問1
の周期を求めなさい。
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( で、これより小さい正の幅では戻らない)
目次 / 三角比と三角関数 / 数学II
—— 単位円の点の動きを「θ 軸の上の波」に引き伸ばす ——
第6章の終わりで、単位円の点 P を 1 周させると sin θ が 0 → 1 → 0 → −1 → 0 と動くことを確かめ、「横軸に θ、縦軸に sin θ をとればグラフが描ける」と予告しました。この章では、その点を実際に打って y = sin θ のグラフ(サインカーブ)を描き、続けて y = cos θ・y = tan θ のグラフを描きます。第6章で予告だけしていた「周期」をここで正式に定義し、sin・cos の周期が 2π、tan の周期が π であることを確定させます。第6章の j20 で見つけた sin(θ + π/2) = cos θ は「sin のグラフを左に π/2 ずらすと cos のグラフ」、小話の偶関数・奇関数は「グラフが y 軸対称・原点対称」という形で回収します。後半は、グラフを縦に伸ばす(振幅)・横にずらす(平行移動)・横に縮める(周期を変える)操作を 1 つずつ確かめ、最後に y = a sin(bθ + c) の形を 3 段階で描けるようにします。章末では、グラフと直線 y = k の交点を数えて、第8章の方程式につなぎます。
第6章の最後で、単位円の点 を反時計回りに 1 周させると、 座標つまり が と動くことを確かめました。あのときは「 が から まで」というように区間ごとに追いかけましたが、今度はもっと細かく、 刻みで値を書き出してみます( から までと、 より先の 2 つの表に分けています)。
です。横軸に 、縦軸に をとってこの 13 個の点を打ち、なめらかにつなぐと、山が 1 つ・谷が 1 つの波ができます。これが のグラフ、サインカーブです。横軸は の値を表すので 軸と呼びます。
図の左右を見比べてください。単位円の の高さを、そのまま右へ写して の位置に置いたのが右の点です。 が円を回るあいだ、高さは上がって下がって戻る——それを 軸の上に引き伸ばしたものがサインカーブです。
のグラフ(サインカーブ)について、次が成り立つ。
が の範囲では、 で増加、 で減少、 で増加する。
第2章の小話で「夕方の観覧車を横から見ると、ゴンドラの影が地面を行ったり来たりする」と書きました。影の動きは一直線上の往復ですが、それを時間の流れる向きに引き伸ばすと、この波になります。心電図や地震計を思い浮かべてください。針は上下に動くだけですが、記録紙が一定の速さで流れているので、紙の上には波が残ります。サインカーブは「観覧車の影を、流れる紙に記録したもの」です。
原点対称については、第6章の小話3で「 は奇関数()」と紹介しました。グラフの言葉に直すと、点 がグラフ上にあれば、点 もグラフ上にある—— 軸方向も 軸方向も符号が反転した点があるので、グラフ用紙を原点のまわりに半回転させると自分自身に重なります。第6章の折り紙は「単位円を描いた紙」を折りましたが、ここで回すのは「グラフ用紙」です。
のグラフは、単位円の点の高さを 軸の上に引き伸ばした波で、値域が 、 ごとに繰り返し、原点対称だということです。
(1) のグラフ上で、 の点と の点の座標を求めなさい。
(2) の範囲で、 が最大になる と最小になる を求めなさい。
(3) の範囲で、 が減少する の区間を求めなさい。
【解答】
(1) グラフ上の点は です。, なので
(2) 山のてっぺんは 、谷の底は です。
(3) てっぺんから底へ下る区間なので
(1) の 2 点目は、 の点 を原点対称に移した点です。座標の両方に負がつくのが原点対称の印です。
サインカーブは ごとに同じ形を繰り返しました。この「繰り返しの幅」に名前をつけます。第6章では予告だけでしたが、ここで正式に定義します。
関数 について、 でない定数 が すべての で
を満たすとき、 は周期関数であるといい、このような正の のうち最小のものを周期という。
| 関数 | 周期 | 値域 |
|---|---|---|
| すべての実数 |
| 関数 | 対称性 | 定義されない |
|---|---|---|
| 原点対称(奇関数) | なし | |
| 軸対称(偶関数) | なし | |
| 原点対称(奇関数) |
周期は「最小」でなければいけないことに注意してください。 も成り立ちますが、 は周期とは呼びません。壁紙の柄を思い浮かべると分かりやすいでしょう。同じ模様が横にずっと続いている壁紙で、「柄 1 つ分」の幅が周期です。柄 2 つ分ずらしてもぴったり重なりますが、それは 1 つ分の繰り返しの結果であって、模様の最小単位ではありません。
のグラフは、値の表を作って点を打てば描けますが、第6章の j20 で見つけた関係を使うともっと早く描けます。 でした。これは「 の値を だけ先に読んだものが の値」という意味なので、サインカーブを左に ずらせば、そのまま のグラフになります。 の山は にありましたから、左に ずれた の山は 、つまり 軸の真上です。山が 軸の上にあるので、 のグラフは 軸で折り返すと自分に重なります——これが (偶関数)のグラフでの姿です。
のグラフは形がまったく違います。第6章の公式4で (原点対称の行)でしたから、繰り返しの幅は です。・ の半分の幅で同じ形が現れます。そして に近づくと、 の分母が に近づくので、値は限りなく大きく(左から近づくとき)、または限りなく小さく(右から近づくとき)なります。第6章の厳密定義で「 が に近づくと は限りなく大きくなる」と書いたのは、グラフではこの縦に伸びていく部分のことでした。グラフは直線 にどこまでも近づきますが、 では定義されないので、この直線に触れることはありません。
周期は「同じ値に戻る最小の幅」で、・ は 、 は 。 のグラフは を左に ずらしたもの、 のグラフは漸近線 のあいだで下から上へ駆け上がる形だということです。
(1) の範囲にある、 のグラフの漸近線をすべて求めなさい。
(2) の範囲で、 が増加する の区間を求めなさい。
(3) のグラフ上で の点の座標を求めなさい。また、この点を 軸について対称に移した点もグラフ上にあることを確かめなさい。
【解答】
(1) 漸近線は です。 に入るのは のときなので
(2) のグラフは で山、 で谷、 でまた山です。谷から山へ上る区間なので
(3) なので、点は です。 軸について対称に移した点は で、 ですからこれもグラフ上にあります。
(3) は を 1 点で確かめただけですが、すべての で成り立つので、グラフ全体が 軸対称になります。
ここからは、サインカーブを変形していきます。まず縦方向の 2 つの操作です。
, を定数とする。
についても同じことが成り立つ。
振幅は「音量つまみ」です。同じ曲(同じ波の形・同じ周期)でも、つまみを回せば波の高さが変わる——それが です。 なら、2 倍にしたうえで上下をひっくり返します。 の山があった が谷になり、谷があった が山になります。
のほうは「平均水位」です。波の形も高さもそのままで、水面全体が だけ持ち上がる( なら下がる)。最大値も最小値も だけずれます。
は波の高さ(振幅 )、 は波全体の上下の位置を決め、どちらも周期は変えないということです。
(1) の周期、最大値、最小値を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる を求めなさい。
(2) の値域を求めなさい。また、 の範囲で最小値をとる を求めなさい。
【解答】
(1) が から まで動くので、 は から まで動きます。
最大値 をとるのは のとき、つまり
(2) の値域 の各辺に を足して
最小値 は のとき、つまり
(1) で「最大になるのは のとき」となるのが の効果です。ひっくり返っているので、もとの谷が山になっています。
次は横方向の 2 つの操作です。横方向は縦方向より少しややこしいので、1 つずつ確かめます。
を定数、 とする。
についても同じ。 については、 の周期は 、漸近線は を解いた である。
平行移動の向きに注意してください。 で のとき、グラフは右にずれます。 の山は にありましたが、 の山は 、つまり にあるからです。「 から を引いた式は、右に ずれる」——2 次関数 の頂点が に来るのと同じ理屈です。公式2で「 は を左に ずらしたもの」と言いましたが、式で書けば 、 なので左です。
は「早送り再生」です。 なら、 が 進むあいだに は 進むので、もとの波 1 つ分が半分の幅に詰め込まれます。周期は 。 が大きいほど波は細かく、 のようなときは逆にゆっくり再生になって周期は に伸びます。「 が 進むのに はどれだけ必要か」と考えれば、周期 はすぐ出ます。横移動は「再生を始める位置をずらす」、 は「再生の速さを変える」——どちらも横方向ですが、役割は別です。
は右に ずらす( が負なら左)、 は周期を に縮める( は )ということです。
(1) の周期を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる を求めなさい。
(2) の周期を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる をすべて求めなさい。
(3) の周期を求めなさい。また、漸近線を を用いて表しなさい。
【解答】
(1) 横に平行移動しただけなので、周期は です。最大値をとるのは の中身が のときなので
の山 が、右に ずれて に来ています。
(2) なので周期は です。最大値をとるのは の中身が のとき。 のとき なので、 より
周期が なので、 には山が 2 つあります。
(3) なので周期は です。漸近線は を解いて
の周期 が、ゆっくり再生で 2 倍の に伸び、漸近線の間隔も になっています。
公式3と公式4を全部組み合わせた形が です。一度に見ようとせず、3 段階に分けます。鍵は、 を でくくることです。
, とする。
と変形すると、このグラフは のグラフを次の順に変形したものである。
最大値・最小値・ 軸との交点は、 を 1 つのかたまりと見て「かたまり 」などを解けば求まる。
平行移動の量は ではなく です。ここが最も間違えやすいところです。 を「 を右に 」と読むのは誤りで、正しくは なので右に です。早送り再生()のあとでは、 軸上の距離も半分に縮んでいる、と考えると納得できます。
地図を作る手順に似ています。まず縮尺を決め(周期)、次に紙の上でどこに置くかを決め(平行移動)、最後に高さ(等高線の間隔=振幅)を描き込む。縮尺を決める前に位置を決めると、あとで縮尺を変えたときに位置までずれてしまいます。だから周期が先です。
を に直してから、周期 → 横に → 縦に 倍・ 上げ、の順に描くということです。
について、次を求めなさい。
(1) 周期と値域
(2) のグラフをどのように移動・伸縮したものか
(3) の範囲で、最大値をとる と、グラフが 軸と交わる
【解答】
なので
(1) より周期は 、 より値域は です。
(2) のグラフを し、 したものです。
(3) のとき、かたまり の範囲は です。この範囲で が になるのは、かたまりが のときだけなので
軸と交わるのは が 、つまりかたまりが のとき。範囲内では と なので
「かたまりの範囲を先に書く」のがコツです。 の範囲を 2 倍して を引くと、かたまりの範囲になります。図の ③ で、山が ( と の真ん中)にあることを確かめてください。
この章で描いたグラフを使うと、第8章の主役である「 を満たす 」が見えるようになります。 のグラフと直線 を重ねてみてください。 の範囲では、山の上り坂で 1 回、下り坂で 1 回、合わせて 2 か所で交わります。 と です。第2章の小話で「観覧車で高さが半分になる場所は上りと下りの 2 か所」と書いたのは、この 2 交点のことでした。
そして範囲を外すと、周期 ごとに同じ 2 交点が現れるので、交点は無限個になります。第6章の厳密定義で「値から角を求めると一般角では無限個」と予告した通りで、それらは , とまとめて書けます。直線を まで上げると山の頂点で 1 回だけ接し、 まで上げると交点はなくなります。方程式の解の個数が、グラフを見るだけで数えられるわけです。
第8章では、この「グラフと直線の交点」を、三角関数を含む方程式・不等式の解として正式に求めます。不等式 なら「グラフが直線より上にある の範囲」——これもこの章のグラフがそのまま道具になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
の周期を求めなさい。
( で、これより小さい正の幅では戻らない)
問2
の値域を求めなさい。
(単位円の 座標の範囲)
問3
のグラフの漸近線のうち、 の範囲にあるものを求めなさい。
( が定義されない のうち範囲内のもの)
問4
の最大値を求めなさい。
(振幅 。 のとき)
問5
の周期を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
のグラフ上で、 の点と の点の 座標をそれぞれ求めなさい。また、 の範囲で が最大になる を求めなさい。
の点の 座標は 、 の点の 座標は 。最大になるのは
グラフ上の点の 座標は の値そのものです。第6章の公式4で三角定規の角に直します。
の山のてっぺんは に 1 つだけあり
は山の下り坂、 は谷に向かう途中です。グラフの形と符号が合っているか確かめる習慣をつけましょう。
問2 ★
の範囲で、 が減少する の区間と増加する の区間を求めなさい。
減少:,増加:
のグラフは で山(値 )、 で谷(値 )、 でまた山です。山から谷へ下る区間が減少、谷から山へ上る区間が増加です。
単位円で言えば、 が右端から左端へ上半分を回るあいだ 座標は減り続け、下半分を回って戻るあいだ増え続けます。第2章の厳密定義で「 は から で単調に減る」と書いたのは、この前半のことでした。
問3 ★
の範囲にある、 のグラフの漸近線をすべて求めなさい。
漸近線は が定義されない です。 に入るものを探すと
の は を超えるので入りません。
漸近線の間隔は で、これは の周期と同じです。
問4 ★
と について、それぞれの周期、最大値、最小値を求めなさい。
:周期 ,最大値 ,最小値 。:周期 ,最大値 ,最小値
縦方向の変形( 倍)は周期を変えません。
は を 軸について折り返したもので、振幅は です。
は を 軸方向に 倍したもので、振幅 です。
の最大値 をとるのは のとき()で、もとの とは山と谷の位置が入れ替わっています。
問5 ★
の値域を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる を求めなさい。
,最大値をとるのは
の各辺から を引きます。
グラフ全体が 軸方向に 平行移動しただけなので、山の位置は変わりません。最大値 をとるのは のとき
「平均水位」が に下がった波です。最大値が負の数になっても、とる場所はもとの山と同じです。
問6 ★
の周期を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる を求めなさい。
周期 ,最大値をとるのは
のグラフを 軸方向に (右に )平行移動したものです。平行移動は周期を変えないので
の山は中身が のときなので
の山 が右に ずれています。「 から引く ⇒ 右へ」の確認です。
問7 ★
,, の周期をそれぞれ求めなさい。
順に
, の周期は 、 の周期は です。
「中身が 1 周期分(・ は 、 は )進むのに はどれだけ必要か」と考えます。 のときは周期が伸びることに注意してください。
問8 ★
, について、それぞれが偶関数・奇関数のどちらであるかを確かめなさい。また、それぞれのグラフが 軸・原点のどちらについて対称であるかを求めなさい。
は奇関数(原点対称), は偶関数( 軸対称)
を に置き換えて、もとの式と比べます。, を使います。
よって は奇関数で、グラフは原点対称です。
よって は偶関数で、グラフは 軸対称です。
奇関数どうしの積は偶関数(負×負)、奇関数と偶関数の積は奇関数です。・ の偶数乗・奇数乗と同じ計算規則が働いています。
問9 ★★
について、周期を求めなさい。また、 の範囲で、最大値とそれをとる 、およびグラフが 軸と交わる をすべて求めなさい。
周期 。最大値 ()。 軸との交点は
を 軸方向に (左に )平行移動し、 軸方向に 倍したグラフです。周期は変わらず です。
最大値は振幅の で、中身が のときにとります。
軸と交わるのは中身が のとき。 より なので、中身は です。
中身が のときの は範囲外です。「中身の範囲を先に書く」と取りこぼしが防げます。
問10 ★★
について、周期を求めなさい。また、このグラフは のグラフを 軸方向にどれだけ平行移動したものかを求めなさい。さらに、 の範囲で最大値をとる と最小値をとる を求めなさい。
周期 。 軸方向に (右に )。最大値をとるのは ,最小値をとるのは
中身を でくくります。
なので周期は 。 のグラフを 軸方向に だけ(右に)平行移動したものです。
ではなく であることに注意してください。
のとき中身の範囲は です。 が になるのは中身が のとき、 になるのは中身が のときなので
の山 が右に ずれて に来ています。最大と最小の間隔が半周期の になっていることも確認できます。
問11 ★★
すべての で を満たす正の数 のうち、最小のものが であることを示しなさい。
(証明) を代入すると より 。正の最小は で、 は実際に成り立つ
2 段階で示します。「 で戻る」ことと、「 より小さい正の では戻らない」ことです。
で戻る。 第6章の公式4より、すべての で が成り立ちます。
より小さい正の では戻らない。 正の数 がすべての で を満たすとします。「すべての 」で成り立つのだから、特に でも成り立ち
となるのは、角 の動径と単位円の交点が のとき、つまり動径が始線と一致するときなので、( は整数)です。このうち正で最小のものは です。
したがって、条件を満たす正の の最小値は です。(証明終)
「すべての で成り立つ」という条件を、都合のよい (ここでは )に代入して使うのがこの証明の要点です。周期の定義に「最小」が入っているのは、 や を排除するためでした。
問12 ★★
について、周期を求めなさい。また、 の範囲にある漸近線と、グラフが 軸と交わる をすべて求めなさい。
周期 。漸近線は 。 軸との交点は
のグラフを 軸方向に (右に )平行移動したものです。周期は変わらず です。
漸近線は中身が のとき。
に入るのは なので
軸と交わるのは中身が のとき。
の漸近線 と交点 が、そろって右に ずれています。グラフ全体が動くので、漸近線も一緒に動きます。
問13 ★★
最大値が 、周期が である関数 (,)について、, の値を定めなさい。また、 のときの の値を求めなさい。
。 のとき
なので最大値は振幅 に等しく、 です。周期は なので
よって で、 のとき
グラフから式を決めるときは「高さから 、幅から 」の順です。 は周期 の 8 分の 1 の位置で、 の中身は になります。
問14 ★★
について、周期、最大値、最小値を求めなさい。また、 の範囲で最大値をとる と最小値をとる を求めなさい。
周期 ,最大値 (),最小値 ()
なので周期は です。
の各辺を 倍すると不等号の向きが変わり、。さらに を足して
最大値 をとるのは のとき。 のとき なので
最小値 をとるのは のとき
なので、 の谷(中身が )が最大、山(中身が )が最小に入れ替わっています。「 倍で不等号が反転する」ことと「 で山谷が入れ替わる」ことは同じ現象です。
問15 ★★
(1) のグラフを 軸方向に だけ平行移動したグラフ
(2) のグラフを 軸方向に だけ平行移動したグラフ
(3) のグラフを 軸方向に だけ平行移動したグラフ
上の (1)〜(3) のグラフを表す式を、それぞれ または を用いた最も簡単な形で表しなさい。
(1) (2) (3)
軸方向に 平行移動したグラフの式は、 を に置き換えたものです。置き換えたあと、第6章の公式4・公式5で簡単にします。
(1) 。公式5の 1 行目で 、そして は偶関数なので 。
(2) 。 は と 違いなので、公式4の原点対称の行より
(3) 同様に
(1) は「 を右に ずらすと 」で、本文の「 を左に ずらすと 」の裏返しです。(2),(3) は「半周期ずらすと上下が反転する」ことを示しています。第6章の公式は、グラフの言葉に翻訳すると全部「ずらす・折り返す」の話になります。
問16 ★★
の周期と値域を求めなさい。
周期 ,値域
は、 が負になる部分(谷)を 軸で折り返して上に持ち上げたものです。谷が山になるので、山が ごとに並びます。
式で確かめます。第6章の公式4より
なので、 ずらすと同じ値に戻ります。また、 になるのは に限られ、隣り合う の間隔は です。 より小さい正の幅 で戻るとすると より となって矛盾するので、 より小さい周期はありません。
値域は、 の絶対値をとって
「折り返すと周期が半分になる」—— の山と谷は形が同じ(原点対称)なので、谷を裏返せば山とぴったり重なる、というのが理由です。
問17 ★★★
のとき、 について、周期を求めなさい。また、この範囲での最大値・最小値とそれらをとる 、およびグラフが 軸と交わる をすべて求めなさい。
周期 。最大値 (),最小値 ()。 軸との交点は
なので、 を左に ずらして 倍したグラフです。周期は です。
中身 の範囲を先に書きます。 より
この範囲(幅 、ちょうど 1 周分)で になるのは だけ、 になるのは だけです。
軸と交わるのは 、つまり のとき。範囲内では なので
端の値も確かめておくと、 と ではどちらも で、最大値 より小さいので端は最大にはなりません。範囲つきの問題では「中身の範囲」と「端の値」の 2 つを確かめます。
問18 ★★★
とします。すべての で を満たす正の数 のうち、最小のものが であることを示しなさい。
(証明) と を代入して辺々加えると 、よって 。正の最小は で、 は実際に成り立つ
も も周期 なので は成り立ちます。問題は「もっと小さい正の で戻ることはないか」です。j11 と同じく、都合のよい を代入します。今回は 1 つでは足りないので 2 つ使います。
正の数 がすべての で を満たすとします。
を代入すると
を代入すると、第6章の公式5より , なので
(A) と (B) を辺々加えると 、すなわち 。これより ( は整数)で、正のうち最小のものは です。
したがって、条件を満たす正の の最小値は です。(証明終)
(A) だけでは が決まりません。 は でも成り立つからです(実際 )。ところが で見ると なので、 は周期ではありません。(B) を組み合わせるのは、この「たまたま戻る 」を排除するためです。 のグラフがどんな形か(実は 1 つの にまとまります)は、第11章「三角関数の合成」で扱います。
問19 ★★★
最大値が 、最小値が 、周期が で、 のとき最大値をとる関数を (,,)の形で表すとき、,,, の値を定めなさい。
高さ・幅・位置の順に決めます。
高さ。 なので最大値は 、最小値は です。
は最大値と最小値の平均(平均水位)、 はその差の半分(振幅)です。
幅。 周期 より 。
位置。 が で最大値をとるので、そのとき の中身が です。
を満たすのは の です。
検算: で のとき中身は 、 です。 に の自由度があるので、範囲の指定がなければ答えは 1 つに決まりません。
問20 ★★★
のグラフと直線 について、次の問いに答えなさい。
(1) の範囲にある交点の をすべて求めなさい。
(2) の範囲を実数全体にしたときの交点の を、整数 を用いて表しなさい。
(3) 直線を ( は定数)に変えたとき、 の範囲にある交点の個数を、 の値によって場合分けして求めなさい。
(1) (2) (3) のとき 2 個, または のとき 1 個, または のとき 0 個
(1) 交点の は を満たす です。 で になるのは、単位円で 座標が の点が 2 つ(第1象限と第2象限)あることから
グラフで言えば、山の上り坂で 1 回、下り坂で 1 回、直線 を横切ります。 で、2 つの交点は山の中心 について左右対称の位置にあります。
(2) 周期が なので、(1) の 2 つの交点が ごとに繰り返し現れます。
交点は無限個あります。
(3) のグラフの値域は で、 には山が 1 つ・谷が 1 つあります。直線 を上下に動かして交点を数えると
のときは の 2 個で、やはり 2 個です( は範囲に入りません)。
この問題は、第8章の「三角関数を含む方程式 」そのものです。(1) が での解、(2) が一般解 の形、(3) が解の個数の判定にあたります。第8章では、・ や不等式も同じ「グラフと直線」の見方で解いていきます。
この章で描いたサインカーブは、波の中でいちばん単純な形です。では、もっと複雑な波——たとえばバイオリンの音の波形や、四角い形の波——は、サインカーブとは別物なのでしょうか。
「そうではない。どんな繰り返しの波も、周期の違うサインカーブを何本も足し合わせることで作れる」と主張したのが、フランスの数学者ジョゼフ・フーリエです。1822 年の著書『熱の解析的理論』で、フーリエは金属の棒の中を熱がどう伝わるかを調べるうちに、温度の分布を と の和で表す方法にたどり着きました。周期 の波に、周期 の波()、周期 の波()、……を適切な振幅で足していくと、角ばった波でも、とがった波でも、いくらでも近づけられるというのです。当時の数学者たちはこの主張に驚き、「本当にどんな関数でもよいのか」という問いが、その後 100 年近く数学を動かしました(※フーリエ以前にもオイラーやベルヌーイが弦の振動で似た考えを示しており、誰を最初とするかは諸説あり)。
豆知識
同じ「ド」の音でも、ピアノとバイオリンでは音色が違います。その正体は、基本の波(周期が最も長い )に、周期がその ・・……の波(倍音)がどんな振幅で混ざっているか、の違いです。この章の の と の組み合わせが、音色を決めているわけです。画像の JPEG や音楽の MP3 も、データを や の波の足し算に分解し、目や耳に目立たない細かい波を捨てることでファイルを小さくしています。サインカーブは、写真や音楽を運ぶ「部品」でもあるのです。
第2章の小話で「交流の電気は円運動の影として表せる」と予告しました。この章でグラフが描けるようになったので、回収します。
家庭のコンセントに来ている電気は交流で、電圧が正と負のあいだをサインカーブの形で行き来しています。東日本では 1 秒間に 50 回、西日本では 60 回です。周期にすると 秒 秒と 秒。電圧を時刻 (秒)の関数で書くと、東日本なら くらいの式になります。 が 進むのに 秒——公式4の「周期 」そのものです。
「コンセントは 100 V のはず。141 はどこから?」と思った人は鋭い。 は振幅(最大値)で、 は「同じ熱を出す直流に換算した値(実効値)」です。両者の比は で、これは を 2 乗して平均すると になることから来ています(※実効値の計算は高校物理の範囲)。
豆知識
東西で周波数が違うのは、明治時代に東京の電力会社がドイツ製の 50 Hz の発電機を、大阪の電力会社がアメリカ製の 60 Hz の発電機を導入したことに始まると言われています(※諸説あり)。その後も統一されず、境目は静岡県の富士川から新潟県の糸魚川あたりにあります。
もう 1 つ、第2章で予告した振り子もサインカーブです。振り子の位置を時刻に対してグラフにすると、振れ幅が振幅、1 往復の時間が周期のサインカーブになります(振れ幅が小さいとき)。ガリレオが教会のランプの揺れを見て「周期は振れ幅によらない」と気づいたという逸話は有名ですが(※諸説あり)、この性質のおかげで振り子時計が作れました。
海岸の潮位(海面の高さ)を時刻に対してグラフにすると、ゆったりしたサインカーブになります。満潮と干潮は 1 日に約 2 回ずつ、周期はおよそ 12 時間 25 分です。24 時間ぴったりの半分ではなく 25 分余るのは、月が地球のまわりを回っているぶん、同じ月の位置に戻るのに 1 日より約 50 分長くかかるからです。潮を引き起こしているのは主に月の引力なので、潮の周期は「月の 1 日」の半分になります。
ここからがこの章らしいところです。潮を起こすのは月だけではなく、太陽も(月の半分弱の強さで)海を引っぱっています。太陽による潮の周期はちょうど 12 時間。つまり実際の潮位は、周期 12 時間 25 分の波と周期 12 時間の波の足し算です。2 つの波の山が重なる時期(新月と満月のころ)は満干の差が大きい大潮、山と谷が打ち消し合う時期(半月のころ)は差が小さい小潮になります。周期がわずかに違う 2 本のサインカーブを足すと、強め合ったり弱め合ったりが約 15 日周期で繰り返される——小話1のフーリエの話の、逆向きの例です。
豆知識
港ごとの潮位を予測する「潮汐表」は、この足し算を実際に計算して作られています。19 世紀の物理学者ケルビン卿(第5章の小話で「radian」の名付け親として出てきたジェームズ・トムソンの弟)は、歯車と滑車で何本ものサインカーブを機械的に足し合わせる潮汐予測機を作りました。コンピュータのない時代に、 を何十本も重ねた曲線を、機械が紙に描いていたのです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「・ の周期は 、 は 」「 は周期 、横に ずらす」が使えれば十分ですが、「 より小さい周期がないと言い切れるのはなぜ?」「 で右にずれる、 で周期が になるのはなぜ?」が気になる人のために、根拠を紹介します。
実数全体(または のように一部を除いた範囲)で定義された関数 に対し、 でない定数 が存在して、定義域のすべての で
が成り立つとき、 を周期関数といい、この を の周期の 1 つという。周期の 1 つである正の数のうち最小のものが存在するとき、それを の周期(基本周期)という。
が周期の 1 つなら、,, もそうです()。だから「周期」を 1 つに決めるには「正で最小」という条件が要ります。本文で「 は周期とは呼ばない」と書いたのはこのためです。なお、定数関数 はどんな正の数 でも を満たしますが、正の最小値がないので「周期」は定まりません。定義に「存在するとき」と断ってあるのは、こうした例のためです。
および の周期は である。
証明 ( が周期の 1 つであること)第6章の公式4( の行)より、すべての で , が成り立つ。
(正の周期のうち が最小であること)正の数 がすべての で を満たすとする。特に のとき であり、第6章の公式5より左辺は に等しいから 。角 の動径と単位円の交点の 座標が となるのは交点が のとき、すなわち動径が始線と一致するときに限るので、( は整数)。 より 。よって正の周期のうち最小のものは である。
についても、 を代入すると となり、同様に が従う。(証明終)
証明の要点は、「すべての で成り立つ」という仮定を、都合のよい 1 つの に代入して使うことです。 では 、 では を選ぶと、 という単純な条件が出てきます。 を に代入すると しか出ず、 が排除できません(実際 で戻らない)。どの を代入するかは、証明する側が選べます。
の周期は である。
証明 第6章の公式4( の行)より、定義域のすべての で が成り立つ。
正の数 が定義域のすべての で を満たすとする。 を代入すると (このとき は定義域に入っている必要があるが、 が に等しいという仮定の中に、 が定義域に属することが含まれている)。 より 、すなわち 。 より 。(証明終)
と は ずらすと符号が反転するのに、 は比なので符号が打ち消されて元に戻る——それが の周期だけ半分になる理由です。グラフで言えば、 の山と谷は「別物」なので 1 周期に両方が必要ですが、 の各区間は全部同じ形なので 1 区間で 1 周期です。
関数 が、定義域のすべての で を満たすとき偶関数、 を満たすとき奇関数という(定義域は と を同時に含むものとする)。
は偶関数、, は奇関数である。
証明 点 が のグラフ上にあるとは が成り立つことである。
が偶関数のとき、 ならば であるから、点 もグラフ上にある。 と は 軸について対称なので、グラフは 軸対称である。
が奇関数のとき、 ならば であるから、点 もグラフ上にある。 と は原点について対称なので、グラフは原点対称である。
,, は第6章の公式4( の行)である。(証明終)
第6章の小話3で「偶関数のグラフは 軸対称、奇関数は原点対称」と予告したことの証明です。第6章では「 軸で折る」ことで の公式を出しましたが、あれは単位円を描いた紙の話でした。ここで折り返すのはグラフ用紙で、折り線も 軸(偶関数)です。単位円の 軸対称が、グラフでは 軸対称や原点対称に化ける——2 枚の紙を混同しないでください。
を関数とし、, を定数、, とする。
証明 (1) 点 が のグラフ上にある 点 が のグラフ上にある。したがって、 のグラフの各点を 軸方向に だけ動かした点の全体が のグラフである。
(2) 同様に、 点 が のグラフ上にある。よって各点の 座標を 倍した点の全体が のグラフである。
周期について、 とおく。 より は の周期の 1 つである。逆に正の数 が の周期の 1 つならば、すべての で が成り立つ。 は が実数全体を動くとき実数全体を動くので、これは が の周期の 1 つであることを意味し、 の最小性から 、すなわち 。よって の周期は である。
(3) 点 が のグラフ上にある( なので逆向きも成り立つ)。(証明終)
(1) で「 なのに右に ずれる」理由がはっきりします。新しいグラフの点 に対応するもとの点は ——新しい式に を入れると、中身は に戻るからです。式の中の は「 進んだ分を差し引いて、もとの値を読みに行く」働きをしています。(2) の周期の証明で「 が実数全体を動く」と断ったのは、 の周期の定義が「すべての で」だからです。 に限ったのは話を簡単にするためで、 のときは と見て、定理3の対称性と組み合わせれば扱えます。
**補足:漸近線と「なめらかにつながること」。**本文で のグラフの漸近線を「限りなく近づくが交わらない直線」と説明しました。正確には、 が に左から近づくとき で分子は に近づき、分母は正のまま に近づくので、値はいくらでも大きくなります(右から近づくときは分母が負なので、いくらでも小さくなります)。「いくらでも大きくなる」を正確に述べる言葉(極限)は、微分積分の分野の第1章で扱います。
また、この章では「点を打ってなめらかにつなぐ」ことでグラフを描きましたが、 が本当に途切れずなめらかにつながること(連続性)は証明していません。単位円上の点 が とともに連続的に動くことを認めて進んでいます。これも微分積分の分野で、三角関数の極限(第5章の定理3 が入口)を扱うときに裏付けられます。
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