目次 / 行列と一次変換 / 旧数学C(課程外)

第9章 一次変換と図形

—— 直線・面積・動かないもの — 変換が平面に何をしているかを読み取る ——

第 6 章から第 8 章までで、一次変換を**点の移り先**として調べてきました。この章では視点を上げて、**図形がまるごとどう移るか**を見ます。直線を移すと何になるのか。三角形の面積は何倍になるのか。第 3 章の小話で「行列式は平行四辺形の面積」と言い、第 6 章から第 8 章まで何度も「面積は $|\Delta|$ 倍になる、証明は第 9 章で」と先送りしてきた約束を、ここで果たします。もう 1 つの主題は、**動かないもの**です。平面全体をかき回しても、その場に留まる点や、はみ出さずに自分自身へ移る直線がある。それを探すと、行列が平面に対して何をしているのかが、かなりはっきり見えてきます。この分野の最終章です。

問題マップ記録を読み込み中…
未回答 25× 0○ 01か月定着 0

直線はどこへ行くか

これまでは、点 P\mathrm{P} が点 P′\mathrm{P}' に移る、という 1 点ずつの話でした。ここからは、直線や三角形のような図形をまるごと動かしたら何になるのかを調べます。

直線から始めましょう。ベクトルの第 4 章で学んだとおり、点 A\mathrm{A} を通り、方向ベクトルが d⃗\vec{d}(ただし d⃗\vec{d}≠0⃗{}\neq \vec{0})の直線は

p⃗\displaystyle \vec{p}=a⃗\displaystyle {}= \vec{a}+td⃗\displaystyle {}+ t\vec{d}(t は実数)\displaystyle (t \ \text{は実数})

と書けます。tt を動かすと、点が直線の上をすべっていく。この式の全体に、一次変換 ff をはたらかせてみます。ff を表す行列を AA とすると

Ap⃗\displaystyle A\vec{p}=A(a⃗+td⃗)\displaystyle {}= A(\vec{a} + t\vec{d})=Aa⃗\displaystyle {}= A\vec{a}+t(Ad⃗)\displaystyle {}+ t(A\vec{d})

です。第 6 章 公式3 の線形性、つまり「和は和のまま、実数倍は実数倍のまま」という性質を 2 回使っただけです。

出てきた式をよく見てください。Aa⃗A\vec{a} も Ad⃗A\vec{d} もただの定ベクトルですから、これは「点 Aa⃗A\vec{a} を通り、方向ベクトルが Ad⃗A\vec{d} の直線」の式そのものです。直線の像は、また直線になる。

ただし 1 つだけ例外があります。Ad⃗A\vec{d}=0⃗{}= \vec{0} になってしまう場合です。このとき像は tt によらず Aa⃗A\vec{a} だけになり、直線はたった 1 点につぶれます。

公式1:直線の像

一次変換 ff(表す行列 AA)による、点 A(a⃗)\mathrm{A}(\vec{a}) を通り方向ベクトル d⃗\vec{d} の直線 ℓ\ell の像は

p⃗\displaystyle \vec{p}=Aa⃗\displaystyle {}= A\vec{a}+t(Ad⃗)\displaystyle {}+ t(A\vec{d})

すなわち

  • Ad⃗A\vec{d}≠0⃗{}\neq \vec{0} のとき … 点 Aa⃗A\vec{a} を通り、方向ベクトルが Ad⃗A\vec{d} の直線
  • Ad⃗A\vec{d}=0⃗{}= \vec{0} のとき … 1 点 Aa⃗A\vec{a}

直線は、直線または 1 点に移る(曲がることはない)。また、線分 AB\mathrm{AB} の像は線分 A′B′\mathrm{A}'\mathrm{B}' であり、内分の比は変わらない。AB\mathrm{AB} を m:nm : n に内分する点の像は、A′B′\mathrm{A}'\mathrm{B}' を m:nm : n に内分する点である。

輪ゴムに等間隔で印をつけて、両端を引っぱってみるところを思い浮かべてください。輪ゴムは伸びますが、折れ曲がったりはしません。しかも印の間隔はどこも同じ割合で広がるので、真ん中の印は伸ばしたあとも真ん中のままです。第 6 章では平面をゴムシートにたとえましたが、直線だけを見れば、話は 1 本のゴムひもと同じだということになります。

内分比が変わらないことは、上の式の tt がそのまま生き残っていることから分かります。tt=12{}= \dfrac{1}{2} の点(中点)は、移ったあとも tt=12{}= \dfrac{1}{2} の点、つまり中点です。

ここから、実用上いちばんありがたい事実が出てきます。多角形の像は、頂点の像を求めて順に結べばよい。三角形の像は三角形(つぶれれば線分か点)、平行四辺形の像は平行四辺形です。平行な 2 直線が平行なままなのも、方向ベクトルがどちらも同じ Ad⃗A\vec{d} に移るからです。

一次変換は直線を曲げないので、直線の像は直線(または 1 点)であり、多角形の像は頂点の像を結んだ多角形だということです。

例題1:直線と三角形の像

行列 AA=(2113){}= \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。次の問いに答えなさい。

(1) 点 (1, 0)(1,\ 0) を通り、方向ベクトルが (12)\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix} の直線 ℓ\ell の像を求めなさい。

(2) 3 点 O(0, 0)\mathrm{O}(0,\ 0),P(1, 0)\mathrm{P}(1,\ 0),Q(0, 1)\mathrm{Q}(0,\ 1) を頂点とする三角形の像を求めなさい。

(3) (2) の三角形の面積と、その像の面積を比べなさい。


【解答】

(1) 通る点の像と、方向ベクトルの像を、それぞれ計算します。

A(10)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=(21),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix},A(12)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}=(2+21+6)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 + 2 \\ 1 + 6 \end{pmatrix}=(47)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 \\ 7 \end{pmatrix}

Ad⃗A\vec{d}≠0⃗{}\neq \vec{0} なので、像は点 (2, 1)(2,\ 1) を通り方向ベクトル (47)\begin{pmatrix} 4 \\ 7 \end{pmatrix} の直線です。xx の増加 44 に対して yy の増加が 77 ですから、傾きは 74\dfrac{7}{4} で

y\displaystyle y−1\displaystyle {}- 1=74(x−2)\displaystyle {}= \frac{7}{4}(x - 2)⟹7x‾\displaystyle {}\Longrightarrow \quad \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}7x}−4y‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}{}- 4y}−10=0‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}{}- 10 = 0}

検算します。ℓ\ell 上の別の点 (2, 2)(2,\ 2)(tt=1{}= 1)の像は A(22)A\begin{pmatrix} 2 \\ 2 \end{pmatrix}=(68){}= \begin{pmatrix} 6 \\ 8 \end{pmatrix} で、7×67 \times 6−4×8{}- 4 \times 8−10{}- 10=42{}= 42−32{}- 32−10{}- 10=0{}= 0。たしかに像の直線の上にあります。

(2) 頂点の像を求めます。ff は原点を原点に移します(第 6 章 公式2)。P\mathrm{P},Q\mathrm{Q} の像は AA の第 1 列・第 2 列そのものです(第 6 章 公式4)。

O\displaystyle \mathrm{O}↦(0, 0),\displaystyle {}\mapsto (0,\ 0),P\displaystyle \mathrm{P}↦(2, 1),\displaystyle {}\mapsto (2,\ 1),Q\displaystyle \mathrm{Q}↦(1, 3)\displaystyle {}\mapsto (1,\ 3)

よって像は 3 点 (0, 0),‾\underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.0000em}3 \text{ 点} \ (0,\ 0),} (2, 1),‾\underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.0000em}\ (2,\ 1),} (1, 3) を頂点とする三角形‾\underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.0000em}\ (1,\ 3) \ \text{を頂点とする三角形}} です。

(3) もとの三角形は、直角をはさむ 2 辺が 11 と 11 ですから面積は 12\dfrac{1}{2}。像の三角形の面積は、ベクトル第 2 章の公式で

12∣2×3−1×1∣\displaystyle \frac{1}{2}\left| 2 \times 3 - 1 \times 1 \right|=52\displaystyle {}= \frac{5}{2}

52÷12\dfrac{5}{2} \div \dfrac{1}{2}=5{}= 5 で、面積は 5 倍‾\underline{5 \text{ 倍}} になりました。

ここで AA の行列式を見てください。Δ\Delta=2×3{}= 2 \times 3−1×1{}- 1 \times 1=5{}= 5。偶然ではありません。次の節の主題です。

面積は何倍になるか

第 3 章の小話で、行列式には図形の意味があると話しました。AA の 2 つの列が作る平行四辺形の面積が ∣Δ∣|\Delta| になる、という話です。第 6 章から第 8 章まで、面積が ∣Δ∣|\Delta| 倍になることを何度も予告しては先送りしてきました。ここで証明します。

出発点は単位正方形です。e1⃗\vec{e_1}=(10){}= \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix},e2⃗\vec{e_2}=(01){}= \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} が作る、1 辺 11 の正方形。面積は 11 です。

これを ff で移すと、e1⃗\vec{e_1},e2⃗\vec{e_2} の像が作る平行四辺形になります(公式1 により、辺は辺に移り、平行は平行のまま)。ところが第 6 章 公式4 が言うとおり、f(e1⃗)f(\vec{e_1}) と f(e2⃗)f(\vec{e_2}) は AA の第 1 列・第 2 列にほかなりません。つまり像は「AA の 2 つの列が作る平行四辺形」で、その面積は ∣Δ∣|\Delta|。面積 11 が ∣Δ∣|\Delta| になったわけです。

O O e₁ e₂ (2, 1) (1, 3) f 変換前:単位正方形 変換後:A の 2 列が作る平行四辺形 面積 1 面積 |Δ| = |2×3 − 1×1| = 5 面積 1 が |Δ| になる。だからどんな図形も面積は |Δ| 倍

一般の平行四辺形でも同じことが起きます。2 つのベクトル u⃗\vec{u},v⃗\vec{v} が作る平行四辺形を考え、この 2 本を列に並べた行列を

U\displaystyle U=(u⃗v⃗)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} \vec{u} & \vec{v} \end{pmatrix}

と書きます。もとの面積は ∣det⁡U∣|\det U| です。一方、像の平行四辺形を作るのは Au⃗A\vec{u} と Av⃗A\vec{v} で、これを列に並べた行列は AUAU にほかなりません(行列の積は、右の行列の各列に左の行列をかけて並べたものでした)。したがって像の面積は ∣det⁡(AU)∣|\det(AU)| です。あとは第 3 章 公式5 の

det⁡(AU)\displaystyle \det(AU)=det⁡A⋅det⁡U\displaystyle {}= \det A \cdot \det U

を使うだけ。像の面積は ∣Δ∣⋅∣det⁡U∣|\Delta| \cdot |\det U|、つまりもとの面積の ∣Δ∣|\Delta| 倍になります。

三角形は平行四辺形の半分ですから、倍率は同じ。そして一般の図形は、細かいマス目で埋め尽くして近似すれば、どのマス目も面積が ∣Δ∣|\Delta| 倍になるのですから、全体もやはり ∣Δ∣|\Delta| 倍です(円のような曲線で囲まれた図形にもそのまま使えます。厳密な扱いは厳密定義のページで)。

公式2:面積の倍率

一次変換 ff(表す行列 AA、Δ\Delta=ad{}= ad−bc{}- bc)によって、図形の面積は一律に ∣Δ∣|\Delta| 倍になる。

(像の面積)\displaystyle (\text{像の面積})=∣Δ∣×(もとの面積)\displaystyle {}= |\Delta| \times (\text{もとの面積})

さらに Δ\Delta の符号は向きを表す。

  • Δ\Delta>0{}> 0 … 向きを保つ(反時計回りは反時計回りのまま)
  • Δ\Delta<0{}< 0 … 裏返す(反時計回りが時計回りになる)
  • Δ\Delta=0{}= 0 … つぶれて面積が 00 になる

絶対値は面積、符号は向き。

クッキーの生地をめん棒で伸ばすところを思い浮かべてください。生地全体が 33 倍の広さになったなら、真ん中の一切れも端の一切れも、等しく 33 倍に広がっています。一次変換の面積比も同じで、図形がどこにあっても、どんな形でも、倍率は ∣Δ∣|\Delta| ただ 1 つ。図形ごとに計算し直す必要はありません。

符号のほうは、第 7 章で対称移動を見分けるのに使った話です。Δ\Delta>0{}> 0 は回転のように向きを保つ変換、Δ\Delta<0{}< 0 は鏡に映したように裏返す変換でした。面積の議論で絶対値がついているのは、この向きの情報を切り離すためです。

一次変換が面積を何倍にするかは行列式だけで決まり、その倍率はどんな図形に対しても一律に ∣Δ∣|\Delta| 倍だということです。

例題2:面積の倍率を使う

行列 AA=(3−121){}= \begin{pmatrix} 3 & -1 \\ 2 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。次の問いに答えなさい。

(1) ff による、1 辺 11 の単位正方形の像の面積を求めなさい。

(2) 3 点 (1, 1)(1,\ 1),(4, 2)(4,\ 2),(2, 5)(2,\ 5) を頂点とする三角形の、ff による像の面積を求めなさい。

(3) 半径 22 の円の、ff による像の面積を求めなさい。

(4) ff は図形の向きを保つか、裏返すかを定めなさい。


【解答】

まず行列式を 1 度だけ計算します。

Δ\displaystyle \Delta=3×1\displaystyle {}= 3 \times 1−(−1)×2\displaystyle {}- (-1) \times 2=3\displaystyle {}= 3+2\displaystyle {}+ 2=5\displaystyle {}= 5

(1) 面積 11 の 55 倍で 5‾\underline{5}。

(2) もとの三角形の面積を求めます。(1, 1)(1,\ 1) を基準にすると、2 辺のベクトルは (31)\begin{pmatrix} 3 \\ 1 \end{pmatrix},(14)\begin{pmatrix} 1 \\ 4 \end{pmatrix} ですから

12∣3×4−1×1∣\displaystyle \frac{1}{2}\left| 3 \times 4 - 1 \times 1 \right|=112\displaystyle {}= \frac{11}{2}

像の面積はその 55 倍で 552‾\underline{\dfrac{55}{2}} です。

頂点の像を実際に求めて確かめてみましょう。(1, 1)(1,\ 1)↦(2, 3){}\mapsto (2,\ 3),(4, 2)(4,\ 2)↦(10, 10){}\mapsto (10,\ 10),(2, 5)(2,\ 5)↦(1, 9){}\mapsto (1,\ 9)。2 辺のベクトルは (87)\begin{pmatrix} 8 \\ 7 \end{pmatrix},(−16)\begin{pmatrix} -1 \\ 6 \end{pmatrix} で、面積は 12∣8×6−7×(−1)∣\dfrac{1}{2}|8 \times 6 - 7 \times (-1)|=552{}= \dfrac{55}{2}。合っています。

(3) 円も図形ですから、倍率は同じ 55 倍です。もとの面積は π×22\pi \times 2^2=4π{}= 4\pi なので、像の面積は 20π‾\underline{20\pi}。

なお像そのものは円ではなく楕円になります(あとの節で方程式を求めます)。それでも面積だけなら Δ\Delta を見るだけで分かるところが、この公式の強みです。

(4) Δ\Delta=5{}= 5>0{}> 0 なので 向きを保つ‾\underline{\text{向きを保つ}}。

つぶれてしまう変換

Δ\Delta=0{}= 0 のときが残っています。面積が 00 倍になる、とはどういうことでしょうか。

行列 AA=(abcd){}= \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} による点 (x, y)(x,\ y) の像を、列ごとに分けて書いてみます。

(abcd)(xy)\displaystyle \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=x(ac)\displaystyle {}= x\begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix}+y(bd)\displaystyle {}+ y\begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix}

つまり、どの点の像も「AA の第 1 列と第 2 列の 1 次結合」です。第 3 章で見たように、Δ\Delta=0{}= 0 とは 2 つの列が平行だということ。平行な 2 本のベクトルをいくら足し合わせても、同じ 1 本の直線から出られません。だから像は、原点を通る 1 本の直線の上に全部収まってしまいます。AA=O{}= O の場合だけは 2 つの列がどちらも 0⃗\vec{0} なので、像は原点ただ 1 点です。

公式3:行列式が 0 のときの像

一次変換 ff による平面全体の像と、原点に移る点全体は次のようになる(1 行目は比較のために並べた、Δ\Delta≠0{}\neq 0 の場合である)。

平面全体の像原点に移る点全体
Δ≠0\Delta \neq 0平面全体原点のみ
Δ=0\Delta = 0 かつ A≠OA \neq O原点を通る 1 本の直線原点を通る 1 本の直線
A=OA = O原点のみ平面全体

Δ\Delta=0{}= 0,AA≠O{}\neq O のとき、像の直線の方向ベクトルは AA の**0⃗\vec{0} でないほうの列**であり、原点に移る点全体は同次連立一次方程式 Ap⃗A\vec{p}=0⃗{}= \vec{0} の解(第 4 章 公式5)である。

このとき、どんな図形も直線か点に移るので、像の面積は必ず 00 になる。

ステレオの音をモノラルにまとめるところを想像してください。左右 2 つのチャンネルを足して 1 本のスピーカーから鳴らしてしまうと、音そのものは残っても、どちらから鳴っていたかは永久に分からなくなります。2 つあった情報が 1 つに落ちる。Δ\Delta=0{}= 0 の一次変換が平面に対してしているのは、まさにこれです。だから第 8 章で見たとおり、逆変換は存在しません。

この表は、第 6 章の厳密定義のページで「次元」の言葉で作っておいた 3 通りの分類に、図形の姿を書き入れたものです。Δ\Delta≠0{}\neq 0 なら平面は平面のまま(22 次元)、Δ\Delta=0{}= 0,AA≠O{}\neq O なら直線に落ちて(11 次元)、AA=O{}= O なら点に落ちる(00 次元)。落ちたぶんだけ、原点に移る点が増えていくところも合わせて眺めてください。

Δ\Delta=0{}= 0 の一次変換は平面全体を直線か原点 1 点に押しつぶしてしまうので、どんな図形の像も面積 00 になるということです。

例題3:つぶれる変換を調べる

行列 MM=(2−6−13){}= \begin{pmatrix} 2 & -6 \\ -1 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換を gg とする。次の問いに答えなさい。

(1) gg による平面全体の像を求めなさい。

(2) gg によって原点に移る点全体を求めなさい。

(3) gg による直線 xx−3y{}- 3y=1{}= 1 の像を求めなさい。


【解答】

Δ\Delta=2×3{}= 2 \times 3−(−6)×(−1){}- (-6) \times (-1)=6{}= 6−6{}- 6=0{}= 0 です。つぶれる変換だと分かります。

(1) 点 (x, y)(x,\ y) の像を計算します。

(2−6−13)(xy)\displaystyle \begin{pmatrix} 2 & -6 \\ -1 & 3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=(2x−6y−x+3y)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2x - 6y \\ -x + 3y \end{pmatrix}=(x−3y)(2−1)\displaystyle {}= (x - 3y)\begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix}

xx−3y{}- 3y はあらゆる実数値をとりますから、像はベクトル (2−1)\begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix} の実数倍全体、すなわち原点を通り方向ベクトル (2−1)\begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix} の直線です。

直線 x‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8778em}\text{直線} \ x}+2y=0‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8778em}{}+ 2y = 0}

(2) 上の式が 0⃗\vec{0} になるのは xx−3y{}- 3y=0{}= 0 のときです。

直線 x‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8778em}\text{直線} \ x}−3y=0 上のすべての点‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8778em}{}- 3y = 0 \ \text{上のすべての点}}

平面全体が直線 xx+2y{}+ 2y=0{}= 0 に落ち、そのぶん直線 xx−3y{}- 3y=0{}= 0 がまるごと原点 1 点に押し込まれた、ということになります。

(3) 直線 xx−3y{}- 3y=1{}= 1 の上の点は、xx−3y{}- 3y の値がつねに 11 です。(1) の計算にそのまま代入すれば、像は

1×(2−1)\displaystyle 1 \times \begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix}=(2−1)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix}

つまり 1 点 (2, −1)‾\underline{1 \text{ 点} \ (2,\ -1)} です。直線 xx−3y{}- 3y=1{}= 1 の方向ベクトルは (31)\begin{pmatrix} 3 \\ 1 \end{pmatrix} で、M(31)M\begin{pmatrix} 3 \\ 1 \end{pmatrix}=(6−6−3+3){}= \begin{pmatrix} 6 - 6 \\ -3 + 3 \end{pmatrix}=0⃗{}= \vec{0}。公式1 の「Ad⃗A\vec{d}=0⃗{}= \vec{0} なら 1 点」の場合にあたっています。

図形の像を方程式で求める

直線の像は、通る点と方向ベクトルを移すだけで求められました。では円や放物線の像は、どうやって求めればよいでしょうか。

やり方を逆から考えるのがコツです。像の図形の上の点を (x′, y′)(x',\ y') とします。この点が像の上にあるということは、移る前の点 (x, y)(x,\ y) がもとの図形の上にあったということ。だから xx,yy を x′x',y′y' で表して、もとの図形の方程式に代入すればよいのです。

xx,yy を x′x',y′y' で表すには、逆行列を使います。Δ\Delta≠0{}\neq 0 なら

(x′y′)\displaystyle \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}=A(xy)\displaystyle {}= A\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}⟺(xy)\displaystyle {}\Longleftrightarrow \quad \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=A−1(x′y′)\displaystyle {}= A^{-1}\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}
公式4:図形の像の方程式

Δ\Delta≠0{}\neq 0 のとき、方程式 F(x, y)F(x,\ y)=0{}= 0 で表される図形の、一次変換 ff による像は次の手順で求める。

  1. (xy)\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=A−1(x′y′){}= A^{-1}\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} を計算し、xx,yy を x′x',y′y' の式で表す。
  2. それを F(x, y)F(x,\ y)=0{}= 0 に代入する。
  3. 得られた x′x',y′y' の関係式で、x′x' を xx に、y′y' を yy に書き直す。

代入するのは A−1A^{-1} を使った式のほうである。AA をかけた式(像の側)を代入するのではないことに注意する。

引っ越しにたとえてみます。新居での家具の配置図を作るとき、「新居のこの位置には何を置くのか」を知るには、まずその場所がもとの部屋のどこだったかを逆にたどり、そこにあった家具を調べる。像の側から出発して、原像を経由して、もとの図形の条件にたどりつく。公式4 の向きは、この「逆にたどる」の向きです。

この型は初めてではありません。図形と方程式の第 6 章で軌跡を求めたとき、「動く点を (x, y)(x,\ y) とおき、条件の式に持ち込む」という同じ順序をたどりました。一次変換の像は、軌跡の問題の一種なのです。

図形の像の方程式は、逆行列で xx,yy を像の座標で表し、それをもとの方程式に代入すれば求まるということです。

例題4:円・直線・放物線の像

行列 AA=(11−11){}= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。次の図形の ff による像の方程式を求めなさい。

(1) 円 x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1

(2) 直線 yy=2x{}= 2x+1{}+ 1

(3) 放物線 yy=x2{}= x^2


【解答】

Δ\Delta=1×1{}= 1 \times 1−1×(−1){}- 1 \times (-1)=2{}= 2≠0{}\neq 0 なので逆行列があります。

A−1\displaystyle A^{-1}=12(1−111)\displaystyle {}= \frac{1}{2}\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}

よって

(xy)\displaystyle \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=12(1−111)(x′y′)\displaystyle {}= \frac{1}{2}\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x=x′−y′2,\displaystyle {}= \frac{x' - y'}{2},y\displaystyle y=x′+y′2\displaystyle {}= \frac{x' + y'}{2}

(1) x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 に代入します。

(x′−y′2)2\displaystyle \left(\frac{x' - y'}{2}\right)^2+(x′+y′2)2\displaystyle {}+ \left(\frac{x' + y'}{2}\right)^2=1\displaystyle {}= 1

左辺の 2 つの項をそれぞれ展開すると

x′2−2x′y′+y′24,\displaystyle \frac{x'^2 - 2x'y' + y'^2}{4},x′2+2x′y′+y′24\displaystyle \frac{x'^2 + 2x'y' + y'^2}{4}

で、足すと x′y′x'y' の項が消えます。

2x′2+2y′24\displaystyle \frac{2x'^2 + 2y'^2}{4}=1\displaystyle {}= 1⟹x′2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x'^2+y′2\displaystyle {}+ y'^2=2\displaystyle {}= 2

したがって像は 円 x2‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{1.0085em}\text{円} \ x^2}+y2=2‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{1.0085em}{}+ y^2 = 2}、原点を中心とする半径 2\sqrt{2} の円です。

面積で検算します。もとの円の面積は π\pi、像の面積は 2π2\pi。倍率は 22 で、∣Δ∣|\Delta|=2{}= 2 と一致しています。なお AA=2 R(−45∘){}= \sqrt{2}\,R(-45^\circ)(第 7 章 公式5)なので、この変換は「45∘45^\circ 時計回りに回して 2\sqrt{2} 倍に拡大」。円が円のままなのは当然でした。

(2) yy=2x{}= 2x+1{}+ 1 に代入します。

x′+y′2\displaystyle \frac{x' + y'}{2}=2⋅x′−y′2\displaystyle {}= 2 \cdot \frac{x' - y'}{2}+1\displaystyle {}+ 1⟹x′\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x'+y′\displaystyle {}+ y'=2x′\displaystyle {}= 2x'−2y′\displaystyle {}- 2y'+2\displaystyle {}+ 2−x′\displaystyle -x'+3y′\displaystyle {}+ 3y'=2\displaystyle {}= 2⟹x‾\displaystyle {}\Longrightarrow \quad \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}x}−3y‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}{}- 3y}+2=0‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8389em}{}+ 2 = 0}

検算します。もとの直線上の点 (0, 1)(0,\ 1) の像は A(01)A\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=(11){}= \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} で、11−3{}- 3+2{}+ 2=0{}= 0。点 (1, 3)(1,\ 3) の像は (42)\begin{pmatrix} 4 \\ 2 \end{pmatrix} で、44−6{}- 6+2{}+ 2=0{}= 0。どちらも像の直線の上にあります。

(3) yy=x2{}= x^2 に代入します。

x′+y′2\displaystyle \frac{x' + y'}{2}=(x′−y′2)2\displaystyle {}= \left(\frac{x' - y'}{2}\right)^2⟹2(x′+y′)\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 2(x' + y')=(x′−y′)2\displaystyle {}= (x' - y')^2(x−y)2=2(x+y)‾\underline{(x - y)^2 = 2(x + y)}

放物線を 45∘45^\circ 回して 2\sqrt{2} 倍したのですから、像もやはり放物線で、軸が斜めを向いています。検算は点で。(2, 4)(2,\ 4) の像は (62)\begin{pmatrix} 6 \\ 2 \end{pmatrix} で、左辺 (6−2)2(6 - 2)^2=16{}= 16、右辺 2(6+2)2(6 + 2)=16{}= 16。一致します。

動かない点

ここからは話題を変えて、動かないものを探します。

一次変換は、原点をかならず原点に移します(第 6 章 公式2)。ですから原点は、どんな一次変換でも動きません。問題は「ほかにも動かない点があるか」です。

点 P(p⃗)\mathrm{P}(\vec{p}) が動かない、とは Ap⃗A\vec{p}=p⃗{}= \vec{p} ということ。右辺を左辺に移すのですが、ここで Ap⃗A\vec{p}−p⃗{}- \vec{p} を (A−1)p⃗(A - 1)\vec{p} と書いてはいけません。AA から数の 11 は引けないからです。第 2 章で学んだとおり、数の 11 が行列の式に加わるときの姿は単位行列 EE でした。p⃗\vec{p}=Ep⃗{}= E\vec{p} と書き直せば

Ap⃗\displaystyle A\vec{p}−Ep⃗\displaystyle {}- E\vec{p}=0⃗\displaystyle {}= \vec{0}⟹(A−E)p⃗\displaystyle {}\Longrightarrow \quad (A - E)\vec{p}=0⃗\displaystyle {}= \vec{0}

見覚えのある形になりました。右辺が 0⃗\vec{0} の連立一次方程式、第 4 章の同次連立一次方程式です。解の分類もそのまま使えます。

公式5:不動点

一次変換 ff によって f(P)f(\mathrm{P})=P{}= \mathrm{P} となる点 P\mathrm{P} を、ff の不動点という。不動点を求めるには

(A−E)p⃗\displaystyle (A - E)\vec{p}=0⃗\displaystyle {}= \vec{0}

を解けばよい。AA−E{}- E の行列式を δ\delta=det⁡(A−E){}= \det(A - E) とすると

条件不動点
δ≠0\delta \neq 0原点のみ
δ=0\delta = 0 かつ A≠EA \neq E原点を通る 1 本の直線上のすべての点
A=EA = E平面上のすべての点

原点はつねに不動点である。

混んだ改札を人の波が通り抜けていく中で、たった 1 人その場に立ち止まっている人を探す。不動点を求めるとは、そういう作業です。

具体例で感じをつかみましょう。第 7 章で扱った直線 ℓ\ell に関する対称移動は、折り紙にたとえました。紙を折っても、折り目の上の点だけは動きません。ですから対称移動の不動点は、折り目である直線 ℓ\ell 全体です。表の 2 行目の場合にあたります。一方、原点まわりの回転(ただし 0∘0^\circ でない)で動かない点は、回転の中心である原点だけ。1 行目の場合です。

不動点を求める問題は (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0} という同次連立一次方程式に化け、det⁡(A−E)\det(A - E) が 00 かどうかで「原点だけ」か「直線まるごと」かが決まるということです。

例題5:不動点を求める

次の行列が表す一次変換の不動点を、すべて求めなさい。

(1) AA=(3212){}= \begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}

(2) BB=(2103){}= \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 0 & 3 \end{pmatrix}

(3) R(60∘)R(60^\circ)


【解答】

(1) AA−E{}- E=(2211){}= \begin{pmatrix} 2 & 2 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} で、δ\delta=2×1{}= 2 \times 1−2×1{}- 2 \times 1=0{}= 0。解は無数にあります。連立

{2x+2y=0x+y=0\begin{cases} 2x + 2y = 0 \\ x + y = 0 \end{cases}

は 2 本とも同じ条件 xx+y{}+ y=0{}= 0 を表しています。よって不動点は 直線 y=−x 上のすべての点‾\underline{\text{直線} \ y = -x \ \text{上のすべての点}}。

検算します。(1, −1)(1,\ -1) の像は (3−21−2)\begin{pmatrix} 3 - 2 \\ 1 - 2 \end{pmatrix}=(1−1){}= \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}。たしかに動きません。

(2) BB−E{}- E=(1102){}= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} で、δ\delta=1×2{}= 1 \times 2−1×0{}- 1 \times 0=2{}= 2≠0{}\neq 0。したがって不動点は 原点のみ‾\underline{\text{原点のみ}} です。

(3) R(60∘)R(60^\circ)−E{}- E=(cos⁡60∘−1−sin⁡60∘sin⁡60∘cos⁡60∘−1){}= \begin{pmatrix} \cos 60^\circ - 1 & -\sin 60^\circ \\ \sin 60^\circ & \cos 60^\circ - 1 \end{pmatrix} の行列式は

(cos⁡60∘−1)2\displaystyle (\cos 60^\circ - 1)^2+sin⁡260∘\displaystyle {}+ \sin^2 60^\circ=cos⁡260∘−2cos⁡60∘+1\displaystyle {}= \cos^2 60^\circ - 2\cos 60^\circ + 1+sin⁡260∘\displaystyle {}+ \sin^2 60^\circ=2\displaystyle {}= 2−2cos⁡60∘\displaystyle {}- 2\cos 60^\circ=1\displaystyle {}= 1

δ\delta=1{}= 1≠0{}\neq 0 なので 原点のみ‾\underline{\text{原点のみ}}。

一般に det⁡(R(θ)−E)\det(R(\theta) - E)=2{}= 2−2cos⁡θ{}- 2\cos\theta で、θ\theta が 360∘360^\circ の倍数でない限り 00 になりません。回して動かないのは回転の中心だけ、という当たり前の事実が、行列式の計算に現れているわけです。

動かない直線

不動点は「点が 1 歩も動かない」ことでした。直線についても同じことを考えられますが、条件をゆるめるとぐっと面白くなります。

直線 ℓ\ell の像が、また ℓ\ell になる。ただし ℓ\ell の上の点は、ℓ\ell の上をすべっていってよい。こういう直線を不動直線といいます。

動く歩道を思い浮かべてください。上に乗った人はどんどん運ばれていきますが、動く歩道という帯そのものは、空港の同じ場所に居続けます。不動直線は帯のほう、不動点は「止まっている人」のほうです。両者はまるで別の概念で、不動直線の上に不動点が 1 つもないことも珍しくありません。

P P′ Q O y = x y 軸 2 本の不動直線、動きかたは別 y = x:直線は自分自身に移るが、点は 2 倍の位置へすべる y 軸:点そのものが動かない(不動点)

原点を通る直線から調べましょう。方向ベクトル d⃗\vec{d} の直線の像は、公式1 により方向 Ad⃗A\vec{d} の直線でした。これがもとの直線と一致するのは、Ad⃗A\vec{d} が d⃗\vec{d} と平行なとき、つまり

Ad⃗\displaystyle A\vec{d}=kd⃗\displaystyle {}= k\vec{d}(k は実数)\displaystyle (k \ \text{は実数})

となるときです。第 6 章の実践問題で「f(p⃗)f(\vec{p})=kp⃗{}= k\vec{p} をみたす p⃗\vec{p}」を探した、あの計算がここで効いてきます。

実際に解いてみます。直線 yy=mx{}= mx の方向ベクトルは (1m)\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix} ですから

(abcd)(1m)\displaystyle \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix}=(a+bmc+dm)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} a + bm \\ c + dm \end{pmatrix}

これが (1m)\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix} の実数倍になる条件は、第 1 成分を kk=a{}= a+bm{}+ bm と見て、第 2 成分が kmkm になること。すなわち cc+dm{}+ dm=(a+bm)m{}= (a + bm)m で、整理すると mm の 2 次方程式が出ます。

公式6:不動直線

直線 ℓ\ell の像が ℓ\ell 自身になるとき、ℓ\ell を ff の不動直線という(ℓ\ell 上の点は ℓ\ell 上を動いてよい)。

原点を通る直線については、方向ベクトル d⃗ (≠0⃗)\vec{d} \ (\neq \vec{0}) が

Ad⃗\displaystyle A\vec{d}=kd⃗\displaystyle {}= k\vec{d}

をみたすこと、と言いかえられる。AA=(abcd){}= \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} のとき、原点を通る不動直線は次で求める。

  • 直線 yy=mx{}= mx … bm2bm^2+(a−d)m{}+ (a - d)m−c{}- c=0{}= 0 の実数解 mm
  • 直線 xx=0{}= 0(yy 軸)… bb=0{}= 0 のときに限り不動直線

yy 軸は yy=mx{}= mx の形に書けないので、別に調べるのを忘れない。

不動直線の意味を、もう一歩ふみこんで見てみます。Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d} が成り立つとき、その直線の上の点は、原点からの距離が一律に ∣k∣|k| 倍になるだけです。つまりその方向に限っては、この変換はただの拡大(または縮小、kk<0{}< 0 なら裏返しつき)にすぎない。ごちゃごちゃに見える変換も、不動直線の方向から眺めれば、ただ伸ばしているだけに見えるわけです。第 5 章で P−1APP^{-1}AP を対角行列にしたとき、「方眼紙の目盛りを AA が伸ばす 2 方向に合わせて引き直せば、ただの拡大に見える」と言いました。その「伸ばす 2 方向」の正体が、不動直線です。

不動直線とは像が自分自身になる直線のことで、原点を通るものは Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d} をみたす方向、つまり「その方向だけを見ればただの kk 倍になっている方向」だということです。

例題6:不動直線を求める

行列 AA=(4213){}= \begin{pmatrix} 4 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。次の問いに答えなさい。

(1) 原点を通る ff の不動直線をすべて求めなさい。

(2) (1) の各直線の上で、点がどのように動くかを述べなさい。また ff の不動点を求めなさい。

(3) ff が面積を何倍にするかを求め、(2) の結果と結びつけて説明しなさい。


【解答】

(1) aa=4{}= 4,bb=2{}= 2,cc=1{}= 1,dd=3{}= 3 を公式6 に入れます。

2m2\displaystyle 2m^2+(4−3)m\displaystyle {}+ (4 - 3)m−1\displaystyle {}- 1=0\displaystyle {}= 0⟹2m2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 2m^2+m\displaystyle {}+ m−1\displaystyle {}- 1=0\displaystyle {}= 0⟹(2m−1)(m+1)\displaystyle {}\Longrightarrow \quad (2m - 1)(m + 1)=0\displaystyle {}= 0

mm=12,{}= \dfrac{1}{2}, −1{}\ -1 です。yy 軸については bb=2{}= 2≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって

y=12xとy=−x‾\underline{y = \frac{1}{2}x \quad \text{と} \quad y = -x}

(2) それぞれの方向ベクトルで像を計算します。

A(21)\displaystyle A\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix}=(8+22+3)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 8 + 2 \\ 2 + 3 \end{pmatrix}=(105)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 10 \\ 5 \end{pmatrix}=5(21),\displaystyle {}= 5\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix},A(1−1)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}=(4−21−3)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 - 2 \\ 1 - 3 \end{pmatrix}=(2−2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ -2 \end{pmatrix}=2(1−1)\displaystyle {}= 2\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}

yy=12x{}= \dfrac{1}{2}x の上では原点からの距離が 5 倍‾\underline{5 \text{ 倍}}、yy=−x{}= -x の上では 2 倍‾\underline{2 \text{ 倍}} になり、どちらも原点から遠ざかる向きに動きます。

不動点は AA−E{}- E=(3212){}= \begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} の行列式が 3×23 \times 2−2×1{}- 2 \times 1=4{}= 4≠0{}\neq 0 なので 原点のみ‾\underline{\text{原点のみ}} です。2 本の不動直線があるのに、その上で止まっている点は原点しかない。動く歩道が 2 本あるようなものです。

(3) Δ\Delta=4×3{}= 4 \times 3−2×1{}- 2 \times 1=10{}= 10 なので 10 倍‾\underline{10 \text{ 倍}} です。

(2) で求めた 2 つの倍率を見てください。5×25 \times 2=10{}= 10。偶然ではありません。2 本の不動直線を 2 辺とする平行四辺形を考えると、一方の辺が 55 倍、もう一方が 22 倍に伸びるのですから、面積はその積の 1010 倍になります。行列式は、2 つの方向の倍率の積だったわけです。

変換の姿を読み取る

これで、行列を渡されたときに「この変換は平面に何をしているのか」を読み取る道具がそろいました。

  1. Δ\Delta を見る … 面積の倍率(絶対値)と、裏返すかどうか(符号)。Δ\Delta=0{}= 0 ならつぶれる
  2. 不動点を求める … (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0}
  3. 不動直線を求める … bm2bm^2+(a−d)m{}+ (a - d)m−c{}- c=0{}= 0 と、yy 軸の確認

最後の例題で、この 3 つを一度に使ってみます。題材は第 7 章で扱ったせん断、トランプの束を上から横に押したときの、あの変形です。

例題7:せん断の正体を読み取る

行列 AA=(1301){}= \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。次の問いに答えなさい。

(1) ff は図形の面積を何倍にするかを求めなさい。

(2) ff の不動点をすべて求めなさい。

(3) 原点を通る ff の不動直線をすべて求めなさい。

(4) xx 軸に平行な直線 yy=c{}= c(cc は定数)が、すべて不動直線であることを示しなさい。


【解答】

(1) Δ\Delta=1×1{}= 1 \times 1−3×0{}- 3 \times 0=1{}= 1 なので 1 倍‾\underline{1 \text{ 倍}}、つまり面積を変えません。符号も正なので向きも保ちます。

(2) AA−E{}- E=(0300){}= \begin{pmatrix} 0 & 3 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} で δ\delta=0{}= 0。方程式は 3y3y=0{}= 0 の 1 本だけですから、不動点は x 軸上のすべての点‾\underline{x \ \text{軸上のすべての点}} です。

(3) 公式6 に入れます。bb=3{}= 3,aa−d{}- d=0{}= 0,cc=0{}= 0 なので

3m2\displaystyle 3m^2=0\displaystyle {}= 0⟹m\displaystyle {}\Longrightarrow \quad m=0 (重解)\displaystyle {}= 0 \ (\text{重解})

yy 軸は bb=3{}= 3≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって原点を通る不動直線は x 軸のみ‾\underline{x \ \text{軸のみ}}。2 次方程式が重解になった、つまり「2 本あるはずの方向が 1 本に重なってしまった」形です。

(4) 直線 yy=c{}= c 上の点は (t, c)(t,\ c) と書けます(tt は実数)。その像は

(1301)(tc)\displaystyle \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} t \\ c \end{pmatrix}=(t+3cc)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} t + 3c \\ c \end{pmatrix}

第 2 成分は cc のままです。したがって像はやはり直線 yy=c{}= c の上にあります。しかも tt が実数全体を動けば tt+3c{}+ 3c も実数全体を動くので、像は直線 yy=c{}= c 全体になります。よって yy=c{}= c はすべて不動直線です。■\blacksquare

例題7 は、この章で見てきたことをひととおり含んでいます。面積は変わらないのに形は変わる(Δ\Delta=1{}= 1 でも AA≠E{}\neq E)。不動直線は無数にあるのに、点が止まっているのは xx 軸だけ。しかも不動直線が 1 本しかない(重解)ので、第 5 章の意味で対角行列にすることができません。行列式・不動点・不動直線という 3 つの手がかりは、それぞれ別のことを教えてくれるのです。

これで「行列と一次変換」の本文はおしまいです。第 1 章で数を四角く並べただけのものから始めて、積を決め、逆行列を作り、連立方程式を解き、nn 乗を計算し、そして平面の動きそのものを行列で書けるようになりました。最後に残った「面積は ∣Δ∣|\Delta| 倍」という宿題も、証明は 2 行で済みました。第 3 章で det⁡(AB)\det(AB)=det⁡Adet⁡B{}= \det A \det B を確かめておいたからです。積み上げてきたものが最後に 1 本につながる感じを、味わってもらえたなら嬉しく思います。

基礎確認問題(全5問)

まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。

問1

行列 (3124)\begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} が表す一次変換によって、面積 22 の三角形の像の面積を求めなさい。

答えを見る
答え

2020(Δ\Delta=3×4{}= 3 \times 4−1×2{}- 1 \times 2=10{}= 10 で 1010 倍)

自己採点:
記録を読み込み中…

問2

行列 (2436)\begin{pmatrix} 2 & 4 \\ 3 & 6 \end{pmatrix} が表す一次変換による、平面全体の像を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

直線 yy=32x{}= \dfrac{3}{2}x(Δ\Delta=0{}= 0 でつぶれる。像の方向は第 1 列 (23)\begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix})

自己採点:
記録を読み込み中…

問3

行列 (3002)\begin{pmatrix} 3 & 0 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} が表す一次変換の不動点を、すべて求めなさい。

答えを見る
答え

原点のみ(det⁡(A−E)\det(A - E)=2×1{}= 2 \times 1=2{}= 2≠0{}\neq 0)

自己採点:
記録を読み込み中…

問4

行列 (1201)\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換による、2 点 (1, 2)(1,\ 2),(3, 4)(3,\ 4) を結ぶ線分の像を求めなさい。

答えを見る
答え

2 点 (5, 2)(5,\ 2),(11, 4)(11,\ 4) を結ぶ線分(頂点の像を結べばよい)

自己採点:
記録を読み込み中…

問5

xx 軸に関する対称移動について、原点を通る不動直線をすべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

xx 軸と yy 軸(AA=(100−1){}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}。bb=0{}= 0 なので yy 軸も不動直線)

自己採点:
記録を読み込み中…

実践問題(全20問)

難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。

問1 ★

行列 AA=(2113){}= \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換による、点 (1, 2)(1,\ 2) を通り方向ベクトルが (11)\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} である直線の像を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

直線 4x4x−3y{}- 3y+5{}+ 5=0{}= 0

解説

公式1 のとおり、通る点の像と方向ベクトルの像を計算します。

A(12)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}=(2+21+6)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 + 2 \\ 1 + 6 \end{pmatrix}=(47),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 \\ 7 \end{pmatrix},A(11)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}=(2+11+3)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 + 1 \\ 1 + 3 \end{pmatrix}=(34)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}

Ad⃗A\vec{d}=(34){}= \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}≠0⃗{}\neq \vec{0} なので、像は点 (4, 7)(4,\ 7) を通り方向ベクトル (34)\begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix} の直線です。傾きは 43\dfrac{4}{3} ですから

y\displaystyle y−7\displaystyle {}- 7=43(x−4)\displaystyle {}= \frac{4}{3}(x - 4)⟹4x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 4x−3y\displaystyle {}- 3y+5\displaystyle {}+ 5=0\displaystyle {}= 0

検算します。もとの直線上の点 (0, 1)(0,\ 1)(tt=−1{}= -1)の像は (13)\begin{pmatrix} 1 \\ 3 \end{pmatrix} で、4×14 \times 1−3×3{}- 3 \times 3+5{}+ 5=0{}= 0。たしかに像の直線の上にあります。

自己採点:
記録を読み込み中…

問2 ★

行列 AA=(3112){}= \begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} が表す一次変換による、3 点 O(0, 0)\mathrm{O}(0,\ 0),A(2, 1)\mathrm{A}(2,\ 1),B(1, 3)\mathrm{B}(1,\ 3) を頂点とする三角形の像の面積を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

252\dfrac{25}{2}

解説

まずもとの三角形の面積を求めます。原点を頂点の 1 つとする三角形なので、2 辺のベクトルは (21)\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix},(13)\begin{pmatrix} 1 \\ 3 \end{pmatrix} です。

12∣2×3−1×1∣\displaystyle \frac{1}{2}\left| 2 \times 3 - 1 \times 1 \right|=52\displaystyle {}= \frac{5}{2}

次に倍率です。公式2 より、面積は ∣Δ∣|\Delta| 倍になります。

Δ\displaystyle \Delta=3×2\displaystyle {}= 3 \times 2−1×1\displaystyle {}- 1 \times 1=5\displaystyle {}= 5

よって像の面積は 52×5\dfrac{5}{2} \times 5=252{}= \dfrac{25}{2} です。

頂点の像は O\mathrm{O}↦(0, 0){}\mapsto (0,\ 0),A\mathrm{A}↦(7, 4){}\mapsto (7,\ 4),B\mathrm{B}↦(6, 7){}\mapsto (6,\ 7) で、面積は 12∣7×7−4×6∣\dfrac{1}{2}|7 \times 7 - 4 \times 6|=252{}= \dfrac{25}{2}。一致します。頂点の像を求めなくても、Δ\Delta だけで答えが出るところがこの公式の値打ちです。

自己採点:
記録を読み込み中…

問3 ★

行列 AA=(2003){}= \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換による、円 x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 の像の方程式と、像が囲む面積を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

楕円 x24\dfrac{x^2}{4}+y29{}+ \dfrac{y^2}{9}=1{}= 1、面積 6π6\pi

解説

公式4 の手順です。Δ\Delta=6{}= 6≠0{}\neq 0 で、A−1A^{-1}=(120013){}= \begin{pmatrix} \dfrac{1}{2} & 0 \\[4pt] 0 & \dfrac{1}{3} \end{pmatrix} ですから

x\displaystyle x=x′2,\displaystyle {}= \frac{x'}{2},y\displaystyle y=y′3\displaystyle {}= \frac{y'}{3}

これを x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 に代入します。

(x′2)2\displaystyle \left(\frac{x'}{2}\right)^2+(y′3)2\displaystyle {}+ \left(\frac{y'}{3}\right)^2=1\displaystyle {}= 1⟹x24\displaystyle {}\Longrightarrow \quad \frac{x^2}{4}+y29\displaystyle {}+ \frac{y^2}{9}=1\displaystyle {}= 1

横に 22 倍、縦に 33 倍に伸ばしたのですから、半径 11 の円が横半径 22・縦半径 33 の楕円になったわけです。

面積は公式2 で求まります。もとの円の面積は π\pi、∣Δ∣|\Delta|=6{}= 6 なので像の面積は 6π6\pi。楕円 x2a2\dfrac{x^2}{a^2}+y2b2{}+ \dfrac{y^2}{b^2}=1{}= 1 の面積が πab\pi ab であることの、これが一番手早い説明です。

自己採点:
記録を読み込み中…

問4 ★

行列 AA=(2112){}= \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} が表す一次変換の不動点を、すべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

直線 yy=−x{}= -x 上のすべての点

解説

公式5 のとおり (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0} を解きます。

A\displaystyle A−E\displaystyle {}- E=(1111),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix},det⁡(A−E)\displaystyle \det(A - E)=1×1\displaystyle {}= 1 \times 1−1×1\displaystyle {}- 1 \times 1=0\displaystyle {}= 0

行列式が 00 なので、解は原点だけではありません。連立

{x+y=0x+y=0\begin{cases} x + y = 0 \\ x + y = 0 \end{cases}

は 2 本が同じ式ですから、条件は xx+y{}+ y=0{}= 0 の 1 本だけ。よって不動点は直線 yy=−x{}= -x 上のすべての点です。

検算します。(2, −2)(2,\ -2) の像は (4−22−4)\begin{pmatrix} 4 - 2 \\ 2 - 4 \end{pmatrix}=(2−2){}= \begin{pmatrix} 2 \\ -2 \end{pmatrix}。動いていません。

自己採点:
記録を読み込み中…

問5 ★

行列 MM=(1−2−24){}= \begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 4 \end{pmatrix} が表す一次変換について、平面全体の像と、原点に移る点全体を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

平面全体の像は直線 yy=−2x{}= -2x、原点に移る点全体は直線 yy=12x{}= \dfrac{1}{2}x(xx−2y{}- 2y=0{}= 0)

解説

Δ\Delta=1×4{}= 1 \times 4−(−2)×(−2){}- (-2) \times (-2)=0{}= 0 なので、つぶれる変換です。点 (x, y)(x,\ y) の像を計算します。

(1−2−24)(xy)\displaystyle \begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=(x−2y−2x+4y)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} x - 2y \\ -2x + 4y \end{pmatrix}=(x−2y)(1−2)\displaystyle {}= (x - 2y)\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}

像はつねに (1−2)\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix} の実数倍です。xx−2y{}- 2y はあらゆる実数値をとるので、平面全体の像は原点を通り方向ベクトル (1−2)\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix} の直線、すなわち yy=−2x{}= -2x になります。

像が 0⃗\vec{0} になるのは xx−2y{}- 2y=0{}= 0 のとき。これが原点に移る点全体で、直線 yy=12x{}= \dfrac{1}{2}x です。

平面が 1 本の直線につぶれ、そのぶん 1 本の直線がまるごと原点に押し込まれた、という公式3 の表の 2 行目の姿です。

自己採点:
記録を読み込み中…

問6 ★

行列 AA=(4123){}= \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換について、原点を通る不動直線をすべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

yy=x{}= x と yy=−2x{}= -2x

解説

公式6 に aa=4{}= 4,bb=1{}= 1,cc=2{}= 2,dd=3{}= 3 を入れます。

bm2\displaystyle bm^2+(a−d)m\displaystyle {}+ (a - d)m−c\displaystyle {}- c=m2\displaystyle {}= m^2+m\displaystyle {}+ m−2\displaystyle {}- 2=0\displaystyle {}= 0⟹(m−1)(m+2)\displaystyle {}\Longrightarrow \quad (m - 1)(m + 2)=0\displaystyle {}= 0

mm=1,{}= 1, −2{}\ -2 です。yy 軸については bb=1{}= 1≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって yy=x{}= x と yy=−2x{}= -2x の 2 本です。

検算します。方向ベクトルの像を計算して、もとの実数倍になっているかを見ます。

A(11)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}=(55)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 5 \\ 5 \end{pmatrix}=5(11),\displaystyle {}= 5\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix},A(1−2)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}=(2−4)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ -4 \end{pmatrix}=2(1−2)\displaystyle {}= 2\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}

どちらも実数倍になりました。ちなみに倍率の積は 5×25 \times 2=10{}= 10 で、Δ\Delta=4×3{}= 4 \times 3−1×2{}- 1 \times 2=10{}= 10 と一致します。

自己採点:
記録を読み込み中…

問7 ★

行列 AA=(1231){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。2 点 A(4, 0)\mathrm{A}(4,\ 0),B(0, 6)\mathrm{B}(0,\ 6) について、線分 AB\mathrm{AB} の中点 M\mathrm{M} の像と、A\mathrm{A},B\mathrm{B} の像を結ぶ線分の中点を、それぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

どちらも点 (8, 9)(8,\ 9)

解説

M\mathrm{M} は (2, 3)(2,\ 3) です。その像を計算します。

A(23)\displaystyle A\begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix}=(2+66+3)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 + 6 \\ 6 + 3 \end{pmatrix}=(89)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 8 \\ 9 \end{pmatrix}

一方、A\mathrm{A},B\mathrm{B} の像は

A(40)\displaystyle A\begin{pmatrix} 4 \\ 0 \end{pmatrix}=(412),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 \\ 12 \end{pmatrix},A(06)\displaystyle A\begin{pmatrix} 0 \\ 6 \end{pmatrix}=(126)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 12 \\ 6 \end{pmatrix}

この 2 点の中点は (4+122, 12+62)\left(\dfrac{4 + 12}{2},\ \dfrac{12 + 6}{2}\right)=(8, 9){}= (8,\ 9)。一致しました。

中点の像は、像の中点です。公式1 で見たとおり、直線を媒介変数 p⃗\vec{p}=a⃗{}= \vec{a}+td⃗{}+ t\vec{d} で表したとき tt はそのまま生き残るので、内分の比は変換で変わりません。m:nm : n の内分点についても同じことが成り立ちます。

自己採点:
記録を読み込み中…

問8 ★

行列 AA=(2−111){}= \begin{pmatrix} 2 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換による、4 点 (0, 0)(0,\ 0),(3, 1)(3,\ 1),(4, 3)(4,\ 3),(1, 2)(1,\ 2) を頂点とする平行四辺形の像の頂点と、像の面積を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

頂点は (0, 0)(0,\ 0),(5, 4)(5,\ 4),(5, 7)(5,\ 7),(0, 3)(0,\ 3)、面積は 1515

解説

公式1 より、平行四辺形の像は頂点の像を順に結んだ図形です。

(0, 0)\displaystyle (0,\ 0)↦(0, 0),\displaystyle {}\mapsto (0,\ 0),(3, 1)\displaystyle (3,\ 1)↦(5, 4),\displaystyle {}\mapsto (5,\ 4),(4, 3)\displaystyle (4,\ 3)↦(5, 7),\displaystyle {}\mapsto (5,\ 7),(1, 2)\displaystyle (1,\ 2)↦(0, 3)\displaystyle {}\mapsto (0,\ 3)

像も平行四辺形になっていることを確かめます。(5, 4)(5,\ 4)+(0, 3){}+ (0,\ 3)=(5, 7){}= (5,\ 7) ですから、たしかに原点・(5, 4)(5,\ 4)・(0, 3)(0,\ 3) の 3 点から作られる平行四辺形です。

面積は 2 通りで確かめられます。もとの平行四辺形の面積は ∣3×2−1×1∣|3 \times 2 - 1 \times 1|=5{}= 5、Δ\Delta=2×1{}= 2 \times 1−(−1)×1{}- (-1) \times 1=3{}= 3 なので、公式2 より像の面積は 5×35 \times 3=15{}= 15。直接計算すると ∣5×3−4×0∣|5 \times 3 - 4 \times 0|=15{}= 15。合っています。

自己採点:
記録を読み込み中…

問9 ★★

行列 MM=(2412){}= \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} が表す一次変換による、直線 xx+2y{}+ 2y=2{}= 2 の像を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

1 点 (4, 2)(4,\ 2)

解説

Δ\Delta=2×2{}= 2 \times 2−4×1{}- 4 \times 1=0{}= 0 なので、つぶれる変換です。公式1 の 2 つ目の場合、つまり直線が 1 点に落ちる可能性を疑います。

直線 xx+2y{}+ 2y=2{}= 2 の方向ベクトルは (2−1)\begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix} です(xx の係数と yy の係数を入れかえて片方の符号を変える)。その像を計算します。

M(2−1)\displaystyle M\begin{pmatrix} 2 \\ -1 \end{pmatrix}=(4−42−2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 - 4 \\ 2 - 2 \end{pmatrix}=(00)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}

Ad⃗A\vec{d}=0⃗{}= \vec{0} なので、像は 1 点です。直線上の点を 1 つ選んで像を求めれば、それが答えになります。(0, 1)(0,\ 1) をとると

M(01)\displaystyle M\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=(42)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 \\ 2 \end{pmatrix}

像は点 (4, 2)(4,\ 2) です。別の点 (2, 0)(2,\ 0) で確かめても M(20)M\begin{pmatrix} 2 \\ 0 \end{pmatrix}=(42){}= \begin{pmatrix} 4 \\ 2 \end{pmatrix} で同じ点。直線がまるごと 1 点に押し込まれています。

自己採点:
記録を読み込み中…

問10 ★★

行列 AA=(1102){}= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} が表す一次変換による、円 x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 の像の方程式と、像が囲む面積を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

2x22x^2−2xy{}- 2xy+y2{}+ y^2=2{}= 2、面積 2π2\pi

解説

Δ\Delta=1×2{}= 1 \times 2−1×0{}- 1 \times 0=2{}= 2≠0{}\neq 0 なので逆行列があります。

A−1\displaystyle A^{-1}=12(2−101)\displaystyle {}= \frac{1}{2}\begin{pmatrix} 2 & -1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x=2x′−y′2,\displaystyle {}= \frac{2x' - y'}{2},y\displaystyle y=y′2\displaystyle {}= \frac{y'}{2}

公式4 に従い、x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 に代入します。

(2x′−y′2)2\displaystyle \left(\frac{2x' - y'}{2}\right)^2+(y′2)2\displaystyle {}+ \left(\frac{y'}{2}\right)^2=1\displaystyle {}= 1⟹(2x′−y′)2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad (2x' - y')^2+y′2\displaystyle {}+ y'^2=4\displaystyle {}= 4

展開して整理します。

4x′2\displaystyle 4x'^2−4x′y′\displaystyle {}- 4x'y'+y′2\displaystyle {}+ y'^2+y′2\displaystyle {}+ y'^2=4\displaystyle {}= 4⟹4x′2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 4x'^2−4x′y′\displaystyle {}- 4x'y'+2y′2\displaystyle {}+ 2y'^2=4\displaystyle {}= 4

両辺を 22 で割り、x′x',y′y' を xx,yy に書き直して

2x2\displaystyle 2x^2−2xy\displaystyle {}- 2xy+y2\displaystyle {}+ y^2=2\displaystyle {}= 2

面積は公式2 です。もとの円の面積 π\pi の ∣Δ∣|\Delta|=2{}= 2 倍で 2π2\pi。

検算します。もとの円上の点 (1, 0)(1,\ 0) の像は (1, 0)(1,\ 0) で、2×12 \times 1−0{}- 0+0{}+ 0=2{}= 2。点 (0, 1)(0,\ 1) の像は (1, 2)(1,\ 2) で、22−2×1×2{}- 2 \times 1 \times 2+4{}+ 4=2{}= 2。どちらも像の方程式をみたします。

自己採点:
記録を読み込み中…

問11 ★★

行列 AA=(3−120){}= \begin{pmatrix} 3 & -1 \\ 2 & 0 \end{pmatrix} が表す一次変換について、不動点をすべて求め、さらに原点を通る不動直線をすべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

不動点は直線 yy=2x{}= 2x 上のすべての点。原点を通る不動直線は yy=x{}= x と yy=2x{}= 2x

解説

不動点から求めます。

A\displaystyle A−E\displaystyle {}- E=(2−12−1),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 & -1 \\ 2 & -1 \end{pmatrix},det⁡(A−E)\displaystyle \det(A - E)=2×(−1)\displaystyle {}= 2 \times (-1)−(−1)×2\displaystyle {}- (-1) \times 2=0\displaystyle {}= 0

行列式が 00 なので原点以外にもあります。条件は 2x2x−y{}- y=0{}= 0 の 1 本ですから、不動点は直線 yy=2x{}= 2x 上のすべての点です。

不動直線は公式6 で求めます。aa=3{}= 3,bb=−1{}= -1,cc=2{}= 2,dd=0{}= 0 より

−m2\displaystyle -m^2+3m\displaystyle {}+ 3m−2\displaystyle {}- 2=0\displaystyle {}= 0⟹m2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad m^2−3m\displaystyle {}- 3m+2\displaystyle {}+ 2=0\displaystyle {}= 0⟹(m−1)(m−2)\displaystyle {}\Longrightarrow \quad (m - 1)(m - 2)=0\displaystyle {}= 0

mm=1,{}= 1, 2\ 2。yy 軸は bb=−1{}= -1≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって yy=x{}= x と yy=2x{}= 2x の 2 本です。

この 2 本の性格の違いに注目してください。

A(11)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}=(22)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ 2 \end{pmatrix}=2(11),\displaystyle {}= 2\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix},A(12)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}=(12)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}

yy=x{}= x の上では点が原点から 22 倍の位置へすべります。直線としては動きませんが、点は止まっていません。いっぽう yy=2x{}= 2x の上では点そのものが動かない。不動直線は「動く歩道」、不動点は「その上で止まっている人」だという違いが、ここにはっきり出ています。

自己採点:
記録を読み込み中…

問12 ★★

行列 AA=(a31a){}= \begin{pmatrix} a & 3 \\ 1 & a \end{pmatrix} が表す一次変換によって、図形の面積がつねに 66 倍になるという。定数 aa の値をすべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

aa=3,{}= 3, −3{}\ -3

解説

公式2 より、面積の倍率は ∣Δ∣|\Delta| です。

Δ\displaystyle \Delta=a×a\displaystyle {}= a \times a−3×1\displaystyle {}- 3 \times 1=a2\displaystyle {}= a^2−3\displaystyle {}- 3

条件は ∣a2−3∣|a^2 - 3|=6{}= 6 ですから、a2a^2−3{}- 3=6{}= 6 または a2a^2−3{}- 3=−6{}= -6 を解きます。

  • a2a^2−3{}- 3=6{}= 6 のとき a2a^2=9{}= 9 より aa=±3{}= \pm 3
  • a2a^2−3{}- 3=−6{}= -6 のとき a2a^2=−3{}= -3 となり、実数解はありません

よって aa=3,{}= 3, −3{}\ -3 です。

絶対値をはずすときに 2 通りを調べるのが要点で、負のほうを忘れると解の取りこぼしが起きます。この問題では負のほうに実数解がなかったため、結果として aa=±3{}= \pm 3 はどちらも Δ\Delta=6{}= 6>0{}> 0、つまり向きを保つ変換になりました。

自己採点:
記録を読み込み中…

問13 ★★

行列 AA=(1234){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} が表す一次変換による、直線 2x2x+y{}+ y=3{}= 3 の像を、公式4 の方法で求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

直線 5x5x−3y{}- 3y+6{}+ 6=0{}= 0

解説

Δ\Delta=1×4{}= 1 \times 4−2×3{}- 2 \times 3=−2{}= -2≠0{}\neq 0 なので逆行列があります。

A−1\displaystyle A^{-1}=1−2(4−2−31)\displaystyle {}= \frac{1}{-2}\begin{pmatrix} 4 & -2 \\ -3 & 1 \end{pmatrix}⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x=−2x′\displaystyle {}= -2x'+y′,\displaystyle {}+ y',y\displaystyle y=3x′−y′2\displaystyle {}= \frac{3x' - y'}{2}

これを 2x2x+y{}+ y=3{}= 3 に代入します。

2(−2x′+y′)\displaystyle 2(-2x' + y')+3x′−y′2\displaystyle {}+ \frac{3x' - y'}{2}=3\displaystyle {}= 3

両辺を 22 倍して整理します。

−8x′\displaystyle -8x'+4y′\displaystyle {}+ 4y'+3x′\displaystyle {}+ 3x'−y′\displaystyle {}- y'=6\displaystyle {}= 6⟹−5x′\displaystyle {}\Longrightarrow \quad -5x'+3y′\displaystyle {}+ 3y'=6\displaystyle {}= 6

よって像は 5x5x−3y{}- 3y+6{}+ 6=0{}= 0 です。

公式1 の方法でも確かめておきます。直線 2x2x+y{}+ y=3{}= 3 は点 (0, 3)(0,\ 3) を通り方向ベクトルが (1−2)\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}。像は点 A(03)A\begin{pmatrix} 0 \\ 3 \end{pmatrix}=(612){}= \begin{pmatrix} 6 \\ 12 \end{pmatrix} を通り、方向ベクトルは A(1−2)A\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}=(−3−5){}= \begin{pmatrix} -3 \\ -5 \end{pmatrix}。傾き 53\dfrac{5}{3} で点 (6, 12)(6,\ 12) を通る直線は 5x5x−3y{}- 3y+6{}+ 6=0{}= 0 で、一致します。直線ならどちらの方法でもよいということです。

自己採点:
記録を読み込み中…

問14 ★★

行列 AA=(1011){}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} が表す一次変換による、放物線 yy=x2{}= x^2 の像の方程式を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

yy=x2{}= x^2+x{}+ x

解説

Δ\Delta=1×1{}= 1 \times 1−0×1{}- 0 \times 1=1{}= 1≠0{}\neq 0 です。

A−1\displaystyle A^{-1}=(10−11)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x=x′,\displaystyle {}= x',y\displaystyle y=−x′\displaystyle {}= -x'+y′\displaystyle {}+ y'

yy=x2{}= x^2 に代入します。

−x′\displaystyle -x'+y′\displaystyle {}+ y'=x′2\displaystyle {}= x'^2⟹y′\displaystyle {}\Longrightarrow \quad y'=x′2\displaystyle {}= x'^2+x′\displaystyle {}+ x'⟹y\displaystyle {}\Longrightarrow \quad y=x2\displaystyle {}= x^2+x\displaystyle {}+ x

検算します。yy=x2{}= x^2 上の点 (2, 4)(2,\ 4) の像は A(24)A\begin{pmatrix} 2 \\ 4 \end{pmatrix}=(26){}= \begin{pmatrix} 2 \\ 6 \end{pmatrix} で、222^2+2{}+ 2=6{}= 6。合っています。

この AA は第 7 章 公式4 のせん断(yy 軸方向に押すタイプ)です。各点を、xx 座標に応じて縦にずらしている。放物線 yy=x2{}= x^2 の各点を xx だけ持ち上げたのですから、像が yy=x2{}= x^2+x{}+ x になるのは当然でした。実際 yy=x2{}= x^2+x{}+ x=(x+12)2{}= \left(x + \dfrac{1}{2}\right)^2−14{}- \dfrac{1}{4} で、形の変わらない放物線が平行移動しただけのものになっています。

自己採点:
記録を読み込み中…

問15 ★★

行列 MM=(1224){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} が表す一次変換による、3 点 (1, 0)(1,\ 0),(0, 1)(0,\ 1),(2, 3)(2,\ 3) の像を求め、これら 3 点が三角形を作らないことを示しなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

像は (1, 2)(1,\ 2),(2, 4)(2,\ 4),(8, 16)(8,\ 16) の 3 点で、いずれも直線 yy=2x{}= 2x 上にあるため三角形にならない

解説

Δ\Delta=1×4{}= 1 \times 4−2×2{}- 2 \times 2=0{}= 0 です。つぶれる変換だと分かった時点で、答えは半分見えています。

像を計算します。

M(10)\displaystyle M\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=(12),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix},M(01)\displaystyle M\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=(24),\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ 4 \end{pmatrix},M(23)\displaystyle M\begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix}=(816)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 8 \\ 16 \end{pmatrix}

(1, 2)(1,\ 2),(2, 4)(2,\ 4)=2×(1, 2){}= 2 \times (1,\ 2),(8, 16)(8,\ 16)=8×(1, 2){}= 8 \times (1,\ 2) で、3 点とも (12)\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix} の実数倍、すなわち直線 yy=2x{}= 2x の上にあります。同一直線上の 3 点は三角形を作りません。■\blacksquare

公式2 から見れば、もとの三角形の面積がいくつであっても像の面積は ∣Δ∣|\Delta|=0{}= 0 倍、つまり 00 です。面積 00 の「三角形」はつぶれているというのが、この問題の本質です。

自己採点:
記録を読み込み中…

問16 ★★

0∘0^\circ<θ{}< \theta<180∘{}< 180^\circ のとき、原点まわりの θ\theta の回転には、原点を通る不動直線が 1 本も存在しないことを示しなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

bm2bm^2+(a−d)m{}+ (a - d)m−c{}- c=−sin⁡θ (m2+1){}= -\sin\theta\,(m^2 + 1)=0{}= 0 が実数解をもたず、bb=−sin⁡θ{}= -\sin\theta≠0{}\neq 0 より yy 軸も不動直線でないため

解説

回転を表す行列は R(θ)R(\theta)=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ){}= \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix} ですから

a\displaystyle a=cos⁡θ,\displaystyle {}= \cos\theta,b\displaystyle b=−sin⁡θ,\displaystyle {}= -\sin\theta,c\displaystyle c=sin⁡θ,\displaystyle {}= \sin\theta,d\displaystyle d=cos⁡θ\displaystyle {}= \cos\theta

公式6 の方程式に入れます。aa−d{}- d=0{}= 0 に注意して

bm2\displaystyle bm^2+(a−d)m\displaystyle {}+ (a - d)m−c\displaystyle {}- c=−sin⁡θ⋅m2\displaystyle {}= -\sin\theta \cdot m^2−sin⁡θ\displaystyle {}- \sin\theta=−sin⁡θ (m2+1)\displaystyle {}= -\sin\theta\,(m^2 + 1)

0∘0^\circ<θ{}< \theta<180∘{}< 180^\circ では sin⁡θ\sin\theta>0{}> 0 であり、m2m^2+1{}+ 1>0{}> 0 ですから、この式は決して 00 になりません。よって yy=mx{}= mx の形の不動直線はありません。

yy 軸についても、bb=−sin⁡θ{}= -\sin\theta≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。以上より、原点を通る不動直線は 1 本も存在しません。■\blacksquare

図で考えれば当たり前の結論です。原点を通る直線を θ\theta だけ回せば、θ\theta が 180∘180^\circ の倍数でない限り必ず別の直線になります。当たり前のことが、公式6 の 2 次方程式が実数解をもたないという形で現れたわけです(θ\theta=180∘{}= 180^\circ なら R(180∘)R(180^\circ)=−E{}= -E となり、逆にすべての直線が不動直線になります)。

自己採点:
記録を読み込み中…

問17 ★★★

行列 AA=(120−1){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。ff の不動点と、ff の不動直線を、原点を通らないものも含めてすべて求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

不動点は xx 軸上のすべての点。不動直線は xx 軸(yy=0{}= 0)と、直線 xx+y{}+ y=c{}= c(cc は任意の実数)

解説

まず A2A^2=(120−1)(120−1){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}=(12−201){}= \begin{pmatrix} 1 & 2 - 2 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}=E{}= E。22 回行うともとに戻る変換です。

不動点は (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0} から求めます。

A\displaystyle A−E\displaystyle {}- E=(020−2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ 0 & -2 \end{pmatrix}

条件は 2y2y=0{}= 0、すなわち yy=0{}= 0。不動点は xx 軸上のすべての点です。

原点を通る不動直線は公式6 から。bb=2{}= 2,aa−d{}- d=1{}= 1−(−1){}- (-1)=2{}= 2,cc=0{}= 0 なので

2m2\displaystyle 2m^2+2m\displaystyle {}+ 2m=0\displaystyle {}= 0⟹2m(m+1)\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 2m(m + 1)=0\displaystyle {}= 0⟹m\displaystyle {}\Longrightarrow \quad m=0,\displaystyle {}= 0, −1\displaystyle {}\ -1

yy 軸は bb=2{}= 2≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって yy=0{}= 0 と yy=−x{}= -x の 2 本です。

原点を通らない不動直線を調べます。不動直線の方向ベクトル d⃗\vec{d} は Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d} をみたさなければなりません(像の方向がもとと平行である必要があるため)。上で求めた 2 つの方向 (10)\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix},(1−1)\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix} だけが候補です。

方向 (10)\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}、つまり直線 yy=c{}= c の上の点 (t, c)(t,\ c) の像は

(120−1)(tc)\displaystyle \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} t \\ c \end{pmatrix}=(t+2c−c)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} t + 2c \\ -c \end{pmatrix}

像は直線 yy=−c{}= -c の上です。yy=c{}= c と一致するのは cc=−c{}= -c、すなわち cc=0{}= 0 のときだけ。xx 軸のみが不動直線です。

方向 (1−1)\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}、つまり直線 xx+y{}+ y=c{}= c の上の点 (t, c−t)(t,\ c - t) の像は

(120−1)(tc−t)\displaystyle \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} t \\ c - t \end{pmatrix}=(t+2c−2t−(c−t))\displaystyle {}= \begin{pmatrix} t + 2c - 2t \\ -(c - t) \end{pmatrix}=(2c−tt−c)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2c - t \\ t - c \end{pmatrix}

座標の和は (2c−t)(2c - t)+(t−c){}+ (t - c)=c{}= c です。tt によらず和が cc のまま。しかも tt が実数全体を動けば 2c2c−t{}- t も実数全体を動くので、像は直線 xx+y{}+ y=c{}= c 全体になります。よって cc がどんな値でも xx+y{}+ y=c{}= c は不動直線です。

以上より、不動直線は xx 軸と、直線 xx+y{}+ y=c{}= c(cc は任意の実数)です。

この変換の正体は、直線 yy=0{}= 0 を折り目、方向 (1−1)\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix} を折り返す向きとする「斜めの折り返し」です。ふつうの対称移動(第 7 章)は折り目に垂直な向きに折り返しますが、こちらは斜めに折り返している。折り目の上の点が動かないこと、折り返す向きの直線が無数に不動になることは、どちらも折り紙の絵で納得できます。Δ\Delta=−1{}= -1(裏返し、面積はそのまま)も、折り返しであることと合っています。

自己採点:
記録を読み込み中…

問18 ★★★

曲線 5x25x^2−4xy{}- 4xy+y2{}+ y^2=1{}= 1 が囲む図形の面積を、適当な一次変換を利用して求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

π\pi

解説

左辺を、平方完成の要領で 22 つの平方の和にまとめます。

5x2\displaystyle 5x^2−4xy\displaystyle {}- 4xy+y2\displaystyle {}+ y^2=(y2−4xy+4x2)\displaystyle {}= (y^2 - 4xy + 4x^2)+x2\displaystyle {}+ x^2=(y−2x)2\displaystyle {}= (y - 2x)^2+x2\displaystyle {}+ x^2

そこで uu=x{}= x,vv=y{}= y−2x{}- 2x とおけば、条件は u2u^2+v2{}+ v^2=1{}= 1、つまり単位円になります。

この置きかえは一次変換です。

(uv)\displaystyle \begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix}=(10−21)(xy)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ -2 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}

この行列を GG とすると det⁡G\det G=1×1{}= 1 \times 1−0×(−2){}- 0 \times (-2)=1{}= 1 です。GG が表す一次変換は、もとの曲線が囲む図形を、半径 11 の円(面積 π\pi)に移します。公式2 より、円の面積はもとの図形の面積の ∣det⁡G∣|\det G| 倍です。

∣det⁡G∣|\det G|=1{}= 1 ですから、もとの図形の面積も π\pi です。

面積を変えない変換で見慣れた形に直してしまう、というのがこの解き方の要領です。GG は第 7 章のせん断で、Δ\Delta=1{}= 1 なので面積を変えません。だから傾いてつぶれたような楕円でも、面積は円と同じ π\pi。

なお G−1G^{-1}=(1021){}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 2 & 1 \end{pmatrix} を使えば、単位円の像として直接もとの曲線が出ることも確かめられます。曲線上の点として、たとえば (0, 1)(0,\ 1) は 5×05 \times 0−0{}- 0+1{}+ 1=1{}= 1 をみたします。

自己採点:
記録を読み込み中…

問19 ★★★

逆変換をもつ一次変換 ff について、原点を通るすべての直線が ff の不動直線であるならば、ff を表す行列が AA=kE{}= kE(kk は 00 でない実数)の形に限ることを示しなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

e1⃗\vec{e_1},e2⃗\vec{e_2},e1⃗\vec{e_1}+e2⃗{}+ \vec{e_2} の 3 方向に条件を使うと AA の 22 つの列が (k0)\begin{pmatrix} k \\ 0 \end{pmatrix},(0k)\begin{pmatrix} 0 \\ k \end{pmatrix} となり AA=kE{}= kE が導かれる

解説

公式6 より、原点を通る直線が不動直線であることは、その方向ベクトル d⃗\vec{d} について Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d} となる実数 kk が存在することと同じでした。仮定により、どの方向ベクトルについてもそうなっています。

まず基本ベクトルに使います。xx 軸が不動直線なので、ある実数 k1k_1 があって

Ae1⃗\displaystyle A\vec{e_1}=k1e1⃗\displaystyle {}= k_1\vec{e_1}=(k10)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} k_1 \\ 0 \end{pmatrix}

第 6 章 公式4 より、これは AA の第 1 列です。同様に yy 軸が不動直線なので、ある実数 k2k_2 があって AA の第 2 列は (0k2)\begin{pmatrix} 0 \\ k_2 \end{pmatrix}。ここまでで

A\displaystyle A=(k100k2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} k_1 & 0 \\ 0 & k_2 \end{pmatrix}

次に直線 yy=x{}= x に使います。方向ベクトルは e1⃗\vec{e_1}+e2⃗{}+ \vec{e_2}=(11){}= \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} で、その像は

A(11)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}=(k1k2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} k_1 \\ k_2 \end{pmatrix}

これが (11)\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} の実数倍でなければなりません。(k1k2)\begin{pmatrix} k_1 \\ k_2 \end{pmatrix}=k(11){}= k\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} より k1k_1=k2{}= k_2=k{}= k。よって

A\displaystyle A=(k00k)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} k & 0 \\ 0 & k \end{pmatrix}=kE\displaystyle {}= kE

逆変換をもつことから Δ\Delta=k2{}= k^2≠0{}\neq 0、すなわち kk≠0{}\neq 0 です。■\blacksquare

逆に AA=kE{}= kE ならば、どの d⃗\vec{d} についても Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d} ですから、原点を通るすべての直線が不動直線になります。kEkE は第 7 章の拡大・縮小(kk<0{}< 0 なら原点対称もつきます)で、どの方向にも同じ倍率で伸びる変換。「どの方向もえこひいきしない」変換は、これしかないということです。たった 3 方向に条件を使うだけで結論が出てしまうところが、線形性のありがたみです。

自己採点:
記録を読み込み中…

問20 ★★★

行列 AA=(3113){}= \begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} が表す一次変換を ff とする。原点を通る ff の不動直線をすべて求め、円 x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 の像の方程式と、像が囲む面積を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

不動直線は yy=x{}= x と yy=−x{}= -x。像は 5x25x^2−6xy{}- 6xy+5y2{}+ 5y^2=32{}= 32、面積は 8π8\pi

解説

不動直線を公式6 で求めます。aa=3{}= 3,bb=1{}= 1,cc=1{}= 1,dd=3{}= 3 なので

m2\displaystyle m^2+0⋅m\displaystyle {}+ 0 \cdot m−1\displaystyle {}- 1=0\displaystyle {}= 0⟹m\displaystyle {}\Longrightarrow \quad m=±1\displaystyle {}= \pm 1

yy 軸は bb=1{}= 1≠0{}\neq 0 なので不動直線ではありません。よって yy=x{}= x と yy=−x{}= -x です。それぞれの方向の倍率を調べます。

A(11)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}=(44)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 4 \\ 4 \end{pmatrix}=4(11),\displaystyle {}= 4\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix},A(1−1)\displaystyle A\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}=(2−2)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} 2 \\ -2 \end{pmatrix}=2(1−1)\displaystyle {}= 2\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}

yy=x{}= x の方向に 44 倍、yy=−x{}= -x の方向に 22 倍に伸ばす変換だと分かりました。

円の像は公式4 です。Δ\Delta=3×3{}= 3 \times 3−1×1{}- 1 \times 1=8{}= 8 で

A−1\displaystyle A^{-1}=18(3−1−13)\displaystyle {}= \frac{1}{8}\begin{pmatrix} 3 & -1 \\ -1 & 3 \end{pmatrix}⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow \quad x=3x′−y′8,\displaystyle {}= \frac{3x' - y'}{8},y\displaystyle y=−x′+3y′8\displaystyle {}= \frac{-x' + 3y'}{8}

x2x^2+y2{}+ y^2=1{}= 1 に代入して、両辺を 6464 倍します。

(3x′−y′)2\displaystyle (3x' - y')^2+(−x′+3y′)2\displaystyle {}+ (-x' + 3y')^2=64\displaystyle {}= 64 (9x′2−6x′y′+y′2)\displaystyle (9x'^2 - 6x'y' + y'^2)+(x′2−6x′y′+9y′2)\displaystyle {}+ (x'^2 - 6x'y' + 9y'^2)=64\displaystyle {}= 64⟹10x′2\displaystyle {}\Longrightarrow \quad 10x'^2−12x′y′\displaystyle {}- 12x'y'+10y′2\displaystyle {}+ 10y'^2=64\displaystyle {}= 64

両辺を 22 で割って 5x25x^2−6xy{}- 6xy+5y2{}+ 5y^2=32{}= 32 です。

面積は公式2 より、円の面積 π\pi の ∣Δ∣|\Delta|=8{}= 8 倍で 8π8\pi。

3 つの答えは、きれいにつながっています。この変換は yy=x{}= x 方向に 44 倍、yy=−x{}= -x 方向に 22 倍に伸ばすのですから、単位円は yy=x{}= x 方向の半径が 44、yy=−x{}= -x 方向の半径が 22 の楕円になるはずです。楕円の面積の公式(j03)で計算すると π×4×2\pi \times 4 \times 2=8π{}= 8\pi。行列式から求めた 8π8\pi と一致しました。倍率の積 4×24 \times 2=8{}= 8 が Δ\Delta に等しいことも、あらためて確かめられます。

第 5 章で P−1APP^{-1}AP を対角行列にする話をしたとき、「AA が伸ばす 2 方向に合わせて目盛りを引き直せば、ただの拡大に見える」と言いました。その 2 方向がこの問題の yy=x{}= x と yy=−x{}= -x で、引き直したあとの姿が (4002)\begin{pmatrix} 4 & 0 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} です。不動直線を求めるとは、その変換にとっていちばん素直な 2 方向をさがすことにほかなりません。

自己採点:
記録を読み込み中…

数学小話コーナー

面積の倍率は、積分にも効いている

この章で証明した「面積は ∣Δ∣|\Delta| 倍」は、じつは高校数学の別の場所で、名前を変えて働いています。積分の置換積分です。

微分積分の第 14 章で、∫f(x) dx\int f(x)\,dx の変数を xx=g(t){}= g(t) と置きかえるとき、dxdx を g′(t) dtg'(t)\,dt に取りかえました。あの g′(t)g'(t) は何だったのでしょうか。

xx 軸の上の長さ dtdt の区間が、置きかえによって長さ ∣g′(t)∣ dt|g'(t)|\,dt の区間に移る。だから「長さの倍率」を掛けて帳尻を合わせていたのです。1 次元での話ですが、やっていることはこの章とまったく同じです。

面積(2 次元)でも同じことが必要になります。xyxy 平面の積分を uvuv 平面の積分に置きかえるとき、掛けるべき倍率が

∣det⁡(∂x∂u∂x∂v∂y∂u∂y∂v)∣\left| \det \begin{pmatrix} \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v} \\[6pt] \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v} \end{pmatrix} \right|

です。この行列式をヤコビアン(関数行列式)といいます。ドイツのカール・グスタフ・ヤコビが 1841 年の論文で系統立てて扱ったことにちなむ名前です。

置きかえが一次変換なら、ヤコビアンはそのまま ∣Δ∣|\Delta| です。では曲がった置きかえのときは。ここで効くのが「ごく小さい範囲で見れば、なめらかな変換は一次変換と見分けがつかない」という考え方です。微分が接線で曲線を近似したのと同じことを、平面の変換に対して行う。マス目 1 つぶんの小さな長方形は、移されるとほぼ平行四辺形になり、その面積の倍率がヤコビアンだ、というわけです。

有名な例が極座標です。xx=rcos⁡θ{}= r\cos\theta,yy=rsin⁡θ{}= r\sin\theta とおくと

det⁡(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ)\displaystyle \det \begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta \\ \sin\theta & r\cos\theta \end{pmatrix}=rcos⁡2θ\displaystyle {}= r\cos^2\theta+rsin⁡2θ\displaystyle {}+ r\sin^2\theta=r\displaystyle {}= r

大学の教科書で dx dydx\,dy を r dr dθr\,dr\,d\theta と書きかえる、あの rr の正体です。半径が大きいほど、同じ角度でも扇形の面積は大きい。図で見れば当たり前のことが、行列式として現れています。

豆知識

この置きかえを使うと、∫−∞∞e−x2 dx\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\,dx=π\displaystyle {}= \sqrt{\pi} という、統計の正規分布を支える等式が証明できます。高校の範囲では原始関数が書けないので手も足も出ないのですが、22 乗して平面の積分と見なし、極座標に移すと、rr が現れたおかげであっさり計算できてしまう。次元を上げて楽になる、という第 6 章の同次座標と同じ発想です。

画像を回すと、なぜ少し汚くなるのか

写真編集アプリで画像を 30∘30^\circ ほど傾けて、拡大してみてください。斜めの輪郭がギザギザになっていたり、細かい模様がにじんでいたりするはずです。回転を表す行列は Δ\Delta=1{}= 1 で面積も長さも変えないのに、なぜ画質が落ちるのでしょうか。

原因は、デジタル画像が格子点の上にしか存在しないことです。画像は明るさの数を縦横に並べた行列でした(第 1 章)。その数が置かれているのは、(0, 0)(0,\ 0),(1, 0)(1,\ 0),(2, 0)(2,\ 0),… という整数の座標だけ。ところが回転行列を整数の座標にかけると

R(30∘)(10)\displaystyle R(30^\circ)\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=(3212)\displaystyle {}= \begin{pmatrix} \dfrac{\sqrt{3}}{2} \\[4pt] \dfrac{1}{2} \end{pmatrix}

移った先は、格子点から外れてしまいます。第 7 章の小話で、格子を格子に移す回転は 60∘60^\circ,90∘90^\circ,120∘120^\circ,180∘180^\circ に限られると話しました。裏を返せば、それ以外の角度では移した先に画素が無いのです。

そこで画像処理のソフトは、行き先のまわりにある何個かの画素から明るさを推定します。いちばん近い画素の値をそのまま使う(最近傍法)、まわり 4 画素の平均をとる(バイリニア法)、1616 画素を使ってなめらかにつなぐ(バイキュービック法)。この推定を補間といいます。ギザギザやにじみは、補間の誤差です。回転を 2 回、3 回と繰り返すと誤差が積み重なるので、編集ソフトが「角度を何度も変えるより、元画像から 1 回で目的の角度に回すほうがきれい」と忠告してくるのは、このためです。

縮小では、もっと目立つ現象が起きます。細かい縞模様のシャツを小さく写すと、元には無いはずの太い縞やうねりが現れる。モアレ、より一般にはエイリアシングと呼ばれます。画素の間隔より細かい模様は、そもそも数として記録しようがない。無理に間引くと、間引きかたと模様の周期が干渉して、まったく別の模様に化けてしまうのです。

豆知識

90∘90^\circ,180∘180^\circ,270∘270^\circ の回転と、左右・上下の反転だけは、格子が格子にそのまま重なるので画質がまったく落ちません。行列の成分が 00 と ±1\pm 1 だけだからです。第 7 章の厳密定義で、整数格子を保つ直交行列が 88 個(二面体群 D4D_4)しかないことを示しました。写真アプリの「回転」ボタンが 90∘90^\circ 単位で用意されているのは、あの 88 個だけが安全な操作だからです。

かき混ぜても、動かない点がある

この章では、不動点を (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0} という方程式で求めました。一次変換だから方程式が書けたわけですが、もっと一般の「ぐにゃぐにゃした変形」ではどうでしょうか。

驚いたことに、あるかどうかだけは、計算しなくても分かる場合があります。

ブラウワーの不動点定理:円板から自分自身への連続な写像は、かならず不動点をもつ。

オランダの数学者 L.E.J. ブラウワーが 1910 年ごろに証明したものです。連続でありさえすればよく、伸ばそうが縮めようがねじろうが関係ありません。

よく引き合いに出されるのが、コーヒーをかき混ぜる話です。カップの中の液体をどれだけかき回しても、かき混ぜ終わった瞬間に、もとの位置に戻っている液体の粒が少なくとも 1 つある。どこにあるかは分かりませんが、必ずあります。地図でも同じで、日本地図を日本国内の床に広げて置くと、地図上のある 1 点は、それが表している実際の地点のちょうど真上に来ています。

1 次元なら、これは中間値の定理そのものです。区間 [0, 1][0,\ 1] から [0, 1][0,\ 1] への連続関数 ff について、g(x)g(x)=f(x){}= f(x)−x{}- x とおくと g(0)g(0)≥0{}\geq 0,g(1)g(1)≤0{}\leq 0 なので、途中で g(x)g(x)=0{}= 0 になる点がある。つまり f(x)f(x)=x{}= x。2 次元以上でも同じことが成り立つ、というのがブラウワーの主張です。

この定理が効くのは、経済学です。1950 年、ジョン・ナッシュは「どんなゲームにも均衡(誰も一人だけ戦略を変える得がない状態)が存在する」ことを、不動点定理で証明しました。均衡とは、みんなの戦略に対する最適応答がまた同じ戦略に戻ってくる状態、つまり不動点です。均衡がどこにあるかは教えてくれませんが、探しても無駄ではないことは保証してくれる。

豆知識

ブラウワー自身は、後年この定理と折り合いが悪くなりました。彼は数学の証明とは対象を実際に構成することだと考える直観主義の主導者になり、「存在するが、どこにあるかは言えない」という型の議論を認めなくなったからです。自分の名を冠した有名な定理の証明法を、自分で否定したことになります。一次変換の不動点なら連立方程式を解けば場所まで分かるのですから、ブラウワーも文句を言わなかったはずです。

厳密定義(発展)

※ここは発展ページです。高校の範囲では「面積は ∣Δ∣|\Delta| 倍」「不動点は (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=0⃗{}= \vec{0}」「不動直線は Ad⃗A\vec{d}=kd⃗{}= k\vec{d}」が使えれば十分です。ここでは、本文で「マス目で近似すれば」と流した面積の議論をどう厳密にするのか、不動直線の本数が何で決まるのか、平行移動を許すと不動点の話がどう変わるのか、そして一般の一次変換が図形に何をしているのかを、線形代数の言葉でまとめておきます。第 3 章(行列式と GLnGL_n)、第 4 章(核と階数)、第 5 章(固有値と対角化)、第 6 章(線形写像と次元定理)、第 7 章(直交行列)、第 8 章(可逆性と QR 分解)の厳密定義を前提にします。この分野の最後のページなので、締めくくりとして「この先へ」を長めに置きました。

面積を測るとはどういうことか

本文の証明は、平行四辺形までは完全でした。あやしいのは「一般の図形も、細かいマス目で埋めれば同じ」という最後の一歩です。そもそも「図形の面積」とは何か、という問いに答えていないからである。

定義1:平行体と符号つき体積

Rn\mathbb{R}^n のベクトル a1⃗,\vec{a_1}, …,\ \dots, an⃗\ \vec{a_n} に対し

P(a1⃗, …, an⃗)\displaystyle P(\vec{a_1},\ \dots,\ \vec{a_n})={ t1a1⃗+⋯+tnan⃗ ∣ 0≤ti≤1 }\displaystyle {}= \{\, t_1\vec{a_1} + \cdots + t_n\vec{a_n} \ \mid\ 0 \leq t_i \leq 1 \,\}

を、これらが張る平行体という(nn=2{}= 2 なら平行四辺形、nn=3{}= 3 なら平行六面体である)。

a1⃗,\vec{a_1}, …,\ \dots, an⃗\ \vec{a_n} を列に並べた nn 次正方行列を MM とするとき、平行体の体積は ∣det⁡M∣|\det M| に等しい。det⁡M\det M 自身は符号つき体積と呼ばれ、その符号は a1⃗,\vec{a_1}, …,\ \dots, an⃗\ \vec{a_n} の並びの向きを表す。

体積を「nn 個のベクトルに 1 つの数を対応させる関数」と見ると、それが満たすべき性質は 3 つしかない。どの変数についても線型であること(1 つの辺を 22 倍すれば体積も 22 倍)、同じベクトルが 2 つあれば 00 になること(つぶれている)、そして単位立方体の体積が 11 であること。この 3 条件をみたす関数は det⁡\det ただ 1 つであることが証明できる。行列式とは、体積そのものの定義であると言ってよい。第 3 章では成分の式として天下り的に導入したが、本籍はここにある。

定理1:一次変換による測度の変化

AA を nn 次実正方行列、ff をそれが表す線形写像、SS⊂Rn{}\subset \mathbb{R}^n をジョルダン可測な有界集合とする。このとき f(S)f(S) もジョルダン可測であり

μ(f(S))\displaystyle \mu(f(S))=∣det⁡A∣⋅μ(S)\displaystyle {}= |\det A| \cdot \mu(S)

が成り立つ(μ\mu は面積・体積を表す)。

証明の筋 まず det⁡A\det A≠0{}\neq 0 とする。定義1 より、単位立方体の像の体積は ∣det⁡A∣|\det A| である。SS を一辺 1N\dfrac{1}{N} の格子の小立方体で内側から埋め、外側から覆う。小立方体 1 つの像は平行体で、その体積は ∣det⁡A∣Nn\dfrac{|\det A|}{N^n} にほかならない。したがって

∣det⁡A∣⋅(内側の和)\displaystyle |\det A| \cdot (\text{内側の和})≤μ(f(S))\displaystyle {}\leq \mu(f(S))≤∣det⁡A∣⋅(外側の和)\displaystyle {}\leq |\det A| \cdot (\text{外側の和})

NN→∞{}\to \infty とすると両端がともに ∣det⁡A∣⋅μ(S)|\det A| \cdot \mu(S) に収束するので、はさみうちで結論を得る(ff と f−1f^{-1} がリプシッツ連続であることから、SS の境界の測度 00 が f(S)f(S) の境界に引き継がれ、可測性も保たれる)。

det⁡A\det A=0{}= 0 のときは、像が次元 nn−1{}- 1 以下の部分空間に含まれるので測度 00 であり、両辺とも 00 になる。■\blacksquare

本文で「細かいマス目で埋め尽くせば」と言ったのは、この挟みうちのことである。要点は、小さな立方体の像がぴったり平行体になるという一次変換の特権にある。一般のなめらかな写像ではこれが成り立たないので、各点ごとに倍率が変わる。その局所的な倍率が、小話 kb1 のヤコビアンである。

動かない点と動かない直線

定理2:不動点全体は部分空間である

線形写像 f:Rnf : \mathbb{R}^n→Rn{}\to \mathbb{R}^n(表現行列 AA)の不動点全体の集合を Fix⁡(f)\operatorname{Fix}(f) とすると

Fix⁡(f)\displaystyle \operatorname{Fix}(f)=Ker⁡(f−id)\displaystyle {}= \operatorname{Ker}(f - \mathrm{id})={ p⃗ ∣ (A−E)p⃗=0⃗ }\displaystyle {}= \{\, \vec{p} \ \mid\ (A - E)\vec{p} = \vec{0} \,\}

であり、これは Rn\mathbb{R}^n の部分空間である。次元定理(第 6 章 定理3)より

dim⁡Fix⁡(f)\displaystyle \dim \operatorname{Fix}(f)=n\displaystyle {}= n−rank⁡(A−E)\displaystyle {}- \operatorname{rank}(A - E)

とくに nn=2{}= 2 では、rank⁡(A−E)\operatorname{rank}(A - E) が 2,2, 1,\ 1, 0\ 0 であることが、本文 公式5 の表の 3 つの場合(原点のみ・直線・平面全体)に対応する。

また Fix⁡(f)\operatorname{Fix}(f)≠{0⃗}{}\neq \{\vec{0}\} であることと、11 が AA の固有値であることは同値である。

第 5 章の厳密定義で固有値・固有ベクトルを定義した。いま、その λ\lambda=1{}= 1 の場合が不動点であり、λ\lambda=1{}= 1 の固有空間が不動点全体である、と言い直せたことになる。第 4 章の厳密定義で導入した核が、ここでも顔を出している。同次連立一次方程式・核・不動点は、見る角度が違うだけで同じものである。

定理3:原点を通る不動直線の本数

AA=(abcd){}= \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} が表す一次変換について、原点を通る直線 ℓ\ell(方向ベクトル d⃗\vec{d}≠0⃗{}\neq \vec{0})が不動直線であることと、d⃗\vec{d} が AA の固有ベクトルであることは同値である。

したがって不動直線の本数は、特性方程式

φA(x)\displaystyle \varphi_A(x)=x2\displaystyle {}= x^2−(a+d)x\displaystyle {}- (a + d)x+Δ\displaystyle {}+ \Delta=0\displaystyle {}= 0

の実数解の個数で決まる。その判別式は

D\displaystyle D=(a+d)2\displaystyle {}= (a + d)^2−4Δ\displaystyle {}- 4\Delta=(a−d)2\displaystyle {}= (a - d)^2+4bc\displaystyle {}+ 4bc

であり、これは本文 公式6 の 2 次方程式 bm2bm^2+(a−d)m{}+ (a - d)m−c{}- c=0{}= 0 の判別式と一致する。

原点を通る不動直線
D>0D > 0ちょうど 2 本
D=0D = 0 かつ A≠kEA \neq kEちょうど 1 本
D=0D = 0 かつ A=kEA = kEすべての直線(無数)
D<0D < 00 本

2 つの判別式が一致するのは偶然ではない。yy=mx{}= mx が不動直線だという条件を書き下すと、傾き mm についての 2 次方程式が出るが、その解 mm は固有ベクトルの向きにほかならないからである(yy 軸が不動直線になる場合が、bb=0{}= 0 で 2 次方程式が 1 次に退化する場合に対応している。このとき DD=(a−d)2{}= (a - d)^2≥0{}\geq 0 となり、表とも矛盾しない)。

この表を第 5 章の対角化と並べると、意味がはっきりする。DD>0{}> 0 は相異なる 2 つの実固有値をもつ場合で、2 本の不動直線を新しい座標軸に選べば AA は対角行列になる。「対角化できる」とは「変換にとって素直な 2 方向が見つかる」ことだったわけである。DD=0{}= 0 で AA≠kE{}\neq kE の場合(本文 例題7 のせん断)は方向が 1 つしかないので対角化できず、ジョルダン標準形が必要になる。DD<0{}< 0 は回転成分をもつ場合(本文 j16)で、実数の範囲には素直な方向が存在しない。複素数まで広げれば固有値が現れ、第 3 章の厳密定義で見た「複素数体と同型な行列の集合」につながっていく。

平行移動を許すとどうなるか

一次変換は原点を動かせない。第 6 章の厳密定義では、平行移動を含む x⃗\vec{x}↦Ax⃗{}\mapsto A\vec{x}+b⃗{}+ \vec{b} をアフィン写像と呼んで導入した。不動点の議論は、そのままアフィン写像に持ち上がる。

定理4:アフィン変換の不動点

アフィン変換 T(x⃗)T(\vec{x})=Ax⃗{}= A\vec{x}+b⃗{}+ \vec{b} の不動点は (A−E)p⃗(A - E)\vec{p}=−b⃗{}= -\vec{b} の解である。したがって

  • det⁡(A−E)\det(A - E)≠0{}\neq 0 のとき、不動点はただ 1 つ存在し、p⃗\vec{p}=(E−A)−1b⃗{}= (E - A)^{-1}\vec{b} で与えられる
  • det⁡(A−E)\det(A - E)=0{}= 0 のとき、不動点は存在しないか、直線(または平面全体)をなす

とくに AA=R(θ){}= R(\theta)(θ\theta が 360∘360^\circ の倍数でない)のとき、det⁡(R(θ)−E)\det(R(\theta) - E)=2{}= 2−2cos⁡θ{}- 2\cos\theta≠0{}\neq 0 であるから、回転を含むアフィン変換にはかならず不動点がただ 1 つある。

最後の一文は、平面の運動の分類を完成させる鍵である。「原点まわりに θ\theta 回転してから b⃗\vec{b} だけ平行移動する」という一見ややこしい動きは、じつは別のある 1 点のまわりの θ\theta 回転にすぎない。その中心が上の p⃗\vec{p} である。

第 7 章の厳密定義で、平面の等長変換は「平行移動・回転・鏡映・すべり鏡映」の 4 種類しかないと述べた。証明はこう進む。等長変換は x⃗\vec{x}↦Ax⃗{}\mapsto A\vec{x}+b⃗{}+ \vec{b}(AA は直交行列)の形に書ける。det⁡A\det A=1{}= 1 なら AA は回転で、θ\theta≠0{}\neq 0 なら定理4 より不動点があり、その点まわりの回転。θ\theta=0{}= 0 なら平行移動。det⁡A\det A=−1{}= -1 なら AA は鏡映で、det⁡(A−E)\det(A - E)=0{}= 0 となるため不動点は無いか直線をなし、それぞれすべり鏡映・鏡映に対応する。不動点があるかどうかだけで、平面のあらゆる運動が仕分けられてしまうのである。

どんな変換も「回して、伸ばして、回す」

第 8 章の厳密定義では QR 分解を扱い、どんな可逆一次変換もせん断・伸縮・回転で作れることを見た。図形の言葉でいっそう見通しがよいのは、次の分解である。

定理5:特異値分解(SVD)

任意の実行列 AA(m×nm \times n)に対し、直交行列 UU(mm 次)、VV(nn 次)と、対角成分が σ1\sigma_1≥σ2{}\geq \sigma_2≥⋯{}\geq \cdots≥0{}\geq 0 である対角行列 Σ\Sigma が存在して

A\displaystyle A=UΣ t ⁣V\displaystyle {}= U \Sigma \,{}^t\!V

と書ける。σi\sigma_i を AA の特異値といい、t ⁣AA{}^t\!A A の固有値の 00 以上の平方根に等しい。

2×22 \times 2 の場合、幾何的な意味は次のとおりである。ff による単位円の像は、半軸の長さが σ1\sigma_1,σ2\sigma_2 の楕円であり、その軸の向きは UU の列で与えられる。とくに

∣det⁡A∣\displaystyle |\det A|=σ1σ2\displaystyle {}= \sigma_1 \sigma_2

であり、単位円(面積 π\pi)の像の面積 πσ1σ2\pi\sigma_1\sigma_2 が本文 公式2 と一致する。

読み下せば「どんな一次変換も、回してから、直交する 2 方向に伸ばして、また回すだけ」である(裏返しが必要なら、どちらかの直交行列が行列式 −1-1 をもつ)。第 7 章で基本的な変換として回転と伸縮を並べたが、それだけで一般の一次変換がすべて作れてしまうことを、この定理は言っている。

本文 j20 のように AA が対称行列のときは UU=V{}= V がとれ、特異値はそのまま固有値の絶対値で、楕円の軸が不動直線と一致する。一般の AA ではこの 2 つはずれる。不動直線は「向きが変わらない方向」、特異値の軸は「もっとも伸びる方向」であって、別のものである。

第 8 章の小話 kb2 で、det⁡A\det A≠0{}\neq 0 でも実際には逆変換が使いものにならない場合があり、危険度をはかるのは行列式ではなく条件数だと書いた。その条件数の正体が、ここで名前を得る。σ1σ2\dfrac{\sigma_1}{\sigma_2} である。いちばん伸びる方向といちばん縮む方向の比が大きいほど、逆をとったときに誤差が跳ね上がる。ハッブル望遠鏡のぼけを解こうとして雑音が爆発したのは、σ2\sigma_2 が 00 に近かったからである。

この先へ

これで「行列と一次変換」は終わりである。最後に、ここから伸びている道を並べておく。

第 1 章で数を四角く並べただけのものが、平面の動きを表し、面積を測り、動かないものを教えるところまで来た。行列がこれほど広く使われるのは、線形性という 1 つの性質だけを抜き出して調べるという発想が、思いのほか遠くまで届くからである。

この章の学習が終わったら

学習完了テストを受ける