問1
等比数列 の公比と第 6 項を求めなさい。
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公比 ,第 6 項 ()
目次 / 数列 / 数学B
—— 同じ数ずつ掛けていく並びと、「ずらして引く」和の求め方 ——
第1章の等差数列は「同じ数を足していく」数列でした。この章では、$3,\ 6,\ 12,\ 24,\ \ldots$ のように**同じ数を掛けていく**数列——**等比数列**——を学びます。となりどうしの差の代わりに「比」を見て、公比 $r$ を使って一般項を $ar^{n-1}$ と表します。3 つの数が等比数列になる条件、そして和の求め方が中心です。和は、第1章の「逆順に並べて足す」ではなく、「公比を掛けてずらして引く」という新しい工夫で求めます。最後に、預金の複利や毎年の積み立てを等比数列の和として計算します。
第1章の最後に登場した数列 を見てみましょう。となりどうしの差は とばらばらなので、等差数列ではありません。けれども、どの項も前の項の 倍になっています。
このように、各項に一定の数 を掛けると次の項が得られる数列を等比数列といい、 を公比といいます。「となりどうしの比が等しい」から等比、「どこでも共通の比」だから公比です。第1章の「等差・公差」と、1 文字ずつ入れかわった名前になっています。
数列 が公比 の等比数列であるとは、すべての自然数 について
が成り立つことである。どの項も でないときは、(となりどうしの比が一定)と言いかえられる。
公比は負の数でも分数でもかまいません。 は公比 で、符号が交互に入れかわります。 は公比 で、だんだん小さくなります。
電卓で考えると、等差数列は「」のボタン、等比数列は「」のボタンを押し続けてできる数列です。最初に初項を打ち込み、あとは同じボタンを押すたびに、画面に次の項が現れます。押すボタンが足し算か掛け算か——等差と等比の違いは、ここだけです。
等比数列かどうかを確かめるには、となりどうしの比 を並べて、すべて同じかどうかを見ます。
等比数列とは、どの項も前の項に同じ数(公比)を掛けてできる数列だということです。
(1)
(2)
(3)
上の各数列が等比数列かどうかを調べ、等比数列ならその公比を求めなさい。
【解答】
となりどうしの比を並べます。
(1) ,,。すべて等しいので、
(2) ,。比が等しくないので、
(3) ,,。すべて等しいので、
(2) は差を並べると で、差も比も一定ではありません。等差数列でも等比数列でもない数列のほうが、世の中にはずっと多いのです。こうした数列の和は、第3章以降で扱います。
初項 、公比 の等比数列で、第 項はいくつになるでしょうか。
第 2 項は を 1 回、第 3 項は 2 回、第 4 項は 3 回掛けています。第 項までに を掛ける回数は、等差数列のときと同じく 回です。
初項 、公比 の等比数列 の一般項は
電卓の例えでいえば、初項を打ち込んだあと「」を押す回数は、第 2 項で 1 回、第 項で 回。第1章の植木算と同じで、項が 個並ぶとき、そのあいだの矢印は 本です。指数が ではなく になるのは、このためです。
等差数列の一般項は の 1 次式で、点 は直線の上に並びました。等比数列の一般項 は、 が指数に入った式——指数・対数の分野で学んだ指数関数の形——です。公比が より大きいと、点は指数関数のグラフに沿って、急な坂を駆け上がるように並びます。
2 つの項が分かれば、公比は「項の比」から求まります。第 3 項と第 5 項なら、そのあいだに が 回掛かっているので、 です。ここで の値から を出すと、正と負の 2 通りが出てくることがあります。等差数列の「 を 回足す」と違う、等比数列ならではの注意点です。
等比数列の第 項は、初項に公比を 回掛けた で、 の指数関数の形になるということです。
第 3 項が 、第 5 項が である等比数列 について、一般項を求めなさい。ただし、公比は実数とします。
【解答】
初項を 、公比を とすると
なので、下の式を上の式で割ることができて 、よって 。どちらの場合も です。
よって
2 つの数列は と で、奇数番目の項はまったく同じです。第 3 項と第 5 項(どちらも奇数番目)だけでは、偶数番目の符号が決まらないのです。
3 つの数 がこの順に公比 の等比数列になっているとき、, です。すると
が成り立ちます。この を等比中項といいます。
のとき、3 つの数 がこの順に等比数列をなす
等比数列をなす 3 つの数は、真ん中の数を 、公比を として
とおくと、積が となって計算が楽になる()。
縦 cm、横 cm の長方形と同じ面積の正方形を作るとき、一辺は cm です。 は公比 の等比数列で、 は と の等比中項。長方形を、形だけ整えて同じ面積の正方形に作りかえたときの一辺——それが等比中項です。第1章の等差中項が「両端の平均(真ん中の支点)」だったのに対し、等比中項は「両端の積の平方根」になります。
から を求めると、 の 2 通りがありえます。 も公比 の等比数列です。
3 つの数を とおくと、積は となって が消えます。等差数列で「和が分かれば真ん中が決まる」だったのが、等比数列では「積が分かれば真ん中が決まる」に変わります。
のとき、3 つの数が等比数列になる条件は、真ん中の数の 2 乗が両端の積に等しいことで、3 つの数は とおくと積から真ん中が決まるということです。
等比数列をなす 3 つの実数があり、その和は 、積は です。この 3 つの数を求めなさい。
【解答】
3 つの数を とおきます。積が なので 、 は実数なので 。和が なので
両辺に を掛けて整理すると 、すなわち 。 より 。
のとき 、 のとき 。どちらも同じ 3 つの数なので、求める数は
を、1 つずつ足さずに求める方法を考えます。和を とおき、全体に公比 を掛けた を、1 つ右にずらして書きます。
上下に同じ項がずらりとそろいました。 から を引くと、そろった項はすべて消えて、 のいちばん右の と、 のいちばん左の だけが残ります。
同じことが、どんな等比数列でもできます。初項 、公比 の等比数列の和 から を引くと
なら両辺を で割って、 が求まります。
初項 、公比 の等比数列の、初項から第 項までの和 は
2 つの形は、分子と分母の両方に を掛けたもので、中身は同じです。 なら右の形、 なら左の形を使うと、分母・分子が正になって計算ミスが減ります。 のときは で割れないので、別に扱います(すべての項が なので、和は )。
行列に並んだ人の写真を 2 枚用意して、片方を 1 人分ずらして重ねるところを想像してください。重なった人はぴったり打ち消し合って消え、はみ出した両端の 1 人ずつだけが残ります。「公比を掛けてずらして引く」も同じで、途中の項はすべて消え、最初の と最後の だけが残ります。第1章の和は「逆順に並べて足す」でペアを作りましたが、等比数列の和は「ずらして引く」で打ち消し合いを作るのです。
公比が より小さい正の数のときの和は、図にすると分かりやすくなります。面積 の正方形の半分を塗り、残りの半分を塗り、さらに残りの半分を塗り……とくり返すと、塗った面積は
です。塗り残しは、いつも最後に塗った部分と同じ大きさの になっています。
等比数列の和は、公比を掛けて 1 つずらした和を引くと途中の項がすべて消えるので、 なら で求まるということです。
(1) 和 を求めなさい。
(2) 初項 、公比 の等比数列の、初項から第 5 項までの和を求めなさい。
【解答】
(1) 初項 、公比 の等比数列です。末項 が第何項かを調べると、 より 、。公比が より大きいので右の形を使って
(2) 公比が より小さいので左の形を使います。 なので
(項を書き出すと で、確かに合っています。)
(1) のように、末項が分かっているときは、まず「第何項か」を出して項数を決めます。第1章の等差数列の和と同じ段取りです。
「初項から第 3 項までの和」と「初項から第 6 項までの和」が分かっているとき、初項と公比を求めてみます。公式4に当てはめて連立方程式を作ることもできますが、次のしくみを使うと、ずっと見通しよく解けます。
第 4 項から第 6 項までは、第 1 項から第 3 項までの各項に、それぞれ を掛けたものです。だから、ひとまとまりの和どうしも 倍になっています。
第1章の等差数列では「第 11 項から第 20 項までの和」を として扱いました。等比数列では、それに加えて「前のまとまりの 倍」という見方ができます。
毎年、給料が同じ割合で上がっていく会社を考えてみてください。1 年あたりの上がり方が 倍なら、4 年目の給料は 1 年目の 倍、5 年目は 2 年目の 倍、6 年目は 3 年目の 倍です。だから「4〜6 年目の 3 年分の合計」も、「1〜3 年目の 3 年分の合計」の 倍になります。1 年ずつ比べても、3 年分をまとめて比べても、倍率は同じなのです。
等比数列では、連続する 個の項の和を 項ぶん後ろにずらすと、和がちょうど 倍になるということです。
公比が実数の等比数列 において、初項から第 3 項までの和が 、初項から第 6 項までの和が です。この数列の一般項を求めなさい。
【解答】
初項を 、公比を とします。第 4 項から第 6 項までの和は で、これは初項から第 3 項までの和の 倍なので
は実数なので 。初項から第 3 項までの和から 、。
(, で確かめられます。)
公式4で式を立てると , となり、 を使って割り算すれば同じ にたどりつきます。ただしこの式は が前提なので、 の場合(和は と で、2 倍にしかならない)を別に確かめる手間がかかります。上の「 倍」の見方なら、その場合分けが要りません。
銀行の預金には、1 年ごとに利子が付きます。付いた利子を元金に組み入れ、次の年は「元金 + 利子」全体に利子が付くしくみを複利といいます。年利 なら、1 年ごとに預金全体が 倍になるので、預金額は公比 の等比数列になります。
毎年同じ額を積み立てる場合は、1 回ごとの積み立て分が、それぞれ別々に何倍にもなっていきます。最後にそれらを合計すると、等比数列の和になります。
年利 ( なら )の 1 年ごとの複利で、
積み立ての式は、最後に積み立てた分から並べると分かりやすくなります。 年目の初めに入れた分は 1 年しか預けないので 、1 年目の初めに入れた分は 年まるまる預けるので 。これらは初項 、公比 、項数 の等比数列で、公式4の右の形に当てはめると上の式になります。
複利は、坂道を転がる雪だるまに似ています。転がるたびに付く雪の量は、そのときの雪だるまの大きさに比例します。大きくなるほど、1 回転で付く雪も多くなる。利子にも利子が付く複利のふくらみ方は、この雪だるまと同じです。
複利で預けたお金は毎年同じ倍率で増えるので等比数列になり、毎年の積み立ての合計は、最後に入れた分から並べた等比数列の和で求まるということです。
毎年初めに 万円ずつ、年利 の 1 年ごとの複利で積み立てます。10 年目の年末の元利合計を求めなさい。ただし、 として計算しなさい。
【解答】
10 年目の初めに入れた 万円は 1 年分の利子が付いて 万円、……、1 年目の初めに入れた 万円は 10 年分の利子が付いて 万円になります。合計は、初項 、公比 、項数 の等比数列の和なので
よって
積み立てた元金は 万円なので、利子の合計は 万 円です。もし利子を元金に組み入れない単利なら、各回の 万円に付く利子は 1 年あたり 万円で、預けた年数は 年なので、利子の合計は 万円(第1章の等差数列の和)。複利のほうが、「利子の利子」の分だけ約 円多くなっています。
等比数列は「掛け算をくり返してできる数列」でした。一般項は で指数関数の形、和は「公比を掛けてずらして引く」で求まります。
| 等差数列(第1章) | 等比数列(第2章) | |
|---|---|---|
| 次の項の作り方 | 公差 を足す | 公比 を掛ける |
| 一般項 | ||
| 3 つの数の条件 | ||
| 和の求め方 | 逆順に並べて足す | 公比を掛けてずらして引く |
では、 のように、等差数列でも等比数列でもない数列の和はどう求めればよいでしょうか。次の第3章では、長い和を短く書く記号 Σ(シグマ)を導入し、こうした「いろいろな数列の和」を扱います。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
等比数列 の公比と第 6 項を求めなさい。
公比 ,第 6 項 ()
問2
初項 、公比 の等比数列 の一般項を求めなさい。
問3
3 つの数 がこの順に等比数列をなすとき、 の値を求めなさい。
()
問4
初項 、公比 の等比数列の、初項から第 5 項までの和を求めなさい。
()
問5
和 を求めなさい。
(初項 、公比 、項数 で )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1)
(2)
(3)
上の各等比数列の一般項を求めなさい。
(1) (2) (3)
初項と公比(となりどうしの比)を読み、 に代入します。
(1) 初項 、公比 なので
(2) 初項 、公比 なので
(3) 初項 、公比 なので
底が同じ累乗はまとめておきます( で になり、第 3 項と合っています)。
問2 ★
公比が実数の等比数列 において、第 2 項が 、第 5 項が です。一般項を求めなさい。
初項を 、公比を とすると
なので、下の式を上の式で割って 。 は実数なので 、。
第 2 項から第 5 項までに公比が 回掛かるので、比 が になります。3 乗なので、実数の は 1 つに決まります。
問3 ★
等比数列 において、 は第何項かを求めなさい。
第 項
初項 、公比 なので 。
よって 、 です。
問4 ★
公比が実数の等比数列 において、第 3 項が 、第 5 項が です。一般項を求めなさい。
または
初項を 、公比を とすると
なので、割って 、。どちらでも なので 。
よって または
と の 2 つで、奇数番目の項は同じ、偶数番目の符号だけが違います。
問5 ★
(1) 初項 、公比 の等比数列の、初項から第 6 項までの和
(2)
上の各和を求めなさい。
(1) (2)
(1) 公比が より大きいので を使います。
(2) 初項 、公比 です。 より 、 で、項数は 。
(逆から読むと で、同じ答えです。)
問6 ★
3 つの数 がこの順に等比数列をなすとき、 の値を求めなさい。
真ん中の数の 2 乗が両端の積に等しいので
より 、。 このとき 3 つの数は で、確かに公比 の等比数列です(初項 なので、 から等比数列だと言えます)。
問7 ★
和 を求めなさい。
初項 、公比 の等比数列です。 となるのは ( で、指数が偶数なので符号は正)のときで、項数は 。
公比が負のときは、 の符号に気をつけます。 です。
問8 ★
数列 は公比 の等比数列で、どの項も ではないとします。
(1)
(2)
上の各式で定まる数列 , が等比数列であることを示し、それぞれの公比を求めなさい。
(1) 公比 (2) 公比
どの項も でないので、となりどうしの比が によらない定数になることを示せば十分です。仮定から で、項が でないことから です。
(1)
これは によらない定数なので、 は の等比数列です。
(2)
これも定数なので、 は の等比数列です(逆数をとると、掛ける数も逆数になります)。
問9 ★★
公比が実数の等比数列 において、初項から第 3 項までの和が 、第 4 項から第 6 項までの和が です。この数列の一般項を求めなさい。
初項を 、公比を とします。第 4 項から第 6 項までの和は、初項から第 3 項までの和の 倍なので
は実数なので 。 より 。
(, で確かめられます。)
問10 ★★
毎年初めに 万円ずつ、年利 の 1 年ごとの複利で積み立てます。10 年目の年末の元利合計を、 として計算し、 円未満を切り捨てて求めなさい。
万 円
最後(10 年目の初め)に入れた分から並べると、各回の積み立て分は年末に
になります。初項 、公比 、項数 の等比数列の和なので
万円 円なので、 円未満を切り捨てて 。
問11 ★★
異なる 3 つの数 は、この順に等差数列をなし、 の順に等比数列をなします。 のとき、 の値を求めなさい。
,,
が等差数列なので 。これと から 、、。
が等比数列なので、真ん中の について 。 を代入して
のときは で、3 つとも になり「異なる」に反します。よって 、。
確かめ: は公差 の等差数列、 は公比 の等比数列です。
問12 ★★
初項 、公比 の等比数列の、初項から第 項までの和を とします。 となる最小の自然数 を求めなさい。
なので、 は と同じです。 , で、 は が大きいほど大きいので、最小の は 。 (, です。)
問13 ★★
公比が正の等比数列 において、, です。一般項 と、初項から第 8 項までの和を求めなさい。
,和
初項を 、公比を とすると、 なので 、。 より 。 より 。
初項から第 8 項までの和は
問14 ★★
初項 、公比 の等比数列 について、 とします。数列 が等差数列であることを示し、和 を求めなさい。
なので
は によらない定数なので、 は初項 、公差 の等差数列です。
積の対数は対数の和なので、これは と同じです。正の項の等比数列の対数をとると、等差数列になります。
問15 ★★
初項 、公比 の等比数列において、初項から第 項までの和が になるとき、 の値とその末項を求めなさい。
,末項
よって 。末項は第 7 項で、。 ( です。)
問16 ★★
高さ cm のところからボールを床に落とします。ボールは床に着くたびに、直前に落ちてきた高さの の高さまで跳ね上がります。ボールが 5 回目に床に着くまでに、上下に動いた距離の合計を求めなさい。
cm
跳ね上がる高さは、1 回目の着地のあとから順に
で、初項 、公比 の等比数列です。5 回目に床に着くまでに跳ね上がるのは 4 回で、それぞれ上りと下りの 2 回ずつ動きます。
跳ね上がった高さの合計は
最初に落ちる cm を加えて、動いた距離の合計は
「最初の落下は 1 回だけ、跳ね上がった分は往復で 2 回」と分けて数えるのがこつです。
問17 ★★★
公比が実数の等比数列において、初項から第 項までの和が 、初項から第 項までの和が です。初項から第 項までの和を求めなさい。
初項を 、公比を とし、初項から第 項までの和を とします。第 項から第 項までの各項は、初項から第 項までの各項に を掛けたものなので
同じように、第 項から第 項までの和は です。
より 、。よって
この考え方は でもそのまま使えます( なら で となり、条件に合わないことも同時に分かります)。
問18 ★★★
和 を の式で表した結果を求めなさい。
各項は「等差数列 」と「等比数列 」の積です。等比数列の和と同じく、公比 を掛けて 1 つずらして引きます。
上から下を引くと、同じ累乗どうしの係数の差はすべて になるので
両辺に を掛けて
確かめ: で , で 。
問19 ★★★
年利 の 1 年ごとの複利について、, として、次の問いに答えなさい。
(1) 元金を預けたとき、元利合計が初めて元金の 2 倍を超えるのは何年後かを求めなさい。
(2) 毎年初めに 万円ずつ積み立てるとき、年末の元利合計が初めて 万円を超えるのは何年目の年末かを求めなさい。
(1) 年後 (2) 年目の年末
(1) 年後の元利合計は元金の 倍なので、 を満たす最小の自然数 を求めます。両辺の常用対数をとると(底 なので不等号の向きはそのまま)
よって 。
(2) 年目の年末の元利合計は、公式5より
は と同じなので、(1) と同じく最小の は 。。
「72 の法則」(2 倍になる年数 ≒ 年利の数値)では 年で、(1) の結果とよく合っています。
問20 ★★★
万円を年利 の 1 年ごとの複利で借り、借りた 1 年後から毎年同じ額 万円ずつ返して、10 回目でちょうど返し終えます。 として を計算し、万円単位で小数第 2 位を四捨五入して求めなさい。
(万円)
すべてを「10 年後の時点の金額」にそろえて比べます。
10 回で返し終えるので、この 2 つが等しくなります。
を代入すると なので
よって (万円)。返す総額はおよそ 万円で、借りた額より約 万円多くなります。
ロンドンの大英博物館に、リンド・パピルスと呼ばれる古代エジプトの巻物があります。紀元前 1650 年ごろ、書記のアーメスが、さらに古い文書を書き写したものとされ、1858 年にスコットランドのリンドがエジプトで買い求めたことから、この名で呼ばれています。分数の計算や面積の求め方など、80 題あまりの問題が並ぶ、現存する最古級の数学の教科書です。
その第 79 問は、ふしぎな表になっています。
| 数 | |
|---|---|
| 家 | |
| 猫 | |
| ねずみ | |
| 麦の穂 | |
| 麦の量(ヘカト) | |
| 合計 |
「家が 7 軒あり、それぞれに猫が 7 匹、猫はそれぞれねずみを 7 匹捕まえ、ねずみはそれぞれ麦の穂を 7 本食べ、穂 1 本からは麦が 7 ヘカト取れる」という話だと読まれています(※問題文がほとんど無く、解釈には諸説あり)。 の和、つまり初項 、公比 の等比数列の和です。
おもしろいのは、表のわきに という計算が添えられていることです。 なので、アーメスは
と、全体を でくくって計算したことになります。和の公式 まではあと一歩。3600 年前の書記も、等比数列を「同じ数を掛けてできる並び」として扱っていたのです。
豆知識
イギリスには、よく似たなぞなぞ歌があります。「セント・アイヴスへ行く途中、7 人の妻を連れた男に会った。妻はそれぞれ 7 つの袋を持ち、袋にはそれぞれ猫が 7 匹、猫にはそれぞれ子猫が 7 匹。子猫・猫・袋・妻、セント・アイヴスへ行くのはいくつ?」。男も入れて数えると で、パピルスの と同じ数になります(2 つに関係があるかどうかは分かっていません)。ただし、なぞなぞの答えは「 人」。セント・アイヴスへ向かっていたのは、歌っている「私」だけで、男たちとは道ですれ違っただけ、というひっかけです。
預金や投資の世界には、72 の法則という目安があります。
年利 なら 年、年利 なら 年、年利 なら 年。実際に計算すると、,, で、どれもほぼ 2 倍になっています。電卓も対数表も無しで、暗算で見当がつくのが便利なところです。
なぜ なのでしょうか。 を満たす は、指数・対数の分野で学んだ対数を使えば です。 が小さいとき、この値はおよそ になることが知られていて(微分積分で学ぶ自然対数の話です)、本当は「69.3 の法則」のほうが近いのです。それでも が使われるのは、 と約数が多くて割り算がしやすく、しかも 〜 ぐらいのよくある利率では、かえって のほうが実際の値に近くなるからです。実践 j19 の年利 では 年で、対数で計算した 年とよく合っています。
この法則は、イタリアの数学者ルカ・パチョーリが 1494 年に出した数学書『スンマ』に、説明抜きで載っているのが古い記録とされます(※それ以前から商人の間で知られていたとも言われます)。複式簿記を初めて本格的に紹介した本としても知られる一冊です。
豆知識
「複利は人類最大の発明だ」——物理学者アインシュタインの言葉として、よく引用される一文です。ところが、アインシュタインが本当にそう言ったという記録は見つかっていません(※出典不明とされています)。有名人の名言には、このように出どころがはっきりしないものが少なくありません。
正三角形の各辺を 3 等分し、真ん中の部分を 1 辺とする小さな正三角形を外側に付け足します。すると、雪の結晶のような星形の図形になります。できた図形の各辺にも同じことをくり返し、さらにくり返し……。スウェーデンの数学者ヘルゲ・フォン・コッホが 1904 年に考えたこの図形は、コッホの雪片と呼ばれています。
1 回の操作で、1 本の辺は長さ の辺 4 本に置きかわります。つまり周の長さは、操作のたびに 倍。 回くり返したあとの周の長さは、もとの 倍で、公比 の等比数列です。10 回で約 倍、100 回ではなんと約 倍——3 兆倍にもなります。
では面積はどうでしょう。もとの正三角形の面積を とします。1 回目に付け足す三角形は、辺の長さが なので面積 のものが 3 個で、合計 。2 回目は、面積 のものが 12 個で、合計 。一般に、 回目に付け足す面積は で、初項 、公比 の等比数列になります。 回くり返したあとの面積は、この章の和の公式から
となり、何回くり返しても を超えません。周はいくらでも長くなるのに、面積はもとの 倍の中に収まったまま。公比が より大きいか小さいかで、ふるまいがまったく違うのです。
豆知識
コッホの雪片のように、どこを拡大しても同じような形が現れる図形を、のちに数学者マンデルブロがフラクタルと名づけました。マンデルブロは 1967 年の論文「イギリスの海岸線の長さはどれくらいか」で、入り組んだ海岸線は、細かい物差しで測るほど長くなることを論じています。コッホの雪片の「次元」は で、線(1 次元)と面(2 次元)の間の、半端な次元をもつ図形だと考えられています。
※ここは発展ページです。本文では「同じ数を掛けていく数列」として等比数列を導入し、一般項や和の公式を、項を並べて見当をつける形で導きました。ここでは定義をはっきりさせたうえで、本文でさらりと流した「公比が のとき」「項が のとき」に何が起きるかを確かめながら、一般項・特徴づけ・等比中項・和の公式を証明します。
数列 について、ある定数 が存在して、すべての自然数 に対し
が成り立つとき、 を公比 の等比数列という。
定義を「比 が一定」としなかったのは、項に があると割り算ができないからです。たとえば初項 なら、どんな でも になり、公比は 1 つに決まりません。また , なら となり、第 2 項から先はずっと です。多くの問題では「初項も公比も でない」場合を扱いますが、定義そのものはこうした場合も含んでいます。
が初項 、公比 の等比数列ならば、すべての自然数 について
ただし と約束する( のときも として読む)。
証明 のときは で成り立つ。定義1の式を から順に使うと
となる。(証明終)
第1章の定理1は「辺々を足して打ち消す」証明でしたが、等比数列で同じように「辺々を掛けて打ち消す」には、 を と割り算の形にする必要があり、項が だと使えません。上の証明はその割り算を避けています。「…」の部分を完全に厳密にするには、第1章と同じく、第8章の数学的帰納法を使います。帰納法で書くと「 なら 」の 1 行です。
なお、指数・対数の分野では を定義しないと約束しました。ここでは「 を 回掛ける」ことを と書いているだけで、 のときに本当に気をつけるべきなのは第 1 項だけです。
数列 について、次の 2 つは同値である。
(i) は公比が でない等比数列である。
(ii) ある定数 ,()を用いて、すべての自然数 について と表される。
このとき公比は 、初項は である。
証明 (i) (ii):初項を 、公比を ()とすると、定理1より 。, とおけばよい。
(ii) (i): がすべての で成り立つので、 は公比 ()の等比数列である。初項は 。(証明終)
公比 の等比数列 ()は、 の形には書けません。 とすると第 1 項まで になってしまうからです。「等比数列 指数関数に自然数を入れたもの」と言えるのは、公比が でないときに限られます。第1章の定理2(等差数列 1 次関数に自然数を入れたもの)には、このような例外はありませんでした。
3 つの実数 ,, について、 ならば
証明 () 公比を とすると , なので、。
() なので とおける。すると であり、さらに
よって は公比 の等比数列である。(証明終)
の条件は外せません。 は を満たしますが、第 1 項が なら第 2 項・第 3 項も になるはずなので、等比数列ではありません。本文の公式3にこの条件を書いておいたのは、このためです。一方 であれば、 でもかまいません( は公比 の等比数列)。
初項 、公比 の等比数列の初項から第 項までの和を とすると
証明 のときは、定理1よりすべての項が なので 。
のとき、定理1より で、 である。 の 番目の項 と、 の 番目の項 ()は等しいので、差をとるとこれらはすべて打ち消し合い
で両辺を割って結論を得る。(証明終)
定理4で とし、分母を払うと、次の恒等式が得られます。
でも両辺が で成り立つので、これはすべての についての恒等式です。 なら 、 なら で、数学I・II で学んだ因数分解の公式の仲間です。等比数列の和の公式は、この因数分解を「割り算の形」で書いたものだと見ることもできます。
, とする。各項が正の数列 について
このとき、 の公比 と の公差 の間には の関係がある。
証明 とおく。対数の性質より
() 公比を とすると、各項が正なので で、 は によらない定数。よって は公差 の等差数列。
() 公差を とすると なので 。これは によらない定数なので、 は公比 の等比数列。(証明終)
対数は「掛け算を足し算に変える」道具でした。その道具を通すと、「掛けていく数列」がそのまま「足していく数列」に変わるのです。実践 j14 はこの定理の具体例です。
最後に、公比が のとき、項数 をどこまでも大きくすると は に近づき、和 は に近づいていきます。本文の正方形の図でいえば、塗った面積が限りなく に近づくということです。「限りなく近づく」を厳密に扱う数列の極限と無限等比級数は、微分積分の分野の第10章で学びます。
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