問1
等差数列 の公差と第 10 項を求めなさい。
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公差 ,第 10 項 ()
目次 / 数列 / 数学B
—— 同じ数ずつ増える(減る)並びを、1 本の式でつかむ ——
数列の分野の最初の章です。$2,\ 5,\ 8,\ 11,\ \ldots$ のように、数を一列に並べたものを**数列**といいます。この章では、まず「第何項」「一般項」といった数列の言葉をそろえ、そのうえで最も基本的な数列である**等差数列**——となりどうしの差がいつも同じ数列——を学びます。第 $n$ 項を 1 本の式で表す方法、3 つの数が等差数列になる条件、そして「逆順に並べて足す」という工夫で和を一気に求める方法が中心です。最後に、和が最大になるところや、倍数だけを集めた和も扱います。第2章の等比数列、第3章の Σ(和の記号)へとつながる土台の章です。
数を一列に並べたものを数列といいます。たとえば
はどちらも数列です。並んでいる 1 つ 1 つの数を項といい、前から順に第 1 項(初項)、第 2 項、第 3 項、……と呼びます。左の数列なら初項は 、第 4 項は です。
数列を文字で書くときは、第 1 項を 、第 2 項を 、……、第 項を のように、右下に番号(添え字)を付けます。数列全体をまとめて と書くこともあります。
項がどこまでも続く数列を無限数列、途中で終わる数列を有限数列といいます。有限数列では、項の個数を項数、最後の項を末項といいます。
右の数列 は、第 項が になっています。このように第 項を の式で表したものを一般項といいます。一般項が分かれば、 を代入するだけで第 100 項が求まります。
数列 を と書く。
数列は、番号札の付いた箱がずらりと並んでいるようすに似ています。1 番の箱には 、2 番の箱には が入っています。一般項は「 番の箱に何が入っているか」を教えてくれるレシピです。レシピさえあれば、箱を 1 つずつ開けていかなくても、1000 番の箱の中身がすぐに分かります。
数列とは番号の付いた数の並びで、 番目の数を の式で表したものが一般項だということです。
(1) 一般項が である数列 の、初項から第 4 項までを求めなさい。
(2) 数列 の第 6 項を、一般項を推測して求めなさい。
【解答】
(1) を順に代入します。
よって
(2) ,,, なので、一般項は と推測できます。第 6 項は
(2) の「推測」は、並びの規則を読み取っただけで、証明したわけではありません。最初の数項だけでは、規則が 1 通りに決まらないこともあります。この章から先では、「どんな規則でできた数列か」をはっきり決めてから考えます。
数列 は、どの項も前の項に を足したものになっています。
このように、各項に一定の数 を足すと次の項が得られる数列を等差数列といい、 を公差といいます。「となりどうしの差が等しい」から等差、「どこでも共通の差」だから公差です。 のように減っていく数列も、公差 の等差数列です。
数列 が公差 の等差数列であるとは、すべての自然数 について
が成り立つことである。
毎月、同じ額ずつ貯金箱に入れていくようすを思い浮かべてください。最初に 千円入っていて、毎月 千円ずつ足すと、残高は (千円)と並びます。公差は「毎月の入金額」です。入金額がマイナスなら、毎月同じ額を引き出していることになり、残高は減っていきます。
等差数列かどうかを確かめるには、となりどうしの差 を並べて、すべて同じかどうかを見ます。
等差数列とは、どの項も前の項に同じ数(公差)を足してできる数列だということです。
(1)
(2)
(3)
上の各数列が等差数列かどうかを調べ、等差数列ならその公差を求めなさい。
【解答】
となりどうしの差を並べます。
(1) ,,。すべて等しいので、
(2) ,,。差が等しくないので、
(3) 分母を にそろえると 。差はすべて なので、
(2) の差 は、それ自体が等差数列になっています。「差を並べた数列」は階差数列と呼ばれ、第4章で主役になります。
初項 、公差 の等差数列で、第 項はいくつになるでしょうか。
第 2 項は を 1 回、第 3 項は 2 回、第 4 項は 3 回足しています。第 項までに を足す回数は、 ではなく 回です。
初項 、公差 の等差数列 の一般項は
「」になる理由は、道に木を植える植木算と同じです。まっすぐな道に木を 本、端から端まで植えると、木と木のあいだは か所。1 本目の木から 本目の木までに進む距離は「あいだの数 × 間隔」です。等差数列でも、初項から第 項までに「」の矢印は 本しかありません。
一般項 を展開すると で、 の 1 次式( なら定数)です。点 を座標平面にとると、傾き の直線の上に等間隔に並びます。
2 つの項が分かれば、公差は「項の差 ÷ 番号の差」で求まります。第 3 項と第 10 項なら、そのあいだに が 回はさまっています。
等差数列の第 項は、初項に公差を 回足した で、 の 1 次式になるということです。
第 3 項が 、第 10 項が である等差数列 について、一般項を求めなさい。また、初めて負になるのは第何項かを求めなさい。
【解答】
初項を 、公差を とすると
下の式から上の式を引いて 、よって 。上の式から 。
となるのは 、すなわち のときです。これを満たす最小の自然数は なので、()で初めて負になります。
3 つの数 がこの順に等差数列になっているとき、 です。これを変形すると
真ん中の は、両側の と の平均になっています。この を等差中項といいます。
3 つの数 がこの順に等差数列をなす
等差数列をなす 3 つの数は、真ん中の数を 、公差を として
とおくと計算が楽になる。
シーソーの両端に同じ重さの子どもが乗って、ちょうど釣り合っているとき、支点は 2 人のちょうど真ん中にあります。等差中項は、数直線の上で と の真ん中にある支点です。
3 つの数を とおくと、和は となって が消えます。「和が分かっている」問題では、まず真ん中の数が決まるのです。
3 つの数が等差数列になる条件は、真ん中の数の 2 倍が両端の和に等しいことで、3 つの数は とおくと扱いやすいということです。
等差数列をなす 3 つの数があり、その和は 、積は です。この 3 つの数を求めなさい。
【解答】
3 つの数を とおきます。和が なので 、よって 。積が なので
のとき 、 のとき 。どちらも同じ 3 つの数なので、求める数は
を、1 つずつ足さずに求める方法を考えます。和を とおき、同じ和を逆順にも書いて、上下を足してみます。
上下のペアはどれも で、ペアは 組あります。よって 、 です。
同じことが、どんな等差数列でもできます。初項 、末項 、項数 の等差数列では、前から 番目と後ろから 番目の和が、いつも になるからです(前から進むと ずつ増え、後ろから進むと ずつ減るので、和は変わりません)。
等差数列の初項から第 項までの和を とする。初項 、末項 ()、公差 のとき
特に
2 つ目の形は、1 つ目の に を代入したものです。末項が分かっていれば 1 つ目、公差が分かっていれば 2 つ目を使います。
積み木で作った階段を思い浮かべてください。1 段目に 1 個、2 段目に 2 個、……、5 段目に 5 個。これと同じ階段をもう 1 つ作り、逆さにして横にぴったりくっつけると、縦 5 段・横 6 列の長方形になります。長方形の積み木は 個なので、階段 1 つ分はその半分の 個です。
は「(最初 + 最後)× 個数 ÷ 2」で、台形の面積の公式「(上底 + 下底)× 高さ ÷ 2」と同じ形です。 は項の平均なので、「平均 × 個数」と読むこともできます。
等差数列の和は、逆順に並べた和と足すと同じ数のペアがそろうので、「(初項 + 末項)× 項数 ÷ 2」で求まるということです。
(1) 初項 、公差 、項数 の等差数列の和を求めなさい。
(2) 和 を の式で表した結果を求めなさい。
【解答】
(1) 公差が分かっているので 2 つ目の形を使います。
(末項 を先に出して としても同じです。)
(2) 初項 、末項 、項数 の等差数列の和なので
(2) の結果から、奇数を小さい順に足した和は、 と平方数になります。例題1(2) の数列が、ここで顔を出しました。
公差が負の等差数列では、項はだんだん小さくなり、いつか負になります。このとき、和 にはいちばん大きくなるところがあります。
初項が正、公差が負の等差数列では、和 は
正の項(と の項)をすべて足したところで最大になる。
を満たす最大の を求め、そこまでの和を計算すればよい。
なので、次の項が正なら和は増え、負なら和は減ります。項が正のあいだは足すほど増え、負の項が出てきたら足すほど減る——だから、正の項を足しきったところが頂上です。
さきほどの貯金箱で、入れる額が毎月 千円ずつ減っていく場合を考えます。最初は 千円、次は 千円、……と入れていくと、7 か月目には 千円、8 か月目には 千円、つまり引き出しに変わります。貯金の合計がいちばん多いのは、入金が最後にプラスだった 7 か月目です。
別の見方もあります。 は の 2 次式なので、平方完成して頂点を調べる方法でも、最大・最小が分かります。
公差が負の等差数列の和は、正の項を足しきったところで最大になるので、「項が負になる境目」を見つければよいということです。
初項 、公差 の等差数列 について、初項から第 項までの和 の最大値と、そのときの の値を求めなさい。
【解答】
一般項は 。 となるのは
なので、, です。第 7 項までは正、第 8 項から負なので、 は で最大になります。
よって
「 以下の の倍数」「 で割ると 余る数」のような整数を小さい順に並べると、等差数列になります。 の倍数なら (公差 )、 で割ると 余る数なら (公差 )です。
こうした和を求める手順は、次の 3 段です。
カレンダーで、毎週水曜日の日付だけを拾っていくと、 のように ずつ増えます。「割った余りが同じ数」は、カレンダーの同じ曜日の列に並ぶ数です。
「 の倍数でも の倍数でもない数の和」のように「〜でない」数を足すときは、全体の和から、条件に当てはまる数の和を引きます。 の倍数と の倍数の両方に数えた の倍数は、1 回分を戻すのを忘れないようにします(実践 j13)。
倍数や余りの条件を満たす整数は等差数列に並ぶので、初項・公差・項数を読み取れば公式5で和が求まるということです。
以下の自然数のうち、 で割ると 余る数の和を求めなさい。
【解答】
で割ると 余る自然数は、小さい順に で、初項 、公差 の等差数列です。一般項は 。
より なので、項数は 、末項は です。
等差数列は「足し算をくり返してできる数列」でした。一般項は の 1 次式、和は の 2 次式になります。
では、同じ数を掛けていく数列、たとえば はどうでしょうか。次の第2章「等比数列」では、公差の代わりに公比を使って、この数列の一般項と和を求めます。和を求める工夫は「逆順に並べて足す」ではなく、「公比を掛けてずらして引く」に変わります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
等差数列 の公差と第 10 項を求めなさい。
公差 ,第 10 項 ()
問2
初項 、公差 の等差数列 の一般項を求めなさい。
()
問3
3 つの数 がこの順に等差数列をなすとき、 の値を求めなさい。
()
問4
初項 、末項 、項数 の等差数列の和を求めなさい。
()
問5
和 を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1)
(2)
(3)
上の各等差数列の一般項を求めなさい。
(1) (2) (3)
初項と公差(となりどうしの差)を読み、 に代入します。
(1) 初項 、公差 なので
(2) 初項 、公差 なので
(3) 初項 、公差 なので
( を入れると で、確かに第 2 項になります。)
問2 ★
第 5 項が 、第 12 項が である等差数列 の一般項を求めなさい。
初項を 、公差を とすると
引き算して 、。。
第 5 項から第 12 項までに公差が 回はさまるので、 と直接求めることもできます。
問3 ★
等差数列 において、 は第何項かを求めなさい。
第 項
初項 、公差 なので 。
が自然数になったので、 はこの数列の項で、 です。
問4 ★
初項 、公差 の等差数列 において、初めて負の数になるのは第何項かを求めなさい。また、その項の値を求めなさい。
第 項,
。 とすると
これを満たす最小の自然数は で、,。 ( はまだ正です。)
問5 ★
(1) 初項 、公差 の等差数列の、初項から第 20 項までの和
(2)
上の各和を求めなさい。
(1) (2)
(1) 公差が分かっているので を使います。
(2) 初項 、公差 なので一般項は 。 より で、項数は です。
末項が分かっているときは、まず項数を出すのがこつです。
問6 ★
3 つの数 がこの順に等差数列をなすとき、 の値を求めなさい。
真ん中の数の 2 倍が両端の和に等しいので
より 、。 このとき 3 つの数は で、確かに公差 の等差数列です。
問7 ★
以下の自然数のうち、 の倍数の和を求めなさい。
の倍数は で、一般項は 。 より なので、項数 、末項 です。
問8 ★
数列 は公差 の等差数列とします。
(1)
(2)
上の各式で定まる数列 , が等差数列であることを示し、それぞれの公差を求めなさい。
(1) 公差 (2) 公差
となりどうしの差が によらない定数になることを示します。仮定から です。
(1)
これは によらない定数なので、 は の等差数列です。
(2)
これも定数なので、 は の等差数列です(等差数列から 1 つおきに項を拾うと、公差は 2 倍になります)。
問9 ★★
等差数列 において、初項から第 10 項までの和が 、第 11 項から第 20 項までの和が です。この数列の一般項を求めなさい。
初項を 、公差を とします。初項から第 10 項までの和は
初項から第 20 項までの和は なので
引き算して 、。 より 。
「第 11 項から第 20 項までの和」は、 として扱うのがこつです。
問10 ★★
初項 、公差 の等差数列 について、初項から第 項までの和 の最大値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最大値
。 とすると 。 よって , で、第 14 項までが正です。正の項を足しきった で は最大になります。
問11 ★★
等差数列をなす 3 つの数があり、その和は 、積は です。この 3 つの数を求めなさい。
3 つの数を とおきます。和が なので 、。積が なので
なら 、 なら で、どちらも同じ 3 つの数です。求める数は 。
問12 ★★
2 つの等差数列 : と : に共通に現れる数を、小さい順に並べてできる数列を とします。 の一般項を求めなさい。
項を書き出してみます。
最小の共通項は です。
共通項 から次の共通項へ進むには、 では の倍数だけ、 では の倍数だけ進む必要があるので、進む量は と の最小公倍数 の倍数です。逆に 進めばどちらの数列の項にもなるので、共通項は と公差 で並びます。
( で確かめられます。)
問13 ★★
から までの自然数のうち、 でも でも割り切れない数の和を求めなさい。
全体の和から、「 または で割り切れる数」の和を引きます。
の倍数は の倍数にも の倍数にも数えているので、1 回分を戻します。 または で割り切れる数の和は
求める和は 。
問14 ★★
と のあいだに 個の数を入れて、全体が等差数列になるようにします。入れた 個の数の和が のとき、 の値とこの等差数列の公差を求めなさい。
,公差
全体は初項 、末項 、項数 の等差数列なので、全体の和は 。 入れた数の和は、全体から両端の を引いたものなので
全体の項数は で、 から までに公差が 回はさまるので、公差は 。 (入れた 個も初項 、末項 の等差数列なので、 と考えても同じです。)
問15 ★★
数列 は、各項の逆数 が等差数列になっています。, のとき、一般項 と を求めなさい。
,
とおくと、 は等差数列で ,。 公差を とすると より なので
よって ,。 このように逆数が等差数列になる数列を調和数列といいます。 自身は等差数列ではありません( の差は等しくない)。
問16 ★★
等差数列 において のとき、初項から第 10 項までの和 を求めなさい。
初項を 、公差を とすると
一方、 も同じ値です。よって で
番号の和が等しい 2 項()は、和も等しくなります。和の公式で「逆順に並べて足す」ときにできたペアと同じしくみです。 と は 1 つずつには決まりませんが、 は決まります。
問17 ★★★
初項 、公差 の等差数列 について、初項から第 項までの和を とします。
(1) を の式で表した結果を求めなさい。
(2) の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
(3) となる最小の の値を求めなさい。
(1) (2) のとき最小値 (3)
(1) 公式5の分子の波かっこの中は なので
(2) 平方完成すると 。 は自然数で、 が使えるので、。
項の符号で見ることもできます。 で、,。負の項を足しきった で和は最小になります(公式6の逆向き)。
(3) で、 なので 。最小の は 。
です。これは で、第 1 項から第 16 項までが「 と 」「 と 」……と打ち消し合うからです。
問18 ★★★
より大きく より小さい数のうち、 を分母とする分数 ( は整数)で表され、整数ではないものの和を求めなさい。
より 、つまり ( 個)。これらの の和は
このうち整数になるのは が の倍数のとき、つまり ( 個)で、その和は
求める和は 。
一般に、整数 のあいだにある分母 の分数(整数を除く)の和は になります。 で確かめられます。
問19 ★★★
項数が奇数の等差数列があり、奇数番目の項の和は 、偶数番目の項の和は です。この数列の項数と、中央の項を求めなさい。
項数 ,中央の項
項数を ( は自然数)とすると、中央の項は第 項です。これを とします。
奇数番目の項 は 個で、公差 の等差数列です。和の公式から
番号の和が の 2 項は和が等しいので 。よって 。
偶数番目の項 は 個で、同様に なので 。
2 式を引いて 、これから 。項数は 、中央の項は です。
「奇数番目の和 − 偶数番目の和 = 中央の項」「全体の和 = 項数 × 中央の項()」と覚えておくと見通しがよくなります。
問20 ★★★
直角三角形の 3 辺の長さが等差数列をなしています。
(1) 3 辺の長さの比を求めなさい。
(2) 周の長さが のとき、この三角形の面積を求めなさい。
(1) (2)
(1) 3 辺を とおきます。辺の長さはすべて異なる(正三角形は直角三角形でない)ので で、小さい順に並べるよう とします。また です。
斜辺は最も長い なので、三平方の定理より
展開して 、すなわち 。 で割って 。
3 辺は で、比は 。
(2) 周は より 。3 辺は で、直角をはさむ 2 辺は と です。
ドイツの数学者カール・フリードリヒ・ガウス(1777〜1855)には、子どものころのこんな話が伝わっています。
小学校の算数の時間、先生が「1 から 100 までを全部足しなさい」という問題を出しました。生徒たちがしばらく静かになるだろう、と思ったのもつかの間、10 歳ほどのガウスはすぐに石板を差し出しました。書かれていた答えは 。,,,……とペアを作れば、どれも で、ペアは 組ある——この章の「逆順に並べて足す」と同じ考え方です。
この話はガウスの死後に書かれた伝記で広まったもので、実際に出された問題はもっと大きな数の等差数列だった、という説もあります(※細部には諸説あり)。けれども、ガウスが幼いころから計算の工夫に飛び抜けていたことは確かなようで、のちに整数論・天文学・電磁気学と、驚くほど広い分野で仕事を残しました。指数・対数の分野の第7章で使った「ガウス記号 」も、彼の名前が付いた記号です。
豆知識
のように、 から までの和 を並べた数を三角数といいます。点を三角形に並べたときの個数だからです。ボウリングのピンは 本、ビリヤードの的玉を三角形の枠に並べると 個。どちらも三角数です。
指数・対数の分野では、江戸時代の算数の本『塵劫記』(吉田光由、1627 年)から「ねずみ算」を紹介しました。同じ本には、等差数列の和の問題も載っています。俵杉算(たわらすぎざん)です。
米俵を、いちばん下の段に何俵か並べ、その上に 1 俵ずつ少なくして積み重ねていくと、横から見た形が杉の木のような三角形になります。全部で何俵あるかを数えるのが俵杉算で、そのやり方は「(いちばん上の俵の数 + いちばん下の俵の数)× 段の数 ÷ 2」というものでした。いちばん下が 俵、いちばん上が 俵なら、段は 段で 俵です。まさに公式5の そのもの。同じ山をもう 1 つ逆さにして横に並べれば長方形になる、という積み木の図の考え方を、江戸の人も使っていたわけです。
上の段が 俵でなく、たとえば 俵で止まっている「台形の山」でも、同じ式で数えられます。上の段と下の段を足して、段の数を掛けて、2 で割る。数え方が台形の面積の公式と同じ形になるのは、偶然ではありません。
豆知識
『塵劫記』は、そろばんの使い方から、面積・体積の求め方、ねずみ算や俵杉算のような「数の遊び」までをまとめた本で、江戸時代を通じて何度も版を重ね、まねをした本もたくさん作られました。寺子屋で算数を学ぶ子どもたちの定番の本だったといわれます。
は公差 の等差数列で、しかも 5 つとも素数( とその数自身でしか割り切れない 以上の数)です。 は公差 で、6 つの素数が並びます。次の は なので、ここで途切れます。
では、素数だけの等差数列をいくらでも続けることはできるでしょうか。答えは「いいえ」です。初項が素数 、公差が (自然数)の等差数列の第 項は
で、 で割り切れる より大きい数なので、素数ではありません。どんなにうまく作っても、無限には続かないのです。
それなら「好きなだけ長い」素数の等差数列、たとえば 100 項や 1 万項のものは必ずあるのか。これは長いあいだ未解決の問題でしたが、2004 年、ベン・グリーンとテレンス・タオが「どんな長さのものも必ず存在する」ことを証明しました(グリーン・タオの定理)。タオはこの業績などにより、2006 年に数学のノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞を受けています。存在することは証明されても、実際に見つかっている最長のものは 20 数項ほどで、コンピュータを使った探索が今も続いています。
豆知識
もっと古い結果に、1837 年のディリクレの定理があります。初項 と公差 が 以外に公約数をもたなければ、等差数列 の中には素数が無限に現れる、というものです。たとえば で割ると 余る数 の中にも、 余る数 の中にも、素数は無限にあります。「素数が並び続ける」のではなく「ときどき現れ続ける」という点に注意してください。
※ここは発展ページです。本文では「数を一列に並べたもの」を数列と呼び、一般項や和の公式を、最初の数項を並べて見当をつける形で導きました。ここでは、数列を関数としてとらえ直して定義し、等差数列の一般項・特徴づけ・和の公式を、「…」に頼る部分がどこに残るかを意識しながら証明します。
自然数全体の集合 の各要素 に、実数 を 1 つずつ対応させる規則(関数)を数列といい、 で表す。 を第 項という。定義域を に限ったものを有限数列、 を項数という。
「一列に並べたもの」と言うとき、本当に大事なのは「 番目に何があるか」が決まっていることです。関数 と見れば、一般項は「関数の式」、点 のグラフは本文の図のような「とびとびの点」になります。定義域が自然数だけなので、グラフは線ではなく点の集まりです。
数列 について、ある定数 が存在して、すべての自然数 に対し
が成り立つとき、 を公差 の等差数列という。
が初項 、公差 の等差数列ならば、すべての自然数 について
証明 のときは で成り立つ。 のとき、定義2の式を について書き並べると
これら 個の式の辺々を足すと、左辺は が と で打ち消し合って だけが残り、右辺は となる。よって 。(証明終)
この証明の「…」の部分、つまり「どんな でも同じように打ち消し合う」ことを完全に厳密に述べるには、第8章で学ぶ数学的帰納法を使います。帰納法で書くと「 が成り立つなら、 も成り立つ」の 1 行です。
数列 が等差数列であるための必要十分条件は、ある定数 , を用いて、すべての自然数 について
と表されることである。このとき公差は 、初項は である。
証明 (必要)定理1より なので、, とおけばよい。
(十分) ならば
で、これは によらない定数なので、 は公差 の等差数列である。初項は 。(証明終)
この定理から、「一般項が の 1 次式(または定数)」と「等差数列」は同じことだと分かります。本文の図で点が直線の上に並んだのは、このためです。1 次関数 の に自然数だけを入れたものが、等差数列なのです。
3 つの実数 ,, について、数列 が等差数列であるための必要十分条件は である。
証明 項数 3 の有限数列 が等差数列であることは、 と同値である。これを移項すると 。各変形は逆にもたどれるので、同値である。(証明終)
初項 、公差 の等差数列 の初項から第 項までの和を とすると
証明 まず、 に対して、前から 番目の項と後ろから 番目の項の和が一定であることを示す。定理1より
これは によらず、 に等しい。
と、項を逆順に並べた を、 番目の項どうし組にして足すと、 組のそれぞれが になるので
両辺を で割って結論を得る。(証明終)
足し算は順番を入れかえても結果が変わらない(交換法則・結合法則)ので、「逆順に並べた和も 」と言えます。有限個の足し算だから使える性質で、無限に続く和では、並べかえると値が変わってしまう例が知られています(大学で学ぶ話題です)。
最後に、定理4を展開すると
となり、等差数列の和は「定数項が の、 の 2 次式( なら 1 次式)」です。逆に、和がこのような形で与えられた数列は等差数列になるのか——和 から一般項 を求める方法は、第4章で扱います。
この章の学習が終わったら
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