を使う仮説検定は、次の順に行う。

  1. 帰無仮説 H0H_0 と対立仮説 H1H_1 を立て、片側か両側かを決める。
  2. 有意水準 α\alpha を決め、棄却域を定める。
  3. H0H_0 のもとで検定統計量 ZZ の値 z0z_0 を計算する。
  4. z0z_0 が棄却域に入れば「H0H_0 を棄却し、H1H_1 が正しいといえる」、入らなければ「H0H_0 を棄却せず、H1H_1 が正しいとは判断できない」と結論する。

結論を読むときは、次のことに注意する。

  • 「有意な差がある」は「差が偶然とは考えにくい」という意味であり、「差が大きい」という意味ではない。nn を大きくすると、ごく小さな差でも棄却されるようになる。
  • 棄却されなかったときに「H0H_0 が正しい」と結論してはいけない(第5章 公式6)。

公式2 の ZZ の分母 p0(1−p0)n\sqrt{\dfrac{p_0(1-p_0)}{n}} も、公式4 の分母 σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} も、nn を大きくすると小さくなります。そのため、同じ大きさの差でも、nn が大きいほど ∣z0∣\lvert z_0 \rvert は大きくなり、棄却されやすくなります。nn が十分大きければ、実生活では気にならないほどの差でも「有意」になるのです。

0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 棄却域 → R = 0.55 n = 100(標準偏差 0.05)→ z₀ = 1:棄却域の外 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 棄却域 → R = 0.55 n = 900(標準偏差 1/60)→ z₀ = 3:棄却域の中

顕微鏡の倍率にたとえられます。倍率を上げると、肉眼では見えない細かなものまで見えるようになります。けれども、高倍率の顕微鏡に写ったほこりが「大きなもの」であるわけではありません。標本を大きくした検定は高倍率の顕微鏡で、小さな差でも「確かにある」と見分けてくれますが、その差が大事かどうかは、倍率を下げて肉眼の大きさに戻して判断する必要があります。

仮説を立てる → 有意水準と棄却域を決める → z0z_0 を計算する → 結論を書く、の順に進め、「有意な差」は「偶然ではなさそうな差」であって「大きな差」とは限らないということです。

例題6:標本の大きさと結論

ある政策に賛成する人の割合が 0.50.5 と異なるかを、有意水準 0.050.05 の両側検定で調べます。次の 2 つの調査は、どちらも標本比率が 0.550.55 でした。

(1) 100100 人に聞いて 5555 人が賛成した調査の結論

(2) 900900 人に聞いて 495495 人が賛成した調査の結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

H0:pH_0 : p=0.5{}= 0.5,H1:pH_1 : p≠0.5{}\neq 0.5 とし、公式2 の RR の式を使います。

(1) 0.5×0.5100\sqrt{\dfrac{0.5 \times 0.5}{100}}=0.510{}= \dfrac{0.5}{10}=0.05{}= 0.05 なので

z0\displaystyle z_0=0.55−0.50.05\displaystyle {}= \frac{0.55 - 0.5}{0.05}=1\displaystyle {}= 1

11<1.96{}< 1.96 なので H0H_0 は棄却されず、賛成の割合は 0.5 と異なるとは判断できない‾\underline{0.5 \text{ と異なるとは判断できない}}。

(2) 0.5×0.5900\sqrt{\dfrac{0.5 \times 0.5}{900}}=0.530{}= \dfrac{0.5}{30}=160{}= \dfrac{1}{60} なので

z0\displaystyle z_0=0.55−0.51/60\displaystyle {}= \frac{0.55 - 0.5}{1/60}=0.05×60\displaystyle {}= 0.05 \times 60=3\displaystyle {}= 3

33≧1.96{}\geqq 1.96 なので H0H_0 は棄却され、賛成の割合は 0.5 と異なるといえる‾\underline{0.5 \text{ と異なるといえる}}。

標本比率は同じ 0.550.55 でも、標本が 99 倍になると z0z_0 は 33 倍になり、結論が変わります。「(2) のほうが賛成が多い」のではなく、「(2) のほうが、0.050.05 の差を偶然では片づけられないと言えるだけの情報をもっている」ということです。

基礎確認問題(全5問)

まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。

問1

帰無仮説 H0:pH_0 : p=0.5{}= 0.5 のもとで、100100 人のうちある性質をもつ人数 XX は B(100, 0.5)B(100,\ 0.5) に従います。実際に XX=62{}= 62 であったとき、検定統計量 ZZ=X−505{}= \dfrac{X - 50}{5} の値 z0z_0 を求めなさい。

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答え

z0z_0=62−505{}= \dfrac{62 - 50}{5}=2.4‾{}= \underline{2.4}

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問2

正規分布表の値 p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使って、有意水準 0.050.05 の両側検定の棄却域を、ZZ の不等式で求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

両端に 0.0250.025 ずつなので ∣Z∣≧1.96‾\underline{\lvert Z \rvert \geqq 1.96}

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問3

正規分布表の値 p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500 を使って、対立仮説が「pp>p0{}> p_0」である有意水準 0.050.05 の片側検定の棄却域を、ZZ の不等式で求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

右端に 0.050.05 なので Z≧1.645‾\underline{Z \geqq 1.645}

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問4

帰無仮説 H0:mH_0 : m=50{}= 50 を検定します。母標準偏差 1010 の母集団から大きさ 2525 の無作為標本を抽出したところ、標本平均は 5454 でした。検定統計量 ZZ=X‾−5010/25{}= \dfrac{\overline{X} - 50}{10 / \sqrt{25}} の値 z0z_0 を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

1025\dfrac{10}{\sqrt{25}}=2{}= 2 より z0z_0=54−502{}= \dfrac{54 - 50}{2}=2‾{}= \underline{2}

自己採点:
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問5

両側検定で、検定統計量の値が z0z_0=−2.2{}= -2.2 でした。有意水準 0.050.05(棄却域 ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96)で帰無仮説を棄却するかどうかを求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

∣−2.2∣\lvert -2.2 \rvert=2.2{}= 2.2≧1.96{}\geqq 1.96 なので 棄却する‾\underline{\text{棄却する}}

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実践問題(全20問)

難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。

問1 ★

「このコインは、表と裏の出やすさが違う」という主張を、コインを何回も投げた結果から検定します。表が出る確率を pp とするとき、帰無仮説 H0H_0、対立仮説 H1H_1、および片側検定と両側検定のどちらを使うかを、それぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

H0:pH_0 : p=12{}= \dfrac{1}{2},H1:pH_1 : p≠12{}\neq \dfrac{1}{2},両側検定

解説

示したい主張「出やすさが違う」が対立仮説で、「偏りはない」が帰無仮説です。

H0:p\displaystyle H_0 : p=12,\displaystyle {}= \frac{1}{2},H1:p\displaystyle H_1 : p≠12\displaystyle {}\neq \frac{1}{2}

「表が出やすい」「裏が出やすい」のどちらの向きでも主張に有利なので、棄却域を両端にとる 両側検定‾\underline{\text{両側検定}} を使います。

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問2 ★

あるコインを 900900 回投げたところ、表が 483483 回出ました。このコインは表と裏の出やすさが違うといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 で検定します。正規分布表の値 p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=2.2{}= 2.2 で棄却され、表と裏の出やすさが違うといえる

解説

表が出る確率を pp とし、H0:pH_0 : p=12{}= \dfrac{1}{2},H1:pH_1 : p≠12{}\neq \dfrac{1}{2} とします。H0H_0 のもとで表の回数 XX は B(900, 12)B\left(900,\ \dfrac{1}{2}\right) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=450,\displaystyle {}= 450,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=900×12×12\displaystyle {}= \sqrt{900 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2}}=15\displaystyle {}= 15

nn=900{}= 900 は大きいので、ZZ=X−45015{}= \dfrac{X - 450}{15} は近似的に N(0, 1)N(0,\ 1) に従い、棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。

z0\displaystyle z_0=483−45015\displaystyle {}= \frac{483 - 450}{15}=3315\displaystyle {}= \frac{33}{15}=2.2\displaystyle {}= 2.2

2.22.2≧1.96{}\geqq 1.96 なので H0H_0 は棄却され、表と裏の出やすさが 違うといえる‾\underline{\text{違うといえる}}。

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問3 ★

あるさいころを 180180 回投げたところ、1 の目が 3838 回出ました。このさいころは 1 の目が出やすいといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 の片側検定で調べます。正規分布表の値 p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=1.6{}= 1.6 で棄却されず、1 の目が出やすいとは判断できない

解説

1 の目が出る確率を pp とし、H0:pH_0 : p=16{}= \dfrac{1}{6},H1:pH_1 : p>16{}> \dfrac{1}{6} とします。H0H_0 のもとで 1 の目の回数 XX は B(180, 16)B\left(180,\ \dfrac{1}{6}\right) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=180×16\displaystyle {}= 180 \times \frac{1}{6}=30,\displaystyle {}= 30,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=180×16×56\displaystyle {}= \sqrt{180 \times \frac{1}{6} \times \frac{5}{6}}=25\displaystyle {}= \sqrt{25}=5\displaystyle {}= 5

右側検定なので、棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645 です。

z0\displaystyle z_0=38−305\displaystyle {}= \frac{38 - 30}{5}=1.6\displaystyle {}= 1.6

1.61.6<1.645{}< 1.645 なので H0H_0 は棄却されず、1 の目が 出やすいとは判断できない‾\underline{\text{出やすいとは判断できない}}。

境目のすぐ手前です。棄却されなかったからといって、「ふつうのさいころだ」と分かったわけではありません。

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問4 ★

内容量 350350 mL と表示された缶ジュースから 6464 本を無作為に抽出して内容量を量ったところ、平均値は 348.8348.8 mL でした。母標準偏差を 44 mL として、内容量の母平均は表示と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 の両側検定で調べます。正規分布表の値 p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=−2.4{}= -2.4 で棄却され、母平均は表示と異なるといえる

解説

H0:mH_0 : m=350{}= 350,H1:mH_1 : m≠350{}\neq 350 とします。σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=464{}= \dfrac{4}{\sqrt{64}}=0.5{}= 0.5 で、nn=64{}= 64 は大きいので、ZZ=X‾−3500.5{}= \dfrac{\overline{X} - 350}{0.5} は近似的に N(0, 1)N(0,\ 1) に従います。

z0\displaystyle z_0=348.8−3500.5\displaystyle {}= \frac{348.8 - 350}{0.5}=−1.20.5\displaystyle {}= \frac{-1.2}{0.5}=−2.4\displaystyle {}= -2.4

∣z0∣\lvert z_0 \rvert=2.4{}= 2.4≧1.96{}\geqq 1.96 なので H0H_0 は棄却され、内容量の母平均は 表示と異なるといえる‾\underline{\text{表示と異なるといえる}}。

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問5 ★

ある町の中学生の 1 日の睡眠時間の平均は 7.07.0 時間とされていました。今年、8181 人を無作為に抽出して調べたところ、平均値は 6.76.7 時間でした。母標準偏差を 0.90.9 時間として、睡眠時間の母平均は 7.07.0 時間と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.010.01 の両側検定で調べます。正規分布表の値 p(2.58)p(2.58)=0.4951{}= 0.4951 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=−3{}= -3 で棄却され、母平均は 7.07.0 時間と異なるといえる

解説

H0:mH_0 : m=7.0{}= 7.0,H1:mH_1 : m≠7.0{}\neq 7.0 とします。有意水準 0.010.01 の両側検定の棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 です。

σn\displaystyle \frac{\sigma}{\sqrt{n}}=0.981\displaystyle {}= \frac{0.9}{\sqrt{81}}=0.1,\displaystyle {}= 0.1,z0\displaystyle z_0=6.7−7.00.1\displaystyle {}= \frac{6.7 - 7.0}{0.1}=−3\displaystyle {}= -3

∣z0∣\lvert z_0 \rvert=3{}= 3≧2.58{}\geqq 2.58 なので H0H_0 は棄却され、睡眠時間の母平均は 7.0 時間と異なるといえる‾\underline{7.0 \text{ 時間と異なるといえる}}。

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問6 ★

帰無仮説 H0:pH_0 : p=0.5{}= 0.5 を、大きさ 100100 の標本で、有意水準 0.050.05 の両側検定により調べます。標本の中でその性質をもつものの個数を XX とするとき、H0H_0 が棄却されるような XX の値の範囲を、正規分布表の値 p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使って求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

XX≦40{}\leqq 40 または XX≧60{}\geqq 60

解説

H0H_0 のもとで XX は B(100, 0.5)B(100,\ 0.5) に従い、E(X)E(X)=50{}= 50,σ(X)\sigma(X)=100×0.5×0.5{}= \sqrt{100 \times 0.5 \times 0.5}=5{}= 5 です。棄却域は

∣X−505∣\displaystyle \left\lvert \frac{X - 50}{5} \right\rvert≧1.96\displaystyle {}\geqq 1.96  ⟺  ∣X−50∣\displaystyle {}\iff \lvert X - 50 \rvert≧9.8\displaystyle {}\geqq 9.8

よって XX≦40.2{}\leqq 40.2 または XX≧59.8{}\geqq 59.8 です。XX は整数なので、X≦40 または X≧60‾\underline{X \leqq 40 \text{ または } X \geqq 60} です。

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問7 ★

両側検定で、検定統計量の値が z0z_0=2.5{}= 2.5 でした。

(1) p値 P(∣Z∣≧2.5)P(\lvert Z \rvert \geqq 2.5)(正規分布表の値 p(2.5)p(2.5)=0.4938{}= 0.4938 を使う)

(2) 有意水準 0.050.05 と 0.010.01 のそれぞれで、帰無仮説を棄却するかどうか

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 0.01240.0124 (2) 0.050.05 では棄却する、0.010.01 では棄却しない

解説

(1) 標準正規分布は 00 について対称なので

P(∣Z∣≧2.5)\displaystyle P(\lvert Z \rvert \geqq 2.5)=2×(0.5−0.4938)\displaystyle {}= 2 \times (0.5 - 0.4938)=2×0.0062\displaystyle {}= 2 \times 0.0062=0.0124‾\displaystyle {}= \underline{0.0124}

(2) 0.01240.0124≦0.05{}\leqq 0.05 なので、有意水準 0.050.05 では 棄却する‾\underline{\text{棄却する}}。0.01240.0124>0.01{}> 0.01 なので、有意水準 0.010.01 では 棄却しない‾\underline{\text{棄却しない}}。

棄却域で考えても、2.52.5≧1.96{}\geqq 1.96、2.52.5<2.58{}< 2.58 で同じ結論になります。

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問8 ★

ある母集団の母平均 mm に対する信頼度 95% の信頼区間が、標本から [ 48.2,  53.6 ][\,48.2,\ \ 53.6\,] と求められました。同じ標本を使って、有意水準 0.050.05 の両側検定で H0:mH_0 : m=48{}= 48、H0:mH_0 : m=50{}= 50、H0:mH_0 : m=54{}= 54 を調べるとき、棄却されるものをすべて求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

mm=48{}= 48 と mm=54{}= 54

解説

公式5 より、有意水準 0.050.05 の両側検定で棄却されないのは、信頼度 95% の信頼区間に含まれる m0m_0 です。

  • 4848<48.2{}< 48.2 なので区間の外 → 棄却される
  • 48.248.2≦50{}\leqq 50≦53.6{}\leqq 53.6 なので区間の中 → 棄却されない
  • 5454>53.6{}> 53.6 なので区間の外 → 棄却される

よって、棄却されるのは H0:m=48 と H0:m=54‾\underline{H_0 : m = 48 \text{ と } H_0 : m = 54} です。

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問9 ★★

これまでの治療法で治る割合は 0.60.6 でした。新しい治療法を 150150 人に行ったところ、102102 人が治りました。新しい治療法のほうが治る割合が高いといえるかどうかを、片側検定で調べます。正規分布表の値 p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500,p(2.33)p(2.33)=0.4901{}= 0.4901 を使います。

(1) 有意水準 0.050.05 での結論

(2) 有意水準 0.010.01 での結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=2{}= 2。(1) 棄却され、治る割合は高いといえる (2) 棄却されず、治る割合が高いとは判断できない

解説

新しい治療法で治る割合を pp とし、H0:pH_0 : p=0.6{}= 0.6,H1:pH_1 : p>0.6{}> 0.6 とします。H0H_0 のもとで治る人数 XX は B(150, 0.6)B(150,\ 0.6) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=150×0.6\displaystyle {}= 150 \times 0.6=90,\displaystyle {}= 90,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=150×0.6×0.4\displaystyle {}= \sqrt{150 \times 0.6 \times 0.4}=36\displaystyle {}= \sqrt{36}=6\displaystyle {}= 6 z0\displaystyle z_0=102−906\displaystyle {}= \frac{102 - 90}{6}=2\displaystyle {}= 2

(1) 棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645 です。22≧1.645{}\geqq 1.645 なので H0H_0 は棄却され、新しい治療法のほうが 治る割合は高いといえる‾\underline{\text{治る割合は高いといえる}}。

(2) 棄却域は ZZ≧2.33{}\geqq 2.33 です。22<2.33{}< 2.33 なので H0H_0 は棄却されず、治る割合が 高いとは判断できない‾\underline{\text{高いとは判断できない}}。

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問10 ★★

ある高校の生徒の通学時間の平均は、以前の調査で 5151 分でした。今年、144144 人を無作為に抽出して調べたところ、平均値は 52.552.5 分、標本標準偏差は 66 分でした。通学時間の母平均は 5151 分と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.010.01 の両側検定で調べます。正規分布表の値 p(2.58)p(2.58)=0.4951{}= 0.4951 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=3{}= 3 で棄却され、母平均は 5151 分と異なるといえる

解説

H0:mH_0 : m=51{}= 51,H1:mH_1 : m≠51{}\neq 51 とします。母標準偏差は分かりませんが、nn=144{}= 144 は大きいので、標本標準偏差 66 で代用します(公式4)。

6144\displaystyle \frac{6}{\sqrt{144}}=0.5,\displaystyle {}= 0.5,z0\displaystyle z_0=52.5−510.5\displaystyle {}= \frac{52.5 - 51}{0.5}=3\displaystyle {}= 3

棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 で、33≧2.58{}\geqq 2.58 なので H0H_0 は棄却され、通学時間の母平均は 51 分と異なるといえる‾\underline{51 \text{ 分と異なるといえる}}。

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問11 ★★

ある商品のパッケージ A と B を 400400 人に見せ、どちらを買いたいかを聞きます。「B のほうが好まれる」ことを有意水準 0.050.05 の片側検定で示すには、B を選ぶ人が少なくとも何人必要かを、正規分布表の値 p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500 を使って求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

217217 人

解説

B を選ぶ確率を pp とし、H0:pH_0 : p=12{}= \dfrac{1}{2},H1:pH_1 : p>12{}> \dfrac{1}{2} とします。H0H_0 のもとで B を選ぶ人数 XX は B(400, 12)B\left(400,\ \dfrac{1}{2}\right) に従い、E(X)E(X)=200{}= 200,σ(X)\sigma(X)=400×12×12{}= \sqrt{400 \times \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2}}=10{}= 10 です。

棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645 なので

X−20010\displaystyle \frac{X - 200}{10}≧1.645\displaystyle {}\geqq 1.645  ⟺  X\displaystyle {}\iff X≧216.45\displaystyle {}\geqq 216.45

XX は整数なので、少なくとも 217 人‾\underline{217 \text{ 人}} です。400400 人の 54.2554.25% にあたります。第5章では 20 人中 15 人(7575%)が必要でしたが、人数が増えると、わずかな差でも示せるようになります。

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問12 ★★

母標準偏差 1515 の母集団から大きさ 225225 の無作為標本を抽出し、H0:mH_0 : m=100{}= 100 を有意水準 0.050.05 の両側検定で調べます。H0H_0 が棄却されるような標本平均 X‾\overline{X} の値の範囲を、正規分布表の値 p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使って求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

X‾\overline{X}≦98.04{}\leqq 98.04 または X‾\overline{X}≧101.96{}\geqq 101.96

解説

σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=15225{}= \dfrac{15}{\sqrt{225}}=1{}= 1 なので、ZZ=X‾−1001{}= \dfrac{\overline{X} - 100}{1} です。棄却域は

∣X‾−100∣\displaystyle \lvert \overline{X} - 100 \rvert≧1.96\displaystyle {}\geqq 1.96

よって X‾≦98.04 または X‾≧101.96‾\underline{\overline{X} \leqq 98.04 \text{ または } \overline{X} \geqq 101.96} です。1 個ずつの値のばらつきは 1515 もあるのに、225225 個の平均なら 100100 から 22 近く離れただけで棄却されます。

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問13 ★★

あるさいころを 18001800 回投げたところ、3 の倍数の目が 652652 回出ました。このさいころで 3 の倍数の目が出る確率は 13\dfrac{1}{3} と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.010.01 の両側検定で調べます。正規分布表の値 p(2.58)p(2.58)=0.4951{}= 0.4951 を使って、検定の結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=2.6{}= 2.6 で棄却され、13\dfrac{1}{3} と異なるといえる

解説

3 の倍数の目が出る確率を pp とし、H0:pH_0 : p=13{}= \dfrac{1}{3},H1:pH_1 : p≠13{}\neq \dfrac{1}{3} とします。H0H_0 のもとで回数 XX は B(1800, 13)B\left(1800,\ \dfrac{1}{3}\right) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=1800×13\displaystyle {}= 1800 \times \frac{1}{3}=600,\displaystyle {}= 600,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=1800×13×23\displaystyle {}= \sqrt{1800 \times \frac{1}{3} \times \frac{2}{3}}=400\displaystyle {}= \sqrt{400}=20\displaystyle {}= 20 z0\displaystyle z_0=652−60020\displaystyle {}= \frac{652 - 600}{20}=2.6\displaystyle {}= 2.6

棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 で、2.62.6≧2.58{}\geqq 2.58 なので H0H_0 は棄却され、3 の倍数の目が出る確率は 13 と異なるといえる‾\underline{\dfrac{1}{3} \text{ と異なるといえる}}。

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問14 ★★

母標準偏差 1010 の母集団から大きさ 100100 の無作為標本を抽出したところ、標本平均は 103103 でした。

(1) 母平均 mm に対する信頼度 95% の信頼区間

(2) 有意水準 0.050.05 の両側検定で H0:mH_0 : m=m0{}= m_0 が棄却されないような整数 m0m_0 のすべて

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

(1) [ 101.04,  104.96 ][\,101.04,\ \ 104.96\,] (2) m0m_0=102,{}= 102, 103,\ 103, 104\ 104

解説

(1) σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=10100{}= \dfrac{10}{\sqrt{100}}=1{}= 1 なので、1.96×11.96 \times 1=1.96{}= 1.96 より

[ 103−1.96,  103+1.96 ]\displaystyle [\,103 - 1.96,\ \ 103 + 1.96\,]=[ 101.04,  104.96 ]‾\displaystyle {}= \underline{[\,101.04,\ \ 104.96\,]}

(2) 棄却されない条件は ∣z0∣\lvert z_0 \rvert<1.96{}< 1.96、つまり ∣103−m0∣\lvert 103 - m_0 \rvert<1.96{}< 1.96 で、101.04101.04<m0{}< m_0<104.96{}< 104.96 です。整数は m0=102,‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}m_0 = 102,} 103,‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}\ 103,} 104‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}\ 104} です。

信頼区間に含まれる整数と一致しています(公式5)。

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問15 ★★

ある工場の製品の不良率は 44% とされています。ある日の製品から 600600 個を無作為に抽出したところ、不良品が 3333 個ありました。正規分布表の値 p(1.645)p(1.645)=0.4500{}= 0.4500,p(1.96)p(1.96)=0.4750{}= 0.4750 を使います。

(1) 「不良率が上がった」かどうかを、有意水準 0.050.05 の片側検定で調べたときの結論

(2) 「不良率が変わった」かどうかを、有意水準 0.050.05 の両側検定で調べたときの結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

z0z_0=1.875{}= 1.875。(1) 棄却され、不良率は上がったといえる (2) 棄却されず、不良率が変わったとは判断できない

解説

不良率を pp とし、H0:pH_0 : p=0.04{}= 0.04 とします。H0H_0 のもとで不良品の個数 XX は B(600, 0.04)B(600,\ 0.04) に従い

E(X)\displaystyle E(X)=600×0.04\displaystyle {}= 600 \times 0.04=24,\displaystyle {}= 24,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=600×0.04×0.96\displaystyle {}= \sqrt{600 \times 0.04 \times 0.96}=23.04\displaystyle {}= \sqrt{23.04}=4.8\displaystyle {}= 4.8 z0\displaystyle z_0=33−244.8\displaystyle {}= \frac{33 - 24}{4.8}=1.875\displaystyle {}= 1.875

(1) H1:pH_1 : p>0.04{}> 0.04 で、棄却域は ZZ≧1.645{}\geqq 1.645 です。1.8751.875≧1.645{}\geqq 1.645 なので H0H_0 は棄却され、不良率は 上がったといえる‾\underline{\text{上がったといえる}}。

(2) H1:pH_1 : p≠0.04{}\neq 0.04 で、棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96 です。1.8751.875<1.96{}< 1.96 なので H0H_0 は棄却されず、不良率が 変わったとは判断できない‾\underline{\text{変わったとは判断できない}}。

どちらの問いを立てるかは、データを見る前に決めておきます。

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問16 ★★

ある市の高校生から 100100 人を無作為に抽出し、1 週間の読書時間 xx(分)を調べたところ、100100 人の値の和は 31503150、値の 2 乗の和は 101725101725 でした。

(1) 標本平均と標本標準偏差

(2) 読書時間の母平均は 3030 分と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.010.01 の両側検定で調べたときの結論(正規分布表の値 p(2.58)p(2.58)=0.4951{}= 0.4951 を使う)

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 標本平均 31.531.5 分、標本標準偏差 55 分 (2) z0z_0=3{}= 3 で棄却され、母平均は 3030 分と異なるといえる

解説

(1) 標本平均は X‾\overline{X}=3150100{}= \dfrac{3150}{100}=31.5‾{}= \underline{31.5} 分です。第3章 公式3 の「分散 = 2 乗の平均 − 平均の 2 乗」を使うと

S2\displaystyle S^2=101725100\displaystyle {}= \frac{101725}{100}−31.52\displaystyle {}- 31.5^2=1017.25\displaystyle {}= 1017.25−992.25\displaystyle {}- 992.25=25\displaystyle {}= 25

標本標準偏差は SS=5‾{}= \underline{5} 分です。

(2) H0:mH_0 : m=30{}= 30,H1:mH_1 : m≠30{}\neq 30 とします。nn=100{}= 100 は大きいので、母標準偏差の代わりに SS=5{}= 5 を使います。

5100\displaystyle \frac{5}{\sqrt{100}}=0.5,\displaystyle {}= 0.5,z0\displaystyle z_0=31.5−300.5\displaystyle {}= \frac{31.5 - 30}{0.5}=3\displaystyle {}= 3

棄却域は ∣Z∣\lvert Z \rvert≧2.58{}\geqq 2.58 で、33≧2.58{}\geqq 2.58 なので H0H_0 は棄却され、読書時間の母平均は 30 分と異なるといえる‾\underline{30 \text{ 分と異なるといえる}}。

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問17 ★★★

母標準偏差 1010 の母集団で、H0:mH_0 : m=50{}= 50 を有意水準 0.050.05 の両側検定(棄却域 ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96)で調べます。ただし、実際の母平均は 5353 であるとします。標本平均 X‾\overline{X} は N(53, 102n)N\left(53,\ \dfrac{10^2}{n}\right) に従うものとし、X‾\overline{X} が 5050 より小さい側の棄却域に入る確率は十分小さいので無視します。正規分布表の値 p(0.46)p(0.46)=0.1772{}= 0.1772,p(1.04)p(1.04)=0.3508{}= 0.3508 を使います。

(1) 標本の大きさが nn=100{}= 100 のとき、H0H_0 が棄却される確率

(2) 標本の大きさが nn=25{}= 25 のとき、H0H_0 が棄却される確率

上の (1)、(2) の値をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 0.85080.8508 (2) 0.32280.3228

解説

大きい側の棄却域は X‾−5010/n\dfrac{\overline{X} - 50}{10/\sqrt{n}}≧1.96{}\geqq 1.96、つまり X‾\overline{X}≧50{}\geqq 50+1.96⋅10n{}+ 1.96 \cdot \dfrac{10}{\sqrt{n}} です。実際の分布 N(53, 102n)N\left(53,\ \dfrac{10^2}{n}\right) で標準化した WW=X‾−5310/n{}= \dfrac{\overline{X} - 53}{10/\sqrt{n}} は N(0, 1)N(0,\ 1) に従い、この条件は

W\displaystyle W≧1.96\displaystyle {}\geqq 1.96−310/n\displaystyle {}- \frac{3}{10/\sqrt{n}}=1.96\displaystyle {}= 1.96−0.3n\displaystyle {}- 0.3\sqrt{n}

と書きかえられます。

(1) nn=100{}= 100 のとき 1.961.96−3{}- 3=−1.04{}= -1.04 なので

P(W≧−1.04)\displaystyle P(W \geqq -1.04)=0.5\displaystyle {}= 0.5+p(1.04)\displaystyle {}+ p(1.04)=0.5\displaystyle {}= 0.5+0.3508\displaystyle {}+ 0.3508=0.8508‾\displaystyle {}= \underline{0.8508}

(2) nn=25{}= 25 のとき 1.961.96−1.5{}- 1.5=0.46{}= 0.46 なので

P(W≧0.46)\displaystyle P(W \geqq 0.46)=0.5\displaystyle {}= 0.5−p(0.46)\displaystyle {}- p(0.46)=0.5\displaystyle {}= 0.5−0.1772\displaystyle {}- 0.1772=0.3228‾\displaystyle {}= \underline{0.3228}

本当は H0H_0 が誤っているのに、nn=25{}= 25 では約 6868% の確率で見逃します(第2種の誤り。第5章の厳密定義)。差を見逃さないためには、標本を大きくする必要があります。この「正しく棄却できる確率」を検出力といいます(厳密定義のページ)。

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問18 ★★★

ある工場では、1 個の重さが母平均 500500 g、母標準偏差 66 g の製品を作っています。機械の不調を見つけるため、毎日 nn 個を無作為に抽出し、その平均が 498498 g 以下なら「軽すぎる」と判定して機械を止めることにしました。機械が正常(母平均 500500 g)のときの標本平均 X‾\overline{X} は N(500, 62n)N\left(500,\ \dfrac{6^2}{n}\right) に従うものとし、正規分布表の値 p(2.0)p(2.0)=0.4772{}= 0.4772,p(2.33)p(2.33)=0.4901{}= 0.4901 を使います。

(1) nn=36{}= 36 のとき、機械が正常なのに止めてしまう確率

(2) 機械が正常なのに止めてしまう確率を 0.010.01 以下にするための nn の最小値(境目の 498498 g を ZZ=X‾−5006/n{}= \dfrac{\overline{X} - 500}{6/\sqrt{n}} で標準化した値が −2.33-2.33 以下になればよいものとする)

上の (1)、(2) の値をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 0.02280.0228 (2) nn=49{}= 49

解説

(1) nn=36{}= 36 のとき 636\dfrac{6}{\sqrt{36}}=1{}= 1 なので、ZZ=X‾{}= \overline{X}−500{}- 500 は N(0, 1)N(0,\ 1) に従います。

P(X‾≦498)\displaystyle P(\overline{X} \leqq 498)=P(Z≦−2)\displaystyle {}= P(Z \leqq -2)=0.5\displaystyle {}= 0.5−0.4772\displaystyle {}- 0.4772=0.0228‾\displaystyle {}= \underline{0.0228}

これは「有意水準 0.02280.0228 の左側検定」をしているのと同じです。

(2) X‾\overline{X}=498{}= 498 のときの ZZ の値は

498−5006/n\displaystyle \frac{498 - 500}{6/\sqrt{n}}=−n3\displaystyle {}= -\frac{\sqrt{n}}{3}

判定の境目 498498 g が棄却域 ZZ≦−2.33{}\leqq -2.33 の中に入っていれば、X‾\overline{X}≦498{}\leqq 498 となる確率は P(Z≦−2.33)P(Z \leqq -2.33)=0.5{}= 0.5−0.4901{}- 0.4901=0.0099{}= 0.0099 以下になります。条件は

−n3\displaystyle -\frac{\sqrt{n}}{3}≦−2.33\displaystyle {}\leqq -2.33  ⟺  n\displaystyle {}\iff \sqrt{n}≧6.99\displaystyle {}\geqq 6.99  ⟺  n\displaystyle {}\iff n≧48.8601\displaystyle {}\geqq 48.8601

nn は整数なので、最小値は n=49‾\underline{n = 49} です。nn=49{}= 49 なら n\sqrt{n}=7{}= 7 で、境目は ZZ=−73{}= -\dfrac{7}{3}≒−2.33{}\fallingdotseq -2.33 の少し外側(−2.333⋯-2.333\cdots)になります。

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問19 ★★★

あるくじの当たりの確率は 12\dfrac{1}{2} と表示されています。1 日目に 100100 回引いたところ当たりは 5959 回、2 日目に 300300 回引いたところ当たりは 163163 回でした。当たりの確率は 12\dfrac{1}{2} と異なるといえるかどうかを、有意水準 0.050.05 の両側検定(棄却域 ∣Z∣\lvert Z \rvert≧1.96{}\geqq 1.96)で調べます。3\sqrt{3}=1.732{}= 1.732 とします。

(1) 1 日目の結果だけ、2 日目の結果だけで検定したときの z0z_0 の値と、それぞれの結論

(2) 2 日分の結果を合わせて検定したときの z0z_0 の値と結論

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 1 日目 z0z_0=1.8{}= 1.8、2 日目 z0z_0≒1.50{}\fallingdotseq 1.50。どちらも棄却されず、異なるとは判断できない (2) z0z_0=2.2{}= 2.2 で棄却され、異なるといえる

解説

当たりの確率を pp とし、H0:pH_0 : p=12{}= \dfrac{1}{2},H1:pH_1 : p≠12{}\neq \dfrac{1}{2} とします。H0H_0 のもとで nn 回中の当たりの回数は B(n, 12)B\left(n,\ \dfrac{1}{2}\right) に従い、期待値 n2\dfrac{n}{2}、標準偏差 n2\dfrac{\sqrt{n}}{2} です。

(1) 1 日目(nn=100{}= 100):期待値 5050、標準偏差 55 なので

z0\displaystyle z_0=59−505\displaystyle {}= \frac{59 - 50}{5}=1.8\displaystyle {}= 1.8

2 日目(nn=300{}= 300):期待値 150150、標準偏差 3002\dfrac{\sqrt{300}}{2}=53{}= 5\sqrt{3}=8.66{}= 8.66 なので

z0\displaystyle z_0=163−15053\displaystyle {}= \frac{163 - 150}{5\sqrt{3}}=138.66\displaystyle {}= \frac{13}{8.66}≒1.50\displaystyle {}\fallingdotseq 1.50

どちらも ∣z0∣\lvert z_0 \rvert<1.96{}< 1.96 なので H0H_0 は棄却されず、どちらの日だけでも、当たりの確率は 12 と異なる‾\underline{\dfrac{1}{2} \text{ と異なる}} とは判断できない‾\underline{\text{とは判断できない}}。

(2) 合わせると nn=400{}= 400、当たりは 5959+163{}+ 163=222{}= 222 回です。期待値 200200、標準偏差 1010 なので

z0\displaystyle z_0=222−20010\displaystyle {}= \frac{222 - 200}{10}=2.2\displaystyle {}= 2.2

2.22.2≧1.96{}\geqq 1.96 なので H0H_0 は棄却され、当たりの確率は 12 と異なるといえる‾\underline{\dfrac{1}{2} \text{ と異なるといえる}}。

1 日ずつでは証拠が足りなくても、同じ向きのずれが続けば、合わせることで判断できるようになります。ただし、データを見ながら「棄却されるまで回数を足していく」やり方は、有意水準を守れなくなるので避けます。

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問20 ★★★

母標準偏差 σ\sigma の母集団から大きさ nn の無作為標本を抽出し、標本平均 X‾\overline{X} は N(m, σ2n)N\left(m,\ \dfrac{\sigma^2}{n}\right) に従うものとします。帰無仮説を「mm≦m0{}\leqq m_0」、対立仮説を「mm>m0{}> m_0」とし、X‾\overline{X}≧m0{}\geqq m_0+1.645⋅σn{}+ 1.645 \cdot \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} のとき帰無仮説を棄却します。P(Z≧1.645)P(Z \geqq 1.645)=0.05{}= 0.05、p(2.58)p(2.58)=0.4951{}= 0.4951 を使ってよいものとします。

(1) 実際の母平均 mm が mm≦m0{}\leqq m_0 のどの値であっても、帰無仮説を棄却する確率は 0.050.05 以下であること

(2) m0m_0=50{}= 50,σ\sigma=10{}= 10,nn=100{}= 100 で、実際の母平均が mm=49{}= 49 のとき、帰無仮説を棄却する確率は 0.0050.005 未満であること

上の (1)、(2) を示しなさい。

つまずいたときは:
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答え

解説を参照

解説

(1) ZZ=X‾−mσ/n{}= \dfrac{\overline{X} - m}{\sigma/\sqrt{n}} とおくと、ZZ は N(0, 1)N(0,\ 1) に従います。棄却の条件を ZZ で書くと

X‾\displaystyle \overline{X}≧m0\displaystyle {}\geqq m_0+1.645⋅σn\displaystyle {}+ 1.645 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}  ⟺  Z\displaystyle {}\iff Z≧1.645\displaystyle {}\geqq 1.645+m0−mσ/n\displaystyle {}+ \frac{m_0 - m}{\sigma/\sqrt{n}}

mm≦m0{}\leqq m_0 なので m0−mσ/n\dfrac{m_0 - m}{\sigma/\sqrt{n}}≧0{}\geqq 0 です。右辺を cc とおくと cc≧1.645{}\geqq 1.645 なので、「ZZ≧c{}\geqq c」なら「ZZ≧1.645{}\geqq 1.645」も成り立ちます。したがって

P(Z≧c)\displaystyle P(Z \geqq c)≦P(Z≧1.645)\displaystyle {}\leqq P(Z \geqq 1.645)=0.05\displaystyle {}= 0.05

となり、棄却する確率は 0.050.05 以下です。mm=m0{}= m_0 のときちょうど 0.050.05 で、mm が m0m_0 より小さいほど棄却されにくくなります。

(2) σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=1{}= 1 なので、(1) の cc は cc=1.645{}= 1.645+50−491{}+ \dfrac{50 - 49}{1}=2.645{}= 2.645 です。2.6452.645>2.58{}> 2.58 なので

P(Z≧2.645)\displaystyle P(Z \geqq 2.645)≦P(Z≧2.58)\displaystyle {}\leqq P(Z \geqq 2.58)=0.5\displaystyle {}= 0.5−0.4951\displaystyle {}- 0.4951=0.0049\displaystyle {}= 0.0049<0.005\displaystyle {}< 0.005

よって、棄却する確率は 0.0050.005 未満です。

帰無仮説に幅がある(mm≦m0{}\leqq m_0)ときも、境目の mm=m0{}= m_0 で計算した棄却域を使えば有意水準が守られます。第7章の厳密定義 定理6(二項分布での同じ性質)の、正規分布版です。■\blacksquare

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数学小話コーナー

ビール工場から生まれた「スチューデント」

統計学の教科書には、「スチューデントの tt 分布」という名前がよく出てきます。スチューデント(学生)とは、いったい誰なのでしょうか。

正体は、アイルランドのダブリンにあるギネスビールの醸造所で働いていた、ウィリアム・シーリー・ゴセット(1876〜1937)です。オックスフォード大学で化学と数学を学んだゴセットは、1899 年にギネス社に入り、大麦の品種やホップの品質を調べる仕事を任されました。

困ったのは、実験で集められるデータがとても少ないことでした。畑の区画も、仕込みの回数も限られていて、標本の大きさは数個から十数個ということもありました。この章の方法は「nn が大きいとき」に正規分布で近似するものなので、nn が小さいとそのまま使うと判断を誤ります。とくに、母標準偏差の代わりに標本から計算した値を使うと、そのぶれのせいで、本当より「差がある」と言いすぎてしまうのです。

ゴセットは、カール・ピアソンの研究室で学んだあと、小さな標本でも正しく使える分布を研究し、1908 年に論文「平均の確からしい誤差」を発表しました。これが tt 分布の始まりです。第9章の厳密定義で紹介したように、nn=10{}= 10 なら 1.961.96 の代わりに約 2.2622.262 を使います。標本が小さいぶん、棄却域の境目を外に広げて慎重に判断するわけです。

論文の著者名は、本名ではなく「Student」でした。ギネス社は、社員が研究成果を外部に発表することを制限していたため、ペンネームを使ったといわれています(※理由については諸説あります)。のちにフィッシャーがこの分布を整理して広め、「スチューデントの tt」という呼び名が定着しました。

豆知識

ギネス社は、もう一つ有名なものを生み出しています。1951 年、同社の社長だったヒュー・ビーヴァーが狩りに出かけた際、「ヨーロッパでいちばん速く飛ぶ狩猟鳥は何か」で論争になり、答えの載った本が見つかりませんでした。これをきっかけに、パブでの議論に決着をつける本として 1955 年に出版されたのが、『ギネス・ブック(ギネス世界記録)』です。

ネイマンとピアソン、「もう一つの仮説」を書いた二人

第5章の小話で紹介したフィッシャーの検定は、「帰無仮説のもとで、この結果はどれくらい珍しいか」を p値で測るものでした。そこには、対立仮説をはっきり書く手順はありませんでした。

これに「もう一方の仮説」を加えたのが、第9章の小話に登場したイェジ・ネイマンと、カール・ピアソンの息子エゴン・ピアソン(1895〜1980)です。二人は 1920 年代の後半から共同研究を始め、1933 年の論文で、次のような考え方をまとめました。

  • 検定は、帰無仮説と対立仮説のどちらを選ぶかという「判断」である。
  • 判断には 2 種類の誤り(第1種・第2種の誤り)がある。
  • 第1種の誤りの確率を有意水準 α\alpha 以下に抑えたうえで、第2種の誤りをできるだけ小さくする(検出力をできるだけ大きくする)棄却域を選ぶべきである。

この最後の問いに答えたのが、ネイマン=ピアソンの補題です(厳密定義のページで証明します)。この章で、対立仮説が「pp>p0{}> p_0」なら右端だけに棄却域をとったのは、この補題の考え方にかなっています。

フィッシャーは、この「判断」「くり返したときの誤りの割合」という見方に強く反対し、ネイマンたちとの論争は長く続きました(※論争の経緯は資料によって語られ方が異なります)。フィッシャーにとって p値は「証拠の強さ」であり、工場の検品のように機械的に線を引くものではなかったのです。

おもしろいことに、いま高校や大学で習う仮説検定は、フィッシャーの p値と、ネイマン=ピアソンの対立仮説・棄却域・2 種類の誤りを、ひとまとめにしたものです。この章の公式1 に、p値と棄却域が並んでいるのはそのためです。

豆知識

「帰無仮説(null hypothesis)」という言葉を広めたのは、フィッシャーの 1935 年の本『実験計画法』だとされています。null は「無い」「ゼロ」という意味で、「差が無い」という仮説を表しています。

ヒッグス粒子と「5 シグマ」

2012 年 7 月 4 日、スイスとフランスの国境にある欧州原子核研究機構(CERN)は、ヒッグス粒子とみられる新しい粒子を見つけたと発表しました。1964 年に理論で予言されてから、およそ半世紀後のことです。翌 2013 年には、予言した物理学者のうちフランソワ・アングレールとピーター・ヒッグスがノーベル物理学賞を受けました。

このとき話題になったのが、「5 シグマ」という基準です。加速器の実験では、陽子どうしを衝突させて生まれる粒子の数を数えます。新しい粒子がなくても、偶然によって数はふらつきます。そこで「新しい粒子はない」を帰無仮説として、観測された数の多さが、標準偏差(シグマ)の何倍にあたるかを計算するのです。

素粒子物理学では、ZZ≧5{}\geqq 5 にあたる結果が出て初めて「発見」と呼ぶ習慣があります。標準正規分布で ZZ≧5{}\geqq 5 となる確率は約 2.9×10−72.9 \times 10^{-7}、およそ 350 万回に 1 回です。この章の片側検定でいえば、有意水準 0.050.05 の境目が 1.6451.645 だったのに対し、境目を 55 に置く、とても厳しい検定です。3 シグマ(約 0.00130.0013)では「発見の兆候」と呼ぶにとどめます。

基準が厳しいのには理由があります。実験では、粒子の重さの候補を少しずつずらしながら、たくさんの範囲を調べます。第5章の厳密定義で学んだ多重検定と同じで、多くの場所を探せば、どこかで偶然の「山」が見つかりやすくなるのです。

豆知識

2011 年、別の実験グループ OPERA が「ニュートリノが光より速く飛んだ」という、6 シグマを超える結果を発表し、世界を驚かせました。ところが翌年、装置の光ファイバーケーブルの接続がゆるんでいたことなどが原因と分かりました。ZZ の大きさが教えてくれるのは「偶然のふらつきでは説明しにくい」ということだけで、測り方そのものの偏りまでは教えてくれません。第9章の小話の、240 万人の調査が外れた話と同じ教訓です。

厳密定義(発展)

※ここは発展ページです。検定統計量・棄却域・p値・第1種と第2種の誤り・片側と両側検定の定義は第5章の厳密定義で扱いました。ここでは、検定統計量が正確に標準正規分布に従う場合(母集団が正規分布で σ\sigma が分かっているときなど)を中心に、p値の分布、信頼区間との対応、検出力と必要な標本の大きさ、そして「どの棄却域がいちばんよいか」に答えるネイマン=ピアソンの補題を証明とともに整理します。最後に、データの分析と統計の分野全体をふり返ります。

棄却域の境目

標準正規分布 N(0, 1)N(0,\ 1) に従う ZZ の分布関数を

Φ(z)\displaystyle \Phi(z)=P(Z≦z)\displaystyle {}= P(Z \leqq z)

と書きます。zz≧0{}\geqq 0 なら Φ(z)\Phi(z)=0.5{}= 0.5+p(z){}+ p(z) です。密度関数 φ(z)\varphi(z)=12πe−z22{}= \dfrac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{z^2}{2}} はつねに正で、Φ′(z)\Phi'(z)=φ(z){}= \varphi(z)(第8章 定理1)なので、Φ\Phi は連続で狭義単調増加です。

定義1:上側 α 点と棄却域

00<α{}< \alpha<1{}< 1 に対し、P(Z≧zα)P(Z \geqq z_\alpha)=α{}= \alpha、すなわち Φ(zα)\Phi(z_\alpha)=1{}= 1−α{}- \alpha を満たす実数 zαz_\alpha を、標準正規分布の上側 α\alpha 点という。

検定統計量 ZZ が H0H_0 のもとで N(0, 1)N(0,\ 1) に従うとき、有意水準 α\alpha の棄却域を次のように定める。

対立仮説の向き棄却域
両側∣Z∣≧zα/2\lvert Z \rvert \geqq z_{\alpha/2}
右側Z≧zαZ \geqq z_\alpha
左側Z≦−zαZ \leqq -z_\alpha

Φ\Phi は狭義単調増加で、値は 00 から 11 までのすべてをとるので、zαz_\alpha はただ 1 つに決まります。本文の値は z0.025z_{0.025}=1.96{}= 1.96,z0.005z_{0.005}≒2.58{}\fallingdotseq 2.58,z0.05z_{0.05}≒1.645{}\fallingdotseq 1.645,z0.01z_{0.01}≒2.33{}\fallingdotseq 2.33 です。

定理1:p値の分布

H0H_0 のもとで ZZ が N(0, 1)N(0,\ 1) に従うとし、実際の値 ZZ に対する右側検定の p値を PvalP_{\text{val}}=1{}= 1−Φ(Z){}- \Phi(Z) とする。このとき、どんな 00<α{}< \alpha<1{}< 1 に対しても

P(Pval≦α)\displaystyle P(P_{\text{val}} \leqq \alpha)=α\displaystyle {}= \alpha

が成り立つ。とくに、「p値 ≦α\leqq \alpha なら棄却する」検定で第1種の誤りを犯す確率は、ちょうど α\alpha である。両側検定の p値 2{1−Φ(∣Z∣)}2\{1 - \Phi(\lvert Z \rvert)\} についても同じことが成り立つ。

証明 Φ\Phi は狭義単調増加なので

Pval\displaystyle P_{\text{val}}≦α\displaystyle {}\leqq \alpha  ⟺  Φ(Z)\displaystyle {}\iff \Phi(Z)≧1\displaystyle {}\geqq 1−α\displaystyle {}- \alpha=Φ(zα)\displaystyle {}= \Phi(z_\alpha)  ⟺  Z\displaystyle {}\iff Z≧zα\displaystyle {}\geqq z_\alpha

よって P(Pval≦α)P(P_{\text{val}} \leqq \alpha)=P(Z≧zα){}= P(Z \geqq z_\alpha)=α{}= \alpha である。両側の場合は、同様に

2{1−Φ(∣Z∣)}\displaystyle 2\{1 - \Phi(\lvert Z \rvert)\}≦α\displaystyle {}\leqq \alpha  ⟺  Φ(∣Z∣)\displaystyle {}\iff \Phi(\lvert Z \rvert)≧1\displaystyle {}\geqq 1−α2\displaystyle {}- \frac{\alpha}{2}  ⟺  ∣Z∣\displaystyle {}\iff \lvert Z \rvert≧zα/2\displaystyle {}\geqq z_{\alpha/2}

で、その確率は 2×α22 \times \dfrac{\alpha}{2}=α{}= \alpha である。■\blacksquare

P(Pval≦α)P(P_{\text{val}} \leqq \alpha)=α{}= \alpha がすべての α\alpha で成り立つということは、H0H_0 が正しいとき、p値は 00 から 11 までの値をまんべんなく(一様に)とるということです。「p値が 0.80.8 だったから H0H_0 が正しそうだ」とはいえない理由がここにあります。H0H_0 が正しくても、p値が 0.80.8 以上になる確率は 0.20.2 あるのです。

第5章の厳密定義 定理2 では、コイン 20 回の検定で第1種の誤りの確率が約 0.0210.021 にとどまり、α\alpha=0.05{}= 0.05 に届きませんでした。検定統計量が整数しかとらないと P(T≧c)P(T \geqq c) がとびとびの値になるからで、連続型の ZZ ではこのずれが起こりません。

信頼区間と検定の対応

第9章の厳密定義の最後で予告した対応を、一般的な形で示します。

定理2:検定と信頼区間の対応

(1) 母集団が正規分布で σ\sigma が既知のとき、標本平均 X‾\overline{X} に対し

I\displaystyle I=[ X‾−zα/2σn,  X‾+zα/2σn ],\displaystyle {}= \left[\ \overline{X} - z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}},\ \ \overline{X} + z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\ \right],z0(m0)\displaystyle z_0(m_0)=X‾−m0σ/n\displaystyle {}= \frac{\overline{X} - m_0}{\sigma/\sqrt{n}}

とおくと、各 m0m_0 について「m0m_0∉I{}\notin I」と「∣z0(m0)∣\lvert z_0(m_0) \rvert>zα/2{}> z_{\alpha/2}」は同値である。

(2) より一般に、母集団の未知の値 θ\theta について、各 θ0\theta_0 ごとに H0:θH_0 : \theta=θ0{}= \theta_0 の検定があり、どれも第1種の誤りの確率が α\alpha 以下であるとする。標本から、H0:θH_0 : \theta=θ0{}= \theta_0 が棄却されない θ0\theta_0 を全部集めた集合 CC を作ると、θ\theta の真の値がどれであっても、P(θ∈C)P(\theta \in C)≧1{}\geqq 1−α{}- \alpha が成り立つ。

証明 (1) m0m_0∈I{}\in I  ⟺  ∣X‾−m0∣{}\iff \lvert \overline{X} - m_0 \rvert≦zα/2σn{}\leqq z_{\alpha/2}\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}  ⟺  ∣z0(m0)∣{}\iff \lvert z_0(m_0) \rvert≦zα/2{}\leqq z_{\alpha/2} の否定をとればよい。

(2) 真の値を θ\theta とする。θ\theta∈C{}\in C は「H0:θ0H_0 : \theta_0=θ{}= \theta の検定が棄却しない」ことそのものである。この H0H_0 は正しいので、棄却する確率(第1種の誤りの確率)は α\alpha 以下である。よって P(θ∈C)P(\theta \in C)≧1{}\geqq 1−α{}- \alpha。■\blacksquare

(1) で、棄却域を ∣Z∣\lvert Z \rvert≧zα/2{}\geqq z_{\alpha/2}(等号を含む)、信頼区間を閉区間(端を含む)としたため、∣z0∣\lvert z_0 \rvert=zα/2{}= z_{\alpha/2} ちょうどのとき、m0m_0 は区間の端にあって、しかも棄却されます。本文の公式5 で「区間のちょうど端の値だけは除く」としたのはこのためです。ZZ が連続型なので、このようなことが起こる確率は 00 で、実用上の違いはありません。

(2) は、「検定をたくさん用意すれば、棄却されない値の集まりが信頼区間(信頼集合)になる」という主張です。検定を反転して区間を作る、といわれます。母比率について、p0p_0 ごとに本文 公式2 の検定を行い、棄却されない p0p_0 を集めると、第9章の厳密定義で名前だけ紹介したウィルソンの区間が得られます。

検出力

定義2:検出力

ある検定について、母集団の値が θ\theta であるときに H0H_0 を棄却する確率を β(θ)\beta(\theta) と書き、検出力関数という。θ\theta が対立仮説にあてはまるとき、β(θ)\beta(\theta) をその θ\theta での検出力といい、11−β(θ){}- \beta(\theta) が第2種の誤りの確率である。θ\theta が帰無仮説にあてはまるときの β(θ)\beta(\theta) は、第1種の誤りの確率である。

定理3:母平均の右側検定の検出力

母集団が正規分布 N(m, σ2)N(m,\ \sigma^2)(σ\sigma は既知)で、H0:mH_0 : m=m0{}= m_0,H1:mH_1 : m>m0{}> m_0 を、棄却域 X‾−m0σ/n\dfrac{\overline{X} - m_0}{\sigma/\sqrt{n}}≧zα{}\geqq z_\alpha で検定する。このとき

β(m)\displaystyle \beta(m)=1\displaystyle {}= 1−Φ(zα−(m−m0)nσ)\displaystyle {}- \Phi\left(z_\alpha - \frac{(m - m_0)\sqrt{n}}{\sigma}\right)

であり、次が成り立つ。

(1) β(m)\beta(m) は mm について狭義単調増加で、β(m0)\beta(m_0)=α{}= \alpha である。

(2) mm>m0{}> m_0 ならば、nn→∞{}\to \infty のとき β(m)\beta(m)→1{}\to 1 である。

(3) 00<γ{}< \gamma<1{}< 1,δ\delta>0{}> 0 とする。mm=m0{}= m_0+δ{}+ \delta での検出力が 11−γ{}- \gamma 以上になるための条件は

n\displaystyle \sqrt{n}≧(zα+zγ) σδ\displaystyle {}\geqq \frac{(z_\alpha + z_\gamma)\,\sigma}{\delta}

である。

証明 母平均が mm のとき、WW=X‾−mσ/n{}= \dfrac{\overline{X} - m}{\sigma/\sqrt{n}} は N(0, 1)N(0,\ 1) に従う(第9章 公式4、母集団が正規分布なのでちょうど成り立つ)。棄却の条件は

X‾−m0σ/n\displaystyle \frac{\overline{X} - m_0}{\sigma/\sqrt{n}}≧zα\displaystyle {}\geqq z_\alpha  ⟺  W\displaystyle {}\iff W≧zα\displaystyle {}\geqq z_\alpha−(m−m0)nσ\displaystyle {}- \frac{(m - m_0)\sqrt{n}}{\sigma}

と書きかえられるので、β(m)\beta(m) の式を得る。

(1) mm が大きくなると Φ\Phi の中身は小さくなり、Φ\Phi は狭義単調増加なので β(m)\beta(m) は大きくなる。mm=m0{}= m_0 なら β(m0)\beta(m_0)=1{}= 1−Φ(zα){}- \Phi(z_\alpha)=α{}= \alpha。

(2) mm>m0{}> m_0 なら、Φ\Phi の中身は nn→∞{}\to \infty で −∞-\infty に向かい、Φ\Phi の値は 00 に近づくので、β(m)\beta(m)→1{}\to 1。

(3) β(m0+δ)\beta(m_0 + \delta)≧1{}\geqq 1−γ{}- \gamma  ⟺  Φ(zα−δnσ){}\iff \Phi\left(z_\alpha - \dfrac{\delta\sqrt{n}}{\sigma}\right)≦γ{}\leqq \gamma=Φ(−zγ){}= \Phi(-z_\gamma) である(標準正規分布の対称性より Φ(−zγ)\Phi(-z_\gamma)=1{}= 1−Φ(zγ){}- \Phi(z_\gamma)=γ{}= \gamma)。Φ\Phi は狭義単調増加なので、これは zαz_\alpha−δnσ{}- \dfrac{\delta\sqrt{n}}{\sigma}≦−zγ{}\leqq -z_\gamma と同値で、整理すると結論を得る。■\blacksquare

本文の例題4 の袋菓子(σ\sigma=5{}= 5)で、「母平均が 101101 g に増えたこと」を右側検定(α\alpha=0.05{}= 0.05)で見抜く場面を考えます。nn=100{}= 100 なら

β(101)\displaystyle \beta(101)=1\displaystyle {}= 1−Φ(1.645−1×105)\displaystyle {}- \Phi\left(1.645 - \frac{1 \times 10}{5}\right)=1\displaystyle {}= 1−Φ(−0.355)\displaystyle {}- \Phi(-0.355)=Φ(0.355)\displaystyle {}= \Phi(0.355)≒0.64\displaystyle {}\fallingdotseq 0.64

で、3 回に 1 回以上は見逃します。検出力を 0.80.8 以上にしたいなら、z0.2z_{0.2}≒0.84{}\fallingdotseq 0.84(p(0.84)p(0.84)=0.2995{}= 0.2995)を使って

n\displaystyle \sqrt{n}≧(1.645+0.84)×51\displaystyle {}\geqq \frac{(1.645 + 0.84) \times 5}{1}=12.425,\displaystyle {}= 12.425,n\displaystyle n≧154.38⋯\displaystyle {}\geqq 154.38\cdots

より、155155 袋以上が必要です。(3) の式から、見抜きたい差 δ\delta を半分にすると、必要な nn は 44 倍になることも分かります。実践 問17 は、両側検定で同じことを計算したものです。

(2) は、差がどんなに小さくても、nn を大きくすれば必ず見抜けることを表しています。本文の公式6 で「nn が大きいと、ごく小さな差でも棄却される」と注意したのは、この性質の裏返しです。

いちばんよい棄却域

有意水準 α\alpha を守る棄却域は、ほかにもたくさん作れます。例えば、ZZ が 00 に近い範囲 ∣Z∣\lvert Z \rvert≦0.063{}\leqq 0.063(確率は約 0.050.05)を棄却域にしても、第1種の誤りの確率は約 0.050.05 です。それでも右端を選ぶ理由を与えるのが、次の補題です。ここでは、とりうる結果が有限個の場合を扱います。

定理4:ネイマン=ピアソンの補題

とりうる結果の集合を有限集合 Ω\Omega とし、H0H_0 のもとでの確率を P0(ω)P_0(\omega)、H1H_1 のもとでの確率を P1(ω)P_1(\omega) とする(どの ω\omega でも P0(ω)P_0(\omega)>0{}> 0)。AA⊂Ω{}\subset \Omega に対して Pi(A)=∑ω∈APi(ω)P_i(A) = \displaystyle\sum_{\omega \in A} P_i(\omega) と書く。正の数 kk に対して

R∗\displaystyle R^*={ω∈Ω∣P1(ω)≧k P0(ω)}\displaystyle {}= \{\omega \in \Omega \mid P_1(\omega) \geqq k\,P_0(\omega)\}

とおく。このとき、P0(R)P_0(R)≦P0(R∗){}\leqq P_0(R^*) を満たすどんな RR⊂Ω{}\subset \Omega についても

P1(R)\displaystyle P_1(R)≦P1(R∗)\displaystyle {}\leqq P_1(R^*)

が成り立つ。つまり、第1種の誤りの確率が R∗R^* 以下の棄却域の中で、R∗R^* は検出力が最大である。

証明 RR と R∗R^* の共通部分の確率は両辺で打ち消し合うので

P1(R∗)\displaystyle P_1(R^*)−P1(R)\displaystyle {}- P_1(R)=∑ω∈R∗∖RP1(ω)\displaystyle {}= \sum_{\omega \in R^* \setminus R} P_1(\omega)−∑ω∈R∖R∗P1(ω)\displaystyle {}- \sum_{\omega \in R \setminus R^*} P_1(\omega)

である。ω\omega∈R∗{}\in R^* なら P1(ω)P_1(\omega)≧kP0(ω){}\geqq kP_0(\omega)、ω\omega∉R∗{}\notin R^* なら P1(ω)P_1(\omega)<kP0(ω){}< kP_0(\omega) なので

P1(R∗)\displaystyle P_1(R^*)−P1(R)\displaystyle {}- P_1(R)≧k(∑ω∈R∗∖RP0(ω)\displaystyle {}\geqq k\biggl(\sum_{\omega \in R^* \setminus R} P_0(\omega)−∑ω∈R∖R∗P0(ω))\displaystyle {}\qquad - \sum_{\omega \in R \setminus R^*} P_0(\omega)\biggr)=k{P0(R∗)−P0(R)}\displaystyle {}= k\{P_0(R^*) - P_0(R)\}≧0\displaystyle {}\geqq 0

となる。■\blacksquare

P0(ω)P_0(\omega) を「その結果を棄却域に入れるための費用」、P1(ω)P_1(\omega) を「得られる効果」と考えると、予算 α\alpha の中で効果を最大にするには、費用あたりの効果 P1(ω)P0(ω)\dfrac{P_1(\omega)}{P_0(\omega)}(尤度比)の高い結果から順に棄却域に入れればよい、ということです。

二項分布で確かめます。H0:pH_0 : p=p0{}= p_0,H1:pH_1 : p=p1{}= p_1(p1p_1>p0{}> p_0)で、XX=x{}= x のとき、qiq_i=1{}= 1−pi{}- p_i として

P1(x)P0(x)\displaystyle \frac{P_1(x)}{P_0(x)}=nCx p1 xq1 n−xnCx p0 xq0 n−x\displaystyle {}= \frac{{}_n\mathrm{C}_x\, p_1^{\,x} q_1^{\,n-x}}{{}_n\mathrm{C}_x\, p_0^{\,x} q_0^{\,n-x}}=(q1q0)n(p1q0p0q1)x\displaystyle {}= \left(\frac{q_1}{q_0}\right)^n \left(\frac{p_1 q_0}{p_0 q_1}\right)^x

です。p1q0p_1 q_0−p0q1{}- p_0 q_1=p1{}= p_1−p0{}- p_0>0{}> 0 より p1q0p0q1\dfrac{p_1 q_0}{p_0 q_1}>1{}> 1 なので、尤度比は xx について増加します。したがって R∗R^* は「XX≧c{}\geqq c」の形、つまり右端になります。しかも、この形は p1p_1 の値によりません。p1p_1>p0{}> p_0 のどの値に対しても、右端の棄却域が最も検出力の高い棄却域なのです。第5章・第7章と本文 公式3 で、対立仮説が「pp>p0{}> p_0」のとき右端を選んだのは、この意味で最善でした。

正規分布の場合も、和を積分に置きかえれば同じ証明が通ります。X‾\overline{X} の密度の比は、ss=σn{}= \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} として

φ(x−m1s)φ(x−m0s)\displaystyle \frac{\varphi\left(\frac{x - m_1}{s}\right)}{\varphi\left(\frac{x - m_0}{s}\right)}=exp⁡((m1−m0)xs2−m12−m022s2)\displaystyle {}= \exp\left(\frac{(m_1 - m_0)x}{s^2} - \frac{m_1^2 - m_0^2}{2s^2}\right)

で、m1m_1>m0{}> m_0 なら xx について増加するので、やはり右端 X‾\overline{X}≧c{}\geqq c が最善の棄却域になります。一方、両側の対立仮説 mm≠m0{}\neq m_0 に対しては、右にずれた場合に最善の棄却域と左にずれた場合に最善の棄却域が違うので、すべての場合に最善の棄却域は存在しません。両側検定で両端に α2\dfrac{\alpha}{2} ずつ分けるのは、どちらの向きにも公平にするための約束です。

なお、結果が有限個のときは、P0(R∗)P_0(R^*) をちょうど α\alpha にできるとは限りません(第5章 定理2 の後の 0.0210.021 の例)。

小さい標本のとき

本文の方法は、nn が大きいときの近似です。nn が小さいときは、次のように扱います。

どちらも、「帰無仮説のもとで検定統計量の分布を正確に知り、端の確率で判断する」という骨組みは同じです。

データの分析と統計をふり返る

この分野の 10 章は、次のようにつながっていました。

章扱ったこと立場
1〜4代表値・四分位数・分散・相関係数手元のデータを要約する
5仮説検定の考え方(実験で確率を見積もる)偶然かどうかを判断する
6〜8確率変数・二項分布・正規分布データを生む仕組みを確率で表す
9標本調査と推定一部から全体を見積もる
10仮説検定一部から全体についての主張を判断する

第3章の分散は第6章で確率変数の分散になり、第9章で σn\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} として標本平均のぶれを測り、この章で ZZ の分母になりました。第5章のコイン投げの表は、第7章で二項分布に、第8章で正規分布に置きかわり、この章で 1 行の計算になりました。

この先の統計学では、2 つの集団の平均の差を調べる検定、表の度数のかたよりを調べるカイ二乗検定(第7章 小話)、第4章の厳密定義で紹介した回帰直線を使う回帰分析、場合の数と確率の分野で学んだベイズの定理を土台にするベイズ統計などへ進みます。どれも、「データのばらつきを確率で表し、偶然と区別する」というこの分野の考え方の上に築かれています。

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