問1
のとき、方程式 の解を求めなさい。
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(単位円で 座標が の 2 点)
目次 / 三角比と三角関数 / 数学II
—— 「値から角を求める」を、単位円とグラフの 2 通りで ——
第7章の最後で、y = sin θ のグラフと直線 y = 1/2 の交点を数えました。0 ≦ θ < 2π に 2 個、範囲を外すと無限個です。この章では、その交点を「方程式 sin θ = 1/2 の解」として正式に求めます。道具は 2 つ。単位円で「y 座標が 1/2 の点」を探す方法と、グラフで「直線との交点」を読む方法です。cos θ = k・tan θ = k も同じ考え方で解き、無限個の解を 1 行で書く「一般解」θ = α + 2nπ をここで命名します。後半は、不等式(単位円の弧・グラフが直線より上の範囲)、sin(2θ − π/3) = 1/2 のように中身がずれた式(第7章の「かたまり」の続き)、sin²θ + sin θ − 2 = 0 のような 2 次式型、t = sin θ とおく最大・最小を扱います。章末では、sin θ と cos θ の値を同時に指定したときの角を調べ、第9章「加法定理」につなぎます。
第7章の j20 で、 のグラフと直線 の交点を数えました。 では と の 2 個でした。あの交点の は、言い換えれば「 を満たす 」です。三角関数を含む方程式(略して三角方程式とも呼びます)を解くとは、この「値から角を求める」作業のことです。
この章では、同じ方程式を 2 通りの絵で見ます。1 つはグラフと直線の交点(第7章の見方)、もう 1 つは単位円です。 は単位円上の点 の 座標でしたから、 は「 座標が の点 はどこか」と読めます。単位円に直線 を引くと、円と 2 点で交わります。右上の点が 、左上の点が です。
とする。 の範囲で、方程式 の解は 2 つあり、次の手順で求まる。
のときは のみ、 のときは のみで、解は 1 つ。 または のときは解がない。
単位円を、水を張った円い水槽の断面だと思ってください。水面の高さを にすると、水面(直線 )は円の縁と 2 か所で交わります。 を上げていくと 2 点は近づき、 でてっぺんの 1 点にまとまり、それより上げると水面は円から離れて交点がなくなります。第7章 j20 の (3) で「 で 2 個、 で 1 個、 で 0 個」と数えたのは、この水面の話でした。
2 つの解が と になる理由は、第6章の公式4( 軸対称の行)です。 ですから、 が解なら も解です。 のときは交点が円の下半分(第3・第4象限)に来ますが、やはり 軸対称なので「 と 」の関係は変わりません。ただし が負になったら を足して範囲に入れます。
は「単位円で 座標が の点」を探す問題で、解は 軸対称の 2 つ( と )だということです。
のとき、次の方程式の解を求めなさい。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) 単位円で 座標が の点は、第1象限と第2象限に 1 つずつあります。第1象限の点は で、 軸対称の点は です。
(2) 座標が の点は円の下半分にあります。 となる を基準にすると、 座標の符号を反転させた点は 軸対称、つまり と です。 は範囲外なので を足します。
(3) 座標が の点は円のてっぺんの 1 つだけです。
(2) の 2 つの解 と は、たしかに 軸対称()になっています。グラフで言えば、谷の下り坂と上り坂で直線 を横切る 2 点です。
は点 の 座標、 は動径 の傾きでした。だから は「 座標が の点はどこか」、 は「傾きが の動径はどれか」と読めます。探す相手が変わると、2 つの解の対称の仕方も変わります。
| 方程式 | 単位円で探すもの | 引く直線 | 2 つの解の関係 |
|---|---|---|---|
| () | 座標が の点 | (横線) | 軸対称: と |
| () | 座標が の点 | (縦線) | 軸対称: と |
| ( は任意の実数) | 傾きが の動径 | 原点と点 を通る直線 | 原点対称: と |
は のとき解が 1 つ( または )、 のとき解がない。 はどんな実数 に対しても解がちょうど 2 つある。
のほうは、水面を縦にした「壁」です。 という縦の壁を立てると、円の縁と上下 2 か所で交わります。上の点が なら下の点は 、範囲に入れるなら です。第6章の公式4( 軸対称の行)で でした。
のほうは、少し違う絵になります。傾き の動径を見つけるには、直線 の上に点 をとり、原点 と結びます。この直線 の傾きがちょうど です(右に 進んで上に )。直線 は単位円を 2 点で切りますが、その 2 点は原点をはさんで正反対の位置——原点対称です。だから解は と 。第6章の公式4で だった理由が、絵で見えます。
だけ「 は任意の実数」なのも、この絵から分かります。直線 はどこまでも上下に伸びているので、 がどんなに大きくても点 はとれ、直線 は必ず円を 2 点で切るからです。・ の値域が なのに対し、 の値域がすべての実数だったこと(第7章 公式2 の表)と対応しています。
は縦線 との交点( 軸対称で と )、 は点 と原点を結んだ直線との交点(原点対称で と )だということです。
のとき、次の方程式の解を求めなさい。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) 単位円で 座標が の点は、第1象限と第4象限に 1 つずつ。第1象限は 、 軸対称の点は です。
(2) 座標が の点は円の左半分にあります。 となる を基準に、 軸対称の点 と、さらにその 軸対称の点 です。
(3) 点 と原点を結ぶ直線は、右下がりの直線です。第4象限側の交点は 、つまり範囲内では 。原点対称のもう 1 点は です。
(3) の 2 つの解の差は で、(1)・(2) のような 軸・ 軸の対称ではなく、原点をはさんで向かい合っています。 の解だけ「差が 」になることを覚えておくと、次の一般解で役に立ちます。
ここまでは に範囲を絞っていました。範囲を外すとどうなるでしょうか。第7章 j20 の (2) で見たように、グラフは ごとに同じ形を繰り返すので、直線 との交点も ごとに現れ、解は無限個になります。単位円で言えば、 の動径と ,,……の動径はすべて一致するので、 は同じ点、 の値も同じです。
の範囲を実数全体としたとき、三角関数を含む方程式のすべての解を整数 を用いて 1 つの式で表したものを一般解という。
の範囲の解を とすると、
第5章で、時計の針の例えを使いました。針が「同じ位置」を指す時刻は 12 時間ごとに無限にあるが、位置だけ読めば 1 つに決まる、という話です。一般解はその逆向きで、**「この位置を指す時刻をすべて挙げよ」**に答える書き方です。「 の位置」を指す角は ,,,,……と無限にあり、一覧表を書くかわりに と書きます。 は「何周目か」を表す整数で、負の値(逆回し)も含みます。
・ の一般解が 2 本になるのは、単位円上の点が 2 つあるからです。それぞれの点に「何周しても同じ」の がつきます。一方、 の 2 つの解 と は差がちょうど なので、 と を並べるかわりに、 とまとめて書けます。 が偶数のとき前者、奇数のとき後者です。 の周期が だった(第7章)ことの、方程式版の姿です。
「動径が一致する 角の差が の整数倍」は第5章の一般角の定義そのもので、第5章 j18 でも方程式 の形で使いました。この章の一般解は、その考え方を「値が同じ」に適用したものです。
一般解は「 の解 」で書き、 だけは 2 つの解の差が なので「」の 1 本にまとまるということです。
次の方程式の一般解を求めなさい。ただし は整数とします。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) まず で解きます。 座標が の点は下半分にあり、 の を 軸対称に移した (範囲内では )と です。それぞれに を付けます。
(2) 点 と原点を結ぶ直線は、傾き ですから の動径と重なります。 の一般解は ごとです。
(3) 座標が の点は と の 2 つで、一般解は , です。ところが 2 つの差が なので、 と同じように 1 本にまとめられます。
(3) の答えは、第6章で「 が定義されない角」として出てきた と同じです。 となる角が、ちょうど の分母が になる角だからです。・ でも、2 つの解の差がたまたま なら( のとき)1 本にまとめてよい、というわけです。
方程式 が「 座標が の点」なら、不等式 は「 座標が より大きい点」です。単位円で言えば、水面 より上に出ている弧の部分。グラフで言えば、 のグラフが直線 より上にある の範囲です。第7章の最終節で予告した通り、どちらの絵でも同じ答えが出ます。
などは、動径の傾きが より大きい範囲を選ぶ。, では が定義されないので、その角で区切って範囲を書く。
弧の「始点」は、 から反時計回りに進んで最初に条件を満たし始める角、「終点」は条件を満たさなくなる角です。弧が (点 )をまたぐときは、範囲が と の 2 つに分かれます。たとえば の弧は点 を中心に左右に広がっているので、, です。
の不等式は、漸近線で区切って考えます。 なら「傾きが より急な動径」ですが、傾きは の手前でいくらでも大きくなり、 を過ぎると急に負になります(第7章のグラフの縦に駆け上がる部分)。ですから と の 2 区間で、 や そのものは含めません。
不等式は「等号の方程式で境目を出し、単位円の弧(またはグラフが直線より上/下の範囲)を選ぶ」、等号の有無で境目を含めるかが決まるということです。
のとき、次の不等式の解を求めなさい。
(1)
(2)
(3) (ただし )
【解答】
(1) 境目は の解 です。 座標が より大きい弧は、この 2 点にはさまれた上側の弧。等号がないので境目は含めません。
(2) 境目は の解 。 座標が 以下の弧は、直線 より左側の弧で、等号があるので境目を含めます。
(3) 境目は の解 。傾きが より小さい動径は、 から の手前まで、 を過ぎて(傾きは負から増えていく) の手前まで、 を過ぎて の手前までです。
(3) をグラフで確かめると、 のグラフが直線 より下にある部分は、漸近線で区切られた各区間の左寄りの部分です。漸近線の位置 , が範囲の切れ目になっているのは、そこで が定義されないからです。
のように、 の中身が そのものでない方程式は、中身を 1 つのかたまりと見ます。第7章の例題5・j17 で、最大値や 軸との交点を求めたときと同じ手順です。もう 1 つ、 のように の 2 次式になっている方程式は、 自体を 1 つの文字 と見ます。どちらも「置き換えて、置き換えた文字の範囲を先に書く」のが要点です。
(A) 中身をかたまりとおく型 ()は、 とおき、
不等式も同じ手順で、 の範囲を解いてから に戻す。
(B) 三角関数そのものを とおく型 の 2 次式は とおき、 を添えて の 2 次方程式(不等式・2 次関数)として解く。 と が混ざっているときは、 で 1 種類にそろえてから置く。 の解が の外にあれば、対応する はない。
(A) は「箱に入れて、先に箱の中身の範囲を決める」と考えると迷いません。 が から まで動くとき、箱の中身 は から まで動きます。幅 ——2 周分です。だから の解は 1 周分の 2 個ではなく 4 個になります。 の範囲のまま「 と 」で止めてしまうのが、いちばん多い間違いです。第7章で「 は早送り再生で、 に山が 2 つある」と見たことを思い出してください。山が 2 つあれば、直線との交点も 2 倍です。
(B) は、2 次方程式 を解いて を得たあと、「」と「」の 2 本の方程式を公式1で解くだけです。ただし は なので の外の解は捨てます。最大値・最小値を求めるときも同じで、 の 2 次関数を という範囲つきで調べます。数I の 2 次関数で「定義域が制限された最大・最小」を練習したのは、ここで使うためだったと言ってもよいでしょう。
中身がずれた式はかたまり の範囲を先に書いて解の個数を取りこぼさず、2 次式型は ()とおいて 2 次方程式に直すということです。
とします。
(1) 方程式 の解を求めなさい。
(2) 方程式 の解を求めなさい。
(3) 関数 の最大値と最小値、およびそれらをとる を求めなさい。
【解答】
(1) とおきます。 より
この範囲で を解きます。 では 、これに を足した も範囲内です()。 を引いた などは より小さいので入りません。
で戻すと
(2) ()とおくと 。因数分解して
どちらも に入っています。 より 、 より です。
(3) で にそろえ、()とおきます。
上に凸の放物線で、軸 は範囲 の中にあります。最大値は頂点で 、最小値は軸から遠いほうの端 で です。
すなわち より 。 すなわち より 。
(1) で解が 4 個になったのは、かたまりの範囲の幅が (2 周分)だったからです。(3) で最大値をとる が 2 つあるのは、 に戻すときに公式1で解が 2 つ出るためで、 の段階で答えを止めてはいけません。
この章で、 の解も の解も、それぞれ単位円上の 2 点として求められるようになりました。では、 かつ を満たす はどうでしょう。前者の点は と 、後者の点は と 。共通するのは だけなので、一般解は の 1 本に絞られます。 と を両方指定すると、点 の座標 そのものが決まるので、動径も 1 本に決まるわけです。
ここで、この章の道具の限界にも触れておきます。この章で解いた方程式は、 がすべて三角定規の角の値(,,,, など)でした。たとえば ()の の値はいくつでしょうか。第1章の ★★★ では図を描いて を求めましたが、 という「知っている 2 つの角の差」であることを使えば、図を描かずに計算で出せるはずです。単位円上で、角 の点 をさらに だけ回転させた点の座標が ——これを ,,, の式で書いたものが、第9章の加法定理です。加法定理が手に入ると、 のような値も、 のような 2 種類が混ざった方程式(第11章)も、計算で扱えるようになります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
のとき、方程式 の解を求めなさい。
(単位円で 座標が の 2 点)
問2
のとき、方程式 の解を求めなさい。
( 座標が の 2 点。 軸対称)
問3
のとき、方程式 の解を求めなさい。
(傾き の動径。原点対称で差が )
問4
方程式 の一般解を、整数 を用いて表しなさい。
(てっぺんの 1 点に を付ける)
問5
のとき、方程式 の解の個数を求めなさい。
( の値域は で、 は届かない)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
のとき、方程式 と方程式 の解をそれぞれ求めなさい。
:。:
単位円に横線 を引き、交点を 2 つ読みます。
: 座標が の点は第1象限の と、その 軸対称 です。
: 座標が負なので下半分です。 の を 軸対称に移した (範囲内では )と、原点対称に移した です。
後者の 2 つも 軸対称()になっています。 が負でも「 と 」の関係は崩れません。
問2 ★
のとき、方程式 と方程式 の解をそれぞれ求めなさい。
:。:
単位円に縦線 を引き、交点を 2 つ読みます。2 つの交点は 軸対称です。
: 座標が負なので左半分です。 の を 軸対称に移した と、その 軸対称 です。
:第1象限の と、その 軸対称 です。
のときは「」、 のときは「」でもう 1 つの解が出ます。どちらの軸で折り返すかの違いです。
問3 ★
のとき、方程式 と方程式 の解をそれぞれ求めなさい。
:。:
点 と原点を結ぶ直線が単位円と交わる 2 点で、2 点は原点対称(差が )です。
:傾き の動径は 。もう 1 つは です。
: の を 軸対称に移した (範囲内では )と、その原点対称 です。
の解は必ず「 と 」の組になります。 で確かめられます。
問4 ★
方程式 と方程式 の一般解を、それぞれ整数 を用いて表しなさい。
:。:
まず で解き、 なら各解に 、 なら一方の解に を付けます。
の範囲内の解は の 2 つなので、一般解は 2 本です。
の範囲内の解は ですが、差が なので 1 本にまとめます。
を入れると となり、確かに も含まれています。
問5 ★
のとき、不等式 の解を求めなさい。
境目は の解 です。 座標が より小さい点は、水面 より下の弧で、この弧は点 をまたいでいます。 から反時計回りに進むと、 の手前までは水面の下、 から までは上、 を過ぎると再び下です。等号がないので境目は含めません。
グラフで言えば、 が直線 より下にある部分で、山の左右の裾と谷全体です。本文の例題4 (1) の答え と合わせると、境目を除いた全体になります。
問6 ★
のとき、不等式 の解を求めなさい。
境目は の解 です。 座標が 以上の点は、縦線 より右の弧で、点 を中心に上下に広がっています。等号があるので境目を含めます。
に等号が付かないのは、範囲が だからです( は と同じ点で、すでに数えています)。 の不等式で右側の弧を選ぶと、答えが 2 つの区間に分かれることが多いのは、点 が の位置だからです。
問7 ★
のとき、方程式 ,, について、それぞれの解(解がない場合は「解なし」)を求めなさい。
:。:。:解なし
のときは直線が単位円に接するので、解は 1 つだけです。
: 座標が の点は円のいちばん下の 1 点です。
: 座標が の点は円のいちばん左の 1 点です。
: 座標は の範囲しかとらないので、 になる点はありません。
第7章 j20 (3) の「 で 1 個、 で 0 個」の確認です。「解が 2 つ」は のときだけ、と覚えておいてください。
問8 ★
のとき、方程式 と方程式 の解をそれぞれ求めなさい。
:。:
まず「」「」の形に直します。
より 。 座標が の点は とその 軸対称です。
より 。 座標が の点は下半分にあり、 を 軸対称・原点対称に移した 2 点です。
が両方に現れました。この角の点は で、 座標が かつ 座標が なので、両方の方程式を同時に満たしています。
問9 ★★
のとき、方程式 の解を求めなさい。
とおき、 の範囲を先に書きます。 より
2 周分あるので、 の解は 1 周目の と、2 周目の の 4 個です。
に戻して
の周期は で、 に山が 2 つあります(第7章 例題4 (2))。山 1 つにつき直線 と 2 回交わるので、合計 4 個です。「」で止めると半分を落とします。
問10 ★★
のとき、方程式 の解を求めなさい。
とおくと、 より
幅は (1 周分)ですが、始まりが にずれています。 の解は で 。どちらも に入っています。 を足した は より大きいので入りません。
検算: のとき中身は で、。範囲の幅が なら解の個数は 2 個のままですが、範囲の端がずれているので「 を足したものが入らないか」の確認だけは必要です。
問11 ★★
方程式 の一般解を整数 を用いて表しなさい。また、 の範囲にある解をすべて求めなさい。
一般解 。 では
中身 について、 の一般解は です( は 刻み)。
に入るのは のときです( の は を超えます)。
一般解を先に出してから範囲内の を選ぶ方法は、範囲つきの問題でも使えます。特に は一般解が 1 本なので、この順序のほうが取りこぼしがありません。
問12 ★★
のとき、不等式 の解を求めなさい。
とおくと、 より
この範囲で を解きます。 の境目は で、水面より上の弧は
です( の中に、この弧は 1 回しか現れません)。 を戻して
不等式でも手順は方程式と同じで、「かたまりの範囲 → かたまりで解く → に戻す」です。戻すときに不等式の各辺に同じ操作( を足して で割る)をします。
問13 ★★
のとき、方程式 の解を求めなさい。
()とおくと 。
どちらも に入っています。
より 。 より 。
の解が 1 個( で接する)なので、全部で 3 個です。 の値ごとに解の個数が違うことがあるので、 に戻すたびに単位円で数えます。
問14 ★★
のとき、方程式 の解を求めなさい。
と が混ざっているので、 で にそろえます。2 乗の項を直すのがコツで、1 乗の項()はそのまま残せます。
両辺を 倍して ()とおくと
より 。 より 。
検算: のとき 。「2 乗のほうを相互関係で書き換える」のは、 の形に落とすためです。
問15 ★★
のとき、方程式 の解を求めなさい。
は または です。
より 。 より 。
単位円で言えば、水面 と の 2 本の横線を引いた交点 4 つで、 軸についても 軸についても対称に並んでいます。グラフで言えば、 は第7章 j16 で見たように周期 で、 に山が 2 つあるので、直線 との交点は 4 個です。
問16 ★★
のとき、関数 の最大値と最小値、およびそれらをとる を求めなさい。
最大値 (),最小値 ()
とおくと、 で は から まで全部の値をとるので です。
下に凸の放物線で、軸 は の中にあります。最小値は頂点で 、最大値は軸から遠いほうの端 で です。
すなわち より 。 すなわち より 。
の範囲を書き忘れると、放物線は上にどこまでも伸びるので「最大値なし」と答えてしまいます。 とおいた瞬間に を添えるのが、この型の約束です。
問17 ★★★
のとき、不等式 の解を求めなさい。
()とおくと 。
すなわち です。これを 2 つの不等式に分けます。
:境目は 。縦線 より右の弧なので 。
: となる だけを除きます。
両方を満たす範囲は
が抜けるのがこの問題の要点です。 は の解なので、不等号に等号がない以上 の角は入りません。 の不等式を解いたあと、「 や が境目に含まれていないか」を確かめる習慣をつけましょう。
問18 ★★★
のとき、関数 の最大値と最小値、およびそれらをとる を求めなさい。
最大値 (),最小値 ()
で にそろえ、 とおきます。
の範囲を、 の範囲から決めます。 のとき、単位円の点は ( 座標 )から左回りに ( 座標 )を通って ( 座標 )まで動くので、 座標がとる値は
です( ではありません)。
上に凸の放物線の軸 は、この範囲の右端にあります。したがって最大値は右端 で 、最小値は軸から遠い左端 で です。
すなわち となる は、範囲内では だけです( は範囲外)。 すなわち より 。
に範囲がつくと、 の範囲も から狭まります。単位円で点の動きを追って「 座標がどこからどこまで動くか」を読むのが、この型の第 1 段階です。
問19 ★★★
(1) かつ のとき、方程式 の解を求めなさい。
(2) のとき、 と を同時に満たす の範囲を求めなさい。
(1) (2)
(1) とおくと 。足して 、かけて になる 2 数は と なので
には値域の制限がないので、どちらも採用します。
より 。 より 。
(2) それぞれの不等式を単位円の弧として求め、共通部分をとります。
:水面 より上(境目を含む)で 。
: 座標が負、つまり左半分( 軸上は含まない)で 。
共通部分は、上の弧のうち左半分にある部分です。
には等号が付かず( は「」を満たさない)、 には付きます( は「」を満たす)。2 つの弧を 1 つの単位円に重ねて描くと、共通部分が第2象限の一部だと目で分かります。
問20 ★★★
(1) と を同時に満たす の一般解を、整数 を用いて表しなさい。
(2) と を同時に満たす が存在しないことを示しなさい。
(3) のとき、 と を同時に満たす を求めなさい。
(1) (2) (証明) となり相互関係に反する (3)
(1) の解は で 、 の解は です。両方に共通するのは だけ。単位円で言えば、横線 と縦線 の交点はただ 1 つで、それが点 です。
と を両方指定すると点 の座標が決まるので、動径は 1 本に決まり、一般解も 1 本になります。
(2) 単位円上の点 は必ず を満たします(第6章の相互関係)。ところが
なので、点 は単位円上にありません。したがって、両方を同時に満たす は存在しません。(証明終)
横線 と縦線 の交点が、円の外に出てしまう状況です。
(3) の解は 。 となるのは第1象限か第3象限( と が同符号)なので、第3象限にある だけが残ります。
この問題では、 と (または )の値がどちらも三角定規の角の値だったので、単位円上の点を「探す」ことができました。では、 の点の座標—— と ——はいくつでしょうか。この章の道具では求まりません。 のように「知っている角の和や差」で書ける角の三角関数を計算で出す方法が、第9章の加法定理です。
毎朝の日の出・日の入りの時刻は、新聞やカレンダーに載っています。あの数字は誰かが毎日空を見て記録しているのではなく、計算で出しています。そしてその計算の中身は、この章の そのものです。
太陽の高度(地平線から測った角)を とすると、 は「観測地の緯度」「その日の太陽の傾き(季節で変わる)」「時刻」の 3 つで決まる式で書けます(式の形は高校地学や天文学の範囲なので省きますが、 という形で、 が正午からの時間、・ が緯度と季節で決まる定数です)。日の出とは「太陽が地平線に顔を出す瞬間」、つまり ですから、 とおいて を解けば、正午から何時間前に日が出るかが分かります。
ここで面白いのは、この方程式の解の個数です。 の解は のとき 2 つ——それが日の出と日の入りに対応します。ところが北極圏の夏には、太陽が一日中沈まない白夜があります。式で言えば が より小さくなって、 に解がない状態です。太陽の高度が一日中 を下回らないので、「地平線と交わる時刻」が存在しないわけです。冬の極夜はその逆で、やはり解がありません。この章の「 なら解なし」という一見つまらない場合分けは、地球の上では白夜と極夜という現象になって現れます。
豆知識
春分・秋分の日は、太陽の傾きがちょうど になるので式が簡単になり、、つまり ( 時間)が解になります。だから昼と夜がほぼ 12 時間ずつです。「ほぼ」なのは、太陽に大きさがあること(上の縁が出た瞬間を日の出と呼ぶ)と、大気の屈折で太陽が実際より少し浮き上がって見えることのためで、日本では昼のほうが 10 分ほど長くなります。第4章の小話で「大気の屈折の補正」に触れましたが、日の出の時刻表にも同じ補正が入っています。
という書き方には、ちょっとした発明が詰まっています。解が無限個あるのに、紙の上では 1 行で済む。しかも「 は整数」と一言添えるだけで、正の方向にも負の方向にも無限に続く一覧表を、読む人が頭の中で展開できるからです。
「繰り返す量を整数で吸収する」という発想は、三角関数よりずっと古くからあります。暦がその代表です。7 日ごとに同じ曜日が来る、およそ 29.5 日ごとに同じ月の形になる、365 日と少しで同じ季節に戻る——こうした周期を扱うために、古代の暦の計算では「何周したか」を表す整数と「周の中のどこか」を表す余りを分けて考えていました。インドの数学者ブラーマグプタ(第4章の小話で出てきた人です)は 7 世紀に、この種の「余りが決まった数を求める」問題(今で言う一次不定方程式)の解法を整理し、解が整数の分だけ無限にあることを扱っています(※どの著作のどの記述を「最初」と見るかは諸説あり)。
三角関数の解を と書く形が定着したのは、第6章の小話で見た通りオイラーが を「三角形の辺の比」から「実数の関数」に変えたあとです。関数として見れば「 を満たす の集合」という問い方が自然になり、その集合が ごとに規則正しく並ぶことを、整数 で書き表すようになりました。
豆知識
コンピュータのプログラムで角度を扱うとき、「 で割った余り」を求める演算(多くの言語で % や mod)をよく使います。 の を取り除いて の代表 だけを残す操作で、ゲームでキャラクターが何回転しても向きを 〜 の範囲で管理できるのはこのおかげです。一般解を「代表 周期の整数倍」に分ける見方は、数学の記法であると同時に、プログラムの中でも毎日動いています。
ギターやバイオリンを弾く人は、演奏の前に必ずチューニングをします。基準の音(たとえば A の音、1 秒に 440 回振動する波)に、自分の弦の音を合わせる作業です。ここで「合っているかどうか」を、耳はどう判断しているのでしょうか。
弦の音を 、基準の音を と書きます( は秒、 は 1 秒あたりの振動数)。2 つが同時に鳴ると、耳に届くのは 2 つの波の足し算です。振動数が完全に一致していれば()、2 つの波はずっと同じ形で重なり、安定した 1 つの音に聞こえます。ところが 、 のようにわずかにずれていると、2 つの波は「山と山が重なる瞬間」と「山と谷が打ち消し合う瞬間」を交互に繰り返し、音がワーン、ワーンと大きくなったり小さくなったりします。これがうなりで、1 秒あたりのうなりの回数は 回、この例なら 2 回です。
チューニングとは「うなりが消える点を探す」作業、つまり方程式 を耳で解いていることになります。うなりが遅くなるほど答えに近づき、ぴたりと止まったところが解です。第7章の小話3で「周期がわずかに違う 2 つの波の足し算が大潮・小潮を生む」と書きましたが、うなりはその音の版で、周期が「12 時間と 12 時間 25 分」のかわりに「 秒と 秒」になっただけです。
豆知識
「2 つの波の足し算がうなりになる」ことは、式でも確かめられます。 を 1 つの積の形に直す公式(第12章の和積の公式)を使うと、 は「振動数が平均 の速い波」に「振動数が のゆっくりした波」を掛けた形になり、後者が音の大きさの変化として聞こえます。オーケストラでチューニングの基準にオーボエの A を使うのは、倍音(第7章小話1)が少なく、うなりが聞き取りやすいからだと言われています(※諸説あり)。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「 の解は単位円で 2 つ、一般解は 」「不等式は弧を選ぶ」が使えれば十分ですが、「解がちょうど 2 つだと言い切れるのはなぜ?」「 で本当にすべての解を挙げたことになるのか?」「不等式の解がひとつながりの弧になるのはなぜ?」が気になる人のために、根拠を紹介します。
を実数とする。 を満たす実数 を、この方程式の解という。解の全体(集合)を、整数 を含む式で表したものを一般解という。, についても同様に定める。
に範囲(たとえば )が指定されているときは、その範囲に属する解だけを考える。
本文では「一般解は 」と手順として述べましたが、定義としては「解の集合を式で書いたもの」です。したがって、一般解を主張するには「 の形の数はすべて解である」と「解はすべて の形である」の両方向を確かめる必要があります。前者は簡単で、後者が定理2の内容です。
の範囲で、方程式 の解の個数は次の通りである。
証明 第5章・第6章より、 の各 に単位円上の点 が 1 つ対応し、逆に単位円上の各点にはこの範囲の がちょうど 1 つ対応する(1 周の中では動径と点が 1 対 1)。したがって解の個数は、単位円 と直線 の交点の個数に等しい。
を円の方程式に代入すると 。
は直線 を代入して とすれば同じ議論で、2 つの交点は 座標の符号だけが違うので 軸対称です。 は、直線 (原点と を通る直線)を代入して 、 となり、 がどんな実数でも解が 2 個で、 も も符号が反転するので原点対称です。本文の公式2の表の「対称の仕方」は、代入したときにどの座標が になるかの違いでした。
とし、 における の 2 つの解を , とする。このとき、 のすべての解は
で表され、逆にこの形の はすべて解である。
については、 における一方の解を とすると、すべての解は ( は整数)で表される。
証明 (この形の数が解であること)第6章の公式4より 。
(すべての解がこの形であること) を任意の解とする。第5章の一般角の定義より、 に対して , を満たす整数 と実数 がただ 1 組存在する( で割った商と余り)。このとき なので、 は における解である。定理1より、この範囲の解は , の 2 つしかないから、 または 。よって または である。
については、定理1の後の注意より の 2 つの解は原点対称な 2 点に対応し、 と である( が 以上なら )。上と同じ議論で、すべての解は または となり、両方を合わせると ( は整数)である。(証明終)
証明の核は、「任意の解 を で割って余り を取り出し、 が の解であることに帰着させる」ことです。 の解を全部知っていれば(定理1)、あとは を付けるだけで残りが尽くせる——本文で「 で解いてから を付ける」と手順を述べたのは、この定理を手順の形にしたものです。「 の と がただ 1 組」という部分は、第5章の厳密定義で述べた「動径が一致 差が の整数倍」から従います。
とし、 における の 2 つの解を とする。 のとき、 における不等式 の解は である。
証明 のとき、定理1の交点は円の上半分にあり、,()と書ける。第7章の公式1より、 は で増加、 で減少、 で増加する。
以上より となるのは に限る。(証明終)
のときや ・ の不等式も、増減の区間を分けて同じように示せます。要するに「境目の角と境目の角のあいだでは、関数が単調なので大小関係が変わらない」ということで、これが「境目を出して弧を選ぶ」という本文の手順の根拠です。単調でない区間(山をまたぐ区間)では、山の両側で別々に確かめる必要があり、上の証明でも で区間を切っています。
補足: が三角定規の値でないとき。この章の問題では、 はすべて ,, などで、解を のように具体的に書けました。では はどうでしょうか。定理1より、解は にちょうど 2 個存在します。ただし、その値を の分数や平方根で書くことはできず、「 を満たす の角」と言うしかありません。この角に名前をつけたものが逆三角関数( と書き、およそ )で、大学の数学で扱います。「解が存在すること」と「解を既知の数で書けること」は別問題である——これは 2 次方程式で「解は存在するが有理数では書けない」()のと同じ構図です。
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