問1
さいころを 1 回投げるとき、 の目が出た回数が偶数( 回も含む)である確率 を求めなさい。
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( 以外が出れば 回で偶数)
目次 / 数列 / 数学B
—— 確率・場合の数・図形の場面から漸化式を立て、これまでの道具で解く ——
第8章の最後に、さいころを $n$ 回投げて $6$ の目が偶数回出る確率 $p_n$ が、$p_{n+1} = \dfrac{5}{6}p_n + \dfrac{1}{6}(1 - p_n)$ という漸化式を満たすことを予告しました。この章では、確率・場合の数・図形といった場面から、自分で漸化式を立てる練習をします。解き方そのものは第6章・第7章で学んだものばかりです。新しいのは「何を $n$ 番目の量とおき、$n$ 番目から $n + 1$ 番目へどう移るかを、どこで場合分けして数えるか」という立て方のほうです。確率では直前の状態で、場合の数では端の置き方で、図形では 1 つ加えたときの増え方で分けます。確率の計算は「場合の数と確率」の分野(反復試行・余事象)を前提にします。数列の分野の総仕上げとして、場面を式に翻訳する力を身につけましょう。
第8章の最後に予告した問題から始めましょう。
さいころを 回投げて、 の目が出た回数が偶数である確率を とします( 回も偶数に数えます)。
なら、 が出なければ 回で偶数なので、 です。 では「 が 回」の と「 が 回」の を足して となります。 が大きくなると、反復試行の確率を 回・ 回・ 回……と足していくのは大変です。
そこで、 回投げ終わった時点の「状態」に注目します。状態は「偶数回」と「奇数回」の 2 つしかありません。 回目を投げたあとに偶数回になっているのは、次の 2 つの場合です。
2 つの場合は同時には起こらず、 回目の結果はそれまでの結果と独立なので
が成り立ちます。「奇数回」の確率を新しい文字でおかず、余事象を使って と書いたところがポイントです。こうすると、文字が 1 つだけの第6章の 型になります。
回目の時点で状態 A にある確率を とする。状態が A と B の 2 つだけなら、B にある確率は である。
回目に A にある場合を「 回目に A だった」「 回目に B だった」で分ける。A から A へ移る確率を 、B から A へ移る確率を とすると
これは 型なので、 から落ち着き先 を求めて解く。
さいころの漸化式を解いてみます。 を解くと なので
は初項 、公比 の等比数列です。よって
を代入すると で、はじめに数えた値と一致します。
部屋の電気のスイッチで考えると、この漸化式がよく見えます。明かりのついた部屋で、さいころを投げて が出るたびにスイッチを押すことにします。 が偶数回出たことは「明かりがついている」ことと同じです。次に明かりがついているのは、今ついていて押さなかったときか、今消えていて押したときのどちらかです。何回目にどう押したかという長い履歴は要らず、「今ついているかどうか」だけで次が決まる。この性質があるから、 から への 1 本の式が立つのです。
答えの は、 を大きくすると に近づいていきます。何度も投げると、はじめに明かりがついていたことの影響が薄れ、偶数回か奇数回かは五分五分に近づくということです。落ち着き先 には、こうした「長い目で見た確率」という意味があります。
状態が 2 つの確率の漸化式は、 回目に A にある場合を 回目の状態で 2 つに分け、B にある確率を余事象の で表して 型にするということです。
(1) さいころを 回投げて、 の目が出た回数が偶数である確率 を求めなさい。
(2) ある町では、晴れた日の翌日が晴れる確率は 、雨の日の翌日が晴れる確率は です(天気は晴れか雨のどちらかとします)。1 日目が晴れのとき、 日目が晴れる確率 を求めなさい。
【解答】
(1) 回目のあとに偶数回であるのは、 回目までが偶数回で 回目に 以外が出るか、奇数回で が出るときなので
を解くと 。 と変形でき、 より は初項 、公比 の等比数列である。よって
(2) 日目が晴れるのは、 日目が晴れ(確率 )で翌日も晴れるか、 日目が雨(確率 )で翌日が晴れるときなので
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列である。よって
( で、問題文の「晴れの翌日が晴れる確率」と一致する。)
(2) の初項は「1 日目が晴れ」という条件から です。初項を確率の定義から正しく決めることも、漸化式を立てるのと同じくらい大切です。 や から始める書き方もありますが、その場合は ( 回投げたときは 回で偶数)のように、 番目の意味をはっきりさせておきましょう。
正三角形 ABC の頂点の上を動く点 P を考えます。P ははじめ頂点 A にあり、1 秒ごとに、今いる頂点以外の 2 つの頂点のどちらかへ、確率 ずつで移ります。 秒後に P が A にある確率を とします。
状態は「A にいる」「B にいる」「C にいる」の 3 つあります。けれども、A にいる確率を知りたいだけなら、B と C を区別する必要はありません。B にいても C にいても、次に A へ移る確率は同じ だからです。「A にいる」と「A 以外にいる(確率 )」の 2 つにまとめると
なので、公式1 と同じ形の漸化式 が立ちます。
求めたい状態 A 以外の状態が複数あっても、それらから A へ移る確率がどれも同じ なら、「A」と「A 以外」の 2 つにまとめてよい。A 以外にある確率は である。A から A へ移る確率を 、A 以外から A へ移る確率を とすると
A へ移る確率が状態によって違うときは、状態ごとの確率を文字でおいて連立の漸化式を立て、確率の合計が であることを使って文字を減らす。
郵便物の仕分けにたとえられます。手紙を配るとき、差出人が誰であっても、配達先の地区が同じなら 1 つの袋にまとめて運べます。袋の中の手紙を 1 通ずつ区別しても、配る手間は変わりません。確率の漸化式でも、「次にどこへ移るか」の確率が同じ状態は、1 つの袋にまとめて扱ってよいのです。逆に、行き先の確率が違う状態を同じ袋に入れると、次の時点の確率が正しく計算できなくなります。
状態が 3 つ以上あっても、求めたい状態へ移る確率が同じ状態どうしを 1 つにまとめれば、2 つの状態の漸化式として解けるということです。
(1) 上の点 P について、 秒後に P が頂点 A にある確率 を求めなさい。
(2) 袋 A には白玉 2 個、袋 B には赤玉 2 個が入っています。袋 A と袋 B から同時に 1 個ずつ玉を取り出し、取り出した玉を入れかえる操作をくり返します。この操作を 回行ったあと、袋 A の中の赤玉がちょうど 1 個である確率 を求めなさい。
【解答】
(1) 秒後に A にいれば次は必ず A 以外へ移り、A 以外にいれば確率 で A へ移るので
を解くと 。 で、 より は初項 、公比 の等比数列である。よって
(2) 袋 A の赤玉の個数は のどれかである。
「 個」と「 個」は、次に 個になる確率がどちらも なので、まとめて「 個でない(確率 )」と扱える。よって
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列である。よって
( で、「 個のとき次も 個である確率 」と一致する。)
(1) の は、公比が負なので と、 の上下を行き来しながら近づきます。3 つの頂点は同じ立場なので、長い目で見るとどの頂点にいる確率も になる、というのが落ち着き先の意味です。
縦 、横 の長方形の枠を、縦 ・横 の長方形のタイル(向きは縦にも横にもできる)と、 辺 の正方形のタイルですき間なく敷きつめる方法の数を とします。
が大きいと、全部を書き出すのは大変です。そこで、左端をどう敷くか で分けます。左端の縦 マスを覆う方法は、次のどれかです。
左端に長方形を横に 1 枚だけ置くと、その下の 1 マスは縦のタイルでも正方形でも埋められないので、必ず横にもう 1 枚置くことになります。こうして 3 通りで漏れなく、重なりなく分けられて
となります。第7章の階段の上り方と同じように、3 項間漸化式が立ちました。
長さ のものの数え方 を求めるときは、端(最初または最後)の置き方 で場合を分ける。端を決めたあとの残りが、同じ形で長さが短いものになっていれば、その数は や で表せる。
長い廊下に床板を張る職人を思い浮かべてください。職人は、廊下全体の張り方を一度に考えたりしません。端から 1 枚目を置けば、残りは「少し短い廊下」です。1 枚目の置き方が何通りあって、それぞれ廊下がどれだけ短くなるか。それさえ分かれば、長い廊下の張り方の数は、短い廊下の張り方の数から組み立てられます。
場合の数の漸化式は、端の置き方で漏れなく重なりなく分け、残りが同じ形の短いものになることを使って、 や で表すということです。
(1) 上のタイルの敷き方の数 の一般項を求めなさい。
(2) の数字だけを使ってできる 桁の数のうち、数字 を偶数個( 個も含む)含むものの個数 を求めなさい。
【解答】
(1) (縦に 1 枚)、(縦に 2 枚、横に 2 枚、正方形 1 枚)。 で なので、番号をずらして 。 の解は なので
, より
辺々引くと なので
(、式でも 。)
(2) 桁の数を、最後の桁で分ける。 を偶数個含むのは
のときなので
( と )。階差型なので、 のとき
これは のときも成り立つ()。よって
( では 個のうち、 を含まない 個と の 個で 個、式でも 。)
(2) の を全体の で割ると、 です。これは、各桁を から同じ確率で選んだとき、 が偶数個になる確率にほかなりません。実際、 とおいて漸化式を で割ると、 と、例題1 と同じ形の確率の漸化式になります。場合の数の漸化式と確率の漸化式は、同じことを「個数」で見るか「割合」で見るかの違いなのです。
図形の個数や面積も、「 番目から 番目へ、1 つ加えると何がいくつ増えるか」を考えると漸化式になります。数えるものが増え方の決まった形をしていれば、階差型や等比型として解けます。
たとえば、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない 本の直線の交点の数を とします。 本目の直線を引くと、この直線はそれまでの 本の直線とそれぞれ 1 回ずつ、しかも別々の点で交わります。新しい交点はちょうど 個増えるので、 という階差型の漸化式が立ちます。
図形の個数や量は、 番目に 1 つ加えたときの増え方(何個増えるか、何倍になるか)を数えて、階差型や等比型の漸化式にするということです。
(1) どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない 本の直線の交点の数 を求めなさい。
(2) 1 辺の長さ の正方形を 1 番目の正方形とし、 番目の正方形の各辺の中点を結んでできる正方形を 番目の正方形とします。 番目の正方形の面積 と、1 番目から 番目までの正方形の面積の和 を求めなさい。
【解答】
(1) 本目の直線は、それまでの 本とそれぞれ異なる点で交わるので、交点は 個増える。よって ,。 のとき
これは のときも成り立つ()。よって
( で 個、 で 個。)
(2) 番目の正方形の 1 辺を とすると、中点を結んだ正方形の 1 辺は、直角をはさむ 2 辺が の直角二等辺三角形の斜辺で である。面積は なので
よって 。和は等比数列の和の公式から
(1) の は、 本から 2 本を選ぶ組合せの数 と同じです。「交点 1 つ ⇔ 直線 2 本の組 1 つ」と対応がつくので、組合せで直接数えることもできます。漸化式で求めた答えを、別の数え方で確かめられる例です。
| 場面 | から への分け方 | 出てくる漸化式 |
|---|---|---|
| 確率(2 つの状態) | 直前の状態で分け、もう一方は | 型 |
| 確率(3 つ以上の状態) | 行き先の確率が同じ状態をまとめる | 型(まとめられなければ連立) |
| 場合の数 | 端(最初・最後)の置き方で分ける | 階差型・3 項間など |
| 図形 | 1 つ加えたときの増え方を数える | 階差型・等比型 |
これで数列の分野は終わりです。第1章の等差数列から始めて、等比数列、Σ、階差数列、群数列と「並びの規則」を調べ、第6章・第7章で「前の項から次の項を決める」漸化式を解けるようになり、第8章の数学的帰納法で「すべての で成り立つ」と言い切る方法を手に入れました。この章では、それらを確率・場合の数・図形の場面で組み合わせて使いました。
この章の確率には、 のように、 を大きくすると一定の値に近づくものがたくさん出てきました。「近づく」をきちんと扱う数列の極限は、微分積分 第10章で学びます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
さいころを 1 回投げるとき、 の目が出た回数が偶数( 回も含む)である確率 を求めなさい。
( 以外が出れば 回で偶数)
問2
漸化式 について、 を満たす を求めなさい。
()
問3
で定まる数列 について、 を求めなさい。
問4
で定まる数列 について、 を求めなさい。
(,)
問5
どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない 4 本の直線の交点の数を求めなさい。
個(、4 本から 2 本を選ぶ組の数)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
さいころを 回投げるとき、 または の目が出た回数が偶数( 回も含む)である確率 を求めなさい。
1 回で または の目が出る確率は です。 回目のあとに偶数回であるのは、 回目までが偶数回で 回目に 〜 が出るか、奇数回で か が出るときなので
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
( では、 回の と 回の で 、式でも 。)
問2 ★
赤玉 2 個と白玉 3 個が入った袋から 1 個取り出し、色を確かめて袋に戻す試行を 回くり返します。赤玉を取り出した回数が奇数である確率を とするとき、 を で表し、 を求めなさい。
,
1 回で赤玉が出る確率は です。 回目のあとに奇数回であるのは、 回目までが奇数回で白が出るか、偶数回で赤が出るときなので
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
(、式でも 。)
問3 ★
あるランプは、点灯しているときは 1 分後も点灯している確率が 、消えているときは 1 分後に点灯している確率が です。はじめに点灯しているとき、 分後に点灯している確率 を求めなさい。
分後に点灯しているのは、 分後に点灯していてそのまま点灯しているか、消えていて点灯するときなので
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
を代入すると で、「はじめに点灯」とも合っています。長い目で見ると、点灯している確率は に近づきます。
問4 ★
正四面体 ABCD の頂点の上を点 P が動きます。P ははじめ頂点 A にあり、1 秒ごとに、今いる頂点以外の 3 つの頂点のどれかへ、確率 ずつで移ります。 秒後に P が A にある確率 を求めなさい。
B,C,D のどれにいても、次に A へ移る確率は なので、「A」と「A 以外」の 2 つにまとめられます。A にいれば次は必ず A 以外なので
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
(。1 秒後は必ず A 以外で、そこから A へ戻る確率が なので合っています。)
問5 ★
縦 ・横 の枠を、1 辺 の正方形のタイル(赤と青の 2 色)と、縦 ・横 の白い長方形のタイルで、すき間なく敷きつめます。敷き方の数を とするとき、 を と で表し、 を求めなさい。
,
横 の枠の左端で分けます。
よって です。(赤・青)、(正方形 2 枚で 通り、長方形 1 枚で 通り)なので
よって 。
問6 ★
どの 2 つも 2 点で交わり、どの 3 つも同じ点を通らない 個の円があります。これらの円の交点の数 を求めなさい。
個目の円は、それまでの 個の円とそれぞれ 2 点で交わり、それらはすべて異なる点なので、交点は 個増えます。よって ,。 のとき
これは のときも成り立ちます()。よって 。
( 個から 2 個の円を選ぶ組 ごとに交点が 2 個あるので、 としても同じです。)
問7 ★
1 辺の長さ の正三角形を 1 番目の正三角形とし、 番目の正三角形の各辺の中点を結んでできる正三角形を 番目の正三角形とします。 番目の正三角形の周の長さ と、1 番目から 番目までの周の長さの和 を求めなさい。
,
中点を結ぶと、中点連結定理より 1 辺の長さはもとの になります。周の長さも 倍なので ,。よって
和は、初項 、公比 の等比数列の和なので
問8 ★
同じ長さのマッチ棒で 1 辺がマッチ棒 1 本の小さな正三角形を作り、上から 段目に上向きの小さな正三角形が 個並ぶように積み重ねて、1 辺がマッチ棒 本の大きな正三角形を作ります。必要なマッチ棒の本数 を求めなさい。
段から 段にするとき、いちばん下に上向きの小さな正三角形が 個加わります。それぞれの底辺と斜めの 2 辺はどれも新しいマッチ棒で(上の辺にあたる部分は、すでにある 段目の底辺です)、1 個につき 3 本ずつ増えます。よって
のとき
これは のときも成り立ちます()。よって 。
( で 本。上向きの小さな正三角形 個に、マッチ棒がちょうど 3 本ずつ属していると考えても同じ式になります。)
問9 ★★
A,B,C の 3 人がボール 1 個を持ち回ります。ボールを持っている人は、1 回ごとに、確率 でそのまま持ち続け、確率 ずつで他の 2 人のどちらかに渡します。はじめに A がボールを持っているとき、 回後に A がボールを持っている確率 を求めなさい。
B が持っていても C が持っていても、次に A が持つ確率は なので、「A」と「A 以外」の 2 つにまとめられます。
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
( は、A が 2 回続けて持つ と、B か C に渡って戻る で 、式でも 。)
問10 ★★
の 4 文字から重複を許して 個並べた文字列のうち、 を奇数個含むものの個数 を求めなさい。
個の文字列を最後の文字で分けます。 を奇数個含むのは、前の 個が奇数個( 個)で最後が のどれかか、偶数個( 個)で最後が のときなので
両辺を で割り、 とおくと( が奇数個になる確率にあたります)
より 。 は初項 、公比 の等比数列なので
より
( では がちょうど 1 個の 個、式でも 。)
問11 ★★
面積 の正三角形があります。1 回目の操作で、各辺の中点を結んでできる 4 つの正三角形のうち、真ん中の 1 つを取り除きます。2 回目以降は、残っているそれぞれの正三角形に同じ操作を行います。 回の操作のあとに残っている正三角形の個数 と、残っている部分の面積 を求め、取り除いた部分の面積の合計が初めて を超えるのは何回目の操作のあとかを求めなさい。
,,3 回目
1 回の操作で、残っている正三角形 1 個は、面積が の正三角形 3 個になります。よって
,(操作前)なので ,。
取り除いた部分の面積の合計は です。 は と同じで
なので、初めて を超えるのは の操作のあとです。
この操作を限りなく続けてできる図形は シェルピンスキーの三角形 と呼ばれ、残る面積は に近づくのに、形はどこまでも細かい模様を保ちます。
問12 ★★
袋 A には赤玉 1 個と白玉 1 個、袋 B には白玉 3 個が入っています。A と B から同時に 1 個ずつ玉を取り出して入れかえる操作をくり返します。 回の操作のあとに赤玉が袋 A に入っている確率 を求めなさい。
袋 A にはいつも 2 個、袋 B にはいつも 3 個の玉が入っています。
よって
を解くと 。 で、 より初項 、公比 の等比数列です。
落ち着き先 は、全部の玉 5 個のうち袋 A に入っている 2 個の割合と同じです。よく混ざると、赤玉がどの玉の位置にあるかは同じ確率になる、と考えると納得できます。
問13 ★★
ある町の人口は 人で一定です。町は東地区と西地区に分かれていて、毎年、東地区の人の が西地区へ、西地区の人の が東地区へ移り、ほかの人は移りません。はじめに東地区に 人いたとき、 年後の東地区の人数 を求めなさい。
年後の西地区の人数を とすると
という連立の漸化式になります。合計が一定なので を代入すると、文字が 1 つに減ります。
を解くと 。 で、はじめ()の から
(1 年後は 人、式でも 。)東地区は 人に近づきます。そのとき東から出る 人と西から来る 人がちょうど釣り合います。
問14 ★★
どの 2 つも 2 点で交わり、どの 3 つも同じ点を通らない 個の円によって、平面はいくつの部分に分けられるか。その数 を求めなさい。
個目の円は、それまでの 個の円と合わせて 個の点で交わります()。円周はこの 個の点で 本の弧に分けられ、それぞれの弧が、通り抜ける部分を 2 つに分けます。よって、部分は 個増えて
のとき
これは のときも成り立ちます。よって 。
(,。1 個目の円は交点がなくても内と外の 2 つに分けるので、漸化式は から使います。)
問15 ★★
硬貨を投げて、表が出たら 点、裏が出たら 点を加えていきます(最初は 点)。途中で合計がちょうど 点になることがある確率を とするとき、 を と で表し、 を求めなさい。
,
合計がちょうど 点になるのは、次の 2 つの場合で、同時には起こりません。
よって です。、(表・表か、最初に裏)。
の解は なので、、 と変形できます。後者から、 は一定で
これは 型で、 より 。 なので
(。1 回で平均 点進むので、ある点を踏む確率は長い目で見ると に近づきます。)
問16 ★★
縦 ・横 の枠を、縦 ・横 の長方形のタイル(縦にも横にも置ける)と、1 辺 の正方形のタイル(赤と青の 2 色)で、すき間なく敷きつめます。敷き方の数を とするとき、 を と で表し、 を求めなさい。
,
横 の枠の左端で分けます。
よって 。,(縦 2 枚、横 2 枚、赤、青)なので
よって 。
問17 ★★★
円を 個()の扇形に分け、赤・青・黄の 3 色で、隣り合う扇形が異なる色になるように塗ります(使わない色があってもよく、回転して重なる塗り方も別のものと数えます)。塗り方の数を とするとき、 を示し、 を求めなさい。
扇形に と番号を付け、円を切り開いて 1 列に並べたものを考えます。1 列で隣どうしが異なる色になる塗り方は、 番の色が 3 通り、あとは前と違う 2 通りずつなので 通りです。これを 番と 番の色で分けます。
よって です。(証明終)
です。 の両辺を で割り、 とおくと
より 。 なので、 で
より
(、漸化式でも 。)
問18 ★★★
正方形 ABCD の頂点の上を点 P が動きます。P は 1 秒ごとに、確率 でその場にとどまり、確率 ずつで隣り合う 2 つの頂点のどちらかへ移ります。P ははじめ A にあります。 秒後に P が A にある確率を 、C にある確率を 、B または D にある確率を とするとき、 と を求め、 を求めなさい。
,,
A へは、A にとどまるか、B か D から移ってきます。B にいる確率と D にいる確率の和が なので
A と C は「B か D から移ってくる確率」が同じでも、とどまる分が と で違うので、まとめられません。そこで差をとると
より 。
また なので
より 。 なので 。
と を足して 2 で割ると
( で、「とどまる確率」と一致。 も、とどまって・とどまる 、B か D へ行って戻る の合計と一致します。)
問19 ★★★
数直線上の点 を動く点 Q があります。Q が のどれかにあるときは、確率 で 、確率 で 移動し、 または に着いたら止まります。Q が点 から出発して に着く確率を とします()。 について を示し、 を求めなさい。
点 ()から出発すると、最初の 1 回で か に移り、そこから改めて出発したのと同じになります。よって
両辺を 3 倍して整理すると 、つまり です。(証明終)
()とおくと、 は初項 、公比 の等比数列です。 なので
よって 。
漸化式は 3 項間ですが、第7章と違って与えられているのは「最初の 2 項」ではなく「両端の値 」です。そこで、差の数列を足し合わせた合計が になることを使って初項を決めました。(小話の「賭博者の破産」と同じ形の問題です。)
問20 ★★★
袋に赤玉 1 個と白玉 1 個が入っています。袋から玉を 1 個取り出し、その玉と同じ色の玉を 1 個加えて、取り出した玉とともに袋に戻す操作をくり返します。 回の操作のあと、袋の中の赤玉が 個()である確率は、 によらず であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で赤 1 個・2 個がそれぞれ 。[2] で成り立つと仮定すると、赤が 個になる確率は 。
回の操作のあと、袋の中の玉は 個です。 回後に赤玉が 個である確率を とし、「()」…① を示します。
[1] のとき、1 回目に赤を取り出せば赤 2 個、白を取り出せば赤 1 個で、どちらも確率 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり ()と仮定します。 回後の袋には 個の玉があります。 回後に赤が 個()になるのは
のどちらかです( のときは前者が、 のときは後者が起こらず、式の中の係数 や が になるので、同じ式で扱えます)。仮定から
よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
取り出した色が「増えやすくなる」しくみなのに、赤玉の個数はどの値も同じ確率になります。この袋は ポリアの壺 と呼ばれ、流行が偏っていくようすなどのモデルに使われます。
この章の確率の漸化式は、「次にどうなるかは、今の状態だけで決まる」という形をしていました。こうした確率のモデルを、ロシアの数学者アンドレイ・マルコフの名前をとって マルコフ連鎖 といいます。
マルコフは 1913 年、この考え方を意外な題材で確かめました。ロシアの詩人プーシキンの韻文小説『エヴゲーニイ・オネーギン』の最初の 2 万文字を、手作業で「母音」と「子音」に分けて数えたのです。すると
でした。母音の次には子音が来やすく、子音の次には母音が来やすい。文字は 1 つずつ独立に並んでいるのではなく、直前の文字に影響されています。
この数字を、本文の公式1 に当てはめてみましょう。 文字目が母音である確率を とすると で、落ち着き先は
です。実際に数えた母音の割合 とぴったり合います。長い文章の中の母音の割合は、「直前の文字からの移り方」だけで説明がつくのです。
マルコフがこの研究をしたのは、「大数の法則が成り立つには、試行が独立でなければならない」という当時の主張に反論するためだったといわれます(※研究の動機については諸説あり)。独立でなくても、長い目で見た割合は一定の値に落ち着く。それを示す例として、詩が選ばれたのでした。
豆知識
検索エンジンが Web ページの重要さを測るために考えた「ページランク」(1998 年ごろ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン)も、マルコフ連鎖の考え方にもとづいています。リンクをたどって Web ページを渡り歩く人を想像し、長い時間のあとにそのページにいる確率、つまり「落ち着き先」を重要さとみなすのです(※実際の検索の仕組みはもっと複雑で、細部は簡略化している)。
A さんと B さんが、1 回ごとに 1 枚ずつ硬貨をやりとりする賭けをします。勝つ確率はどちらも で、どちらかが硬貨をすべて失ったら終わりです。A さんが 枚、2 人合わせて 枚持っているとき、A さんが全部を手に入れる確率はいくらでしょうか。
この問題は 賭博者の破産 と呼ばれ、17 世紀にパスカルがフェルマーに出した問題の 1 つがもとになっていて、1657 年にオランダのホイヘンスが確率の本の最後に載せたとされます(※出題の経緯には諸説あり)。
A さんが 枚持っているときに勝ち切る確率を とすると、次の 1 回で勝つか負けるかで分けて
となります。差 がいつも同じなので は等差数列で、 です。公平な賭けなら、勝ち切る確率は「持っているお金の割合」そのものなのです。
これを、手持ち 枚の人が 枚持っている相手と勝負する場面に当てはめると、勝ち切る確率は 、約 です。1 回 1 回は五分五分でも、資金の少ないほうが先に尽きてしまう確率は約 にもなります。
しかも、1 回に勝つ確率が とほんの少し不利なだけで、話はさらに厳しくなります。2 人とも 枚ずつ持っていても、不利なほうが勝ち切る確率は約 まで下がります(公平なら )。実践問題 j19 と同じように、差の数列が等比数列になることから計算できます。
豆知識
数直線の上を、硬貨を投げて左右に 1 歩ずつ歩く点は、いつかは必ず出発点に戻ってきます。平面の格子の上を上下左右に歩く場合も同じです。ところが、立体の格子の上を 6 方向に歩くと、出発点に戻る確率は約 しかありません。ポリアが 1921 年に示したこの結果は、「酔っぱらいは家に帰れるが、酔った鳥は帰れないかもしれない」と言い表されます(※この言い回しは、角谷静夫の言葉として紹介されることが多い)。
トランプ 52 枚の並べ方は 通りで、およそ 通りあります。宇宙の年齢を秒で表した数(約 )と比べても、けたちがいに大きな数です。では、よく混ざった状態、つまりどの並べ方も同じくらいの確率で現れる状態にするには、何回シャッフルすればよいのでしょうか。
山を 2 つに分け、両手の親指ではじきながら交互に落として 1 つにまとめる切り方を リフルシャッフル といいます。1992 年、デイヴィッド・ベイヤーとパーシ・ダイアコニスは、この切り方を確率のモデルで表し、52 枚ならおよそ 7 回で十分に混ざると示しました。5 回や 6 回ではまだ前の並びの影響がはっきり残っていて、7 回を境に急に混ざった状態に近づくのです。
シャッフル 1 回で、並びは今の並びだけから確率的に決まります。本文の漸化式と同じく「今の状態だけで次が決まる」マルコフ連鎖で、状態の数がとてつもなく多い場合にあたります。7 回という答えは、落ち着き先(すべての並べ方が同じ確率の状態)にどれだけ速く近づくかを調べて得られたものです。
日本でよく見る、山の上から少しずつ抜いて重ねる切り方では、十分に混ぜるのにはるかに多くの回数が必要だという研究もあります(※必要な回数の見積もりは研究や「混ざった」の基準によって違う)。
豆知識
ダイアコニスは、10 代で家を出てプロのマジシャンとして旅をしたあと、数学者になったという経歴の持ち主です(※年齢などの細部は紹介のされ方によって違う)。トランプの手品で使う「完全に交互に重ねるシャッフル」では、52 枚が 8 回でもとの並びに戻ります。混ぜているように見えて、実は少しも混ざっていない切り方もあるのです。
※ここは発展ページです。本文では、確率・場合の数・図形の場面から漸化式を立てて解きました。ここでは、「2 つの状態の確率の漸化式」を一般の形で解き、本文の公式2 で「まとめてよい」とした条件を正確に述べます。さらに、場合の数と確率が同じ漸化式になる理由と、両端の値で決まる 3 項間漸化式を扱い、数列の分野を締めくくります。
各時点で、状態 A,B のどちらか一方にあるものを考える。時点 に A にある確率を とする。時点 の状態がどうであったかによらず、
で一定(,)で、それより前の状態によらないとき、この確率の移り変わりを 2 つの状態の推移 という。このとき
が成り立つ。
「それより前の状態によらない」という条件が、本文の「今の状態だけで次が決まる」にあたります。小話で紹介したマルコフ連鎖の、最も簡単な場合です。
定義1 の推移で、 とおくと である。
(1) のとき、 とおくと で、 である。
(2) ()のとき、 である。
証明 より 。
(1) なら なので が定まり、 を満たす。( より)なので 。漸化式から を引くと となり、 は公比 の等比数列である。
(2) なら漸化式は である。(証明終)
の値によって、 の振る舞いが分かれます。
は、 から始めると がずっと のままになる値で、定常な確率 とも呼ばれます。小話のマルコフの数値 を入れると でした。「近づく」の正確な意味は、微分積分 第10章の数列の極限で扱います。
本文の公式2 では「A へ移る確率が同じ状態はまとめてよい」としました。これを一般の形で述べます。
状態が A,,,…, の 個あり、各時点の状態から次の状態への移り方の確率は一定で、それより前の状態によらないとする。時点 に A にある確率を とする。
,…, のどれから A へ移る確率も同じ値 であり、A から A へ移る確率が ならば
が成り立つ。
証明 時点 に にある確率を とすると、。 に A にある場合を時点 の状態で分けると
(証明終)
証明を見ると、使ったのは「 から A へ移る確率が共通」ということだけで、 どうしの間の移り方がどうであっても構いません。逆に、A へ移る確率が ごとに違うと、 の部分が の和だけでは書けず、それぞれの を追いかける必要があります。実践問題 j18 の正方形で、A と C をまとめられなかったのはこのためです(A 自身からの移り方と C からの移り方が違う)。
状態が 3 つ以上の一般の推移は、各状態の確率を並べた「ベクトル」に、移り方の確率を並べた「行列」を掛ける形で表されます。この扱いは、大学で学ぶ線形代数の話題です。
本文の例題3(2) では、 でできる 桁の数のうち を偶数個含むものの個数 を で割ると、確率の漸化式になりました。これは偶然ではありません。
種類の記号から重複を許して 個並べる 通りの列が、どれも同様に確からしく起こるとする。列が性質 をもつものの個数を 、その確率を とすると、 である。
が漸化式 ( は定数)を満たすならば、 は
を満たす。
証明 漸化式の両辺を で割ればよい。。(証明終)
は「性質 をもつ列に 1 文字加えても のままである確率」、 は「 をもたない列が 1 文字で に変わる確率」にあたります。「場合の数と確率」の分野で、確率を「同様に確からしい場合を数えて、全体で割る」と定めたことが、ここで漸化式の形にも表れています。
第7章の 3 項間漸化式は、最初の 2 項 から順に項が決まりました。実践問題 j19 や小話の「賭博者の破産」では、代わりに両端の値 が与えられていました。
, とする。 が
を満たすならば、 として
であり、特に条件を満たす数列はただ 1 つである。
証明 と書きかえて整理すると なので、 は を満たし、。 なので、 なら 、 なら である。 から がただ 1 つに決まり、上の式が得られる。(証明終)
j19 は の場合で、 と一致します。
この定理では「どの点から出発しても、いつかは か に着く」ことを前提に、 を確率として漸化式を立てています。いつまでも着かない確率が であることは、「 回続けて が出れば必ず着く」ことから、 回ずつ区切って考えると示せます。
この分野では、数列を「自然数 に値を 1 つずつ対応させるもの」(第1章)として定め、一般項・和・漸化式という 3 つの見方を行き来してきました。一般項は から直接値を求める式、和は値を積み重ねたもの、漸化式は隣どうしの関係です。第4章の「階差をとる」と「和をとる」が互いに逆の操作であること、第8章の数学的帰納法が漸化式による定義の土台であることで、3 つの見方はつながっています。
この章の確率の数列の多くは、 を大きくすると定常な確率に近づきました。数列が「近づく」とはどういうことか、無限に足した和に意味はあるのか。その答えは、微分積分 第10章の数列の極限と無限級数で扱います。
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