問1
極限値 を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
より
目次 / 微分積分 / 数学III
—— 細かく刻んで足し合わせ、面積・体積・長さを測る ——
微分積分の最後の章です。第14章で身につけた積分の計算を、「形の大きさ」を測る道具として使います。はじめに、細い長方形を並べて足し合わせた和の極限が定積分になる**区分求積法**と、定積分を使って和や数を見積もる**定積分と不等式**を学びます。後半では、媒介変数で表された曲線の囲む面積、断面積から求める立体の体積、回転体の体積、動く点の道のり、そして**曲線の長さ**を求めます。第13章で速さを求めたサイクロイド・円の伸開線・対数らせんや、第11章の小話のカテナリーの長さも、ここで測ります。第14章で出会ったワリスの公式も、定積分の不等式で証明できます。
第8章の小話で、 が で に近づき、それが と同じ値になることを見ました。第14章の小話では、ライトが緯度を1分ずつ区切って を足し上げ、地図の目盛りを作った話もしました。どちらも「細かく区切って足し合わせると定積分になる」という同じ考え方です。これを公式として整えます。
関数 が で連続なとき
スマートフォンで昔のゲームのドット絵を拡大すると、曲線はがたがたの階段に見えます。ところが、画面の解像度を上げて点を細かくしていくと、階段は目立たなくなり、なめらかな曲線にしか見えなくなります。区分求積法の長方形は、ドット絵の1つ1つの点です。点を細かくした極限では、階段の面積と曲線の下の面積の区別がなくなります。
の形の和の極限は、幅 の長方形の面積の和の極限なので、定積分 で求められるということです。
次の極限値を求めなさい。
【解答】
(1) をくくり出すと、残りは の式になります。
(2) 分母・分子を で割ります。
なので
(最後の定積分は、第14章 例題6(3)で とおいて求めました。)
※ (1) は、第8章の小話で「区分求積の予告」として紹介した極限です。和の公式 を使っても が出ますが、(2) のように和の公式がない場合でも、区分求積法なら求められます。
区分求積法は「和の極限を定積分で求める」方法でした。極限までいかなくても、長方形の和と定積分の大小を比べれば、和や定積分の値を不等式で見積もることができます。
で , が連続で、 ならば
等号が成り立つのは、区間のすべての で のときだけです。つまり、 とならない が1つでもあれば、 になります。
(等号は区間の端だけで成り立つので、 になります。)これを について足し合わせると、 を ではさめます。
時間貸しの駐車場には、「1時間ごとに料金がかかり、端数は切り上げ」の所があります。2時間10分とめても、3時間分の料金です。分単位で払う駐車場と比べると、切り上げの駐車場のほうが、いつでも高いか同じになります。和と定積分の比べ方も同じです。長方形の高さを区間の左端(高いほう)でとる和は、曲線の下の面積を「切り上げて」数えているので、定積分より大きくなります。
関数の大小は定積分の大小にそのまま受け継がれるので、長方形の和と曲線の下の面積を比べれば、和や定積分の値を不等式ではさんで見積もれるということです。
が 以上の整数のとき、次の不等式を示しなさい。
【解答】
を 以上の整数とします。 では で、等号は のときだけです。よって
これを について足し合わせると、右辺の区間はつながって から までになります。
両辺に ( の項)を加えると
※ 右辺は より小さいので、この和はいくら足しても を超えません。第9章の小話で、 の の部分は無限に続くのに面積が だという話をしました。この不等式は、その面積 に最初の項 を足した で、和を上から押さえています。実際の和の極限は で、オイラーが1735年ごろに求めました。
第9章では、 のグラフと 軸の間の面積を、縦に細い帯を並べて求めました。数IIIでは、曲線が の形や、媒介変数 で表される場合にも広げます。
(横に細い帯を並べる考え方です。2曲線の間なら「右 − 左」を積分します。)
が増えるとき が減る向きなら、 となることもあります。区間の対応表を正直に書けば、符号は自然に正しくなります。
ランニングアプリは、走っている間、1秒ごとに「東へ何 m,北へ何 m」という位置を記録しています。地図の上のコースの形は、この「時刻ごとの位置」の記録から描かれます。媒介変数表示の曲線も同じで、 と がそれぞれ時刻 の関数として記録されています。面積を測るときは、 で書いた式を の記録に読みかえて足し合わせます。
の形なら で積分し、媒介変数表示なら を作ってから に置換すれば、数IIIの曲線でも面積が求められるということです。
(1) 曲線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
(2) 曲線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
【解答】
(1) なので、曲線は で 軸と交わり、 では ( 軸の左側)です。「右 − 左」 を積分します。
(第9章の6分の1公式を で使って、 としてもかまいません。)
(2) なので、この曲線は、半径 の円を縦方向に 倍に縮めた形(楕円)です。 軸について対称なので、 の部分()を2倍します。 です。
( は第14章 j07(3)です。)よって
※ (2) は、半径 の円の面積 を 倍した値になっています。縦の帯の長さがどれも 倍に縮むので、面積も 倍です。同じように、, の囲む面積は です。
面積は「細い帯の長さ」を積分して求めました。体積は「薄い板の面積」を積分して求めます。
立体を 軸に垂直な平面で切ったとき、位置 の切り口(断面)の面積が で、立体が の範囲にあるなら、立体の体積は
パン屋さんで食パンを1斤買い、スライサーで薄く切ってもらったとします。1枚1枚の面積はパンの形によって少しずつ違いますが、「1枚の面積 × 厚さ」を全部の枚数ぶん足せば、1斤の体積になります。スライスが薄ければ薄いほど、この足し算は正確になります。立体の体積の公式は、無限に薄くスライスしたときの足し算です。
立体を平行な平面で薄く切り、断面積 を式で表して積分すれば、体積が求められるということです。
(1) 底面積が ,高さが の角錐(または円錐)の体積が であることを示しなさい。
(2) 底面の半径が の直円柱を、底面の直径 AB を通り底面と の角をなす平面で切ります。切り取られた小さいほうの立体(くさび形)の体積を求めなさい。
【解答】
(1) 頂点から底面に下ろした垂線を 軸とし、頂点を原点にとります。頂点から距離 の断面は、底面と相似で、相似比は です。面積の比は相似比の2乗なので、断面積は です。
(2) 底面の中心を原点 O,直径 AB を 軸とし、底面上で AB に垂直な向きを 軸にとります。くさびは底面の の半円の上にあります。位置 で 軸に垂直に切ると、断面は直角をはさむ2辺の長さが等しい直角二等辺三角形です( の斜面なので、横の長さ の所の高さも )。底面上の辺の長さは なので
※ (1) で、中学校で「そういうもの」として覚えた錐体の が、 の から来ていることがわかりました。(2) は、円柱の一部なのに答えに が現れません。 軸に垂直に切ると断面は横 ,高さ の長方形になり、 を置換積分で計算しても、同じ が出ます。どの向きに切るかで計算の手間が変わるので、断面が簡単になる向きを選びます。
図形を1本の直線のまわりに1回転させてできる立体を、回転体といいます。回転体の断面は円なので、断面積がすぐに式にできます。
(断面は半径 の円なので、 です。)
ではないことに注意します。
陶芸の「ろくろ」を思い浮かべてください。粘土を回転台にのせて回しながら手で形を整えると、どの高さで切っても、切り口がきれいな円になった器ができます。職人が決めているのは「高さごとの半径」だけです。回転体の体積も、高さ(位置 )ごとの半径 さえわかれば、円の面積 を積分して求められます。
回転体は断面が円なので、回転の軸からの距離(半径)を式で表し、 を積分すれば体積が求められるということです。
(1) 半径 の球の体積が であることを示しなさい。
(2) 曲線 と 軸, 軸,直線 で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
(3) 曲線 と 軸, 軸で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
【解答】
(1) 半径 の球は、半円 を 軸のまわりに1回転させた立体です。
(2)
(3) の範囲は で、 です。 そのものではなく だけあれば足りるので、根号は出てきません。
※ (1) で、第2章の小話の「球の体積を微分すると表面積」を思い出してください。 でした。今度は、断面積(円の面積)を積分して体積を作りました。(3) は、お椀を伏せたような形の立体です。
第13章では、位置を時刻で微分して速度を求めました。逆に、速度を積分すれば位置の変化がわかります。ただし、「位置の変化」と「実際に動いた道のり」は違います。
時刻 の位置が なら、時刻 の位置は です。
家から公園まで散歩して、同じ道を帰ってきたとします。スマホの歩数計は、往復した分の距離を記録しています。けれども、「家からどれだけ離れたか」で見ると、帰宅した時点では です。速度を積分して得られるのは「どれだけ離れたか」(位置の変化量)で、戻る向きの速度は負なので、行きと帰りが打ち消し合います。歩数計のように歩いた距離をすべて数えたいときは、速さ を積分します。
速度を積分すると位置の変化量、速さ(速度の絶対値や )を積分すると実際に動いた道のりが得られるということです。
(1) 数直線上を動く点 P の時刻 における速度が で、 のとき原点にあります。 のときの P の位置と、 から までに P が動いた道のりを求めなさい。
(2) 座標平面上を動く点 P の時刻 における座標が , のとき、 から までに P が動いた道のりを求めなさい。
【解答】
(1) 位置は
道のりは、 の符号が変わる で区間を分けます。
(2) 第13章 例題2(1)で求めたとおり、速さは です。
※ (1) の P は、 で位置 まで進んで折り返し、 まで戻ってきました。位置の変化量は でも、道のりは です。(2) の P は半径 の円の上を、 でちょうど1周します。道のり は、円周 と一致しています。
例題6(2)で、円の上を1周する点の道のりが、円周の長さになりました。ここから、曲線の長さを求める公式が得られます。曲線を「その上を動く点の通り道」と見て、道のりを計算すればよいのです。
地図の上で、曲がりくねった道の長さを測りたいとき、定規ではうまく測れません。そこで使われてきたのが、キルビメーター(曲線計)という道具です。小さな車輪を道に沿って転がすと、車輪の回転数から転がした距離が読み取れます。車輪は、道のどの部分でも、そこで進む向きにまっすぐ転がっているだけです。曲線の長さの公式も、ほんの少し進む間は「まっすぐ」と見て、その短い距離を足し合わせています。
曲線の長さは、曲線の上を動く点の道のりとして、速さ を積分すれば求められるということです。
(1) サイクロイド , の長さを求めなさい。
(2) 曲線 の長さを求めなさい。
【解答】
(1) 第13章 例題2(2)で、この曲線の上を動く点の速さを求めました。
では なので
(2) なので
なので です。
※ (1) は、半径 の円が 軸の上を1回転する間に、周上の点が描く曲線(第10章の小話・第11章 j16・第13章 例題2(2))です。円が進む距離は円周 ですが、周上の点はそれより長い を動きます。しかも、 を含まないきれいな整数です(小話1)。(2) は、 が という完全平方になるように、係数 と を選んだ曲線です。
この章で測った量を、「何を積分するか」で並べておきます。
| 求めるもの | 積分するもの |
|---|---|
| 和の極限(区分求積法) | |
| 和や定積分の見積もり | 関数の大小をそのまま積分(公式2) |
| 面積 | 帯の長さ(上 − 下,右 − 左,媒介変数なら ) |
| 体積 | 断面積 |
| 回転体の体積 | |
| 位置の変化量/道のり | 速度 /速さ $ |
| 曲線の長さ | , |
どの行も、「細かく区切る → 小さな部分を簡単な形(長方形・薄い板・線分)で近似する → 足し合わせて極限をとる」という同じ考え方でできています。
これで微分積分の15章が終わりました。第1章では「駅に近づく電車」の極限から出発し、微分は「一瞬の変化の割合」、積分は「細かく区切って足し合わせたもの」として学んできました。第8章の微分積分学の基本定理で、この2つが表と裏の関係にあることがわかり、この章では、その積分が面積・体積・長さという「形の大きさ」まで測れることを確かめました。変化を調べる微分と、全体を足し上げる積分は、物理・経済・医療など、数学の外の世界でも使われ続けています。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
極限値 を求めなさい。
より
問2
曲線 と 軸,直線 で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より
問3
の範囲にある立体を、 軸に垂直な平面で切った断面の面積が のとき、この立体の体積を求めなさい。
より
問4
曲線 と 軸,直線 で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
より
問5
数直線上を動く点の時刻 における速度が のとき、 から までに動いた道のりを求めなさい。
より
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
上の極限値を求めなさい。
(1) (2)
(1) 分母・分子を で割って、 をくくり出します。
(2) とすると、 です。
((2) は、 の での「平均の高さ」です。山の頂上は ですが、平均すると になります。)
問2 ★
(1) 曲線 と直線 , 軸で囲まれた部分
(2) 曲線 と2直線 , で囲まれた部分
上の部分の面積を求めなさい。
(1) (2)
(1) と の交点は で、 では です。「上 − 下」を積分します。
(2) より交点は です。 では なので
問3 ★
(1) 曲線 と 軸, 軸,直線 で囲まれた部分
(2) 曲線 と 軸,直線 で囲まれた部分
上の部分の面積を、 で積分して求めなさい。
(1) (2)
(1) を について解くと です。 で、 軸()から曲線までの横の長さ を積分します。
(2) なので
((2) を で積分すると、縦 ・横 の長方形から曲線の下の部分を引いて となり、一致します。(1) を で積分すると の積分(第14章 例題7(2))が要るので、 で積分するほうが楽です。)
問4 ★
座標平面上の円 を底面とする立体があります。この立体を 軸に垂直な平面で切ると、切り口はつねに、底面上の弦を1辺とする正方形になります。この立体の体積を求めなさい。
位置 での弦の長さは なので、断面積は
(断面を2乗した式が根号のない多項式になるので、計算は第8章の範囲で済みます。)
問5 ★
曲線 と 軸で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
( は半角の公式で次数を下げます(第14章 公式4)。)
問6 ★
放物線 と直線 で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
交点は より , で、図形は の側にあります。 で見ると、 で、直線上の点は ,放物線上の点は で、 です。
断面はドーナツ形なので、「外側の半径 − 内側の半径」を積分します。
( としてしまうのが、よくある間違いです。)
問7 ★
数直線上を動く点 P の時刻 における速度が のとき、 から までの、P の位置の変化量と、P が動いた道のりを求めなさい。
位置の変化量 ,道のり
とすると で、,, です。
位置の変化量は
は で 以上、 で 以下なので、道のりは
(P は まで正の向きに 進み、そこで折り返して で出発点に戻ってきます。)
問8 ★
曲線 の長さを求めなさい。
なので , です。
(この曲線は、デカルトが「測れない」と考えた種類の曲線の中で、はじめて長さが求められたものの仲間です。小話1を見てください。)
問9 ★★
極限値 を求めなさい。
乗根と積のままでは区分求積法が使えないので、自然対数をとって和に直します。求める式を とすると
区分求積法より
とおくと、第14章 例題7(2) の と同じ形です。
なので、 です。
( は連続なので、 の極限から の極限がわかります。)
問10 ★★
すべての実数 で が成り立ち、等号は のときに限ることを用いてよいものとします。次の不等式を示しなさい。
上の不等式を示しなさい。
(等号は のみ)を から まで積分して示される。
とすると , とすると ,つまり です。どちらも等号は のときだけです。
等号が成り立たない があるので、積分すると不等号は になります(公式2)。
(後者は第14章 例題6(3))なので、 です。(証明終)
( の原始関数は式で書けません(第7章の小話)。それでも値は と の間にあるとわかります。実際の値は です。)
問11 ★★
が 以上の整数のとき、次の不等式を示しなさい。
上の不等式を示しなさい。
を について足し合わせて示される。
を正の整数とします。 では で、等号は区間の端だけなので
左の不等式 右側の不等式を について足すと
右の不等式 左側の不等式を について足すと
両辺に を加えて、 です。(証明終)
(左の不等式から、 なので調和級数は発散します(第10章の小話)。右の不等式から、その増え方は 程度のゆっくりしたものだとわかります。 でも和は より小さいのです。)
問12 ★★
サイクロイド , と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
で です。 なので、 が から まで増えるとき、 は から まで増えます。
, なので
(転がる円(半径 )の面積 のちょうど 倍です。この事実は、ガリレオが紙を切って重さを量り、およそ3倍と見当をつけたともいわれています(※諸説あり)。)
問13 ★★
以上の整数 について とするとき、 で が成り立つことを用いてよいものとします。曲線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
を に変えると だけ符号が変わり、 に変えると だけ符号が変わるので、曲線は 軸・ 軸について対称です。第1象限の部分()の面積を4倍します。
で、 が から まで増えるとき、 は から まで減ります。
として
, なので、 です。
(この曲線はアステロイド(星芒形)といい、4つのとがった点をもつ星のような形です。第14章 j20 の が、ここで役に立ちました。)
問14 ★★
曲線 と 軸,直線 で囲まれた部分を とします。
(1) を 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
(2) を 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
(1) (2)
は , の部分です。
(1) です。, として部分積分すると
( は第14章 例題7(2)です。)
(2) で見ると、 で、 は から までの横の線分です。断面は外側の半径 ,内側の半径 のドーナツ形なので
((2) を で積分しようとすると、 を回転の半径として使えません。 軸のまわりの回転では、 を の式で表すのが基本です。)
問15 ★★
(1) 曲線 , の長さを求めなさい。
(2) 曲線 , の の部分の長さを求めなさい。
(3) (2) の曲線の の部分の長さを とするとき、 を求めなさい。
(1) (2) (3)
曲線の長さは、その上を動く点の速さの積分です。どちらの曲線も、第13章で速さを求めました。
(1) 第13章 j19 より , で、 なので速さは です。
(2) 第13章 j11 より、速さは です。
(3)
((1) は円の伸開線です。糸をほどいた長さ の糸の先が描くので、ほどき始めから までの長さは です。(3) の対数らせんは、 で原点のまわりを無限に回りながら近づきますが、その長さは有限の です。始点 での接線 は 軸と で交わり、始点からそこまでの距離もちょうど です。1645年ごろ、トリチェリがこの性質に気づいたといわれています。)
問16 ★★
曲線 (カテナリー)について、 とします。
(1) の部分の長さ を求めなさい。
(2) この曲線と 軸, 軸,直線 で囲まれた部分の面積を とするとき、 であることを示しなさい。
(1) (2) を計算すると となり、 と一致する。
(1) なので
なので です。
(2) なので
これは (1) の と同じ値です。よって です。(証明終)
(カテナリーは、 が成り立つ特別な曲線で、「長さ」と「面積」を表す積分がまったく同じ式になります。さらに、 での接線の傾き も と等しくなっています。第11章の小話で紹介した、鎖をたらした形の曲線です。)
問17 ★★★
サイクロイド , について、次の問いに答えなさい。
(1) に対応する点から に対応する点までの曲線の長さ を求めなさい。また、 となる を求めなさい。
(2) このサイクロイドと 軸で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
(1) , (2)
(1) 例題7(1)と同じく、速さは です。
より です。 なので ,つまり です。
(2) で、,区間は も です(j12)。 に がかかるので
展開すると です。 から までの積分は
なので
((1) で、1つの山の全長 の4分の1にあたる を進むのは で、 の区間 の4分の1()より先です。出だしは速さが に近く、ゆっくりとしか進まないからです。)
問18 ★★★
曲線 と 軸で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。
の に対し、 となる は2つあります。小さいほうを とすると、大きいほうは です。高さ の断面は、外側の半径 ,内側の半径 のドーナツ形なので
なので
を の式で書くことはできませんが、 と置換すれば計算できます。 で
( の原始関数は第14章 例題5(1)です。)
(厳密定義の定理3(パップス・ギュルダンの定理)の考え方で、 軸方向の重心の位置 と面積 から、 と確かめることもできます。図形が直線 について対称なので、重心はその直線上にあります。)
問19 ★★★
を 以上の整数とします。
(1) を求めなさい。
(2) を示しなさい。
(3) を用いてよいものとして、 を求めなさい。
(1) (2) を について足し合わせて示される。(3)
(1)
(2) を正の整数とします。 は増加関数なので、 で で、等号は区間の端だけです。よって
について足すと、, なので
(1) より、 です。(証明終)
(3) (2) の右側から ,左側から です。各辺を で割って を引くと
真ん中は です。 で左右の辺はどちらも に近づくので、はさみうちの原理より です。
( はおよそ の大きさだということです。小話3のスターリングの公式につながります。第11章の小話で出会った が、ここにも現れました。)
問20 ★★★
以上の整数 に対して とします(第14章 j20)。正の整数 について
が成り立つことを用いてよいものとします。
(1) を示しなさい。
(2) を示しなさい。
(3) とするとき、 を求めなさい。
(1) で より ,これを積分して示される。(2) とはさみうちの原理で示される。(3)
(1) では なので、掛ける が1つ増えるごとに値は小さくなります。
等号が成り立たないので、 から まで積分しても不等号は のままです(公式2)。よって です。(証明終)
(2) (1) の各辺を で割り、 を使うと
右辺は で に近づくので、はさみうちの原理より です。(証明終)
(3) です。また、 なので です。よって
(2) より なので
( と書き直して分数を並べると、第14章の小話のワリスの公式 になります。ワリスが「補間」で推測した式を、定積分の不等式とはさみうちで証明できました。)
座標を使って図形を式で表す方法を広めたフランスの哲学者・数学者デカルトは、1637年の『幾何学』で、おおよそ次のように書きました。「直線と曲線の長さの比は知られておらず、人間には正確に求めることはできないだろう」(※意訳)。円周の長さでさえ、直径との比 が「きちんとした数」では表せないのだから、ほかの曲線も同じだろう、という感覚です。
この予言は、20年ほどではずれました。1657年、イギリスの若者ウィリアム・ニールが、 という曲線(半立方放物線)の長さを、根号と分数だけの式で求めたのです。j08 の はこの仲間で、長さは という有理数になりました。デカルトが「無理だ」と言ったのは、このように , の多項式で表される曲線のことで、ニールの曲線はその最初の反例になりました(※ほぼ同じころ、オランダのファン・ヘラートも独立に求めていて、誰が最初かには諸説あり)。
翌1658年には、クリストファー・レンが、サイクロイドの1つの山の長さが、転がる円の直径のちょうど4倍であることを示しました。例題7(1)の です。円を転がして作った曲線なのに、長さに が現れないのは、当時の人々にとっても驚きでした。この年は、パスカルがサイクロイドについての懸賞問題を出し、ヨーロッパ中の数学者がこの曲線に夢中になっていた年でもあります。
豆知識
レンは、のちに数学よりも建築で名を残しました。1666年のロンドン大火のあと、町の再建を任され、セント・ポール大聖堂を設計したのがレンです。
病院で受ける CT 検査(コンピューター断層撮影)は、体のまわりで X 線の装置を回転させ、体を輪切りにした断面の画像を作ります。1枚の厚さは 1 mm 前後で、胸やおなかを撮ると、数百枚の断面が得られます。
この断面の画像は、そのまま体積の計算に使えます。たとえば肝臓の体積を知りたいときは、1枚ずつ画像の上で肝臓の輪郭を囲み、その面積を求めます。「断面積 × スライスの厚さ」を全部の断面について足し合わせれば、肝臓の体積です。これは公式4の を、区分求積法の和のまま計算しているのと同じです。生体肝移植では、提供する人の肝臓をどれだけ切り取れるかを決めるために、こうして手術の前に体積を見積もります。
CT の装置は、1970年代にイギリスの技術者ハウンズフィールドが実用化し、理論を研究したコーマックとともに、1979年のノーベル生理学・医学賞を受けました。
豆知識
天文学者のケプラーは、1613年に再婚の祝いのワインを樽で買ったとき、商人が樽の穴に棒を1本斜めに差しこみ、濡れた長さだけで値段を決めるのを見て、「そんな測り方で正しいのか」と疑問をもちました。その疑問から、1615年に樽の体積を研究する本『ワイン樽の新しい立体幾何学』を書いています。樽を薄い円板の積み重ねと考える発想は、回転体の体積の先がけでした。
は、 が大きくなると、あっという間に巨大になります。トランプ 52 枚の並べ方は 通りで、およそ 通りです。よく切ったトランプの並び順は、人類の歴史で一度も現れたことのない並びである可能性がきわめて高い、といわれるほどです。
では、 はおよそどれくらいの大きさなのでしょうか。j19 では、 を ではさんで
を示しました。ざっくり言えば、 は くらいの大きさだということです。もっと精密に調べると、次のスターリングの公式が成り立ちます。
なら、右辺は約 で、本当の値 との差は もありません。
この式は1730年ごろ、フランス出身の数学者ド・モアブルが形を見つけ、スコットランドのスターリングが、係数が であることを突きとめました。ここで、ものを並べる数を数えているだけなのに、円周率 が現れるのがふしぎです。実は、この は j20 のワリスの公式から来ています。 は の積分から、 は の積分から現れて、1つの式に同居しているのです。
豆知識
ド・モアブルがこの近似を調べたのは、コインを何百回も投げたときに表が出る回数の確率を計算するためでした。その研究から、第7章の小話で紹介した の形の正規分布が生まれています。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、本文の公式を正しく使えれば十分です。ここでは、曲線の長さをきちんと定義し直して公式の理由を確かめ、区分求積法の誤差の大きさ、長さが無限になる曲線の例、回転体の体積と重心を結ぶパップス・ギュルダンの定理、調和級数と の差が落ち着く先(オイラーの定数)までを扱います。
曲線 が , で表され、, は連続とする。区間を と分け、曲線上の点 を順に結んだ折れ線の長さを
とする。ただし , である。分け方を細かくして、区間の幅の最大値を に近づけるとき、 が分け方によらず一定の値 に近づくならば、 を曲線 の長さという。
本文では曲線の長さを「知っているもの」として扱いましたが、曲がった線の長さは、定規で直接は測れません。そこで、長さがわかっている折れ線で近似し、その極限として長さを定義します。分点を増やすと、三角形の2辺の和は他の1辺より長いので、折れ線はだんだん長くなります。長さは「内側から近づける折れ線の長さの行き着く先」です。
が で連続かつ増加関数ならば、 について
が成り立つ。とくに である。
証明 では、 が増加関数なので である。各辺をこの区間で積分すると(公式2)
について足すと、 として である。 は、隣どうしが打ち消し合って だけが残るので
右辺は で に近づくので、はさみうちの原理(第10章)より結論が従う。(証明終)
例題1(1)で確かめると、 で、誤差 は確かに 以下です。誤差がおよそ に比例して小さくなることがわかるので、「区間を10倍細かくすれば、誤差はおよそ10分の1」と見積もれます。増加関数でない連続関数でも区分求積法は成り立ちますが、それは第8章の厳密定義で述べた「連続関数ではリーマン和の極限が存在する」ことに頼ります(証明は大学で扱う)。
定義1で、, が微分可能で、, が連続ならば、曲線の長さ が存在して
である。
証明の概略 平均値の定理(第12章)より、, となる , があって、 とすると
よって
となる。もし ならば、これは右辺の定積分のリーマン和(第8章)そのものであり、分け方を細かくすれば定積分に近づく。 のずれは、不等式
(座標平面で、点 と の原点からの距離の差は、2点間の距離以下)と、 の連続性から、分け方を細かくすればいくらでも小さくできる。(証明の概略終)
, が連続でない曲線では、長さが存在しないこともあります。たとえば
は、 で連続ですが(第10章 はさみうち)、長さは無限大です。 では なので、曲線は高さ まで上下に振れます。隣の山と谷の間では、少なくとも だけ上下に動くので、長さは 以上です。これは j11 と同じく のように増え続け、調和級数(第10章の小話)と同じように発散します。区間の長さは なのに、曲線は無限に長いのです。
で とし、2曲線 , と2直線 , で囲まれた図形を ,その面積を とする。
を の重心の 座標と定めると、 を 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積 は
である。つまり、体積は「図形の面積」と「重心が1回転で動く道のり 」の積に等しい。
証明 公式5より
である。(証明終)
証明は1行ですが、意味するところは深いです。 の式は、「幅 の縦の帯(面積 )を、帯の真ん中の高さ で重みをつけて平均したもの」で、図形を1点で支えてつり合う点(重心)の高さを表しています。
4世紀のアレクサンドリアのパップスが述べ、17世紀にスイスのギュルダンが改めて取り上げたので、2人の名前で呼ばれます(※パップスの証明は残っていない)。
とすると、数列 は減少し、つねに である。したがって は収束する。この極限値をオイラーの定数といい、 で表す。
証明 では で、等号は のときだけなので
よって は減少する。また j11 の左の不等式 より、 である。下に有界な減少数列は収束する(第10章 厳密定義の単調有界定理)。(証明終)
調和級数 は発散しますが(第10章の小話)、その増え方は とほとんど同じで、差は に落ち着きます。第10章の小話の「 を超えるのに 項」も、 で説明できます。 や が無理数であることは証明されていますが、 が無理数かどうかは、今もわかっていません。
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